おすすめ度*1 |
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ASIN |
やや大きめのハウジングになるが、耳への収まりは悪くない。遮音性はそこそこ。音漏れは少し。
aptXには対応しない。AAC対応。比較的通信は安定している。遅延・途絶はない。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、キャリイングポーチ、日本語説明書。
ケースからの取り出しはスムーズ。ケースはモバイルバッテリー機能も備えており、容量は2200mAH。イヤホンの連続再生時間は公称2-4時間。このレビューを書いている間、3時間は音楽を聞き続けたので、私の個体は公称値に近いと思われる。
操作インターフェースはタッチパネル式。
【2】音質
音質的には色味を抑えた低域の太い重厚なバランスだが、音場はやや広く、密度感的には圧迫が少ないところもあって、意外と聞き疲れしにくい。膨張感があるので、明瞭さはそれほどはっきりしないが、低音の深掘り感もかなり感じられる。ハイハットなどはややドライな金属光沢を出すが、音に尖る感じがなく、耳に痛い感じで明るく撥ねる感じもなくて、情緒は安定している。音は太く重量感はたっぷりあるので、満腹感は得られやすい音。
最初は少し暗くて重すぎるバランスかなと思ったが、聞き込んでみると、適度な情緒感と安定感を両立させていて、JAZZやロックをしっかり楽しませてくれる。
[高音]:突き抜け感はあまりない。自然な色味で煌めき感や透明感は普通(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:金属光沢はややドライに聞こえる。ピアノの色味も情緒が落ち着いていて、ほどよく透明感があるが浮き上がらない。やや下方向に音がまとまりやすい傾向があって、高域方向に向かうほど少し空疎な雰囲気がある。
[低音]:はっきりした太い振動で100hz~40hzまでしっかり。30hzでも少し振動を感じ、20hzはほぼ無音。太いベース音で深掘り感もある(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:音の太さの割に音場は少し広めであまり圧迫感を感じない。大抵の完全ワイヤレスイヤホンは音が近いので、そういう音場表現に圧迫感を感じている人は、密度感と広さのバランスが良く感じられるかも知れない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムはやや膨張感があるが、地熱と爆発力のバランスがよいように思う。少し膨らむ感じのバッシンバッシンという音。ハイハットは色味がドライで浮き上がる感じがない。粒感は結構良く、ライドシンバルなんか結構締まっている印象。どちらかというとパーカッションは暗い方向ではあるので、大人びて聞こえるかも知れない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルやや太め。高域は少し天井感があり、色味は抑えめではあるが、暗い感じでもなく、意外と自然な色合いでバランスは良い。無難。
【3】官能性
低域の深掘り感が結構よく、ピアノにJAZZ味があって大人びているところがなかなか味わい深く、たとえばAimer「everlasting snow」なんか、しっかり聴ける。ハイハットや弦楽も情緒が安定していて、穏やかな情感を丁寧に聴かせてくれるので、これはなかなかいいんじゃないかと思う。そしてほどよく広い音場表現もこの曲向きと言える。「カタオモイ」なんかもよく、Aimerの曲とは相性がいいかも知れない。
May'n & 中島愛「ライオン」も重厚にしっかり聴かせる。色味が落ち着いているので、浮かび上がる感じがなく、全体的に低域方向に向かって足で立っている安定感がある。ボーカルは高域で天井を迎えやすいので、高域に強いイヤホンで味わえるようなサビでの浮揚感はなく、印象的にはもっさりしているところもあるが、定位感のよいやや広めの空間で地に足の着いた安定感を味わう感じは悪くない。
太めで落ち着いた自然な風味となると、どちらかというとアコースティックな傾向の曲の方が妙味があるかもしれない。エド・シーランだと「Photograph」がかなり生々しい。ドラムの膨張感もよくて、しかも表面にほどよい硬さと爆発力、下方向に少しの地熱感と味わいポイントを抑えている。またこの曲はクライマックスに向かって徐々に音が迫ってきて密度が増していく傾向にあるが、音場がほどよく広いので、その充実してくる感じもより定位よく味わえる。これはなかなかいいんじゃない。
12/19に鹿乃さんのニューアルバム「rye」が発売されました。おめでとうございます。ファンとしてすぐゲットしました。
さて、その中からこの曲「HOPE」を聴いてみる。比較的落ち着いた色合いと、定位感の良さ、重厚感、ややウォームな温もり感とこの曲を味わうに充分な魅力を感じる。
【4】総評
この機種クラスの製品になると、音質と使い勝手はかなり安定しており、もはや同価格帯の普通のワイヤレスイヤホンに遜色ないといえるレベルまで来ている。amazonでの安定した評価が証明しているとおり、少なくとも使い勝手に関する限り、この機種を選んで失敗することはあまりないだろう。私の手に入れた個体はそれくらい完成度が高い。これより下の価格帯は使い勝手でまだまだ安定しないものもあるが、こちらの製品は1万円クラスの有名メーカー品と比べてもむしろ安定しているくらいだ。
もうこの価格帯、中華TWS充実しすぎだろって思い始める今日この頃。1年前の今頃の主役不在って状況と打って変わって、聴くイヤホン聴くイヤホン、次々レベルが高くなってきていて、そのスピード感に呆れる。高価格帯の有名メーカー勢も充実してきているが、音質面ではそれを凌駕するスピードで急速に差を詰めてきているのが、5000円クラスの中華製完全ワイヤレスイヤホン。機能的にはまだまだ熟し切れていないところもあって、品質が安定しないという欠点はあるものの、たとえばこの機種も明確に日本をターゲットにしていて、パッケージデザインや説明書の日本語がだいぶこなれてきている。この機種も技術基準適合証明を受けているようで、技適マークと設計認証番号が明記されており、説明書の日本語もだいぶ自然。
中華メーカーも勉強熱心で、販売戦略やデザイン、音質などについて相談を受けることも多いし、話していると売り込みも丁寧で、勘も非常に鋭くなってきている。私が感心した製品や日本での家電量販店の売れ行きの情報、店作りの特徴や気に入っている店の情報、ネットで埋没させずにどう商品ページで製品イメージを展開するかという話を素人目線ながら話し続けても、聴いてくれるし、対応も丁寧だ。中には売ることしか考えていない販売業者もいて、ちょっと悪質というのもいるけど、全体として見るとかなり少数派になっていて、そういうのは淘汰されている。大部分の中華メーカーは品質はまだ悪くても、日本のメーカーよりよほど真摯に消費者に向き合おうとしている。彼らはamazonのカスタマーレビューをかなり丁寧に読んでいるし、カスタマーレビューの内容にわかりづらいものがあったりしたときは、私にどういう内容か説明して欲しいと聞いてきたりもするくらい熱心だ。去年までは私は完全ワイヤレスの低価格機種なんて安かろう悪かろうでしかないと思っていたが、この一年で様変わりした。熱心な商品開発の姿勢を見れば、品質の改善が著しいのも頷ける。率直に言って私はその貪欲さを尊敬する。
だから言いたい。国内メーカーは本当は1万円以上を主戦場にしてはいけないのだ。今最も批判が多く、消費者の目が厳しく、丁寧な対応を求められるのは5000円クラスの低価格完全ワイヤレス市場であり、ここで成長している中国の新興メーカーを笑ってはいけない。実は新興の中国メーカーの社員たちは若く、日本製品を含め良質な先進国の電化製品の良さをユーザーとしてよく知っている層でもある。彼らは目先では粗悪なものも売って資金を稼ぐだろうが、本心としていいものを作りたいと思っている。テレビなんかではいまだにバカみたいに中国をパクリ国家として誇大報道し、アホみたいにコピー製品濫造国家と揶揄するが、実際はそれは極端に悪い例に過ぎず、本当に売れるよいものを日々作ろうとしている努力はしっかりと存在している。少し考えればわかることだが、中国人だってコピー品がほしいわけじゃないからだ。生活家電はいまだひどいものが多いし、デザインも合理的じゃなくて、私はこうしたメーカーにデザインで合理的じゃない部分、使いづらい部分を指摘して改善案を提案したりしているが、意外と日本のメーカーより真摯に検討してくれたりする。
私事になるが、長年愛用しているジャストシステムの日本語変換「ATOK」を2016から2018にアップデートした途端、おバカ度がハンパなくなったので、おそらくディープAIのせいだと思い、実例を挙げてサポートに問題点を説明したが、サポートからの返答は「辞書がおかしくなってると思いますから、リセットしてください」とのこと。は?一生懸命ユーザー辞書作って使っているディープユーザーである私に、一からやり直せって?それでバカが治るかもわからないのに?言っておくけど、2016までは普通に日本語きれいに変換できてたんだからね?1年おきに一太郎熱心に買い換えてきたけど、このおバカ治らないんだったら、苦痛でしかないんで、もうATOKとか買いません。という趣旨のことをもうすこし紳士的に愛情込めて一通り説明したけど、問題は確認できないですって感じで危機感は感じられませんでした。まあこの症状に苦しんでいるの私だけなのかも知れない。悔しかったので、一生懸命「ATOKおバカ変換事例集」をこまめに記録してサポートに送ってやろうと作っていたが、そんな手間をかけていると執筆時間に大きく影響するし、結局辞書リセットしてくださいで終わるだろう結末も見えていたので、今はやめました。←これでさえ「今早めました」と変換される始末。基本的にATOK2018(おそらくディープAIが搭載された2017から)は以前のモデルに比べて「てにをは」に対して感性が悪いです。
ともかく、ここ2,3年中国の、顔を見たこともない、よくわからん販売者や製造者と商品についていろいろ意見交換するという交流を繰り返した来たが、かつてのどうしようもないレベルから今は断然で、かなりまともに使える製品が増えてきている。よく考えるとこの間2年くらいで成長著しい。
本当はオーテクやJVCが短期的な利益度外視で真っ先に切り込んでいかないといけないのは低価格完全ワイヤレス市場であり、そこでしのぎを削り、一番厳しい顧客のフィードバックと満足度を得て製品開発に手応えを得るべきで、そこから次の商品展開が見えてくるはずなのだ。そして、ネット販売にもっと力を入れなければいけない。YCやBCを除いて、ほとんどの家電量販店はどう見てもオーディオメーカーに充分報いているように思えない。役に立たないリアル店舗を捨てて、顧客にもっと近づくべきだ。でもそうはしないんだよね。
悲しいかな、国内メーカー不在のこの市場で確実に力を付けている中国メーカーの技術力は高価格帯を凌駕しつつさえある。心苦しいが、これが現実だ。完全ワイヤレスイヤホンの登場によって、これまでの家電量販店中心のオーディオ製品の物流モデルは完全に崩れ始めており、中国の工場からダイレクトに送られてくる製品群が圧倒的スピードで市場を席巻しつつある。このままでは身近な家電量販店で音を試聴しながら製品を選ぶこともできなくなるし、実際Y電器やK電器などといった近所の量販店からオーディオ試聴コーナーは消え、あっても大幅縮小されている。こういった量販店のオーディオコーナーの見栄えも悪くて、試聴機はケーブルをきっつきっつにしていて顔を棚に突っ込まないと聴けないような、テストさせる気もない状態だったりするし、テスト機のイヤーピースとか耳垢で白化してたりして人によってはよほど気色悪いということもある。熱心に売る気がないのが見え見えで、メーカーもかわいそうだ。AppleやBOSE製品だけはどこに行っても特等席で、他とは区別されて高級感溢れてきれいに清掃されて並べられている。販売姿勢からして差が付けられているのだ。これではリアル店舗に置いておく意味がない。
スコット・ギャロウェイの『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』で、いずれ消費者はamazonから定期的に送られてくる商品パッケージから不要なものだけ返却する生活を送るようになるかも知れないという未来像が描かれているが、その実現は思ったより早いかも知れない。そして、私たちのJVCやオーテクはそのときまで生き残れるだろうか。私はすごく心配している。JVCやオーテクからしたら、余計なお世話だろうけど。中国勢のスピード感に対抗するには、JVCやオーテクはコモディティ路線を捨てて、AppleやBOSE、SENNHEISERのように高級ブランド志向を採らなければならないだろうが、そう簡単に脱皮できるものでもないし、それによってオーディオファンが幸せになれるとも思えない。まあ、Apple信者とかBOSE党とか端から見てて幸せそうだけどね。
だいぶ話がそれた。本題に戻ってまとめる。タッチパネルの操作感はいまいちだが、入門用としてほとんど理想に近いところまで来ている。似たような音質傾向を探すと、ライバルとしてはSoundPEATS Truengine・VAKER MB2あたりがガチの対抗馬で、もう少しドンシャリなCANAVIS J29あたりとも客層が被りやすいといったところだろう。
率直に言って、立て続けに有力な機種が出てきて、私自身もこの価格帯に対する価値観を変える必要があるかも知れない。これは早急に比較記事を書き、それぞれの音を確認してみなければなるまい。私自身もレビュアーとして中国メーカーのスピード感に浮かされず、真摯に向き合う必要があることをこの製品でまた思い知らされた。
【5】このイヤホン向きの曲
この曲を万人受けするようなバランス感覚で気持ちよく聴かせてくれる。こうしてこのイヤホンでこの曲に浸っていると、もはや高い完全ワイヤレスなんてアクセサリーでしかないっていうことが私にはわかる。何より小憎らしいほど情緒安定してて、破綻したところがないのが悔しい。
この曲も重厚で楽しく聴ける。おすすめ。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。