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【特集】価格がこなれた人気機種 BOSE 渾身のQuiet Comfort 35 Ⅱ の音質を解体する。課題曲で味わうHD599との実力差

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Bose QuietComfort 35 wireless headphones II

Bose QuietComfort 35 wireless headphones II

 

 いよいよ明日に迫ってきた2018年サイバーマンデーセール。消費増税前にオーディオ製品を買い増す数少ないチャンスの1つです。しかし、それこそ星の数ほどあるオーディオ製品。なかなか目移りして商品が絞りきれないという人も多いでしょう。そんな方の一助になるかはわかりませんが、私がおすすめする有力選択肢の1つはBOSE QuietComfort35 Ⅱ(QC35Ⅱ)です。

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 アクティブノイズキャンセリングを搭載したワイヤレスヘッドホンとして人気を博したBOSEのQCシリーズの現行のフラッグシップモデルです。

 目下のところ、BOSEコミュニティではQC45が出るのかが話題になっています。BOSE党にとってはコンスタントに製品を充実させているSONY勢に対し、このクリスマスセールで充分な対抗馬が揃っていないところがもどかしいところらしく、しきりにQC45をせがんでいますが、いまのところBOSEに具体的な動きはありません。とりあえずそんなコアオーディオファンでもなく、BOSEだろうがSONYだろうがあまり愛着のない私には、世界にBOSEとSONYしかないかのように語るノイキャンワイヤレスバカにはついていけないところがあります。こういう人たちはノイキャンとBluetoothがなければ音楽が聴けないと思っており、スピード狂のカーマニアのごときで、ノイキャンの性能とBTのバージョン、対応コーデックだけを話題にしがちです。そんなノイキャンワイヤレスバカの面々は、BOSE党とSONY派がその大部分を分け合う形となっており、二大勢力となっておりますが、BOSEの主力が1年前に発売されたこのQC35Ⅱなのに対し、SONYにはWH-1000XM3という新戦力が登場し、これには忠誠挺身なBOSE党からでさえ乗り換えるやつらが出る始末。それもそのはずで、QC35Ⅱはさらにその1年前に発売されたQC35のマイナーバージョンアップ製品ですから、仕様の面では旧世代の謗りを免れず、もどかしい限りです。乗り越えがたいスペック上の差、これは彼らにとって致命的とも言って良い屈辱です(言っときますが、ノイキャンワイヤレスバカでない普通のオーディオファンはあんまりそんなこと気にしません)。たとえば、これはとあるBOSE党の言葉ですが、「BOSEがより良い音を持っていることは事実だが、SONYはより良いノイキャンを持っている。これは死活問題だ!」といった具合です。BOSEの音がいいなら問題ないじゃん、BOSE聴けよって思いますが、BOSE党にとってBOSEのノイキャンはいわば聖域のようなものであり、一番でなければダメなようです。BOSE党はともかく、BOSEの経営陣の側は冷静なので、QC35の売れ行きが良いのに、SONYのように慌てて新機種を出す必要も無いわけで、むしろ完全ワイヤレスモデルのSoundSport Freeあたりを値下げして、客層を広げてもっと売ってやろうというところなのでしょうが。

 そうとはいえ、BOSEもこれ以上のBOSE党の退潮を看過するわけもないでしょう。目下いろいろとキャンペーンを始めてますが、その一環なのかサイバーマンデーを前にして突然amazonでQC35Ⅱを下位機種QC25とほとんど変わらない値段で販売し始めました。だったら最初からその値段で売れとは思いますが、これを見逃すのもなんだかもったいないですね。ちなみに私が買ったときは10%割引クーポンまでのって30000円ちょうどくらいでした。

 

 前置きが長くなりましたが、そういうわけでQC35Ⅱは現在比較的リーズナブルな価格で提供されており、QC35以来の安定した評判を考慮すれば、有力な選択肢であることは間違いないです。なんてたってBOSEですからね。デザイン的にもドラゴンボール的世界観そのままのような製品デザインのSENNHEISERより、スポーティでスタイリッシュです。

 というわけでこの機会につねづねQC35に興味を持っていた私はこれを入手しました。この記事では個別レビューをする前にファーストインプレッションとしていくつかの曲を手持ちのヘッドホン、とりわけ私が音質的に高く評価するSENNHEISER D599と比較します。本来であればライバルというべきSONY WH-1000XM3と比較すべきでしょうが、率直に言って私はSONY WH-1000XM3の音もBOSE QC35Ⅱの音も特別好きな部類ではなく、しかもどっちもあまり変わり映えがしない音を奏でるので、2台もいりません。なので、ここでは私の好きなHD599を比較対象とします。それでも手持ちの中にはSENNHEISER MOMENTUM M2 OEBTがあり、こちらのほうが同じワイヤレスヘッドホンで価格帯もかぶるのでよりふさわしいということも言えるかも知れませんが、音質としてはM2 OEBTは、溌溂としていて、比較対象としては音質が離れすぎてしまっていて、比較として面白みがなくなる気がします。もちろんワイヤレスとワイヤードなHD599では比較にならんという声は当然でありますが、私としてはHD599が情感系の低音ヘッドホンではレファレンスなので、それに迫るワイヤレスモデルにこそ意味があります。ワイヤレスヘッドホンの低音だけで比べるならば、Skullcandy CRUSHER WIRELESSという頭のおかしな低域ヘッドホンを持ってきて、「なるほど振動感ではCLUSHERはすげーな、この熱湯風呂どんだけ熱いのよ」みたいなことを語ることもできますが、自分にとってあまり好きでもない音を2つ並べて比べるというのは熱意も湧かないどころか、もはや苦痛でしかないので、とてもやりたくはないですね。

 ともかく、サイバーマンデーはもう目前ですので、レビューはサイバーマンデーに間に合いそうにないため、とりあえず有力選択肢である本機種の音質面のポイントを撮って出ししておこうといった趣旨で書いたのがこの記事です。レビューするとなると、その恐るべきノイキャン力について一応いろいろ言っておかないといけなくなり、手っ取り早く音楽の話に行けませんからね。

 

【課題曲その1】ねごと「アシンメトリ」

 オシャレでちょっと近未来なテイストのポップでテクノな曲調が魅力のガールズバンド「ねごと」。ねごとのコアファンに聞かれるといろいろ文句を言われそうですが、私の印象としては、最近のねごとはperfumeをアコースティックな方向に近づけてマイルドにした感じの音楽が心地よく、perfumeほどギラつかずに肩の力を抜いて聴ける曲が多いのが魅力です。こういう括り方をすると、おそらく相当な不満を一部から寄せられるのは確実で、初期は曲調的には結構普通のガールズバンドで、どちらかといえばアタック感のあるビートサウンドに柔らかくふわふわしたボーカルを加えてくるところが愛らしいという声が圧倒的多数と思われます。

 コアなファンじゃないので、非常に大ざっぱで私的な形になりますが、個人的には「シンクロマニカ」がかなりよくて注目し、そのあとアルバム「ETERNALBEAT」というのが宣伝文句通り新境地を開いて、一気にオシャレでスタイリッシュな音になってびっくりしたといったところです。「アシンメトリ」は「ETERNALBEAT」で私が最も好きな曲です。ただこういうのは古参のファンからすると、いくぶん本来の魅力を失わせる路線変更でもあり、冒険でもあるわけです。最新アルバムの「SOAK」も路線的には「ETERNALBEAT」を引き継いでいて、現状のねごとは初期からだいぶ印象が変わっているかも知れません。と、したり顔でそれらしいことを言ってはいますが、コアファンでもなんでもないので、実際のところはあまりよく知りませんから、鵜呑みにしないで下さい。

 私自身の経験で言うと、たとえばアヴリル・ラヴィーンという歌手がいまして、一枚目のアルバム「Let Go」、二枚目のアルバム「Under My Skin」というのは非常に出来が良く、荒削りで剥き出しの心情を激しく歌ったり、憂鬱さでそのまま塞ぎ込むような真情をそのまま込めた曲が多く、悲喜交々こもった迫真の曲が目白押しで素晴らしかったのですが、その後デリック・ウィブリーとかいうギタリストにかぶれて変な方向に感化されちゃったのか、三枚目に出した「The Best Damn Thing」というアルバムではこれまでの路線を捨てて、オシャレでポップなサウンド表現に乗り換え、アヴリル自身は「これまでにない最高のアルバムできました!」と言ったり、評論家なんか「新境地!」とべた褒めするやつもいましたが、私にはちょっとツイていけませんでした。このアルバムを高く評価する声も多く、実際個々の曲を見ればむしろ洗練されていて大衆受けしやすいと言えるかも知れませんが、私はどうしても受け付けなかった。おそらく初期のアルバムに入れ込んでなければ、「The Best Damn Thing」をすんなり受け入れていたかも知れません。と、思わず余計な話に深入りしてしまいましたので、ここまでにして本筋に戻りましょう。

 個人的にこの「アシンメトリ」はとくに私の中では、ねごと史上最高の名曲の1つと言って良く、ねごとのコアファンには大変申し訳ありませんが、私にとって「ねごと」と言えばまずコレというくらい聞き惚れています。むしろ私の場合はあまりに「アシンメトリ」がしっくり来すぎて、ほかの傾向のねごとの曲にあまり入れ込めないので、これはこれで健全ではないかも知れません。

 率直に言って、この曲に関してはBOSE QC35Ⅱにとっては得意分野です。電子的な厚い暗い熱量のある低域表現はBOSEが昔から得意にしているところで、BOSEのどこがいいって聞くと、大抵「分厚くて、でも膨らみすぎないスタイリッシュな重低音」という声がほとんどでしょう。この曲でBOSE QC35Ⅱの聴かせるビート音はワイヤレスでありながら、かなりの重量感を出しつつ、締まりを感じさせます。

 私はBOSEの低音というと、比較的無機的というか冷たくもないけど、それほど暖かくもない、若干クールでうすら寒い程度の音という印象を受けます。この曲を聴かすQC35Ⅱでも、ビート音を奏でる低域の周囲に地熱感があまりなくて、ぽっかり浮き上がって響いているように聞こえて、どことなく孤立感があり、さびしいところがある気がします。こういう鳴らし方は理知的であるので、分解能という言葉を使えばたしかに音をよく表現していると言えます。そのうえで、BOSEのサウンドはクールに冷たくならず、隙間を強調して音を細くすることもなく、一定の充実感をしっかりと聴かせて、「こりゃうまい」といえる鳴らし方をします。個々の楽器音の色味についても同じ事が言え、たとえばシンバルとか非常に中立的でキラ味が少なく、むしろおとなしく、背景のグロウ表現も理知的に感情を抑えており、背景の黒さを丁寧に浮かび上がらせます。この曲をスタイリッシュで現代的な理知的部分と情感表現の強い部分に分けるとしたら、感情な部分を適度に抑制して、理知的な部分を潰さないまま、感情の厚みはそれはそれとして伝える高度なバランス感覚があります。スピード感への追随の面では、必ずしも瞬発力が良い音の鳴り方ではなく、ためてから鳴らしてくるところがありますが、それがたしかな重厚感に伝わっていて、充実感につながっています。こういうところがおバカ一辺倒のSkullcandy CRUSHER WIRELESSと違うところで、「ブンブンやりゃいいだろ」みたいな投げやり感がありません。

 で、SENNHEISER HD599との聞き比べですが、率直に言うと、勝負になりません。低域の地熱感、シンバルの噴き上がる立体感、背景に広がるグロー表現の光沢の豊かさ、臨場感と色彩感、空間の広がりにおいて、聴いただけで情感の篭もり方が全く違いがわかり、世界観の提示力に圧倒的差を感じます。これだからBOSEじゃ満足できないのよ。BOSE党は「なにこれ、ボワボワじゃん。イモ臭くてこんなの全然スタイリッシュじゃない」と言うでしょうが、言わせておけばよろしい。

 

【課題曲その2】「ここから、ここから」

 私にとって目下、これを味わうためにオーディオを選んでいると言っても良い曲の一つがこれ。

 率直に言ってQC35Ⅱの音は、この曲を聴くには大変魅力的で素晴らしいです。各楽器に配慮するバランス感覚が見事というほかなく、はっきりキラキラ、明瞭に聞こえるピアノと柔らかで生命的な反動感を持ちながらボワボワしない締まりの良いドラム、ギターの情感の篭もった、熱く幅広な広がり方、きつすぎずに情感をしなやかに突き上げるエッジ感を巧みに演出して、そりゃあ聞き惚れさせてくれますし、ボーカルも浮つかない明るすぎないバランスで楽器に寄り添っており、ふっくらした甘味のある味で非常に暖かい。BOSEさん、あなたはすごいと思わず嘆息できる瞬間です。

 しかしそんなBOSEさんにHD599は語りかけます。「もうちょっとドラムの地熱感を出した方がこの曲の生命感はより味わえるんじゃなかろうか。それにBOSEさんの楽器音の精彩を大事にする姿勢はもっともで、ボーカルをそれに寄り添わせるいう考え方は大いに結構なんだが、それならより楽器音を空間に溶け込ませて、ボーカルを包み込んで一緒に盛り上げた方がよりうららかで、より美しくないだろうか。どうですか?」BOSEさんにはおそらくあまりピンと来ないでしょうが、私にはHD599さんの言いたいことは大変よくわかります。以上。

 

【課題曲その3】「清廉なるHeretics」

  正直「Fate」シリーズなんてアニメ観たくらいでよく知らんし、この曲の使われているゲームも人気らしいけど、さっぱりやる気もしません。私には「きららファンタジア」で充分。しかし、この曲は私にとって神曲です。このPVはサントラのものですが、サントラなんて買わなくても単曲でシングルカットされているので、気に入った人はそれを探しましょう。そこまでしなくてもyoutubeいけばたくさん上がってるんですけど、ここらへん権利関係ちゃんとしてんのか私にはわからないので埋め込みません。「たくさんyoutubeで上がっているよ」なんて私が言ったことはくれぐれも内緒にして下さい。

 さて、それで実際に音質の話です。QC35Ⅱは、この曲をスタイリッシュにキレを出しながら、火力を加えて押し込んできます。黒みのある背景をしっかり感じさせて、導入の静謐感を出し、ピアノとボーカルは無機的な一直線な音にならずに有機的な幅と揺れを感じさせてくれます。幅広でエネルギーの高いギターとドラムのぶっとい重量音が奏でる地熱からくる熱気も充分で、前半の静謐さに対して盛り上がるサビ部分の沸騰する情感の対比が丁寧に表現されています。率直に言ってレベルが高く、充分に満足できます。

 さて、HD599です。QC35Ⅱの導入が描く、静謐な表現に心打たれたような私ですが、あれは妄言でした。忘れて下さい。HD599の温かなピアノが充満し、その満たされた雰囲気の中で生命感に溢れたふんわりした嫋やかさで一気に引き込んでくるボーカルの表現に比べて、CQ35Ⅱの主張する静謐感などというものが小手先芸に過ぎず、いかに陳腐であったか、早速思い知らされます。冒頭から豊かな充実感の中に捉えて、その心地よい豊穣さのなかで、ドラムはしっかりした圧の篭もった地熱感を加えて生命的な音場を盛り上げ、ギターなんか、ほとんど何言ってるのかわからないくらい熱量に飲まれて一体化しており、クライマックスでようやく浮き上がってエネルギーを爆発させます。充実感と熱量に満ちて、ほとんど我を忘れたかのような圧倒的な力強さを持ち、魂が沸きたつようなその空間に、飲み込んでくる圧倒的吸引力。ボーカルの歌う、愛に向かう狂おしさ、それを、忠実かどうかはともかく、印象深く感じさせるのがどちらであるかはもはや語るまでもありません。

 

【課題曲その4】Sia「Big Girls Cry」

  BOSEで楽しむ曲っていうと、私のイメージでは、たとえばこんな曲ですね。黒みのある暗黒に飲み込まれていくような静謐感の中で重厚なサウンドがズドンズドン響いてくる。聴いて頂ければその圧倒的な世界観はすぐわかって頂けると思うので、ここで曲の内容について、あまり言葉を紡ぐ必要はないでしょう。この曲こそ、私の思い描くBOSEのサウンドイメージそのままです。

 HD599では印象がやはり違います。まずキックの音がBOSEでは締まった、やや無機質な鳴り方だったのに対し、HD599のキックは明らかに脈打って鼓動のようです。それ以上にボーカルの空間への広がりに圧倒的差があり、QC35Ⅱがこの曲を語り合う距離から表現していたとすれば、HD599は体内に入り込んで、その腹の内から音楽を聴いている一体感があります。

 正直、この曲をHD599ほど肉体的に表現するのが美しいのかは私もちょっと迷うところがあって、むしろQC35Ⅱのようにもうちょっと硬さを出して、背景の暗黒面とのコントラストも必要な気がしますし、そのほうが引き立つ気がします。

 

【総評】

 これまでずっと読んでくださった方々は私が相当BOSEを嫌いで、QC35Ⅱをひどくけなしていると思っているかも知れません。実際手放しで褒めちぎるほど好きじゃないことは確かですが、冷静になってください。私はHD599への入れ込みが尋常ではないので、ここで語られていることはかなりBOSEにとって分が悪いです。それにHD599はワイヤレスではないし、ノイキャンなんてついていません。むしろHD599で世の中の8割がたの音楽はカヴァーできて、他はおまけでよくね?程度の感覚の私から見ても、QC35Ⅱに関しては、一目置かざるを得ない魅力を持っています。実際使い勝手は凄く良く、デザインもかっこよくて、街で出歩くときに、ただ自慢するためだけにでも持っていきたいアイテムです。HD599なんて街中で着けて歩いてたら、「なんであの人スカウター着けて歩いてんの?プププ」くらい白眼視されそうなデザインです。熱狂的なBOSE党をはじめ、多くの人々がこのヘッドホンを支持するのもじつに合理的で、結局のところ私もこの魅力から逃れられそうにありません。

 今なぜか唐突に値下がりしているQC35Ⅱ。今年のサイバーマンデーの買い物の有力候補であることは疑いないです。


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