Bose QuietControl 30 wireless headphones ワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン
おすすめ度*1 |
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ASIN |
イヤーウィングつきのイヤーピースで独特の付け心地。装着感は悪くないが、付け心地は独特なので注意は必要。
アクティブノイズキャンセリング搭載なので遮音性は高い。音漏れは少し。
aptXには対応しない。通信性能的には遅延なく、動画鑑賞にも十分堪える。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、キャリイングケース、説明書。
音質の評価は文句なく高く、使い勝手も良いのだが、耐久性だけは問題を指摘されている。日米を問わず、amazonで多くのカスタマーが半年程度の破損を指摘しており、ラバーが剥げてくるなどの症状の指摘もあり、アウトドア使用がメインになる製品にも関わらず、扱いには注意が必要かも知れない。
【2】音質
低域にしっかりした重厚感のあるBOSEサウンド。黒みと躍動感、深掘り感が結構あって、コントラスト感も重量感にも貢献する比較的良質な低域に思える。中高域の前にかぶさる感じではなく、下方向にしっかり床面を作るので、音場を阻害する音ではない。音も全体的に太くてBOSE的であり、低域の充分な火力を土台に厚い中域、やや天井の近い高域が素直に立ち上がってくる。ロック曲とは最高に相性が良く、その火力と密度感のあるサウンドでなかなかのライブ感を味わえる。
[高音]:太め。やや天井感を感じる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:全体的に太く、低域からそのまま密度を持ってくる、やや下に太い感じの音に聞こえる。中低域の厚い密度感で量感に優れる。音の傾向はキラキラ感が強いわけでもなく、透明感にはやや乏しく、場合によって演出感に物足りなさを感じるかも知れないが、ライドシンバルの粒感の風味などはなかなかよかったりして、侮れないところもある。
[低音]:100hzから太めの芯を感じる輪郭も太い振動。減衰は素直で、30hz付近でも充分厚みがあり、20hzもかすかに振動を感じる。ベースは肉厚(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:中低域が厚く、高域は少し天井感があるので、やや密度高め。ただ下方向には少し深く、音場に狭い印象はない。深掘りが感じられるような曲だと、床が抜けて下に広がる広さを感じることもある(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:爆発力も地熱感もあってほどよく膨張もするが、肉厚な音で聞こえる。音の傾向としてはバッツンバッツンとタイト。ハイハットはややゆるやかな輪郭感で聞こえることが多く、ドラム優位(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:全体的に肉厚。色味は高域では少し抑えめに感じるかも知れない。
【3】官能性
山崎あおい「遠距離トレイン」を聴いてみる。中低域に安定感があり、全体的に肉厚でしっかりした安定感を感じる。色彩感はやや抑えめで、透明感や明るさが強くなって浮つくところはない。シンバルが浮つかず、シックに安定している。ボーカルはやや暗いかもしれない。
RIRIKO「その未来へ」も中低域が安定していて、音圧がしっかり出るので、聴き応えがある。ボーカルは肉厚傾向で、パワフルな楽器音が周囲を囲んで一体的に太く聞こえてくる。音量によってサ行だけやや尖りやすい。高域で明るい感じはなく、素直に太いまま持ち上がっていく感じで、全体的に濃密。
saya「The Girls Are Alright!」も重厚。中低域の迫力が圧倒的で、音圧が素晴らしいだけでなく、中高域音にスムースに連携する。またピアノや弦楽の精彩もよく、前者は太めの濃い色彩感で、後者は根元から力強く立ち上がるので、音楽空間全体の躍動感はかなり感動的。ボーカルは太めで少し暗く、それだけ見れば色彩感にやや物足りなさを感じるかも知れないが、楽器音の圧倒的濃厚感のある精彩と併せて全体像から眺めてみると、むしろこのバランスの方が楽器音が映えてよいかもしれないと思わされるところもある。
エレクトロダンス系の曲とも相性は悪くなく、Reol「劣等上等」はかなり足場方向に深掘り感が感じられる圧倒的な定位感が感じられる。ブームの力強さもさすがBOSEと思わせる量感と圧があり、この表現力はイヤホンレベルでは随一に近い。
the Peggies「君のせい」も最高にパワフル。イヤホンレベルでここまで聴かせるかと言うくらい、深掘り感と爆発力に富んだベースとドラムの表現がしっかり音場を支える。生々しいライブ感を感じるには、音の厚みに対して地熱感だけは少し足りていないような、やや黒い音ではあるが、圧と量感は圧倒的なので不足感はない。
低域火力が充分に納得できるので、OxT「UNION」なんか聴き応えがあるだろうと期待したが、この曲に関しては少し中高域の色彩感が足りない気がする。やや大人びたJAZZ味が出ていて、ある意味かっこよくはあるが、ちょっと好みじゃない。この曲はもうちょっと上に明るく、元気な爆発力を味わいたい気がする。ギターの色味とピアノの光沢感あたりが少しドライすぎるのかな。
そうすると、重厚感を出すにしても、もう少し落ち着いた雰囲気があった曲の方が良くて、たとえば毛蟹 feat. DracoVirgo「清廉なるHeretics」なんかはちょうどいい。濃厚でしかもドライな色味のある黒くギラつく音の雰囲気が見事にマッチする。
別に明るいボーカルが明るく出ないわけでもないようで、もともとかなりつややかなアニメボーカルサウンドとは相性が案外良かったりする。たとえば水瀬いのり「コイセヨオトメ」なんて火力のある低域と色味抑えめな重厚サウンドでJAZZロック風の少し大人っぽい楽器音に対して、ボーカルがのびやかに明るくつややかにきらめいて、同じようにつややかな光沢感を出すピアノとともによく映える。低域のパンチはあるのに、そのパンチ力で周りがぐしゃぐしゃにならない曲を構築する骨格の安定感があって、だからこそ、この曲ではコントラスト感が生きる。
ハルカトミユキ「17才」は楽器音がかなり濃厚でボーカルを包み込んでいる。中低域が厚く、楽器音にしっとり感もあって、低域には重量感があって、概ね満足できるんだけど、少しだけ重すぎるバランスかも知れない。好みによるけど。
インストゥルメンタルJAZZにも合うようだ。T-Squareのアルバム「Brasil」所収の「A Caminho De Casa」を聴いて、「お、ちょっといいな」と少し心打たれた。そこで「Brasil」の曲を立て続けに流していったが、浸れる。このアルバムの曲はどれも骨格のしっかりしたポップライクなフュージョン・ジャズなんだけど、そのほどほどスタイリッシュな感じが、このビルド感のある音楽を奏でるイヤホンによくマッチするのか、思わず「おっふ」言いながら聞き込んでしまった。
このアルバム私はすごく好きで、おすすめです。←宣伝
【4】総評
プロによるおすすめのワイヤレスイヤホンランキングでは上位常連のBOSE渾身のモデル。音質に関しては批評家を唸らせている。一方でamazonのカスタマーレビューなどでは批評家視点に比べて評価が芳しいとは言えず、耐久性に問題があるとの指摘が多く、使用感の面で大きく評価を下げている。
けっして安いモデルではないので、この機種に関しては優れたノイズキャンセリング機能と圧倒的高評価の音質の魅力を感じつつ、耐久性能での問題点を考慮して慎重に選ぶ必要がある。音質的には有線モデルを含めても3万円クラスの実力は充分で、むしろ安いくらいに思えるほどだが、それも充分に長く使えての話。もし数ヶ月で壊れてしまったという少なくない報告に目を向けるならば、3万円の考え方も変わるところがあるかも知れない。
私はまだ一ヶ月も使っていないので、耐久性について語る資格はなく、問題なく使えている人もいるはずなので、すぐ壊れるとは断言できないが、個人的には素直におすすめしづらい。音質だけはワイヤレスイヤホンモデル全体を見回しても五指に入るくらい最高なのだが。
【5】このイヤホン向きの曲
大好きなエド・シーランの曲だとこれくらいのバランス感覚の曲がこのイヤホンで聴き応えあるのかな。かなり定位感よく楽器が広く展開されるのに、肉太な音で迫力も充分。密度の変化も楽しめて中毒的。
Basiaの名曲「Third Time Lucky」が濃厚なバランスで聴ける。低域の膨張感、中域のほどよい色づき、定位ある密度感で空間を感じさせつつ、スカスカしないバランスで聴かせる充実感。実に見事。
こちらもこのイヤホンはズシリと心に響かせてくる。おすすめ。
Bose QuietControl 30 wireless headphones ワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。