- 【1】装着感/遮音性/通信品質「通信品質は価格帯では少し劣る」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「連続再生時間などスペックは優秀」
- 【3】音質「解像度は5000円近くの機種としては平凡。中域少し盛りすぎてるかな」
- 【4】官能性「やっぱりもうちょっと高域に刺激やディテールが欲しい」
- 【5】総評「音質的にコスパの魅力を感じづらい。スペックはコスパ良い」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「通信品質は価格帯では少し劣る」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
おそらくHihiccup Hi-TWSと同じ系統の製品で、ハウジングの大きさはほぼ同じ。こちらは改良が加えられているのか、ステムが細くなり、より小さな耳穴の人にも収まりがよくなるように工夫されている。またイヤーウィングも取り外し可能なオプションになった。遮音性はそこそこ。音漏れは少し。
SBC/AAC対応。通信品質はもしかするとHihicup Hi-TWSより若干低いかも知れない。個体差の可能性もあるが、左右の途切れがやや目立つ。また起動から左右のペアリングまでの時間がかかったりすることもあり、通信性能はあまり賢い印象を受けない。
【2】外観・インターフェース・付属品「連続再生時間などスペックは優秀」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。
充電ケースはほぼぼHi-TWSと同型で、Hi-TWSではストラップがついていた部分がストラップホールになっている、イヤホンドックの形状がイヤホンに合わせて調整されているなどの変更点はあるが、ほぼ共通。ただし、イヤホンのハウジング内側の形状が変更されているため、相互にケースの流用はできない。
連続再生時間がイヤホン単体で最大3.5-4時間。ケース込みで最大150時間。防水性能はIPX7。ここらへんのスペックは優秀。充電ケースはモバイルバッテリーとしても利用可能。バッテリーケースにLED液晶があり、数値で残量表示してくれるのは便利。
自動ペアリング、接続・切断については精度が低く、使いづらい。ケースに入れてても勝手に接続されたりする。ただし左右の接続が遅めなことも含めて、ここらへんの挙動は私の個体の初期不良の可能性はある。
【3】音質「解像度は5000円近くの機種としては平凡。中域少し盛りすぎてるかな」
ドライバーはおそらくHi-TWSと共通。音質はHi-TWSと同じく、大きく括ればたぶんドンシャリ系と言える音質ではあるが、高域方向に調整が加えられたようで、金属的な音やシンバルのシャリ味を抑えてボーカル周りの聞こえが良くなるようになった。そのため、ボーカルは以前より浮き上がって聞こえるが、明るさは低下し、色味は暗く感じられる。全体的な雰囲気は中域充実にシフトしている感じだ。
しかし、価格を考えると現状ではこの音質はやや魅力に乏しい。2018年12月にHi-TWSが出たときはまだ5000円前後では良好なレベルであったが、2019年に入って、SoundPEATS TrueFree+やDudios Zeus Ace、TaoTronics TT-BH053など5000円以下の価格帯に一段解像度の上がった機種が出回るようになり、低価格帯の質が底上げされたので、この音は今ではややもっさり感が強い「それなりの音質」くらいになってしまっている。音質的にはこの機種を選ぶ理由はほとんどない。
たしかに音には好みというものがあるし、解像度が高ければいいってわけでもないのだけれども、それにしたってHi-TWSのほうがまだシャリ感のあるスパイシーなパーカッションを聴かせてくれるので、個人的には手応えを感じる。実際このイヤホンの高域には不足感が感じられ、以前紹介した高域方向をひたすらブーストするかのような自作EQ「ラブドリーム」を適用すると、女声ボーカルや高域の色味がぐっと締まって明らかに引き立つ。このEQをかけると、イヤホンによってかなりドライになったり、音が酷薄になりやすい傾向があるが、このイヤホンは中域が充実しており、甘味は充分にあるので、シャープネスは増しても酷薄な印象は受けない。むしろ標準では音の硬さや張りが不足気味に感じられるところがあるので、人によって篭もっていると感じる人もいるだろう。厳密には篭もる音とは概念が異なるはずだが、音にトントンカンカンという硬さがしっかりでないと篭もった音だと主張する人は意外に多い。音がぼーっとすることは事実だから、言いたいことはわからなくもないけど。
[高音]:真の意味での高域はやや不足感があることは事実だろう。少なくとも金属光沢に派手さが足りない印象がある。全体的に音に硬さと鋭さが少し足りない感じはあるので、中高域の上の方もやや緩いはず(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:このイヤホンの主役。女声ボーカルは少し暗いがふっくらとして甘味もあり、Hi-TWSよりは前に出てきて聞こえる。ピアノにつややかな風味も感じられるので、このあたりは充実している。
[低音]:膨らみのあるボーッと太い振動で100hz~40hzまで素直な減衰。30hz以下ほぼ無音。Hi-TWSと比べても緩い振動の印象なので、低域はかなり柔らかい感じになるかな。コントラストはあまりない音に聞こえるはず(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:Hi-TWSに比べて中域方向に充実したから、より豊満で豊かになったと思うけど、一方で低域とのつながりがゆるやかになって、メリハリは少し甘くなったかな。音場的にも奥行きはそれほど感じないし、左右ちょっと広いかなって感じ(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:何度かすでに指摘してるとは思うけど、パーカッション周りは緩い。とくにハイハットがかなり元気ないように聞こえるかも。ドラムはなんかカパカパした感じの音で、弾けはよくないんだけど、鼓面の硬さみたいなのはよく出ている印象。ボディはあまり目立たない。大まかに言えばバズンバズン系なんだけど、より誇張するとバコンバコンって感じで結構珍しい感じの音かな(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは自然でちょっと明るいくらい。女声ボーカルは少し暗いかも知れない。息感などの輪郭はおさえめでどちらかというとふっくら。ハスキーさは減退する。分離は良い感じだけど、前にも出すぎない感じで楽器との距離感は即かず離れずで、比較的よいんじゃないかな。
【4】官能性「やっぱりもうちょっと高域に刺激やディテールが欲しい」
岡村靖幸「Super Girl」
本当はPSY・Sの「Angel Night~天使がいる場所~」で「ボーカルはほどよい分離とディテールで良いにしても、ドラムの弾け方とエレキギターの伸びが足りないよね」みたいな話をしたかったんだけど、許諾の出ている動画が見つからなかったんで、「CITY HUNTER」つながりでこの曲で代用。
さて、そういうわけで「Super Girl」。中高域の煌めきは結構あるから、メインになりやすいシンセの輝きに不足感はないし、表面滑らかで味わいは充分。やっぱり高域の尖りが足りないのか、ドラム鼓面の衝撃力が足りないのと、ハイハットがほとんどやる気ない感じに聞こえるのが欠点だけど、男声ボーカルは伸びも良く、やや明るめにしっかり聞こえる。ボーカルとシンセ中心になるから、ややメロディーライン重視で、パーカッションの味付けは抑えめではあるけど、価格を考えると目立って不満はないかな。とくに素晴らしい感じもしないけど。
「Angel Night~天使がいる場所~」については以下のカヴァーバージョンで雰囲気を味わって欲しい。
City Hunter Sound Collection X-Theme Songs-
スガシカオ「夜空ノムコウ」
この曲のボーカルは本来ちょっとハスキーな感じが出るはずなんだけど、このイヤホンで聴くとちょっとなめらかでハスキーさは強調されない。そういう意味では中高域あたりのシャープネスはあまり足りていないのかもしれない。難しいけど。あと上の方の高域が目立たない割に中域が膨らみすぎる感じはあるから、空間に清潔感は少し足りないかな。 ちょっと暗めの曲だから、中域充実なこのイヤホンと相性良いかと思ったんだけど、イコライザーいじりながら聞き込んだ感じ、この曲も意外と高域にディテールが必要っぽくて、このイヤホンだとややもっさりしてしまう。
BEST HIT!! SUGA SHIKAO 2003-2011
德永英明「夢を信じて」
やっぱり高域に不足感があるか中域が盛りすぎてるみたいで、少し豊満で鈍重な感じがあるんだけど、少し暖かみがある感じと肯定的に割り切ることはできるから、まあこの曲を聴くにはそれなりに悪くない。それでも個人的な好みとしてはもう少し高域の4khzとか16khzあたりを持ち上げて清潔感のあるほうがボーカルがより映えるし、ラストの「Wow……」の広がりがより美しく感じられる気がする。金管の華やかさも少し足りない印象だし。
大貫妙子&坂本龍一「美貌の青空」
私の大好きな大貫妙子と私の大好きな坂本龍一がコラボしている「UTAU」とかいう神アルバムがあるんだけど、その中に私の大好きな「美貌の青空」って曲にボーカルを付けたのがある。これくらい中域に豊かさを強調する曲なら落ち着いて聴き込めるから、悪くないかな。この曲に関してはボーカルもあまり明るくない方がいいかもしれないし。
浜田省吾「もうひとつの土曜日」
結構放浪した末に、たとえば浜田省吾のこの曲なんてこのイヤホンだと充実感があって良い感じだなぁって思えた。明るさをそれほど強調しないから、少し鬱っぽいしっとりした感じが出る。この名曲を聴くなら、悪くないかな。
"J.BOY" 30th Anniversary Box(完全生産限定盤)(2CD+2アナログ盤+2DVD+1アナログ7inchドーナツ盤+メモリアルアイテム)
【5】総評「音質的にコスパの魅力を感じづらい。スペックはコスパ良い」
音質はHi-TWSよりなめらかで聞きやすくなったけど、個人的にはスパイシーさや手応えが減って平凡になっちゃった印象。むしろ中域盛りすぎて、ただでさえもっさりしやすかったのが、ごまかしが利かなくなって素直にもっさり感が目立つ感じになった。楽曲は全体的にわずかに鈍重さが出てしまう印象がある。Hi-TWSのほうが音質は好みだし、現代的な楽曲にもより親和的なので、こちらはおすすめしづらい。バッテリー容量がLEDで数値で確認できるようになったのはいいんだけれども。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。