- 【1】装着感/遮音性/通信品質「ビルドクオリティは普通」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能」
- 【3】音質「ギターサウンドを中心に中高域に手がかりが多く、解像度感が高いが、ボーカルに突き抜け感が出ない」
- 【4】官能性「曲によって音楽性に限界を感じるところはある。高域の落ち着いたスタティックな曲に向く」
- 【5】総評「意外と好き嫌いのあるイヤホンで万能系ではないが、解像度は高い」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「ビルドクオリティは普通」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
装着感は良好だが、形状が形状なのでイヤーピースだけで固定するような形になる。開放的なので遮音性はやや弱め。音漏れ少し。
各所で指摘されているけど、ビルドクオリティは微妙なところがあって、左右差がある。とくに音質には影響しなさそうだから気にしてないけど。
【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能」
付属品はイヤーピースの替え。ケーブルのタッチノイズは少し。mmcxリケーブル可能。
【3】音質「ギターサウンドを中心に中高域に手がかりが多く、解像度感が高いが、ボーカルに突き抜け感が出ない」
一聴してみるとギターサウンドにコシがあって緻密な感じがあり、結構好感を持った。やや中域充実した感じで、低域は緩いが、たとえば小田和正「たしかなこと」を聴くくらいにちょうどよい温度感を感じて、「ほほー。Kinboofiなかなかやん」と思ったものの、その後中高域の感じを見たくてもうちょっとキラキラしている今井麻美「朝焼けのスターマイン」を聴いてみると、ボーカルに伸びしろがないことに気づいた。サビでは本来凄く明るくのびやかな感じの声が楽しめる曲だが、このイヤホンでは伸びてこず、すぐに天井感が出る。
それで「たしかなこと」のほうをもう一度聞き返してみると、この曲ではボーカルにリバーブをかけているからそれほど気づかなかったが、リバーブの広がりがそれほど広くない。またサビ前に金管が味付けする大事なポイントがあるが、そこで金管の出が悪く、存在感が感じられない。元々目立たせない感じなので、はっきりとはしないのだが、それでも一定程度しっかり聞こえないと音場に奥行き感が出ない。低域をどのくらい出すかは好みがあるとしても、大抵の曲はボーカルの聞こえが大事だから、のびやかさが出ないと音楽性を感じづらい。このイヤホンの明確な欠点はそのあたりになるだろう。
イコライザーによる改善
手前味噌だが、ボーカルの天井感に関しては自作EQ「スイープノイズアフェア」で改善し、空間に清潔感が出て、TFZ No.3風のワイドレンジ感が出るようになる。中高域の手がかりが尖る感じがあって微調整は必要かも知れないが、個人的には「お、このイヤホン、案外いいやんけ!」と思えた瞬間。このイヤホンが少し苦手なアニソンやポップスなんかを聴く時にどうぞ。
[高音]:高域はあまり拡張性がないようで、音の立ち上がりは悪く、ボーカルに天井感が露骨に出やすく、息の抜けも早く、すーっと伸びない。金管も根立ちが悪く、すっと伸びてくれない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:ギターは刻みも明瞭で明るすぎず、濃くきれい。中高域あたりの鮮明で緻密な感じは解像度感につながっており、おそらく実際以上に解像度高めに感じるはず。ボーカルは中域で充分に艶やか。
[低音]:100hz~40hzまでやや輪郭のある太く鈍い振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域はニュートラルで輪郭が結構しっかりしており、床面にビシバシ感も一定程度出る(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:やはり高域方向に天井感があって印象的には「かまぼこ」な感じを受けやすい。音場は価格帯では広めで、定位感は明瞭なほうである(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:タムの鼓面には粘りもあり、革張り感がある。ドラムのボディに膨張感はなく、ビシバシ系のバチンバチンくらいの音。ハイハットはやや手応え柔らかめなものの、存在感がある(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルはややつるっとするものの、基本的には自然。場合によって天井感がある。女声ボーカルは高めの声質ではとくに天井感が出やすい。
【4】官能性「曲によって音楽性に限界を感じるところはある。高域の落ち着いたスタティックな曲に向く」
DAOKO×米津玄師「打上花火」
このイヤホンには天井感があるけど、この曲はむしろ中域に音が滞留して濃厚になるし、のびやかなボーカルを楽しむ感じの曲じゃないんで、かなり満足して聴けると思う。天井感があるからどうしても上方向で躍動感がなくて、静的な感じだけど、この曲はダイナミックさを味わう曲ではないので、むしろスタティックな表現の方が似合いそうではある。
Matt Bianco「Ronnie's Samba」
高域の伸びない感じはむしろ中域で濃厚な味わいを楽しめるJAZZに合う。たとえばこの曲なんか、クリアで緻密だけど高域で清潔感を出さずに中域に音が滞留するから、適度な濃厚感で味わえる。JAZZにはかなりいいね。明るくない渋い金管が非常にかっこよく、ピアノもキンキンするあたりが妙に撥ねて清潔に響いたりしないから、中域にゆったり音が帰ってくる充実感がある。
MADKID「RISE」
この曲もかなり聴き応えがある。ボーカルが伸びる感じじゃなくて、ほどよい長さでリズムよく言葉を紡いでいくタイプの曲だし、明るさが必要な感じじゃないから、このイヤホンの守備範囲にピッタリ収まる感じ。ボーカルも自然な太さがあって、音場も清潔感を出し過ぎない適度な空気感がある。聴き応えあり。
MINMI「四季ノ唄」
この曲を濃厚に楽しむならおすすめ。低域のドンもほどよい重みくらいでしっかり聞こえるし、清潔にならずにちょっと暗めで温かみをしっかり聴かせるボーカル表現もいい。金管が少し暗すぎるように感じるのが少し気になるけど、価格を考えると、ほとんど不満はないかな。
【5】総評「意外と好き嫌いのあるイヤホンで万能系ではないが、解像度は高い」
明るい系女声ボーカルのアニソンやポップスではいまいち突き抜けてくれない感じがあるので、露骨に不向きだが、JAZZや同じように中域に濃厚感があるレゲエなんかいい感じ。同価格帯でライバルとなる機種ではとくにPanasonic RP-HDE1が気になるところ。ぶっちゃけ女声ボーカルの抜けに関してはRP-HDE1の方が勝っており、音に厚みがあってツヤツヤ感もあるので、ポップス系まで広く対応できる比較的万能系のRP-HDE1には敵わないところがあるが、JAZZなど得意分野では上回るコストパフォーマンスを期待できる。ただメリハリ感はRP-HDE1やaudio-technica ATH-CKS550Xといったライバルたちの方がスパイシーさを備えていたり、ドラムが躍動的だったりする。このイヤホンはやや静的で音楽性は控えめな感じがある。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。