- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は軽め。通信品質良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「インターフェースはタッチ式」
- 【3】音質「音場は暗く、中域から低域に向かって沈潜していくような音。その低域も強調は強くなく、どこまでも深く重くというわけでもない中途半端感がある。人によっては篭もっていると思うかも知れない。そういうわけでぶっちゃけあまり他人におすすめできないが、個人的には悪くない」
- 【4】官能性「率直に言って抑揚には乏しい」
- 【5】総評「クラシックやカントリー音楽、ムードポップスを聴く人に」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は軽め。通信品質良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
4h/196h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | AAC/SBC |
防水性能 |
IPX6 |
音質傾向 |
かまぼこフラット、落ち着きがある、抑制的、高域が暗い、味気ない、抑揚に乏しい、ボーカルフォーカスがよい |
耳への収まりは良く、付け心地は安定している。遮音性もそこそこ悪くない印象を受ける。
対応コーデックはAAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proでテストしたところ、通信安定性はド安定に近く、関東某ターミナル駅の改札付近くらいでしか途切れなかった。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 ProとONKYO GRANBEATで行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「インターフェースはタッチ式」
付属品はイヤーピースの替え、充電ケーブル(Micro-B)、専用充電ケース、説明書。インターフェースはタッチ式。反応速度は普通。
【3】音質「音場は暗く、中域から低域に向かって沈潜していくような音。その低域も強調は強くなく、どこまでも深く重くというわけでもない中途半端感がある。人によっては篭もっていると思うかも知れない。そういうわけでぶっちゃけあまり他人におすすめできないが、個人的には悪くない」
音質的には、はっきり言って、この価格帯の中でとくに感心するところがない。高域は暗くてディテールはかなり控えめ、低域もあまり深くまで沈んだり、重くなったりしないので、中域から低域のあたりも平坦で、なんとなく抑揚や奥行き感に物足りなさを感じるだろう。曲によって中域に音が詰まった感じがある。
たとえば同じく暗い傾向の音質を持っているにしても、Hiyoo A66(A8-C5)のほうが低域の沈み込みがよく、音場に重みと奥行き感が出て、立体感があり、質感的にも中域にしっとり感がより感じられて、明らかに精彩がある。T22の音はもう少し平坦で、深ささえも抑制的。たぶん、価格差が大きいとか、とくに支障がなければA66のほうを個人的にはおすすめすると思う。
じゃあこの音が悪いかというとそうでもなくて、むしろその演出感がほとんどない、一見するとつまらなそうな音が、実際つまらないけれども、個人的には沈潜できて良い。聞くのにほとんど集中力を必要とせず、感情を昂ぶらせてくるような抑揚もないので、浸るのにちょうど良い。面白味がない割に、ボーカルフォーカスはしっかりしているので、ポップスをボーッと聴いてもそれなりに曲を楽しめるし、情緒は驚くほど安定しているので、どんな曲でもクセを抑えて落ち着いて聞かせてくれる。とにかく明らかに楽しい音ではないが、考え事をするお供にはちょうどよいくらいの、やる気の無さだったりする。つまんない音だけど、解像度は高くないがそれなりに悪くない感じもあり、聞いていて不快な感じがないのも良い。
後述するが、個人的にはアコースティックな曲向きに思う。
私が聴いた、この曲のサウンドイメージは以下の曲のような感じだ。
美点
- 情緒の安定した落ち着きのある音
- 沈潜する抑揚を抑えた物静かな音場
- 派手さのない聞き疲れしにくい音
- 男女ともにボーカルフォーカスが良い
欠点
- 高域が暗い
- 派手さがない
- 演出感に乏しい
- 曲によって篭もっていると感じられやすい
- 開放感に欠ける
- 音場の縦軸が狭い
[高音]:高域に派手さはなく、奥まりやすくディテールもほとんど強調されることがなく、暗い。音場は上方向ではかなり閉じている印象を受け、ボーカルに天井感は出やすい(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はかまぼこに近くなっていて、女声ボーカルやピアノ、ギターは暗く感じられやすい。上方向に伸びる感じが薄く、開放感がないうえ、曲によっては中低域が少し支配力を及ぼしやすく、大抵の曲で重たげになりやすい。もっさり感が気になるタイプの人には篭もっているように感じられやすいところがある。ただしボーカルフォーカスは良い。
[低音]:100hz~40hzまで少し太めのブォーッという感じの濃い振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域はやや中低域が中域に影響しやすく、ベースが少し強かったりドラムが少し強かったりすると、若干中域がもやっとしやすいところがある。低域は沈み込みはそれほど強くなく、どちらかというと中域と親和的である(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:全体的に奥行き感は抑えめ。立体感も抑えめで凹凸は平坦な印象を受け、縦軸の伸びやかさにも乏しい。重心は低めでどちらかというと重力に引かれて、音が下がっていく感じに聞こえる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:中低域のパンチがよく出るので、リズムコントロールは良い。タムやスネアの上辺は暗く、どちらかといえば中域で膨らんで下に重くなっていくふくよかなドラム構造を感じる。バツンバツンかバズンバズン。ハイハットは基本的に埋もれやすく、大抵はドラム優位になりやすい(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルも女声ボーカルも濃く、フォーカスが利いているが、女声ボーカルは暗めでのびが不足しやすい。
【4】官能性「率直に言って抑揚には乏しい」
沼倉愛美「Climber's High!」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】ぶっちゃけ面白いかっていうとどうなんだろうって思うけど、この曲は意外とよくて、ドラムがパンチかなりノリノリで聞かせてくれる。そしてボーカルは暗いが、ボーカルフォーカスは良くて、一貫して安定した情緒感を持っている。ギターもボーカルも抑揚は抑えめでダイナミクスには欠けるが、リズムコントロールは悪くないし、メリハリは一定程度ある。
説明しづらいんだけど、つまんない感じではあるが、つまんないなりに聴き応えを出してくれて、その聴き応え的な部分が、意外と丁寧で悪くないかなと思わせるくらいには頑張っている。単純に音楽性を向上させたいなら、イコライザーで高域を引っ張り上げるのがよい。
ずっと真夜中でいいのに。「ヒューマノイド」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】曲調に抑揚的演出が多めのこの曲だと、このイヤホンでもさすがに多少の展開感を感じさせてくれるようになるが、それでも全体的に情緒が安定していて、ギターのディストーションとかピアノの撥ねる感じとかが抑えめで、ボーカルも中域で落ち着く感じが強い。一貫してボーカルフォーカスされているし、聞き疲れしない感じで浸るには悪くない。
やなぎなぎ「mnemonic」
この曲はHiyoo A66でも聞いたので、それと比較して語ると、まずこちらのほうがボーカルフォーカスは良い。低域の沈み込みが足りない代わりに、低域が目立つ感じがなく、構造的にボーカル中心に組み立てられる感じになる。ただ、A66の沈み込みの良い低域が作り出していた濃厚で深淵のある音楽に比べると、なんていうか迫力に欠けるし、平坦であることは事実。ボーカルのツヤもあまり強調されず、A66の、価格帯では圧倒的な濃厚感を聞いた後だと物足りないことは事実だろう。
やなぎなぎ ベストアルバム –MUSEUM-【初回限定盤CD+特典CD】
佐渡裕指揮、シエナ・ウインド・オーケストラ「Tarkus - Eruption」
【Hiby R6 Proで鑑賞】上の動画は参考用で、私が聴いた音源とは異なる。ちょっと興味本位でA66と聞き比べてみたが、ぶっちゃけクラシックはT22がいいかもしれない。この曲ではA66の深すぎる床面に比べて、音をしっかり支える床面が感じられるし、中域音に安定感があって、オーケストラの足場の安定感みたいなのがしっかり感じられ、高域も明るくないので、ホールに自然と消えていく立体感がある。全体的に落ち着いた感じもクラシック向きで音に入り込める。
【5】総評「クラシックやカントリー音楽、ムードポップスを聴く人に」
最初は面白くないと思ってたイヤホンだけど、個人的にクラシック音楽を聴いてから評価が変わった。中域と中低域がしっかりしているので、アコースティックな音楽に落ち着いて浸れる感覚がある。高域方向で縦軸の抑揚に乏しいので、現代的な曲との相性が良いとは言えないところはある。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。