- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は軽め。通信品質良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「Qiワイヤレス充電に対応」
- 【3】音質「やや腰高の床面とウォームな温度感を持つ、ポップス寄りのメロウ系サウンド」
- 【4】官能性「比較的万能に清潔な音が楽しめる」
- 【5】総評「リズムコントロールの難しさが気になるが、基本的にはポップス向きでJAZZも楽しませてくれる」
- 【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は軽め。通信品質良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
6h/30h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | AAC/SBC |
防水性能 |
IPX7 |
音質傾向 |
弱ドンシャリ、やや低域寄り、ウォーム、調和的、チャリチャリ、ツヤツヤ、甘味が強い、ポンポン、潤いがある、みずみずしい |
耳への収まりは良く、付け心地は安定している。
対応コーデックはAAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proでテストしたところ、通信安定性は高め。ただし、特定箇所で異様に片耳だけ途切れやすくなる傾向があって、関東最大規模の某ターミナル駅の改札付近とコンコースではほとんど片耳しか聞こえなかった。ただ、道中や電車乗車中などは途切れがなかったので、おそらくかなり通信品質は高い。
また再現条件がわからないが、稀に片耳だけしか聞こえなくなることがある。
そう!通信品質は基本は高めの印象で、発信側と親機側との間の通信はかなり堅牢なんですけど、親機と子機の間の通信がときどき不安定な感じなんですよね。
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) September 25, 2019
テスト環境
今回のテストはHiby R6 ProとONKYO GRANBEATで行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「Qiワイヤレス充電に対応」
付属品はイヤーピースの替え、充電ケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書。インターフェースが物理式で操作はしやすい。反応はスムーズなほうではないので、人によっては押し込みすぎてしまうこともあるかもしれない。
Qi規格のワイヤレス充電に対応する。
【3】音質「やや腰高の床面とウォームな温度感を持つ、ポップス寄りのメロウ系サウンド」
音質的にはやや床面高く、厚みを出してウォームに音場を支える低域と中高域に強調点があり、つややかで暖かみのあるポップス向きのサウンドを持ち味としている。ボーカルフォーカスは強めで、高域の明るさはほどよく抑えられているために、女声ボーカルも男声ボーカルも濃いめで甘味を出して聞こえる。
中域は中高域がやや強調されており、見通しが優れているというほどではないが、ほどよく閉じているくらいで、この価格帯では標準的な分離感を備えている。ただし中低域付近に強調があるため、床面が高く、膨らみも出やすいため、音源によっては中域付近に過剰な濃度と暖かみを感じ、若干篭もった印象を受ける可能性はあるかもしれない。ドラムはパンチもキックも少しふくよかになりやすい。
高域方向は比較的早く閉じており、たとえばシンバルは高くシャーンと広がるより、どちらかといえば中高域で濃い感じにチャリチャリとした質感を強調する。またボーカルの子音にあまり強調は出ず、ツヤの乗ったあでやかな甘いボイス表現になる。
私の聴いた、このイヤホンの音の基本的イメージは下の曲みたいな感じです。まあこのイヤホンで池田綾子さんの初期のアルバム「Lunar soup」を聴いていたら、実にちょうど良い温度感とディテールバランスだったので、私は勝手にこのイヤホンを「池田綾フォン」と呼んでみたり。すみません、冗談です。
美点
- 聴き心地の良いウォームサウンド
- 高域は閉じて、中域音に濃さとコクがある
- 中高域で発色が良く、潤いがあり、あでやかでつややか
- 床面が近く、パンチ感が出る
- ボーカルフォーカスが比較的良い
- 厚みが豊かで充実感のある音響
欠点
- 低域がふくらみやすく、場合によって篭もったり、ボーカルを埋没させる
- メロウで楽器音に外連味があまりない
- 開放感に少し欠ける
- 高域で高さは強調されない
[高音]:高域は中高域のツヤを受けて明るめではあるが、高い方は閉じているので、マイルドカーブになっている。そのため高域音はやわらかみのある感じに聞こえる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は低域の暖かみを受けて基本的には調和的な雰囲気を持っている。中高域に強調点があって、ギターサウンドにチャリチャリジンジンしたあでやかな色彩があり、ボーカルもツヤが出て甘味がある。ピアノ音や弦楽音だけでなく、曲調によってはベース音、シンバルにも潤いを感じることができる。コクも強め。また音場は明るい。
[低音]:100hz~40hzまでややボーッとしたブーンという感じの振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は少し膨らみが強く、分離感はもやっとするところがあり、見通し感はそれほど高くない。ドラムの膨らみが強くなりやすいので、曲によってはベースに埋没感を感じるかも知れない。床面はやや高めに出やすく、深いところは熱気に変わってもやもやしやすい(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:中低域がやや目立ち、中高域にもう一つの強調点がある、ややふくよかな弱ドンシャリを形成している。中域の下の方と中低域の分離が若干悪く、濃度が強めに出るところがあり、輪郭を強調せず分離感は抑えめで調和的な音響になっており、音場はウォーム(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:中域から中低域にスムーズにつながっているうえに、床面も高く出やすいため、タムやスネアとバスドラムにつながった感じがあり、人によってはドラムサウンドは緩い、もやっと聞こえやすいところはある。全体的に柔らかい弾力のあるゴムボールのような感じで、バッツンバッツンといった感じ。シンバルは下の方のチンチンチリチリという濃いめの部分を強調し、やや黄金に近い色彩感で聞こえやすい。リズムコントロールはややゆったりしており、私が聴いた感じではロックでは遅れているというほどではないが、やや鈍い制動を感じる。
ドラムはふくらみやすいので、とくに元々膨らむ感じに味付けされている曲では曇って聞こえる感じは出やすいところはある。リズムコントロールの甘い感じがしばしば弱点になりやすい(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは色味は濃いがやや膨らむ低域に埋没しやすい位置になるため、曲によっては充分にフォーカスされない印象を受ける可能性がある。女声ボーカルは濃い甘味のあるあたりが強調されつつ、ツヤもあってみずみずしく輝くため、充分にフォーカスされて聞こえる。明るい女声ボーカルは天井感があり、清涼感よりは濃厚感重視で聞こえる。
【4】官能性「比較的万能に清潔な音が楽しめる」
水瀬いのり「harmony ribbon」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】やや末広がりの、ゆったりした空間にみずみずしく音が厚みを感じさせながら広がっている。水瀬いのり独特の突き抜けるボーカル表現は抑制的になっており、中域の安定感重視の聞かせ方で、潤いと甘味重視でじんわりした味を出す。本来なら高域の突き抜けで感じることができる、吹き抜ける感じと爽快感がないあたりが好みを分けそうではある。この曲を味わうには、もう少し高域の高さが足りない印象がある。
早見沙織「やさしい希望」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】わずかに明るさを抑えた感じではあるが、この曲はツヤツヤチャリチャリ温和そうながら楽しげなシンバルやギター、ツヤツヤなピアノと弦楽、これらすべてがみずみずしく彩りを加える。サビでのびやかに上に高くなるところではボーカルにやや遠のく感じがあるが、中域では濃く甘味を出すのでメロディラインは濃厚。床面は一貫して調和的で、ボーカルをやや近めに支える。印象的には、人によってはもっさりしているかもしれないとも思うので、若干このイヤホンには明るすぎる曲かも知れない。
やさしい希望<アニメ盤> CD+DVD(2枚組) (TVアニメ「赤髪の白雪姫」オープニングテーマ)
大原ゆい子「Magic Parade」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲ぐらいだとサビで一番ボーカルフォーカスされるような感じ。しかし、楽器音は重心が低く、少しメロウ感が強いのかサビ以外ではやや暗い印象を受けるかも知れない。またこの曲では元々ドラムがややふくらんで表現されているので、このイヤホンで聴くとさらに膨らんでいるところがあり、見通し感を阻害しているところがある。
ただしこれはHiby R6 Proが低域をふくよかに出すところがあるので、このイヤホンだけの問題ではないかも知れない。そう気づいて低域の強調が抑えめなGRANBEATで聴くと、なるほどこちらは同じ低域が厚いにしても、支配力が収まっている。ただ、そうすると中低域と中域の境目のゆるい、ちょっともやもやする感じが逆に気になってきたりする。このイヤホンでは、膨らみやすいドラムが意外とネックになりやすいところがある。
『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』主題歌「Magic Parade」
FONSECA「TU AMOR YA SABE」
【Hiby R6 Proで鑑賞】そういうわけでこれくらいドラムが締まってくると、リズムコントロールがしっかりして聞こえるため、少なくともモヤモヤ感はほとんどなくなる。ボーカルフォーカスも終始しっかり利いていて、ブレがない。
鈴木勲「Mack The Knife」
【Hiby R6 Proで鑑賞】鈴木勲の音源の許諾動画がなかったので、代わりにBobby Darinの動画を参考用につける。
さて、それで、むしろリズムコントロールが悪いなら、ゆったり系のJAZZなんか相性良いんじゃないかと思って聴いてみると、案の定リズムコントロールの悪さは気にならなくなり、低域も広がりすぎずに、温かみのある深みだけが出る感じになった。リズムがうるさくないJAZZは結構濃厚感を出して聴かせてくれつつ、中高域で艶のある派手さを出してちょっとした風通しの良さを見せるところもあり、また高域が静かなため、しっとりした味も出るのが良い。
衝撃の“アヴェ・マリア”ISAO SUZUKI plays “AVE MARIA”
【5】総評「リズムコントロールの難しさが気になるが、基本的にはポップス向きでJAZZも楽しませてくれる」
使い勝手の上ではQiワイヤレス充電に対応するのが便利ですが、通信品質はやや不安定な印象を受けます。それでも価格帯では安定している方ですが、稀ではありますが、時々片耳からしか聞こえなくなることがあります。
音質的にはリズムコントロールに若干ウィークポイントがあるように思われ、中低域の膨らみが曲をモヤッとさせ、篭もって感じさせる場合があります。しかし、ポップスはJAZZでは一般に中域で充実する聴き心地の安定した音楽を奏でてくれます。
【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
vs Hiyoo A66(Uru「願い」)
同じように中域で濃厚感があり、どちらかというとメロウなサウンドを得意をするHiyoo A66と聞き比べてみる。一聴して気づくのは低域の沈み込みの差とそれに伴う音場の懐の深さの差である。Hiyoo A66のベースは深く、重厚で雄大。音場はやや暗く、重心が低いが、見通し感は悪くなく、重厚さがあり全体的にコントラストは抑えめにも関わらず、味わいはしっかりしている。中域の甘味も強い。全体的に暗い感じであり、ツヤに露骨な強調がないにも関わらず、声色は自然にみずみずしい。
それに比べるとEarFun Freeは明るく、弦楽やピアノ音に豊かな潤い感があり、ボーカルも上向きにのびるが、A66の懐の深い音楽を聴いた後だと、なんとなくチャラい気がする。かなりの潤い感があるのでこれもこれで決して劣るとは思えず、最終的には好みだろうが、個人的には、A66の沈み込みの良い低域の魅力と比べると、案外月並みなレベルを越えていないように思える。
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vs TOKYOSOUND F8(yoshiki*lisa「Destin Histoire」)
次は同じく中域に強調があるTOKYOSOUND F8と聞き比べてみる。まず言えるのはF8のほうが全体的に色味がサッパリしており、中域に厚みがあまりないのにボーカルフォーカス感は強い。低域もややおとなしい感じがあり、コントラスト感で劣る。シンバルとボーカルがやや目立ちやすく、ギターはやや細い。ボーカルは少し明るさが強調されるので浮き上がりは良いが、暖かみには欠ける。シャープな感じはあって、中高域の音の刻みはきれいではある。
EarFun Freeは床面の支えがはっきりしており、色味も濃く、より暖かい。中域の厚みもあって、充実感で高め。そういうわけでこの曲に関してはEarFun Freeを推したい。
TVアニメ「GOSICK-ゴシック-」オープニング・テーマ:Destin Histoire
vs Orit OR01(TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」ED主題歌「ここから、ここから」)
同じく低域と中高域に強調があるOrit OR01と聞き比べてみる。表現の方向性は似ているが、OR01のほうが低音の重心が低く、深みが出ており、中域はその黒みを受けて、やや静寂感が強く、引き締まったドライな感じがある。高域もEarFun Freeに比べて暗い。EarFun Freeよりロックに寄った音響に聞こえる。
EarFun Freeはより中高域で鮮やかでみずみずしく、低域も床面がやや弾みが強く、ポップス的な躍動感のあるサウンドになっている。ボーカルも明るくのびやかで、同じく甘味が強いにしてももう少し潤い感がある。
甲乙は付けがたい。
TVアニメ「 宇宙よりも遠い場所 」エンディングテーマ「 ここから、ここから 」
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。