SOUNDAWARE デジタルオーディオプレーヤー(レッド)SOUNDAWARE M2PRO-RED
- ひたすらシンプルなデザインのパワフルDAP
- 技術仕様
- 日本版にBluetooth機能はありません
- パッケージ
- 外観/インターフェース
- バッテリー駆動時間
- 音質
- 総評「機能性で劣りますが、音質は素晴らしく完成度は高いです」
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ひたすらシンプルなデザインのパワフルDAP
このデジタルオーディオプレーヤー(DAP)、外観デザインは非常にシンプルで、でっかいiPod Classicみたいな形をしています。ぶっちゃけデザインの流行から遅れている感じがあります。私は反Appleみたいなところがあるので、当然のことながらiPodよりウォークマンという考えの人間ですから、iPodなんかこれまでの人生で一度も使ったことがなく、このiPod Classicライクな外観のDAPが操作性の面でどこまでiPod Classicライクなのかはわかりません。
ただ一つ言えることは、「このDAPをデザインした人間はたぶん、いや確実にApple党だろうな」ということだけです。
しかし、iPod Classicライクな見た目ですが、iPod Classicのような小型ではなく、薄型ではありますが、普通にスマホサイズの大きさがあります。そして、DAPに比べると、みみっちい音だったiPod Classicと違い、このDAPのアンプ出力はシングルエンドで2.1Vrmsもあり、むしろパワフルです。この数値がどれくらいかというと、Cayin N6II/E01に匹敵するほど(細かい数値もほぼ同等)です。イヤホンなら鳴らせない機種はたぶんないだろうと思われます。
そういうわけで、とりあえず技術仕様から見ていきましょう。
技術仕様
スペック表はIC-CONNECTの公式サイトから転載しております。
個人的にスペックで注目すべきポイントは5つほどです。
- MicroSDカードスロットが2箇所あり、それぞれ理論上2TBまで対応している
- 最大アンプ出力がシングルエンドで2.1Vrmsあり、普通のイヤホンを鳴らすのにおそらく不足はない
- バッテリー駆動時間が比較的長い(しかもバランス出力の方が長い!)
- USBDAC機能付き
- ハイエンドに近い10万円台DAPとしては薄く、大抵のスマホより軽量
商 品 名 | M2PRO | |
材質 | 3D CNC加工を施した、耐久度の高いアルミニウム合金製 | |
ボディカラー | ブラック、レッド | |
接続方式 | USB DAC(192kHz,DSD128) ※DSD128の再生には、接続側にドライバーをインストールする必要があります。 | |
ストレージ | MicroSDカードスロット×2,SDHC/XC 256GBまで推奨(理論上最大値2T)、FAT32、NTFS形式に対応 | |
オーディオ出力 | ステレオヘッドホンジャック3.5㎜( 8-300Ω) | |
COAXIAL(同軸SPDIF 32khz-192khz DSD、DoP)※ステレオヘッドホンジャック3.5㎜ポート併用 | ||
ヘッドホンジャック4極(バランス)2.5㎜ (8-600Ω) | ||
LINE OUT3.5mm(バランス) | ||
アンプ出力 | シングルエンドPO無歪出力 ≤0.001% [16Ω:91mw*2] [32Ω:140mw*2] [100Ω:45mw*2] [300Ω:15mw*2] | |
バランスPO無歪出力 ≤0.001% [16Ω:91mw*2] [32Ω:158mw*2] [100Ω:168mw*2] [300Ω:59mw*2] | ||
音楽再生 | ||
DSD | DSD128(ISO、DSF、DFF), DST非対応 | |
WAV | 32kHz – 192kHz | |
FLAC | 32kHz – 192kHz(LEVEL1-8サポート) | |
APE | 32kHz – 48kHz,Extra High以下の圧縮率対応 | |
ALAC | ≦48kHz | |
AIFF | ≦48kHz、一般的な圧縮 | |
AAC | ≦48kHz、一般的な圧縮 | |
MP3 | ≦48kHz、一般的な圧縮 | |
WMA | ≦48kHz | |
ISO、CUE | 対応 | |
注:上記のフォーマットはステレオ音声のみをサポートしています。ビット数は6~32Bit(32BitはIntegerをサポー今後も品質の向上と、必要に応じて他のフォーマットの追加サポートを行っていきます。 | ||
電源 | バッテリー | 内蔵リチウムポリマーバッテリー |
充電時間 | 2~3時間(電源OFFにて、≥2Aにて充電した場合) | |
駆動時間 | 一般的なイヤホン使用時:約12~約14時間,シングルエンドよりもバランスの再生時間の方が長時間の利用が可能です。 高インピーダンスのヘッドフォン使用時 10.5時間(例:300Ωのヘッドフォンにて、音量60、ハイゲインバランス出力使用時の時間) デジタル出力使用時:約20時間 ライン出力使用時:16時間前後 |
|
充電口 | USB TYPE-Cポート | |
THD+N(24bit,44.1khz) | 0.0006x% (LOが最高値,シングルエンドPO/バランスエンドPOは近似値) | |
S/N比(A-weight) | 116db | |
バックグラウンドノイズ | <8uv,≤-135db(負荷:シングルエンド16~300Ω) | |
アウトプットレベル | 2.1V RMS(LO) | |
周波数特性 | 20~20khz(+-0.2db) | |
重 量 | 約175g | |
備考 | 現在、製品に付属しております英語版のマニュアルの中にはBLUETOOTH機能も記載されておりますが、日本版にはBLUETOOTH機能は搭載されておりません。 |
日本版にBluetooth機能はありません
さて、スペックを挙げたところで一番注意すべきポイントを指摘しますと、日本で発売されている正規版M2 ProにはBluetoothオーディオ機能は一切搭載されておりません。
中国販売版にはaptXとSBCに対応したワイヤレスチップが搭載されていますので、もしBluetooth機能がどうしても必要な場合は、中国販売版を買うことを検討するしかありません。中国版はこちらのHiFiGOのストアページで注文できます。
パッケージ
M2Proのパッケージデザインは10万円クラスのDAPにしては簡素だと思われます。カバーデザインはそんな高級感ある雰囲気ではない気がします。
カバーを取るとすぐ本体を収めたボックスが出てきます。どこぞのFiiO M15みたいに何重にも箱入れされてはいません。まあ開封の手間が少ないので楽です。
文字通りのご開帳ですぐに開きます。あら、こんにちは!
説明書を取り除けば、はいこの通り。小袋に入れられた本体を拝めます。
付属品はこんな感じ。
外観/インターフェース
まず入出力インターフェースですが、出力は上面、入力は底面と非常に分かりやすいです。
出力端子は以下の3種類です。
- バランス出力(2.5mm)
- シングルエンド出力(同軸/SPDIF兼用)
- ラインアウト出力
側面に操作系インターフェースが集中しています。また何か不具合が発生した時にリセットできるピン穴があります。
画面
再生画面はアルバムアートに山水画風のデザインがされており、趣は非常に良いです。右のように、全面にアルバムアートを拡大表示することもボタン一つで簡単にできます。しかし、個人的には山水画風のデザインがとても粋に思え、好ましく感じられました。
バッテリー駆動時間
駆動時間はぶっちゃけシングルエンドで高ゲインモードだとちょっと物足りません。ただし、これはDAPの連続再生時間は10時間が基準という私の観点の話で、動作を見ていたところ、7~8時間はなんとかもってくれそうです。特筆すべきはフルバランス設計の関係か、バランス接続の方がシングルエンドより持続時間が長いという点です。バランス接続を好むオーディオファンにはうれしいポイントに思えます。
ライン出力でも充分なバッテリー駆動時間があり、据え置き用のソースプレ-ヤーとしても魅力的でしょう。
ただし電源を入れていると音楽を再生していなくてもバッテリーはどんどん減ります。最近のAndroid DAPのようにつけっぱなし運用には向きません。自動電源OFFの設定ができるので、設定しておくことをおすすめします。
音質
さて、音質です。フルバランス設計というのがなんなのか実際のところ、個人的にはまだよく分かりません。カップリングコンデンサーを排して独自の回路設計をしているという点がポイントで、SONYのウォークマンのようなフルデジタルアンプ設計なのかとも思いますが、迂闊なことは言わないでおこうと思います。たぶんFPGAにDAC処理をさせているCHORDの製品に近いのかと考えております。
聴いてみて結構驚いたのですが、このDAPの音に濁る感じはほとんどありません。低域は適度にパワフルで駆動力を感じますが、その低域も厚ぼったくはなく、中域を邪魔しない音になっています。そう言うと、すっきり系のサウンドだと思うでしょうが、たしかに見通しよくすっきりしていますが、中域音は光沢とツヤがあって輪郭がまろやかで、自然なトーンの雰囲気を持っており、一聴すると地味ですが、すっきり淡泊かというとそうではなく、奥行きがあるので、結構はっきり中高域の粒立ちが感じられます。
とりあえずSTAX SRM-700SとSTAX SR-009Sにつないで、聴いてみますと、普通は大抵のDAPで静電型特有の乾燥した感触とエッジが少し毛羽立つようなシャープ感が感じられ、場合によって少し音楽が味付けされている印象を受けるんですが、このM2Proの音はそんな高域で緻密なヘッドホンにつないでも、目立ってささくれだったり、ギラつく印象を受けません。ナチュラルに中域で奥行きを出し、ナチュラルにのびていき、輪郭はまろやかでむしろ潤いが感じられるほどです。
出音は地味な印象で、輪郭を強調してパリパリと分かりやすいクリスピーな解像度を出すわけでもなく、音場が広いわけでもなく、低域の駆動力をガツンと感じさせるパワフルさとは少し違う、かっちり仕事を丁寧にするようなディテール重視の低域表現なので、全体として特徴が捉えづらいというのはあると思います。しかし、自然でまろやかに聴きやすいエッジを丁寧に表現する感じの解像感があるので、粒立ちはより自然に、くっきりではないですがはっきりと感じられ、イヤホンやヘッドホンの癖を適度になだめつつ、しかし味わいはしっかりと出してくれるような透明感を感じます。
高解像度でありながら少し温かみがあって優しげな音という意味では、COLORFLY U8に近いコンセプトを感じますが、あちらが輪郭は適度に強調し、色味で淡いセピアな音だとすると、こちらはもっと輪郭をまろやかにして音の光沢ははっきりとしている雰囲気で、同じ甘味を感じる音にしても、性質は異なるように思えます。U8の音が少し桜や梅を思わせる、香りの感じられる色づきのある雅な音だとすると、こちらはより透明な純朴で素直な印象があり、湧き出る泉のような音です。
味付けは少ないですが、非常に輪郭が丁寧で、アンチエイリアスやグラデーションがしっかりと重ねられたように解像感が高められており、音の端に注目して聴くと、輪郭をはっきりさせずに、むしろ音と空間との境界が自然につながるよう、かなり詳細に描かれているような感覚があります。そういう意味で音が空間にそのまま広がっていくような、ちょっと輪郭が甘いように聞こえるところがありますが、しかしそれは輪郭がボケているのではなく、輪郭がすぐに感じられないほどに微細に描きこまれていると考えるべき気がします。
一方でわかりやすい分離感とか背景の静寂感とか、音場の広さとかっていう、そういう要素はむしろ強調されず自然な感じなので、一聴してすごく感動するというわけではなく、じっくり聴くと良さが身に沁みてくる感じの音に思えます。
10万円台前半という価格を考えると、個人的には軽くびっくりさせられるくらいの出音です。
美点
- ナチュラルな解像感
- 自然な温かみがある
- 全音域が見渡せる
欠点
- 音の手がかりがわかりやすくない
- 特徴が捉えづらく、地味に聞こえる
総評「機能性で劣りますが、音質は素晴らしく完成度は高いです」
音質はかなりナチュラルでしかも高解像度でおすすめでき、使い勝手もシンプルかつスペックは充分です。外観が選り好みされそうではありますが、ダサくはありません。
有線イヤホンやヘッドホンしかつながず、本体にたくさんの楽曲ファイルをそのまま入れて再生するオールドファッションのオーディオファンには10万円台でこれ以上ないくらいのシンプルで使いやすく、拡張性も高い、よくできたプレーヤーだと思われますが、残念ながら多様化する現代の音楽再生環境に対応し切れているとは言えません。amazon music HDなどの音楽サブスクリプションサービスをストリーミング再生することはできませんし、ワイヤレスにそもそも対応していないので、完全ワイヤレスイヤホンなど流行のオーディオ製品が使えません。DSDやPCMへの対応も現在はともかく、将来性を考えると物足りない印象を受けます。
価格を考えると、SONYの大人気機種NW-WM1Aとほぼ同額です。こちらのほうが拡張性、出力、持ち運びやすさの点で優れていると思われますが、バッテリー持続時間はおそらくNW-WM1Aのほうが上で、機能面の充実では対抗できません。このDAPはそういう意味でなかなか厳しい勝負をさせられている観があります。個人的にはおすすめではありますが、これを買う前に、比較的店頭試聴しやすいNW-WM1Aを充分試してから判断した方が良いと思います。
SOUNDAWARE デジタルオーディオプレーヤー(レッド)SOUNDAWARE M2PRO-RED
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