EarSonics S-EM6 V2 イヤホン インイヤーモニター
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「若干耐久性が気になるが、軽量で装着感も良い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「2pinリケーブル可能」
- 【3】音質「空間の透明度は高く、キレも良い利発な音」
- 【4】概括
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【1】装着感/遮音性/通信品質「若干耐久性が気になるが、軽量で装着感も良い」
ASIN | |
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B073TRZXG2 | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 10~20000Hz |
インピーダンス | 30Ω |
感度 | 112dB |
ドライバー |
バランスド・アーマチュア型 (6ドライバー/3ウェイ) |
プラスチッキーかつシンプルな外観で、この価格帯のIEMにしては少し安っぽく思われるかもしれませんが、小型軽量で装着感は良好です。ただし、筐体は頑丈さよりは精巧さを求めている雰囲気なので、耐久性には少し注意が必要かも知れません。
テスト環境
今回のファーストインプレッションのテストはFiiO M15を使って行っています。ゲインは「高」設定です。
装着サンプル
【2】外観・インターフェース・付属品「2pinリケーブル可能」
付属品はイヤーピースの替え(フォームタイプとシリコン)、クリーニングツール、ヘッドホン変換プラグ、説明書です。
【3】音質「空間の透明度は高く、キレも良い利発な音」
周波数特性イメージ(試験運用中)
※周波数特性イメージはあくまでレビューの便宜上、個人的に周波数分布のだいたいのイメージを掴むための参考情報で、測定方法も測定されたデータも非常にアバウトで厳密な信頼性や正確性に欠けます。いずれ勉強を深めて信頼性を高めていきたいとは思いますが、本ブログは周波数特性の測定をメインとしていませんので、期待しないで下さい。私自身も聴感上の音像印象の解釈の補助として利用しているだけで、この周波数特性イメージを全面的に信頼し、依拠しているわけではありません。
※またイヤホンの周波数特性イメージはヘッドホンの測定値との互換性を持たせるために、外耳道を疑似的に再現した環境で測定されています。
レコーディングシグネチャー(試験運用中)
レコーディングシグネチャーはバイノーラル録音されていますが、品質は良くありません。人工的に外耳道に近い環境を作って録音していますので、それなりに自然に近い音になっているとは思いますが、聴いたそのままの音質とは異なりますので、あくまで参考情報ということでお願いします。
原曲
銀の意志 Silver Will / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ファーストインプレッション
今回は標準イヤピの中で、シリコンのシングルフランジLサイズを使ってファーストインプレッションを確認します。このイヤホンは比較的フラットに仕上げられていますが、シャープネスだけは強く、音がギラつく感じがあります。その感触が苦手な場合は付属イヤピの中のフォームタイプを利用するかダブルフランジに替えるのが良いです。あるいはfinal Eタイプなどの高域を丸めてくれるイヤピを装着することをおすすめします。
スマホでも充分高解像度です
インピーダンスが30Ωでスマホはぎりぎりかなと思ったのですが、たぶん充分に鳴らせます。Galaxy A30で鳴らしてみたところ、鳴らし切れていない感じは私にはありませんでした。また小さな音量でもクリアに聞こえるので、音量をあまり必要としません。
みずみずしいボーカルと楽器音、粒立ちの細かいアルペジオの美しいアコースティックギター(清浦夏実「風さがし」)
このイヤホンはフラットバランスに近いだけでなく、中域が充分に強調されていて、さらに中低域も膨らんでいるので、音に実体感のある非常にみずみずしい音を奏でます。基本的にボーカルはよく前面に出てきて、潤い感も充分にありますが、一方で高域の高いところは閉じていないので、完全に甘いというよりは甘酸っぱい柑橘系の風味があります。
高域は開放感があり、アコースティックギターの刻みはクリスプでパリパリ、カリカリとしており、艶のある張りが感じられ、シャープですが、どこか女性的な甘味があります。非常にきらびやかで美しく映えるアルペジオを持っています。アルペジオの利いたアコースティックギターの音が好きな人には、私は真っ先くらいにお勧めしたいです。
ボーカル周りが清潔なのびやかなサウンドで、キレや疾走感が感じられる(植田真梨恵「灯」)
まずこの機種の最大の魅力の1つはボーカルの上に充分なヘッドルーム(空間)が確保されていることです。ボーカルは清潔な空間に上向きに響くように聞こえるので、基本的にのびやかで、息も伸びて聞こえるので清潔感があります。すっきりとした声質が好きなら、この女声ボーカルはきっと気に入るはずと思います。低域の支えもしっかりしているのでボディに細る感じ出ず、甘味を感じさせる中域の存在感は充分にあり、みずみずしさは失われません。
アコースティックギターについては前曲で詳しく述べたので、ここでは割愛して、ドラムサウンドに移ります。ドラムはスナッピーを利かせてやや高いところで細かいフレーズを出してアタックするところがあり、非常に疾走感が出ます。そのため基本的にスコスコしたタイトで軽やかなリズムサウンドが聞こえると思います。
この曲では全体的に清涼味を感じながら、清潔さと甘酸っぱさのある風通しの良い爽やかなサウンドが楽しめるはずです。
ディストーションが伸びる色気のあるギター、若々しく粒立ちの良いハイハット(飯島真理&チエ・カジウラ「天使の絵の具~Macross 15th Anniversary Version~」)
明るい空間に少しカシャカシャとしたきらびやかさのあるハイハットと、明るいやや硬めの、わずかにキンキンしたピアノが響き渡り、非常に透明感があります。このイヤホンが最高だなと思う瞬間の一つは、その明るく透き通った中に、エレキギターがエッジを立てて、きれいにのびやかなディストーションを決めてくれたときに訪れるでしょう。スナッピーを利かせた少し薄い鼓面で走るスネアが、そのギターエッジとともにリズミカルさを演出してくれます。
一般にこのイヤホンではハイハットはかなり目立ちます。しかもこの曲ではかなり金属的で硬い感じがあります。まず上辺では若々しい煌びやかさを持っていて、キラキラとした輝きがありますが、一方で中域の強調がハイハットにパワー感ももたらしており、少し強めにガチャガチャたたきつける雰囲気もあります。ハイハットはかなり目立つ存在になりますが、一方でハイハットとぶつかりやすい音が多いボーカル上の空間は清潔であるため、このあたりで音が混濁することはありません。またハイハットの音自体は中域を邪魔するほど派手すぎないので、音の清潔感は維持されており、静寂な雰囲気ではありませんが、うるさい感じではありません。
もし元気が良くきらびやかな、時々グサッとくるくらいのやんちゃなハイハットが好きなら、このイヤホンは魅力的に映るはずです。一方でハイハットがあまりにも攻撃的であると思う場合は、イヤーピースをフォームタイプかダブルフランジに変更すると良いでしょう。音が落ち着きます。あるいはこのギラつきはエイジングで落ち着く可能性もあります。
みずみずしい琴の音、粒立ちの良い音が抜けていく開放的な空間(はるひの with DODOWAKA「令和 -UME no UTAGE-」)
個人的にこのイヤホンはEDMトラックでも十分な魅力を出してくれると思います。繊細な高域表現を持っているので、EDMの複雑な電子音の高域表現もかなり緻密に聴かせてくれます。シンセ音には華やかなアクセントとして充分な煌びやかさが感じられ、繊細さがあります。エッジも立っており、リズミカルさもあって音楽に躍動感が充分に出るはずです。琴の音色はみずみずしく、小川のせせらぎの雰囲気を出してくれます。
また高域の開放感と粒立ちの良さは非常にきれいで、聴いた印象で静電型ツイーターっぽい雰囲気を感じました。おそらく細かな粒立ち感が感じられるはずです。音にパリッとした輪郭と手応えがあり、トランジェントは非常に良好で、場合によってやや強くデジタル的な雰囲気は充分ですが、人によっては若干きつく思えるかも知れません。さらに一部の曲ではやや音が走りすぎて自然な音楽性を損なってしまうと感じる可能性もあります。
【4】概括
非常にすっきりとした、しかし中域でも充分な実体感のある透明感と輪郭感に優れた音を鳴らしてくれるイヤホンです。空間は非常に風通しが良く、歪みが少なく澄んだ雰囲気があります。女声ボーカルも素晴らしいですが、個人的にはアコースティックギターのサウンドが秀逸だと思っており、アルペジオが美しい音に聞き惚れました。なかなか試聴機がない機種ですが、もし見つけたら、是非アコースティックギターだけでも味わってみてください。
EarSonics S-EM6 V2 イヤホン インイヤーモニター
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