MoonDrop Starfield Carbon Nanotube Diaphragm Dynamic Earphone
- デザインがオシャレで、ビルドクオリティが高い
- のびやかで開放感のあるすっきりサウンド
- 見通しの良いハイファイな雰囲気がある
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「耳への収まりは良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「ビルドクオリティは充分に高級感あり。2pinリケーブル可能」
- 【3】音質「暖かい低域プレゼンテーションで安定感のある中で、適度に濃厚感を出しつつ見通しの良いサウンドを実現している」
- 【4】官能性「開放的でリズミカルに走る爽やかな音楽」
- 【5】総評「開放的で荒ぶることのないすっきりしたサウンドが好きなら、おすすめ」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「耳への収まりは良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
B083QFMMHJ |
やや大きめのハウジングデザインですが、耳への収まりは良好です。金属製の頑丈な筐体ですが、軽量で遮音性は悪くありません。
テスト環境
今回のテストはFiiO M15、Galaxy A30、ONKYO GRANBEAT、Shanling M6、FiiO M11 Pro SSで行っています。ゲイン設定は基本的に「高」設定です。
装着サンプル
【2】外観・インターフェース・付属品「ビルドクオリティは充分に高級感あり。2pinリケーブル可能」
付属品はイヤーピースの替え、ピンセット、キャリイングケース、説明書などです。ケーブル端子は2pinです。
付属品や工作精度についての詳細はHiFiGOのレビューで詳しく触れられているので参考にして下さい。
スペック情報
- 再生周波数帯域:10~36000Hz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:122dB
- ドライバー:ダイナミック型
【3】音質「暖かい低域プレゼンテーションで安定感のある中で、適度に濃厚感を出しつつ見通しの良いサウンドを実現している」
今回は標準イヤピの中で、シリコンのLサイズを使って音質を確認します。
周波数特性イメージ(試験運用中)
※周波数特性イメージはあくまでレビューの便宜上、個人的に周波数分布のだいたいのイメージを掴むための参考情報で、測定方法も測定されたデータも非常にアバウトで厳密な信頼性や正確性に欠けます。いずれ勉強を深めて信頼性を高めていきたいとは思いますが、本ブログは周波数特性の測定をメインとしていませんので、期待しないで下さい。私自身も聴感上の音像印象の解釈の補助として利用しているだけで、この周波数特性イメージを全面的に信頼し、依拠しているわけではありません。
※またイヤホンの周波数特性イメージはヘッドホンの測定値との互換性を持たせるために、外耳道を疑似的に再現した環境で測定されています。
レコーディングシグネチャー(試験運用中)
レコーディングシグネチャーはバイノーラル録音されていますが、品質は良くありません。人工的に外耳道に近い環境を作って録音していますので、それなりに自然に近い音になっているとは思いますが、聴いたそのままの音質とは異なりますので、あくまで参考情報ということでお願いします。
原曲
銀の意志 Silver Will / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ファーストインプレッション
このイヤホンについてのファーストインプレッションはこちらで詳しく書いております。参考になれば幸いです。
音域印象
開放感がある、すっきりしている、風通しが良い、クリスプ、奥行きがある、モニター的、温かみがある、立体感がある、抜けが良い、繊細、高域が清潔、リズミカル
低域「深み、モニター的、見通し感」
低域は床面に深さがあり、地熱もあるので、床面の底にリアリティがあります。ベースはクリアで、黒みがありますが、はっきりと明るめに聞こえます。ドラムキックも明瞭で硬くはありませんが、まとまりがよく、比較的キックしているポイントがわかりやすく、ベースラインに埋没する感じもありません。個人的にはこの見通しの良い感じモニター的な低域は、かなりわかりやすいです。空間成分が多いというわけではなく、量感は比較的あるので、クリアなわりにスカスカ感もありません。アタックの強調は少し感じられますが、それほど強くないので、こういう音をタイトとは私はあまり言いませんが、人によっては充分にタイトと表現するであろうまとまりのよさがあります。
ドラムキックは胴鳴り感は相対的に抑制されているので、ライブ感が強い感じでもなく、少しスリムな印象を受けるかも知れませんが、それがリズムのまとまりの良さに繋がってもおり、膨らむ感じは抑えられているので、篭もる印象はほとんど受けないでしょう。ベースとキックのレイヤリングは良好に思えます。
低域弦楽は厚みはそれほど強調されず少しクリアな音に思えますが、重みは感じられるので一定の重厚感はあると思います。弦の弾みも良く、浮き上がりが良い雰囲気もあるので波打つ躍動感は充分に感じられ、弦楽が床面を形成している曲でのグルーヴ感は悪くないと思います。JAZZや室内楽はちょっと楽しげに聞こえます。
低域は全体的な評価としては、やや明るいキャラクターでクリアな雰囲気に思えます。しかし深みもしっかりとあり、地熱も感じられ、薄っぺらい印象は受けず、充分な安定感があります。量感は全体的に少し抑えられており、中低域に後退的な傾向があることから、もしかするとわずかにスリムな低域に聞こえる可能性がありますが、このイヤホン自体が比較的中域がスッキリして薄味なところもありますので、全体的なバランスを考えれば悪くありません。
中域「奥行き、清潔、見通し感」
中低域からの後退によって、低域と中域には少し断絶があり、低域の熱気は中域以上ではほとんどニュートラルといえるほどになります。暖かみの不足は中域で色調を少し薄くするところがあり、自然な雰囲気を保ってはいますが、それでも人によってはボディの不足を感じさせることがあるかも知れません。結果として、音は少し薄く、全体的に根元に安定するよりは浮き上がり気味に聞こえる可能性があります。またボーカルが少しカサカサしているという感触を感じる人もいるかも知れません。
中高域への前傾は角度がきつくなく、ボーカルやギターを強く押し出すことはありませんが、適度に立体感をもたらしていて、楽器音の定位に奥行きが感じられるようになっています。中域で楽器音の色が少し薄いこともあって、ボーカル周りには清潔感があるので、ボーカルへのフォーカスは充分ですが、ボーカルはフォワードポジションではありません。
ギターサウンドはゆるやかな前傾とより高域での強調の結果として、のびやかで、アタックやクランチ感よりはディストーションの高さを意識したサウンドになります。艶やかな色気を感じさせる音ではありませんが、開放的で軸が立って聞こえ、ディストーションを聴かせる際に奏者がギターを立ち上げるパフォーマンスが見えるかもしれません。またエッジは充分に立って煌めき感も乗って聞こえるので、華やかな雰囲気があります。
ピアノは明るく、アタックも適度にあり、煌びやかでどちらかというとタイトな雰囲気があります。ふくよかさや安定感のある雰囲気ではないので、大抵の曲で少し走って聞こえると思いますが、リズミカルでエッジも立っており、軽やかかつ快活な雰囲気はよく出してくれるでしょう。量感的にやや不足があり、沈み込みが足りないと思うかもしれませんが、自然な実体感があり、キンキンとした細い冷たい音ではありません。存在感の上では埋没することはほとんどないと思われます。
アコースティックギターは煌びやかさが充分にあり、つま弾きにリズム感があるパーカッシブな雰囲気も比較的よく表現されます。そのためキレや疾走感が感じられます。アコースティックギターの音色はやや金色に色づくと思いますが、色調は濃くなく、基本的には透明感が感じられるはずです。これはアコギの音が濁りがなく澄んで聞こえるという意味ではなく、たしかに上辺はさわやかですが、音の下側には澱のような金属感とボディの共振が感じられるはずです。そのため全体像は軽やかでリズミカルに聞こえやすいところがあるにしても、深みも存在しています。
中域は人によっては少しスカスカして感じられる可能性はあります。色味は少し薄く、とくにボーカルはのびやかですが、ふくよかさに欠ける印象を受ける可能性は高いです。ピアノ音もわずかに落ち着きがないと思うかも知れません。しかし個々の楽器音はよく定位され、分離も良く、それぞれが少し明るくリズミカルで音楽的な個性が感じられ、活き活きとしていますから、音楽全体のダイナミックさやエネルギッシュさよりも音楽性やリズム感を重視する場合、この中域は非常に魅力的に思えるはずです。
高域「開放感、リズミカル、風通し」
このイヤホンの特性をわかりやすく説明する関係上、高域について述べるべきことのおおよそは中域部分で解説してしまいましたので、ここで敢えて述べることは多くありません。
まずハイハットですが、適度な煌びやかさがあって粒立ちは細かくも、透明感が意識されていて、臭みがありません。やや金属光沢感が強いとは言えないので、薄味に思えるかも知れませんが、ビートはしっかり聞こえます。疾走感は比較的丁寧に出て、高さも感じられるのは利点です。欠点としては荒々しさはそれなりにありますが、わずかにパワーに欠ける印象を受けやすいところでしょうか。外連味が強い音ではないと思います。
高域の全体は開放的で高いところまで音が拡張されている感覚があります。音楽全体が少し軸が立っているように直立して聞こえやすい感じはありますが、この高域の存在が音場の見通し感に大きく貢献していることは間違いありません。
ボーカル「すっきり、ナチュラル、のびやか」
個人的には実体感の面でわずかに不足を感じるので、決してボーカルが味わい深いというイヤホンというわけではないと思いますが、ボーカルは高い次元でバランスが取れています。甘味は適度にあり、子音が尖らないほどにはボディがあり、息はのびやかで、やや薄味なのでわずかにかすれる感じはありますが、それなりにコケティッシュな媚びも感じられるので、艶味があります。ややすっきりしすぎている気がしますが、清潔な空間で聞こえるので埋没感はありません。若干淡々としやすいところはあるので、感情表現に欠けると思う可能性はあります。また男声ボーカルに渋みとかコクを求める人は少しすっきりしすぎていると思うかもしれません。
音場「高さ、見通し、風通し」
高域の高さは充分で、音場は風通しが良く聞こえます。低域が適度に深みを表現するので、縦軸の立体感はこの価格帯では良好であると言えます。中域では音が全体的に遠のく感じはあり、やや奥行きが強調されますが、個々の音は自然なつながりを維持しており、とてもよく調整されています。音場の幅も良く、頭外的で、広々と感じられるはずです。価格帯では非常に優秀な音場を持っていると言えます。
全体印象
音場の広さは優秀で、定位を重視しつつも音の自然な質感にも配慮が見られます。私の場合、Starfieldの音は少し薄く聞こえる感じがありますが、見通しはよく、すっきりと見晴らせるような開放感は非常によく整えられています。押し出し感のある感じではありませんが、リズミカルな音楽表現は丁寧に再現され、ノリノリな音を奏でるわけではありませんが、モニター的でありながらも音楽性に欠けるといったこともありません。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
やや色味が薄い。やや音の色調が薄い印象を受けます。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鋭い。とげとげしい感じではありませんが、音のエッジが立っています。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。中高域が鮮やかとは言えませんが、全体的に明るめで見通しが良い音場です。 |
派手さ (派手/地味) |
普通。派手さはそれほど強くありません。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
普通。ソリッド感はわずかに強調されますが、手がかりが硬い音ではありません。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや尖る。エッジは少し鋭いです。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや穏やか。全体的にすっきりとしています。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや嫋やか。アタックはそれほどでもなく、低域の量感も多いというわけではないので、若干スカスカするくらいの雰囲気かも知れません。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
普通。厚みはあまりないので、音が豊かという感じではありませんが、自然な雰囲気を持っています。 |
太さ (太い/細い) |
普通。音はナチュラルな太さか、それよりやや細く思えます。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
普通。粒立ちは高域で結構目立ちますが、基本的にはスルッとしたシームレス感があります。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
ややきめの細かい。音の粒立ち感は細かめです。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
澄んだ。清潔感があります。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾燥した。個人的には少し乾燥しているように思われます。 |
重さ (重い/軽い) |
普通。上に高く、下に深くで、総じて重心は真ん中かわずかに上よりに感じます。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや澄んでいる | 澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
やや明るい | やや明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか | 伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いてる | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
やや薄い | やや薄い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
普通 | 普通 |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややスカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
普通(わずかに後退的かつ前傾的) |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
広い |
定位感 (頭内的/頭外的) |
頭外的 |
分離感 (拡散的/密集的) |
拡散的 |
美点
- 見通しが良い
- 音場が広い
- すっきりしている
- 風通しが良い
- 音の粒立ちが良い
- のびやかなサウンド
- 清潔感がある
- 明るい
- ウォーム
- クリア
欠点
- 音の色味が少し薄い
- 外連味に欠ける
- 派手さに欠ける
音質特性(サウンドシグネチャー)
[高域]
- 抜けの高さ*2:A
- 金属光沢感:B
- クラッシュ:A
- アタック:B
- ツヤ:B
- ディテール:A
見通しが良く、高さは充分で繊細さもあり、非常にスッキリと聴けますが、やや音像の押し出し感に欠ける印象を受けます。
[中域]
- 甘味:B
- 広がり:B
- 濃厚感:C
- コク:B
- 太さ:B
- ディテール:B
中域は適度な温かみがあり、ニュートラルに近い聴きやすい空間で、見通し感も良いです。ややスカスカした雰囲気があります。
[低域]
- 深さ:B
- 重さ:B
- パンチ:B
- 厚み:B
- 熱気:B
- 鳴動:B
- ディテール:A
低域は明るく少し見通し感が良いクリア系の音ですが、空間は適度に密度があって床が抜けるようなスカスカした感じはありません。深さもよく感じられ、レイヤー感があります。
[解像度・立体感]
この価格帯では優秀な音場表現で開放的です。音場を重視する人は選択肢に入れておいて損はないでしょう。
[パーカッション・リズム]
- ドラムの雰囲気:スネアは透明なハイハットとの共存を考えられているのか、リズムはタイトだが疾走感はハイハットの方が主役に感じられる。バスドラキックは明るくくっきりとわかりやすい。明るめのパズンパズンないしパツンパツンといった感じ。
- ハイハットの雰囲気:ハイハットは清潔に白く、透明感がある音に聞こえ、高く聞こえやすい。
- 弾け:B
- 粘り:B
- 重み:B
- 濃さ:B
- スピード感:B
パーカッションは一般にスピード感の遅れはありません。スネアの活きは良く、タイトに弾みを聴かせてくれます。一方でハイハットの方はリズミカルに疾走感を出す感じが強く、スネアとハイハットでうまく役割分担されている雰囲気があります。
[ボーカル傾向]
個人的にはこのイヤホンの表現するボーカルのボディは不足するか充分かの境目にあり、音源によって薄いと感じたり、充分だと感じることがありますが、濃いと感じることはありません。やや清潔系ですが、甘味も適度に乗る程度にはボディがあります。すっきりめののびやかなボーカルサウンドが好きなら、むしろこの価格帯で最高のボーカルホンに思うかも知れません。
【4】官能性「開放的でリズミカルに走る爽やかな音楽」
秋葉原区立すいそうがく団!「God knows...(アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」より)」(vs Shuoer Tape)
【Shanling M6で鑑賞】まず特筆すべきは音場の見通し感の良さとやや薄いくらいの適度な濃度感です。管楽の色味はわずかに薄く透明感があり、人によっては色気をもうちょっと出して欲しいと思うかも知れませんが、そのおかげでハイハットの疾走感が埋もれずにきれいに響いてくるので、音楽に走り出すスピード感があります。管楽は上向きに透明感のある音を少し立てて聴かせるので、音楽に浮かれた上昇気流を感じることができ、音場にある風通しの良さとも相まって、青空の下で音楽を奏でているマーチングバンドの開放感が感じられます。音場は広いので楽器音の定位も良好です。
だいたい同じ価格帯で、静電型ツイーターを搭載しているShuoer Tapeと聞き比べてみます。Shuoer Tapeは高域の粒立ち感と風通しの良さでほぼStarfieldに匹敵しますが、中高域はもう少し濃いはっきりした音を出すので、金管の音色はStarfieldに比べてよりはっきりと前向きに少し太く音を出します。そのため音の華やかさや艶味、渋みに至るまでTAPEの方が活き活きして音が聞こえると思いますが、その代わりにStarfieldにあったアウトドアを思わせる開放的な雰囲気はなくなり、やや室内楽に近く聞こえます。またStarfieldのリズム重視な雰囲気に比べると、もう少しメロディーラインを強く意識させるのでミュージカルな雰囲気が強まります。Starfieldに比べるとTapeの方が音が混じり合う感じはあるので、音場重視ならStarfieldですが、音の充実感という面ではTapeの方が目鼻立ちがくっきりしているので好まれるでしょう。
Starfieldの音に華やかさがないわけでは決してありませんが、目鼻立ちの面ではしょうゆ顔の音を奏でるところがあるので、吹奏楽で金管の深みのある音を聴きたい場合、Tapeのほうが好ましく思える可能性が高いです。個人的な意見では、吹奏楽ではミュージカルに聴きたい人が多いような気がするので、Tapeのほうが適しているんじゃないでしょうか。
YUI「again」(vs SIMGOT EM2)
【FiiO M15(Pure Music Mode)で鑑賞】Starfieldのいいところは音量を上げてもあまり音楽が破綻せず、聴きづらいところや圧迫感をあんまり感じないところで、こういう感じはモニター的だなと思うんですが、このイヤホンで聴くロックはちょっと私の好みから若干外れる気がするんですよね。非常にクリーンで見通しが良いんですけど、エレキギターが押し出してくる感じが薄くて、黒みもあまりなくて妙に上品聞こえるんですよね。リズムは悪くないというか、疾走感もあるんですが、ハイハットも少し清潔すぎる気がします。ボーカルものびやかすぎて迫真力みたいなものが少し減っている気がするんで、「悪くないけど、なんか心に響かないかも知れない」ってところはあります。
そういうわけでまあ個人的には同じ価格くらいだとSIMGOT EM2のほうがやる気のある音を出してくれるんじゃないかと思います。Starfieldに比べるとギターとボーカルが近くてしかも少し押し出し感があるんで、Starfieldのちょっと奥ゆかしい中域になれていると、最初は「おおっ!」とのけぞるかもしれませんが、ギターはちゃんとギラついてますし、ハイハットもパワーがあって少し派手にガシャリ立ててくれます。ドラムももう少し力強くせり上がってくれる感じがあるんで、全体的に迫力が増して聞こえます。
私がSIMGOTの音が好きだってのもあるのかもしれませんが、おそらくStarfieldはあんまりロック向きではないと思うんですよね。もちろんすっきり聴けるし、音量による荒ぶりみたいなものが出にくいんで、情緒安定してて聴きやすいんですが、個人的にはロックを聴くにはもうちょっと情緒不安定なほうが似合う気がします。
FIELD OF VIEW「DAN DAN 心魅かれてく」(vs TinHiFi T4)
【FiiO M11 Pro SS(Pure Music Mode)で鑑賞】なんていうかこういう爽やかなポップスには個人的にStarfieldすごくいいと思うんですよね。全体的に楽器音が見通しよくて圧迫感がなく、ボーカルはしつこくなくて粘っこくならず、本当にすっきり歌い上げる感じになります。ボーカルまわりの楽器音もよく整理されていてボーカルフォーカスが良いですが、スネアの打ち込みは結構良くてドラムにはタイトな躍動感があるのでリズムはとても気持ち良く決まります。
同じ価格帯で比較的良くライバルとして言及されるTinHiFi T4と聞き比べてみます。実際、音が滑らかで中域ですっきりしているような感覚は結構似ているかも知れません。Starfieldとの大きな違いはまずエレキギターです。Starfieldが比較的立った、のびやかなエレキギターだったのに対し、T4のエレキギターはもう少しゴリッとしていてよりロックです。海外レビューなんかではT4よりStarfieldのほうが音楽的という評価もあるんですけど、少なくともこの曲から私が受ける印象では、T4のほうがちょっと外連味があってロックテイストに聞こえるんで面白いです。ただ、解像度という面ではわずかにガチャガチャした印象を受けます。T4も比較的ツルッと音を流れるように聴けるイヤホンですが、Starfieldに比べると手がかりは多いので目鼻立ちは濃く、同じスッキリ感でもツルツル系のT4とさっぱり系のStarfieldでは性格が異なります。
少なくともT4はStarfieldに比べると色気を重視してロックな音に聞こえます。爽やかで開放的な雰囲気はStarfieldの方が強く、音場もより広いです。イヤホンとしての完成度としてはわずかにStarfieldの方がセンスの良さを感じる気がしますが、実質的にほとんど差はなく、とくに中域の味付けの差で選んでも良さそうです。濃い音が好きならT4、爽やかさ重視ならStarfieldといった具合で。
BEST OF BEST 1000 FIELD OF VIEW
【5】総評「開放的で荒ぶることのないすっきりしたサウンドが好きなら、おすすめ」
とにかく音場が開放的で、高さと奥行きがあり、圧迫感がありません。若干音の色調は薄い気がしますが、リズミカルで清潔感もあり、粒立ちも繊細で風通しの良い音を持っています。音像をくっきり出すタイプではありませんが、はっきりと感じ取ることでき、モニター的でありながら音楽性も感じられる万能なチューニングになっています。ビルドクオリティも高く、独特のデザインがオシャレでこの価格帯の定番機になりそうな機種です。
- すっきり見渡せる中域
- 清潔で風通しの良い音場
- 外連味に欠け、音が少し薄い
MoonDrop Starfield Carbon Nanotube Diaphragm Dynamic Earphone
【関連記事】
*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。
*2:全般的に言えることですが、この評価は主観的であり、しかも音はバランスと好みが大事だということに留意して下さい。Aのほうがその分野では優れていると判断していますが、たとえばシャリ付きが苦手な人はクラッシュがAの評価のイヤホンは避けるべきです。あと稀にSが出てくると思いますが、Sは「やりすぎ」という意味で、必ずしも良い評価とは限りません。ただしその音質特性が好きな人には良いでしょう。
*3:価格帯を考慮した相対評価です。
*4:価格帯を考慮した相対評価です。
*5:価格帯を考慮した相対評価です。
*6:主にサ行が刺さるかどうかです。スーハーしている感じが強いかです。
*7:主にツ音が尖るかどうかです。Aに行くほど尖ります。