- 【1】装着感/遮音性/通信品質「Jabra Elite 65tのような装着感。通信品質はまとも」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「モバイルバッテリー機能付き」
- 【3】音質「バランスの良いドンシャリ。はっきりめの中高域&高域と、やや厚みのある低域が音楽に立体感を与える」
- 【4】官能性「熱気のある豊かな低域と中域」
- 【5】総評「ちょっと湿っぽいくらいの情緒的な曲におすすめ」
- 【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「Jabra Elite 65tのような装着感。通信品質はまとも」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 | 10h/210h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | AAC/SBC |
防水性能 | IPX7 |
音質傾向 |
弱ドンシャリ、はっきり、見通しが良い、チャリチャリ、明るめのサウンド |
この機種は以前レビューしたUENO WA-X1と同じ機種のようで、ブランドは違うけど届いた商品は全く同じ。販売者も同じ。なので以下のレビューの基本的な部分はほぼWA-X1からのコピペになる。
イヤホンのハウジングはJabra Elite 65tを意識したようなデザイン。こちらのほうが軽量なので付け心地は軽い。遮音性はそこそこ良い。
対応コーデックはAAC/SBC。私がテストした範囲では通信安定性は高め。外出時でもほとんど途切れがなく、駅のホームなどで少し途切れるかなといった程度。
ただAAC接続時に、時々プチプチするときがある。理由はよく分からない。
テスト環境
今回のテストはAAC接続をCayin N6IIで、SBC接続をONKYO GRANBEATで行っている。
【2】外観・インターフェース・付属品「モバイルバッテリー機能付き」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。インターフェースが物理式でクリックがしっかりできる。反応も良く、この点は良好。
また大容量充電ケースはモバイルバッテリーとしても利用可能だ。
【3】音質「バランスの良いドンシャリ。はっきりめの中高域&高域と、やや厚みのある低域が音楽に立体感を与える」
音質的には中域をはっきり聴かせてボーカル周辺やギター、ピアノにしっかりとしたツヤと明るさを出しつつ、低域にも厚みがあってボリューム感を出す。低域は中低域が出張る感じではなく、比較的重低音まで透けて見える感じで、中高域にもクリーンな印象があるので全体的に透明感がある。高域も少しシンバルが目立つので、大きく括ればドンシャリに聞こえると思う。
同じ価格帯ではたとえばX11 sky-freeと聞き比べて見ると、同じく中高域はっきりしているにしても、sky-freeのほうが中高域が前面に出てきており、こちらは低域のほうが前面に出ているくらいのバランスになる。
もうちょっとこの機種と似ているのがAUKEY EP-T16Sで、中高域と低域をはっきり聴かせるのは一緒だが、EP-T16Sのほうが中低域が引っ込んでおり、重低音にそのままつながっている見通し感がある。WA-X1(F8)はもうちょっと低域で厚みを強調する。
同じように中高域で明瞭感を出しつつも、これら2機種よりはボリューミーなサウンドといえばわかりやすいだろうか。
美点
- 中域に明瞭感がある
- 低域は厚みがあり、ボリューム感がある
- 基本的にはドンシャリで音響に奥行き感がある
- 男声も女声もボーカルの聞こえは良い
- 重心が低く、安定感のあるサウンド
- 高域も一定の明るさがあり、そこそこディテールがある
欠点
- 低域の膨らみがわずかに中域に影響するかも知れない
- 重心が低いので曲によってもっさり感が出る
- 低域はややゆったりし、スピード感も早いほうではない
[高音]:高域は意外と明るく、シンバルの空気感は結構しっかり出る。白味も感じられて刻みも良いのでディテール感は良好。ただしより高い高域でのシャープネスは抑えられていて、輪郭はマイルド(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は中低域付近で厚み、中高域の高いあたりではボーカルがやや遠ざかる感じがあるが、明るめ。中低域に厚みがあるので中域では太さのある充実感があり、音の広がりを感じられる。ピアノ音にも厚みがある。ギターもそこそこ厚みを感じる。
[低音]:100hz~40hzまで鈍い振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域はやや厚みを出し、音場にはウォーム感がある。ベースやバスドラムのキックはやや広がりが強く、緩い印象を受けるかも知れない。ややゆったりしていて、スピード感のある低域という感じではない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:低域の厚みが強めでやや重厚感が強い。少し前面に低域が出てくるが、支配的と言うほどではないので、低域ジャンキーを満足させられるかは微妙なライン。そこからは少し凹凸がありながらも全体として上に向かって三角形になっているが、高域で少し強調が加えられてシャリシャリとした手がかりがあるドンシャリ(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムセットは、ややバスドラムのドンが広めに聞こえる。タムも粘る感じがあり、バズンバズンと重めのサウンド。ハイハットはやや白味があり、刻みもあってシャリシャリした歯ごたえが少しあるが、輪郭はマイルドでシャープさを強調する感じではない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは濃く、伸びも良く聞こえる。渋みもしっかり出る。女声ボーカルは中域でよく聞こえるが、中高域でわずかに後退して聞こえるので、明るいアイドル曲はサビなんかでは少し埋没して息苦しく感じるかも。
【4】官能性「熱気のある豊かな低域と中域」
ORESAMA「OPEN THE WORLDS」
この曲だとサビで少しボーカルが遠くなる感じがある以外は、比較的良くボーカルが前面に出てきているし、ピアノ音に厚みがあり、低域に重厚感もあって充実感がある。高域の明るさもほどほどよく、充分に明るくシンバルの存在感があるが、メインでノリノリのピアノよりは目立ちにくいバランスになっている。人によってはわずかに中低域と中域の分離がモヤッと感じられるかも知れないし、もう少しボーカルを前面に出した方が楽しい気もするが、ややピアノ重視のJAZZ味のある感じのこのイヤホンの表現も悪くない気がする。
TVアニメ『叛逆性ミリオンアーサー』第2シーズンOP主題歌「OPEN THE WORLDS」(特典なし)
RIRIKO「時の砂」
こういう温度感重視でムード感のあるポップスには向く。中低域に厚みがあり、中域を充分に温めてくれるので、ボーカルに甘味が充分にあるし、潤い感も充分出る。高域はシンバルの音に少し明るさを出してくれるので、マイルドだがきれいに刻みが聞こえる。ボーカルの抜けもほどよい。ギター音の温もり感も良好で深みがある。
TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』OP主題歌「その未来へ」
放課後ティータイム「天使にふれたよ!」
ロックを聴くにはややゆったりした感じで、温度感重視だが、この曲ならむしろその暖かい感じが良い。ボーカルはややふっくらと甘味を強調し、また少し湿っぽいツヤがあるので、情緒的なこの曲に向いている。ギターやドラムも少し膨らんで暖かく空間を埋める。それでいて、シンバルの刻みはしっかりしていて、高域で暗い感じもあまりなく楽しめる。
TVアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」ED主題歌「secret base~君がくれたもの~(10 years after Ver.)」
この曲も中低域のほどよい厚みが充実感を与えてくれる。ボーカルは中域で甘く、潤いがあるので情感によく訴えかけてくる。ギターやシンセ音も中域で豊かに広がり、音に暖かみがあって、しかも高域で適度にキラキラ感も出る。なかなか絶妙なバランスでこの曲を楽しませてくれる。
【5】総評「ちょっと湿っぽいくらいの情緒的な曲におすすめ」
連続再生時間10時間というスペックは素直に魅力。Jabraみたいなハウジングデザインも装着感が良好で悪くない。音質も意外とバランス良くて、低域のスピード感が少しゆったりしているかなってあたりは気になるけど、逆にアコースティックな曲では良さそうな感じで、JAZZやクラシック、しっとり系のポップスなんかで妙味を感じた。
【6】同価格帯の実力派完全ワイヤレスイヤホンとの聞き比べ
vs EnacFire Future Plus(SNoW「NightmaRe」)
まず低域に重厚感があるという点で共通するEnacFire Future Plusと聞き比べてみる。まず最初にF8とFuture Plus、この曲で個人的にどっちが好みかと言えば、Future Plus。大きな差は中域の充実感でしっかり太く濃厚に聴かせるので、ボーカルは力強いし、楽器がそのボーカルと一体的になって、よく囲い込んでいる充実感がある。もちろんこうした音の傾向を「ヴェールがかかっている」と表現する人もいるので、そういう意味で解像度の面から否定的に捉える向きもあるかも知れないが、少なくとも私は説得力を感じるのでヴェールがかかってようが、楽しければそれでいい。少なくともこの曲の持つ熱気をよく出すのはFuture Plusのほうであり、低域から中域にかけて沸騰したサウンドが味わえる。
それに比べてF8の音はボーカル周りがすっきりしており、そういう意味ではヴェールが剥がれた感じはあるが、面白いかというと、そうでもない。低域と中域の間に分離が感じられて、ちょっとスカスカするのも個人的には気になるところで、音は良く聞こえるけれど、音楽としてはいまいちこの曲のライブ感が感じられない。少なくともFuture Plusの音を聴いた後だと、普通かなって感想になる。細かいところだが、バスドラのスピード感にももたつきを感じる。
vs EnacFIre E18 Plus(榎本温子「Be My Angel」)
低域寄りかより高域方向に寄っているかの差はあるものの、EnacFire E18 PlusとF8は見通し感が良いなど共通点は多い。ややダンス色のあるこういうポップス調の曲は比較的どちらも得意という感じだろう。
聞き比べて見ると、ボーカルそれ自体の表現は似通っていて、それほど差を感じない。むしろ周囲の感じや高低バランスが異なる点が印象の差になっており、低域により厚みのあるF8に比べて、E18 Plusのほうが開放的な音場になっており、そのせいかボーカルも心なし上向きに聞こえる。低域のスピード感も異なり、E18 Plusのほうが薄味であるが、その分ゆったりした感じがなく、タイトに聞こえる。そういう意味でより見通しが良いのはどちらかと言えば、E18 Plusとなる。
一方で、F8の音には低域に厚みや深みが感じられるので、その分床面がしっかりしており、音にも奥行き感が感じられる。個人的な好みでいうと、最終的にはF8がより聴き応えがあるかな。低域のおかげかボーカルも一段濃く聞こえる。
vs Hiyoo A66(A8-C5)(Aimer「Blind to you」)
Hiyoo A66とF8はどちらも低域に深みと広がりがあり、重厚感があるのが共通している。ただ高域の明るさが異なるので、ボーカル表現はF8のほうが明るい。そのため曲全体の風通しはF8のほうがすっきりしていて、抜けも良く感じるだろう。A66の音は中域に充実があり、もっと濃厚で深みがあり、渋い。ボーカルのみずみずしいあたりやギターの色彩によく焦点を合わせているのはF8のほうだと思うので、この曲の味わいをトータルに考えると、A66よりはF8のほうが一番おいしいところをきれいに味わえるはず。一方で、濃厚で深掘り感のあるA66の音はゆったりとした懐の深さが魅力で、ボーカルやギターが深淵に向かって落ち込んでいくような重力感があり、これはこれでこの価格帯では圧巻の音である。
映画的なドラマ性のあるサウンドを求めるならA66、よりポップスライクに聴くならF8といったところだろうか。どちらにせよ充分な重厚感とボーカルフォーカスがある。
Torches (初回生産限定盤) (DVD付) (特典なし)
vs SRUIK D09(MYTH & ROID「PANTA RHEI」)
同価格帯でF8と同じく弱ドンシャリ感があるサウンドを持っているのがSRUIK D09。F8との大きな差は低域の存在感がF8に比べて薄いのと、全体的に音圧低めでマイルドに聞こえること。そのため音場の深みや立体感、奥行き感はF8が明らかに勝り、コントラスト感もはっきりしており、音によりシャープさがある。そこで音のキレという点ではよりメリハリ感を感じるのはF8。
しかし一方でボーカル付近から上の中高域より上の、この曲の詳細なあたりが比較的良く聞こえるのはD09のほう。D09の音はより上の高域方向で立体感が感じられ、低域のマスキングもないため、よりボーカルフォーカス感もある。全体的に少し淡いところはあり、音がゆるいところはあるものの、スピード感は充分でメリハリに劣る感じはない。
TVアニメ「異世界チート魔術師」オープニングテーマ「PANTA RHEI」
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。