実践的で消費者目線のテストで好評を博している『家電批評』5月号でCoumi TWS ANC-860の完全ワイヤレスイヤホンが低価格ANC機種のベストバイに選ばれたようです。「あの、せっかく受賞したんで……。なにか一言ください」ってCoumiの人からメールきました。
なお、『家電批評』が読みたいけど、入手できない人のために、ほぼ同内容の記事がネットにもあがっているようです。ランキングなど一部内容は割愛されてますが。内容がちょっと提灯っぽいような。
COUMI TWS ANC-860の音質は濃厚で骨太なリッチサウンドで、高級感があり、かなり上品で個人的には大好きな音です。SENNHEISERのMomentum True Wirelessみたいな音が好きなら絶対気に入る機種ですね。家電批評の人、こういう音が好きなのかな?そのわりにMTW2は低評価だった気がしますが。
ただし、音は比較的おすすめできますが、ANCの効きはそんな強くなかったはずですけど。実際今この記事を書きながら試してますが、やっぱ微妙だなぁと思ってます。
ANC TWS-860の音は批評家的に言うと、マイクロディテールがはっきりしないところがあるので、オーディオマニア向きのサウンドかと言われると厳しいところがあることは事実です。しかし一方で日本語音域へのフォーカス感がよく、大口径ドライバーのせいか解像度もよく、日本語が美しく聞こえるサウンドを持っており、甘くふっくらした声色が味わえ、ボーカルホンとしても魅力的です。
クラシックは拡張性の点で物足りないのですが、奥行き感がある音場で広く聞こえますね。中域がしっかりしているので質感的にも自然で、フルオケは完璧ではないですが、言語聴覚特性上、日本人なら聴き応えを感じるサウンドです。日本人向きといえるチューニングがされており、ポップスなども日本語歌詞なら満足度が高いはずです。
音質的にはポップス、バラード好きの人にかなり刺さると思うんですが、ANC効果は高くないので、ANC機種でベストバイと言われると、「え?違うんじゃない?」って感じかな。
そうしてちょっと違和感を感じながら、家電批評のベストバイランキングを見ると、EarFun Air Proの評価が結構低いのが気になりますね。個人的には家電批評のランキングの中の機種だと、1位か2位くらいの気がしますけど、どうなのかな。コメントは「いびつな低域が音楽のスピード感を壊している」っていう感じになってましたね。ただ、これは個人的にはちょっと辛すぎるというか、やや短絡的な評価の気がします。
EarFun Air Proの低域から中域は実際にはハーマンターゲット IEM 2017にかなり忠実なので、オーディオマニア向きのスタジオチューニングの典型的なサウンドに聞こえるはずです。ただ、深さは足りないので、音の沈み込みが不足しやすく、家電批評の評の要点は、ややもたつく感じがあることを言ってるんだと思います。ドラムキックのドンが耳に残る傾向がありますね。個人的にはそれが聞き取りやすくていいんですが、よく考えると、たしかに人によってはドンが強く耳に残って中域に集中しづらいという意見はありそうです。
ただ低域の欠点らしきものだけに集中してことさらに批判するのはどうかな?もっと音の全体を見て批評すべき気がしますね。だいいち、ANC TWS-860のほうはドンは弱いけど、逆にドカドカしていてボンボンしやすく膨張的で、音場の中で豊満すぎるように聞こえます。これはこれで別の人にはもっとうるさくて、中域を埋没させやすい「いびつな低域」に聞こえるんじゃないかな。結局、低域のどういうところがいびつなのかを明らかにしないと、ただ「いびつだ」と言われても話にならないような気がします。もう少し言葉を尽くすべきでしょう。
低域がうるさいというのであれば、より高域で典型的にハーマンに近く、逆に低域はハーマンを離れてよりトラッキングモニターライクな「どフラット」になっている1more Comfobuds Proは家電批評で絶賛される可能性があります。チューニングしている人が明らかに音響現場の人だってわかる形ですし、同じ音響現場に棲息している家電批評の人に刺さる可能性はありますね。今回はテストされてませんでしたけど。
まあ、私自身はハーマンマンセー派ではなく、推奨するニュートラルターゲットはfinal AudioのAシリーズ(というかfinal A3000)のサウンドに近く、ハーマンよりだいぶ高域を拡張した高域寄りのサウンドなのですが。つまりAir Proの音は私の推奨するニュートラルターゲットにより近い音です。
それから家電批評の人は音響現場の人なので、たぶん普段音を聞くのにSONYあたりのモニターヘッドホン使ってると思いますし、モニタースピーカーの音に日常的に接しているはずですから、Air Proの低域に違和感を覚えるのには納得できます。この方たちは別記事でSW-HP10Sを絶賛してましたし、音の好みがスタジオトラッキングモニター系のサウンドであることは間違いないでしょう。そして、SW-HP10Sのような「ストンと落ちる」トラッキングモニター系の低域に慣れていると、Air Proのように耳に残る低域は明らかにうるさいと思うのは納得できますね。むしろSW-HP10Sはどっちかというと人によっては中域うるさい系ですし。
この方たちが普段聞いているヘッドホンがAKG K371だったり、SHURE SRH840だったり、SRH1540といった、より音域を広く聞かせる音を持つレコーディングモニター系の音だったら、EarFun Air Proを推してたと思います。
AVIOT TE-D01mが最下位で、「淡白で面白みのない音でエネルギーに欠ける」って評されていたのには思わず吹き出しました。そのとおりなんですけど、AVIOTはあれを狙って作ってることが明らかにわかるので、その淡白さの向こう側を聴いてほしかったかなぁ。好みかどうかは別にして、AVIOT新時代を感じさせた興味深いサウンドだったので、一言で片付けられるのは個人的には惜しい気がしますね。
家電批評の言うような、面白くないところ、地味なところ、物静かなところが、聴き込むと風味を醸し出してくるスルメイヤホンで、音楽の贅肉を徹底的に削ぎ落としたような音です。AVIOTってこんな音作りできるのかって感動しました。こういう音作りをできるブランドは稀で、AVIOTの確かなチューニングセンスを感じましたね。だからといって「おすすめですか?」と言われると、「面白さが分かる人は限られそうな気がするので、あまりおすすめじゃありません」って答えるんですけど。
要は精進料理のような通好みのすごくいいイヤホンですが、このサウンドを楽しめる境地に達している人は少ないような気がします。あんま売れないだろうという機種ですが、私からすれば間違いなくAVIOT史上最高のチューニングですね。
ま、TWS-ANC860について今回語る内容はこんなもんかな。受賞おめでとうございます。『家電批評』は一見表面的なことしか書いてないのですが、深く読むとなかなか楽しめますね。
ちなみにcoumi TWS-ANC860は商品ページにあるクーポンで現在25%OFFになるようです。
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