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【コラム】イヤホンの「歪み」とは何か、その簡単な確認方法[newspring NSE1000-Gで比較する]

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「歪み」って何?

「歪み」って何?



 

 

歪みとは何でしょう?

 ある正弦波を想像してみましょう。それは非常にキレイで均整の取れた弧を描いています。この状態から振幅が限界を超えるまで音量を上げていくと、正弦波は方形波(矩形波)のように見え始め、音が歪みます。

 下図は一番上が正弦波、二番目が方形波です。

Waveforms

 

 さてこうした歪んだサウンドは音として聞くと、倍音成分が必要以上に強調されており、音の焦点がぼけたような、あるいは音像が背景から十分に分離されていないように聞こえます。聴感上はこのようにして歪みは認識されます。

 歪みは音楽的には悪いことではありません。真空管のサウンドを誰しも愛していますし、エレキギターの歪んだサウンドは豊かです。音楽制作の過程でテープマシンを利用して愛着の感じられる、温かみのあるアナログ感のあるサウンドを作り出すこともあります。


テープ・レコーディングの「音楽的な副作用」について。サチュレーション系プラグイン tips | Media Integration, Inc.
じっくり読んで楽しい読み物を1つ、お届けします。もともとWavesのウェブサイトに掲載されていた英文の記事を翻訳したものです。 楽器でも機材でもなんでもそうだと思いますが、深く知ることはうまく使いこなすことにつながります。「適当にいじってたらイイ音が作れた」もアリだと思いますが、「ここでアレを使ったらこうなるんじゃないかな?」と頭の中でイメージできれば、より自分らしいサウンドを生み出せるようになるのではないでしょうか(ある方はこれを「頭の中でパッチングする」と仰っていました)。素晴らしい曲、サウンドを創りだす方をたくさん見てきましたが、そういった方々はたいていご自身の物を深く追求されている方々ばかりでした。 というわけで本日は「テープサウンド」について。Wavesは先日、伝説に残るエンジニア、エディ・クレイマー氏が所有するAmpexの真空管テープレコーダーをモデリングした『Kramer Master Tape(Kramer MPX)』。この奇跡的なレコーダーをモデリングするにあたり、実機がもつ特性をどのように再現したのかという文章がありましたので、翻訳記事をお届けいたします。
 

 

 しかし、現代的なデジタルサウンドとクリアな音を求めるオーディオファンにとって、どちらかといえば歪みは敵です。歪みはトランジェントを失わせ、付帯音を増やし、音楽の情緒感に悪影響を与える可能性があります。基本的に原音忠実主義に則るならば、再生機器の歪みは低ければ低いほど良いとは言えるかもしれません。

 

「付帯音」とは何ですか?

 高調波歪みの高い機器で音楽を聴くと、サウンドの周辺に強調された倍音成分が存在し、これによって音像の輪郭がしっかりしない、音の焦点がぼやけたサウンドになります。これは解像度に直接的に影響します。すなわち再生機器における付帯音とは、歪みによって生じる原音にない不自然な倍音です。

 理想的な再生機器を考える場合、付帯音は取り除かれた方が原音忠実性が高いと言えるので、これをなるべく排除することは基本的に良いことです。

 しかし、重要なのは一部の付帯音は楽器音に表情を与え、それを暖かく感じさせ、より音楽的に感じさせるということを忘れてはいけません。イヤホンの客観的な評価基準としては音はクリアである方が良いとなりますが、主観的評価基準において、いつもそれが優先されるべきというわけではないのです。残響感や減衰感などとともに、歪みは音楽の空気感、雰囲気を作り出すこともあります。


アナログ機器特有の「特別な何か」とは?モデリング系プラグインの使い方 | Media Integration, Inc.
ハーモニック・ディストーション(高調波歪み)はアナログ録音において、アナログ録音特有の暖かさを付加することに役立てられてきました。この記事では、その使い方について説明します。 ハーモニック・ディストーションは、アナログ機器の仕様において頻繁に耳にする言葉ですが、何を意味するのでしょうか?また、オーディオを取り扱う日々の業務において、どのような役に立つのでしょうか? 音の深さ、強さ、ディストーションの重さ、またはそれらを複合的に変化させるようなデジタルツールは、多数存在します。 (Vitamin Sonic Enhancer、 Cobalt Saphiraなど) この記事では、アナログ機器特有のテンションを伴った高調波の暖かさに焦点を当てます。 デジタル録音によるレコーディングは、比較的きれいな倍音のパレットを残します。そのため、アナログ機器特有の暖かさを実現するには、意識的にミックスにハーモニック・ディストーションを追加してあげる必要があります。 ここでは、デジタル制作のためにモデリングされたアナログ機器ツールをいくつか紹介し、オプションや用途について解説します。
 

 

 実際の付帯音とは少し違いますが、イメージとしての付帯音を掴んでみましょう。以下の楽曲を聴いてみてください。冒頭は背景ノイズや歪みによって意図的に朦朧感のあるサウンドから始まっています。またサビ部分ではボーカルを含め音数が増え、うるさくなるので空間的な余裕がなくなり、立体感は減ってボーカルの焦点がわかりづらく、聞こえづらい印象を受けるかもしれませんが、より豊かで深みのある音楽に聞こえるでしょう。良い意味で付帯音のある音というのはこういうイメージです。

 

www.youtube.com

 

 付帯音は場合によって、クリアで原音忠実的なものとは別の音楽性を生み出すことがあり、良い方向に味付けすることもあります。それは場合によって原音より好ましく思えるかもしれません。こうした結果、人間はオーディオスペックの良いイヤホンだけを求めるわけではないのです。クリアに聞こえる高価なイヤホンより、泥臭い音のする安価なイヤホンの音が場合によって好みに合い、愛着を感じるということもあるでしょう。

 

newspring NSE1000-Gで歪みを聴いてみよう

 newspring NSE1000-Gはイヤホンの中ではかなり歪み耐性のスペックが良いイヤホンでクリアに音が聞こえます。

 

 

 ところが私がたまたま手にした個体は左耳側だけ歪みが極端に多く、音がクリアでないという欠点を抱えていました。その後、newspringさんのほうからレビュー用に完璧にチェック済みという個体を送ってもらえることになりました。

 

newspring NSE-1000G

newspring NSE-1000G

 

 そういうわけで実際、歪みがどのように影響するのかについて確認できるよう、歪みの多い不良品のNSE1000-Gと完璧に調整されたNSE1000-Gの1khzテストトーンの音を録音してみました。

 

録音機材

  • SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
  • 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
  • マイクプリアンプ:Type4053
  • Type5050 マイクアンプ電源
  • 出力:Antelope Audio Amari + Topping A90
  • オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
  • レコーディングソフト:Audacity

 

 

  ぶっちゃけSoundCloudでは高域がカットされてしまうらしいので、生で聴くほど高調波の歪みが出ないので差はわかりづらいと思いますが、不良品の方はハウリング音のようなものが聞こえ、チューニングが完璧な機種に比べて、音がまとまっていないでしょう。また視覚的にも、NSE1000-Gの不具合モデルは、右側を見てみるとバーの高さが合ってなく、凸凹しているのがわかると思います。

 実際の1khzトーンは歪みの酷いNSE1000-Gの不良品はキンキンした音がうるさく聞こえ、クリア感に欠けます。

 

簡単にできる歪みの確認方法とまとめ

 再生機器は基本的に歪みの少ないものを選ぶのが常道ですが、必ずしも極限までクリア感を求める必要はありません。歪みを簡単にテストしたいときはテストトーンを流して音量を上下させ、クリアに聞こえるかどうかで判断することができます。適正音量付近で歪みが多い場合は気を付けた方がいいかもしれません。とくに歪みに露骨な左右差を感じる場合は注意です。

 一方で、場合によっては、いくぶん歪みが多い機器の方が好みに合う可能性があるということもあります。

 

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