See Audioの新作SeeAudio Braveryを手に入れたので、ファーストインプレッションをお届けします。
中華イヤホンの人気ブランド「SeeAudio」
SeeAudioは2018年に設立されたばかりのまだ非常に若いブランドです。しかし、2021年の中華イヤホン界隈ではその名前は知れ渡り、すでに十分な地位を築いていると言っても過言でないでしょう。
このブランドの製品は現代日本文化へのリスペクトに溢れています。静電型ドライバー4基とバランスドアーマチュアドライバー4基を搭載したブランドのフラッグシップIEMは「Kaguya(輝夜)」と名付けられたことは有名です。
彼らが日本を愛していることは、彼らが日本進出にあたって、日本のみの限定モデルである「ANOU」をリリースしたことにも表れています。SeeAudioは日本市場をどこよりも重視しており、特別なチューニングを施しました。
SeeAudioはニュートラルを意識しながらもそれに囚われない様々なチューニングスタイルを実現できる技術的センスの高さとファンコミュニティとの共存を重視する友好的なスタイルによって、世界中でファンを獲得しており、中華イヤホンのスタープレーヤーになりつつあります。
ファンとの共作「SeeAudio Bravery」
BraveryはSeeAudioにとって大きな意味のある製品です。SeeAudioはブランドのさらなる成長とファンコミュニティとの交流を目指し、オーディオコミュニティと協力して、公式ソーシャルメディアアカウントで投票を行いました。
Braveryのチューニングカーブ、デザイン、外観はすべてファンの投票によって決定されています。
Braveryの製造に先立ち、See Audioは、ソーシャルメディア(Facebookグループでの投票)を通じてオーディオコミュニティと交流し、コミュニティに「Bravery」コミュニティプロジェクトを提供しました。このプロジェクトでは、2つの異なる周波数カーブのレスポンスを提供し、フェイスカバーとシェルのデザインを複数の選択肢から選ぶことができるようにしました。
つまり、「Bravery」は、See Audioのプロフェッショナルによって、コミュニティによって選ばれた製品を実現するという、コミュニティ・メイドのプロジェクトだということです。
サウンドインプレッション
SeeAudio Braveryのサウンドは滑らかな中域表現を重視しているようです。中域の大部分でニュートラルに聞こえるように調整されているので、ボーカル音像の一貫性は高いですが、高域は派手さに欠け、地味に聞こえる傾向があります。
そのサウンドはANOUを中域中心に聞こえるよう、全体的に調整し直したと言えるようなチューニングのようで、ANOUの低域と高域の両方にあったエネルギッシュさが抑えられた代わりに、中域中心で落ち着いて聞こえるようになりました。
気になる点としては、Braveryはボーカル中心的で、エッジ感やクランチ感といった音楽全体の構築感に関わる要素が弱いので、質感は良いにしても、楽器音の輪郭の表現がゆるく、アタックがときどき妙に弱く、腰砕けに聞こえやすいところです。ロックは妙にスムーズすぎ、ガツンとくる勢いが感じられませんね。優雅な音と肯定的に評価できる気もしますが、水で薄めたような音楽で、単に味が薄いだけとも言えるでしょう。
このあたりはANOUが得意としていたところであり、スネアの勢い、シンバルのエネルギッシュさ、ギターエッジの色づき感などはANOUのほうがはるかに面白みを感じます。逆にBraveryはこういった曲でもボーカルが埋没することがなく、その表現がアグレッシブに荒々しくなることもないので、ボーカル音像を追いやすい点が美点です。
まだ十分に聴き込んでいるとは言えず、測定も詳細に行っていないので、最終的な評価はわかりませんが、いまのところ、個人的な好みはBraveryよりはどちらかというとANOUです。ANOUのサウンドには情緒不安定気味に聞こえるところが多いにも関わらず、Braveryの育ちの良さそうな音はあんまり楽しく感じませんね。
オーディオマニア的観点では、レンジ感・ボーカル音像含め中域の一貫性・高域の聞き心地の安定感などを考慮して、どちらかというとBraveryが優れていると評価できますが、個人的な好みはANOUのほうが聴いていて楽しいです。
まあ、比較的私の好みに近いHarman Target IE 2017と比べても、Braveryはあまり一致してないので、私の好みにはあまり合わないのは測定値からも確認できます。私の好みからすると、中高域が地味すぎて音に艶やかさが不足していますね。
オーディオステータスで見ても、中高域付近が不足しすぎかもと指摘しています。
レビュー記事
まとめ
手に入れる前からBraveryの欠点はだいたい把握してたんですが、実際手に入れて聴いてみると、なるほどという感じです。ボーカルものは聞き取りやすく、ほどほどウォームで聴き心地も良く、解像度もわりと高く感じますが、全体的に薄味に聞こえます。少し面白みに欠けますね。
モニタリング能力は割と高いので、荒々しく聞かせず、ボーカル音像と楽器の鮮明感だけをうまく切り出してくれるようなイヤホンを求めているなら、かなりおすすめできます。
個人的には悪くはないですが、これならエッジ感がはっきり聞こえるEdifier NeoBuds Proのほうがいいかな。聴き比べればBraveryのディテール感の不足がよくわかります。
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