おすすめ度*1 |
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ASIN |
イヤーフック付きのドラム型マグネット内蔵ハウジングは耳への収まりもよく、非使用時はネックレス状にして首掛けも出来るので便利。遮音性はそこそこ。音漏れは少し目立ちやすいかもしれない。
aptXに対応する。PC用のaptX対応レシーバーや手持ちのAndroidスマホ/タブレットaptX対応機種では問題なく認識され、音飛び・遅延などもない。通信性能は安定している印象だ。ただし5m以上音響機器と離れると音飛びが入ったりやや不安定になるところがあった。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、日本語含む多言語マニュアル、携行ケース。丸形コードには若干のタッチノイズがある。
【2】音質
音質的には低域がまず重厚な地平線を形成するのが特徴的。この低域の床は目線下くらいからだいぶ深くまで感じられ、曲の骨格を全体的に支えている。高域方向の伸びやかさや高さにはやや弱く、比較的地平線近くで音楽空間がやや横長に広く形成される。目線付近に音の密度が充実する感じで聞こえやすい。ボーカルの声色や弦楽などはやや太めで暗く感じられるかも知れないが、ボリューム感がある。音楽空間全体に熱気が感じられ、ほろ苦いコーヒーのような味わいがある。
[高音]:高域はやや天井感があり、すんなり高くエネルギーを解放せず、地平線に熱を戻してくるところがある。そのため地平線付近に厚みを感じさせる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は左右に広く、奥行き感もそこそこ。低域と近く、高域もエネルギーを解放しないので、全体として充実感と熱気のある音場を形成する。音は全体に厚みがあって重めに出る。
[低音]:粘りと厚みのある音。地平線を形成し、音場全体をかなり強固に安定させる。熱気を地平線上に押し上げてくる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:横長で地平線上に横幅の広い空間を感じる。ライブ空間で舞台やや下から音楽を聴く感覚に近いかも知れない。音の解像度は価格を考えるとなかなかに良く、これだけ密集させて音を鳴らしているのに分離感はしっかりしている(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは重み、粘りが強く熱量高めで弾ける感じもやや重めに出るのでかなり苦味を強く感じる。シンバルは粒が細かいが、塩を軽く振る感じで、ドラム優位の展開になりやすい(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:女性ボーカルはやや暗めに感じられやすい。全体的に厚めでのびやかさは出づらいところがあるので、アニメ声優系の声はだいぶ艶やかさが減じて感じられる。一方で男性ボーカルの厚みは増して力強く感じられる。
【3】官能性
山崎あおい「君のいない夏なんて嫌いだ」は足場のしっかりした低域が骨格を作り、開放されすぎない厚みのあるボーカルはエネルギッシュ。叙情を直接じんじん伝えてくる力強さのある曲調になっている。曲調的に切ない感じが強い方が好きな人が多いかも知れないが、個人的にはこういう聴かせ方も充実感があっていいと思う。
歌組雪月花「回レ!雪月花」はかなり密度高め。熱気のある重厚サウンドになっており、曲の展開は若干単調に感じられるかも知れないが、パワフルさが感じられ、祭りの熱狂感は実にうまく出ている。
中孝介「君ノカケラ」も重厚。JAZZ味が感じられ、ムードミュージックのようだ。弦楽の濃厚な表現はとくにぐいぐい引き込んでくるところがある。ボーカルはやはり高くのびていく感じよりは、行って来いな天井感を感じるが、それがうまくエネルギーを滞留させて濃密さを増している。
Aimer「ポラリス」はビターな味わいが強くなって、エスプレッソな濃厚風味。大人びた品格が感じられ、さらに胸に重く響いてくる説得力が感じられる。サビでの穿つような星空が一気に開けるような盛り上がりはやや減じているのは好みを分けるだろう。ただ闇夜の何か先に存在を感じさせる、空気感の濃厚味は強く香ってくる。
【4】総評
重厚で充実感のある音楽表現は説得力があり、好きな人にはなかなかに魅力的な製品だ。全体的に大人びた、やや濃厚でビターな味わいになるのでJAZZとの相性は良い。ボーカルが暗めに出てしまうところがあり、また天井感も感じられやすいため、女声ボーカル曲は若干得手不得手が出やすい。透明感を出すような曲は味気ない方向で出やすいだろうが、比較的落ち着いた曲は大人の品格を感じさせる薫り高い味わいになる。通信性能面での安定性も高く、重厚な低域表現を好むなら、これはかなりコスパの良いおすすめ機種だ。
【5】このイヤホン向きの曲
このイヤホンで聞くと圧倒的説得力を感じる。管楽の厚みとほろ苦い感じの表現力が秀逸で、ピアノも軽っぽくキンキンしない、大人びたしっとりした味わいなうえ、弦楽の重厚感と色気が素晴らしく、感嘆を禁じ得ない。このイヤホンでこの曲を是非聞いて欲しい。(菅野よう子「Moon Flower」)
これも重厚でしとやかに、そしてほろ苦く。エネルギーをうまく滞留させ、密度感を出すことで濃厚でビターなテイストに仕上がっており、確かな説得力が感じられる。(高鈴「愛してる」)
サビでの高域の開放感は出づらいので、その点でのカタルシスが感じられづらく、全体として暗めの曲調となるところなど、この曲に関しては好みを分けるところがあるかも知れない。しかし曲全体は重厚で密度があり、重く胸にのしかかってくる充実した叙情が感じられる。
こちらも高域への解放感がうまく出づらいところはあり、持ち味である上方向へののびやかさの面では難しいところがあるが、一方で足場の豪華さは金管の色気も含めて充実感に満ちている。後半で上方向に歌い上げるところで、若干ボーカルが息苦しく感じられてしまうところは明らかな難点か。
この曲も実に味わい深く表現される。低域の弦楽の足場がしっかりしているのと、その上に展開される音にほどよい厚みがあるので、この曲の感じさせる幸福感がうまく出ている。(末廣健一郎「甘いって幸せ」)
この曲もおすすめ。このイヤホンで聴くと、足場のしっかりした横長の密度のある空間表現が太陽系を思わせ、厚みとほどよい色気のある中域弦楽の音が惑星の回転を思わせる。ボーカルはその真ん中でやはりふっくらした力強さもある感じに聞こえてくる。回転する太陽系のエネルギーを感じる若干パワフルめの味わい。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。