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【特集】仁義なきパクリ戦争に決着を!BGVP DMG vs NICEHCK M6 比較レビュー!その2

JVC HA-FX1100Westone W40

 

 

長い、長い前置き(私のレビュー論)

  前回の続きです。今回は短時間で熟成(エイジング)させるためピンクノイズで行いました。とりあえず時間があるうちに2戦目の記事を挙げようと思い立ちました。思いのほかアクセス数が伸びたので味を占めたところもあります

 まあこの場でぶっちゃけると、私の個人的見解ではエイジングにはあまり興味がありません。たしかに私は以前KZ ZS10のレビューでエイジングによる音質面での変化を肯定しました。ただそれは最初の記事から1ヶ月それなりに使用して後の話ですし、今でもZS10の音は高域の定位感が明らかにおかしく感じるなど奇怪なところがあり、率直に言って心地よいサウンドだとは思ってません。どちらかといえば当初は気持ち悪かったZS10の奇妙な音に脳が慣れたのかも知れません。今でも変な音だと思いますが。

 私が比較的好きなサウンドメーカーであるJabraのブログ記事ではTyll Hertsensのテストを挙げつつ、エイジングの効果が劇的に感じられるのは物理特性の変化が大きいからではないことを示唆しています。とはいえ、多くの人がエイジングが効果があると信じていることは確かですし、それらの人々に納得してもらうレビューを書くためには、一定程度エイジングをおこなう必要があるでしょう。エイジングやリケーブルの効果については経験を積んだオーディオマニアほど高く評価する傾向があり、彼らはおそらく実際にその効果を体感していることは事実なのでしょう。物理的な意味において以上に心理的に。

 私が目指す手軽なレビューブログとは、自分の価値観を押しつけるのではなく、多くのオーディオレビュアーやオーディオ愛好家の価値観をなるべく広く吸収し、その議論を踏まえつつ、私の価値観をそこに添えることです。私自身はプロではないですから、丁寧にプロレビューを読み込み、なるべく広い観点を拾った上で、できるだけわかりやすく私自身の言葉でオーディオ製品の特徴を伝えることを目指しています。

 そういう意味で、ZS10についてはネット上で肯定的な評価が異様に多いので、その点お手軽オーディオブログレビュアーとしては自分の意見を言いつつも、好評の声を無視するわけにもいきません。私個人としてはむしろ好評なオーディオ製品ほど眉唾に見るところがあり、そのうえ、個人の音の好みなんて千差万別だということがわかっていますので、べた褒め系のレビューはどうも好きになれません。反対の辛口系レビューというやつも、これはこれで問題だらけで強引に粗を探してディスるだけの内容が多く、しかもこういった辛口レビューは実はその反対側に明確なおすすめ商品があって、それを引き立たせるためにわざと辛口にしてることが多いです。

 ヒトの認識能力には根本的な欠陥があり、気に入らないものはとことん嫌い、気に入ったものはとことん好きになる癖があります。また長く使用したもの、自分がお金を払ったもの、値段が高いものほどよいものだと認識する困った性質があります。そのうえ自分の好きなものについては肯定的意見を、嫌いなものについては否定的意見を多く採り上げる傾向にあります。これは経済学的に「損失回避」「保有効果」「ヴェブレン効果」で説明されています。

 そういえばBOSEが最近30日返品保証キャンペーンをやっていますが、これは行動経済学的には大変効果があるマーケティング手法です*1。返品保証があることで購買に対する心理的負担が減り、さらに「保有効果」によって人は一度手に入れた商品を相対的に高く評価し、手放しづらくなる傾向があります。……ええ、最近私これにまんまとやられましたね。amazonサイバーマンデーセールと30日返品保証の合わせ技で昨年末、結局かなりの数のBOSE製品を買いました。今では結構BOSE信者になってます。

 私自身も人間ですから心理的に偏向しやすい傾向を持っていることを自覚しており、ことにJVCやオーテクの製品はずっと使い続けているために今も優先的に購買しやすく、愛好しているし、またKlipsch・Etymotic Research・RHA・SENNHEISER・SONY・Jabra・BOSEの製品に対しては比較的好意的でやはり買っている数は多く、評価も甘いでしょう。逆にSHURE製品は音質が良いのは認めているのですが、個人的になぜかあまり好きじゃないので、そんなに買ってないのでレビューするのも稀です(以前はBOSEもあんまり好きじゃなかったですね)。

 私自身もどうレビューするかは迷っていて、音質なんかはどうしても主観的な好みが多くなるので、どこまで突っ込むべきかいまだに決めかねているところがあります。ただ、認知心理学的には短文でわかりやすく書くより、やや読むのに苦労する長文で書く方が読み手に対して認識能力を要求するので、冷静な判断力を発揮させるところがあることは研究で実証されています*2

 私は手軽なレビューを目指しているのですけど、読者にはなるべく冷静にオーディオ製品を選んでもらって、良い買い物をしたと満足してもらい、長く楽しんで欲しいです。なので、最近はだいぶ時間を掛けてレビューを丁寧に仕上げること、多少込み入ってもなるべく言葉を尽くして説明することを心がけるようにしています。主観的な評価についても以前は控えるべきか迷いましたが、最近はあえて主観的であることを前面に出して恐れず素直に書き、しかし、ほかのプロレビュアーやamazonのカスタマーレビュー、モノ雑誌の書いていることもなるべくフィードバックして示そうと努力しています。

 ちなみに認識容易性の問題から私はモノ雑誌を高く評価していません。紙幅の制限もあるのですが、モノ雑誌は気に入った製品のいいところだけ大書し、込み入った説明を避けて商品を単純化して説明しようとする悪い癖があります。編集上の都合もあるのでしょうが、雑誌によっては商品の情報が不足しすぎていて、実際の買い物に全く役に立たないことが多いです。とはいえ、「こういう商品がある」という入り口にはなりますから、わかりやすいカタログ形式に商品を並べること自体は悪いことではないでしょう。ただ実際には最近のモノ雑誌は結局通販カタログや通販番組とどう違うのかってところが曖昧になりつつあります。

 

前回のレビューに対する反省

 で、ここまで長々と前置きを書いたのは、前回のレビューを読み直して反省すべきところを感じたからです。レビューを書いているときは実際に音を聴きつつ、感じたことを書いているのでなかなか気づかないのですが、読み返してみるとやはり聴いているうちに心理的効果が増幅されているところがあり、この2つのイヤホンの違いをあまりに強調しすぎている嫌いがあります。

 レビューの文言を上から順に引っ張り出してみると、プレビューテストの段階では音量差について「ただこれは私の主観的な感覚の差なので、はっきりとわかるほどの差が感じられません。」と言っていたり、音の明瞭性について「BGVP DMGのほうがわずかに音の締まりが良く、シャープ感が上で、より明瞭に聞こえます。」と言っています。

 これが曲を聞き比べていくうちに「音場の広さ、解像度感ではDMGが勝ります。」となり、「難しいですが、面白味があって解像度感が高く、聴き心地が良いのはDMGです。」となって、「NICEHCK M6には悪いですが、明らかにBGVP DMGの圧勝です。」となっていってます。実際のところ、私にはDMGのほうが好ましい音に聞こえるというのは今の段階でも変わっていないのですが、「圧勝」というほど差があるかというと、率直に言って、ないです。音を聴きながらレビューを書いている最中は、差を感じ取ろうと必死なわけですから、小さな差も言葉を尽くして何かしら説明を加えようとしています。そうして見つけた小さな差を、聴き比べていくうちに確認し、徐々にはっきり認識できると確信していることで、心理的にはその差が必要以上に大きなものとして認識されていく典型的なパターンに思えます。要は前回のレビューは心理的にはエイジング効果やリケーブル効果を力説するオーディオマニアと変わらん心理に陥っているということです。期待バイアスですね。

 

改めてBGVPの声明を確認する

 前回のレビューではパッケージ比較などをする文章量の関係上、事の経緯をはしょってしまいましたが、改めてここにこの対立の経緯を明らかにしておきます。BGVP DMGがロシア人を中心にオーディオファンに好評をもって迎えられた後、NICEHCK M6という類似した製品が発表されました。当初からその類似性が話題となっていて、OEM品かDMGの製造工場からの在庫流出品ではないかと言われていました。これに対し、BGVPはNICEHCK M6との正式なライセンス関係などがないことを公表し、これをコピー品として断罪し、オーディオファンにはM6をDMGと同一視しないよう声明を発表して訴えかけました。

 Head-Fierに寄せられたBGVPの正式声明は以下の通りです。日本語版もあるらしいのですが、訳がひどくて文意が不明確なので英語版のほうがよりわかりやすいです。

https://cdn.head-fi.org/a/10206129.png

 要約すると、「XXXX(NICEHCK M6)というイヤホンは外観だけまねたパクリ、中身は全然違うし、こちらはハイレゾ認証を受けていて、デザインについても特許取ってる」っていう話。

 ちなみにHead-Fiスレに降臨したBGVP社員?の情報によると、

  1. NICEHCK M6の背面のベント穴*3はDMGの企画段階の設計をパクったもので正式版では省かれた。
  2. BGVPがDMGの背面のベント穴をなくしたのはMMCXピン近くにベント穴を設けたため*4
  3. BGVP DMGはKnowles*5の特注BAドライバーを使っているが、NICEHCK M6のBAは中国の安物だろうとBGVPは推測している。BGVPのロゴで広報しているため、Knowlesとの契約上発注先(Knowles)を公表することが出来ない。
  4. 分解したら違いはすぐわかる。
  5. DMGはハイレゾ認証をとっているが、M6は取ってないと思う。

 BGVPの主張はところどころ証明不可能であるものの、一応筋が通っているように見えます。ただ実際のところ両機種の音質の差が個体差以上に製品レベルでの決定的な差になっているかについて、今一度冷静になる必要があります。両者の公表しているスペックには多少の差がありますが、波形的にはほとんど違いが無いことはHead-Fierの間ではほぼ共通認識になっているように見えます。もちろん波形が音質を全て決定するわけではありませんから、NICEHCKが波形を似せた模造品を作ったとしても音質上の違いが生じうることは否定できません。

 一方で私の以前のレビューと照らし合わせると、なんとなく事情がわかるところもあります。BAドライバーが違うなら音場の差に説明が付きますし、中高域のなめらかさの違いも納得です。BGVPはDD部分について言及しないので、そこはおそらく共通だとすると、低域の印象がほぼ同じでベント穴分だけM6が薄味になっていたように感じたのもそのせいかなと主観的には納得できます。もちろん客観的に検証したものではなく、私の完全な自己納得ですけど。

 

【課題曲聞き比べ】山崎あおい「君のいない夏なんて嫌いだ」

 一応半日エイジングしたうえで、一晩寝て気持ちもリフレッシュして今日聞き比べるのは、私が好きな山崎あおいさんの「君のいない夏なんて嫌いだ」です。個人的にこの名曲がなんで流行らないのかわかりませんが、まあそれは本題ではありません。どうでもいいけど、レーベルは私の大好きなVictorです。JVC頑張れ!

 ちなみに今回はSONY NW-ZX300につないでます。ノズルは標準のままです。

[BGVP DMG]:印象的にはピアノ音や弦楽音に尋常でないなめらかな印象があります。低域も充分に出ていて、膨張感があって硬くなく、全体的に調和的で好みの音質です。これはちょっとWestone W40と比べたくなってきます。タイムセールにprime限定割引が乗って11000円くらいでしたけど、この音質でこの値段はお得すぎる気がします。私が認める高コスパ機RHA MA750と充分勝負できるかも。MA750も中高域が引き立つイヤホンですけど、むしろこっちのほうが好きかも知れない。

[NICEHCK M6]:やはり同じ音量だと少し音が大きい印象です。そのせいか同じ音量だとピアノの発色が良く感じられます。ボーカルがやはり少し近いです。あと低域やっぱり少し薄い気がしますね。弦楽の粒感も若干粗い気がしますが、どこまで期待バイアスがかかっているかはわからないので、迂闊に差を強調できません。もしかするとこっちはタイムセールでも12000円くらいだったので、その恨みが私を正しい認識から遠ざけているのかも知れませんね。

[結論]:冷静に論ずれば、音質的には絶対的な差を認めづらいということは事実です。目隠しされて聴かされたら80%くらい間違える自信はあります。

 ただ、個人的にはBGVP DMGのほうが音作りは丁寧な印象を受けますし、ベント穴の差があるにも関わらず、音場の広さはBGVP DMGのほうがよいようです。今のところの私の意見としては、同じ価格であればBGVP DMGを買った方がわずかな差ですが、満足できると思います。まあ心情的にも些かBGVPに同情しているところがあるので、中立的とは言いがたいのは事実ですが。

 ちなみに半日程度のエイジングで何か効果を感じたかというと、今のところ皆無ですね。

 

 

 

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*1:ダン・アリエリー『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版』早川書房, 2010年. p. 236

*2:ダニエル・カールマン『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』早川書房, 2014年. pp. 120-121

*3:M6はベント穴がDMGに比べて一つ多い。

*4:この後、DMGにしかこのベント穴がないような主張になっているが、実際には私の入手したNICEHCK M6にもMMCXピン近くにベント穴はある。

*5:アメリカの有名なオーディオメーカーで高級イヤホン向けバランスドアーマチュアドライバーを提供していることで有名。