Head-FiのGeek Wold GK10のスレッドを読むことはとても楽しい体験です。廉価でありながら豪華な構成を持つように思えるこのイヤホンについて、多くの人が注目し、情報を寄せています。
GK10のようなイヤホンの素晴らしい点は、それがオーディオファンの交流を盛んにし、さまざまな意見をもたらし、それを語らうことを楽しむ機会を作ることです。確実に言えることは、たとえGeek Wold GK10が不完全なイヤホンであったとしても、それは十分なファンを獲得したということです。結果論としては、GK10には多くの人を魅了するポイントが確かに備わっていました。
さて、これまでGK10についてのインプレッション記事を書いてきました。今回は最終回になるでしょう。
GK10の全体印象とその最大の欠点(or チャーミングポイント)についての考察は以下の記事で確認できます。
今回はGK10のインピーダンス特性についての考察です。実際にはそれはすでに有料レビューで「制動特性」として提供されていますが、ここでは私のブログを読み慣れていない人のためにも、GK10のインピーダンス特性の振る舞いについて解説します。
出力インピーダンスの影響について
GK10の議論の中で、GK10のサウンドの印象が異なるのは、個体差ではなく、各自の音楽ソースの出力インピーダンスによって影響を受けているせいではないかという疑念が提出されました。
記載されているインピーダンスは、私が最初から言っていたことです。V60、DX160、JDSLabsのアンプ(基板からカスタムしたものがいくつかあり、John Seaber氏の意見を取り入れてオペアンプを作っています)、BTR5、そしてNote9でも問題なく再生できます。
ドライバーのインピーダンスが異なる場合、またX/Oの実装方法が異なる場合、ソース(アンプ、出力)によっては異なるドライバーをプッシュしている可能性があり、あるソースのインピーダンスでは各ドライバーの感度が良くなるため、中低音の膨らみなどが増えるのではないかと考えています。
ソースの出力インピーダンスがIEMにどういう影響を与えるのか
私のブログでは何度かこの現象について記事を掲載してきました。基本的には以下の2つの記事でその仕組が理解できるようになっています。とはいえ、めんどくさいと思った場合はこの節は無視して次の節に行きましょう。
この件についてのよくまとめられた記事としては以下が参考になります。
- 技術資料:「ダンピングファクターは重要ではない」というオーディオの迷信 – Benchmark Media Systems Japan
- ダンピングファクターとは|コラム(技術解説)|ブログ/コラム|オーディオ用セレクター、DCアダプター、セパレートアンプ、DAコンバーターの高級ブランド/オーディオデザイン/技術と音質でマニアからも高い評価を頂戴しています
- ダンピングファクター(DF)と制動力 その1 概要 イヤホン測定結果置き場
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Geek Wold GK10が実際にどれだけ出力インピーダンスの影響を受けるか
さて、実際にストックケーブルのGeek Wold GK10をAntelope Audio Amariの出力インピーダンス変更システムによって測定したのが以下の結果です。
これではわかりづらいので、もうすこしわかりやすくしてみましょう。-0.3Ω、4.5Ω、8.1Ωに絞って表示してみます。
-0.3Ωと4.5Ωは少し差があるように思われますが、4.5Ωと8.1Ωではほとんど差がありませんね。
中域付近で最も差が大きそうな4kHzあたりを調べてみましたが、0.3Ωと8.1Ωの差は1.5dBもなく、かなり微妙な違いです。
今度は-0.3Ω、8.1Ω、85.3Ωで比べてみます。-0.3Ωと85.3Ωの差でも最大2.3dBくらいのようです。
周波数特性について言えば、Geek Wold GK10は出力インピーダンスの影響をほとんど受けません。
高い出力インピーダンスの機器につないだほうが、もしかすると高域がはっきりして、中低域が膨らんでいるというGK10の弱点が相対的に目立たなくなる可能性は、わずかにあります。私の聴感上も、サウンドバランスに僅かな改善を感じます。85Ω設定時は高域がだいぶはっきりするのでイメージングにもそれなりにプラスの効果があることもわかります。しかし、それを期待して出力インピーダンスの高いソースや、抵抗の高いケーブルに変えることはどちらかというとナンセンスです。
GK10にとって、出力インピーダンスによるサウンドバランスの変化量は、イヤーチップによる装着感の変化によるサウンドバランスの変化量と比べても小さいくらいであり、イヤーチップローリング(イヤーピースの厳選)のほうがアンプやケーブルを変えるより、よほど効果がありそうです。
さらに公称8Ωという低いインピーダンス値のGeek Wold GK10にとって、出力インピーダンスの高いソースで駆動することはダンピングファクターの著しい悪化に繋がり、過渡応答の劣化やTHDの増加など、サウンド品質の悪化につながる可能性が高いのでおすすめできません。
この記事のまとめ
Geek Wold GK10はAudiosense DT600のようにアンプ側の出力インピーダンスやケーブルの抵抗値によって劇的に変化する機種ではありません。したがって、どんなアンプに繋いでいようと、おそらく大抵の人は実質的に違いのない、ほとんど同じ音を聞いています。GK10の場合、アンプやケーブルを変えてかなり違う音に聞こえたら、装着感の変化など別の要因を疑うべきです。ソースの違いによって多少印象は変わることは考えられますが、それは決定的なほど重要ではありません。またそれにより、懸案となっている中低域が劇的に変化するということはないでしょう。
Geek Wold GK10についてのレビュー
有料レビューはこちら。
私の無料レビューはまだ執筆途中ですが、Crinがかなり適切なインプレッションを提供しています。
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