私の大好きなZERO AUDIOから去る1月29日、相次いで新製品が発売されました。一番の注目はブランド初の完全ワイヤレスイヤホンTWZ-1000であることは疑いないですが、ジルコニアハウジングを採用したZIRCOも注目です。ここにきての製品の充実はZERO AUDIOファンの私としてはうれしい限り。
とはいえ、ZIRCOは試聴してから購入を考えようと思っているのですが、まだ試聴できていません。ただ勢いのついているZERO AUDIOをファンとしては今応援したい!そこで今回は手持ちのZERO AUDIOの人気機種3機種を取り上げて音質比較し、コスパに優れたZERO AUDIOの魅力をお伝えしたいと思います。
今回聞き比べる機種
ZB-03
ZERO AUDIO カナル型イヤホン ZERO BASS ZB-03 ブラック ZB-03JB
「圧倒的火力感のある低域と浮かび上がる高域の透明感を共存させた名機」
ZERO AUDIOのコスパ機の中でも人気が高い製品の一つです。低域重視のモデルですが、この機種の魅力は量感と質感のしっかりした低域の黒みと透明感のある高域の発色のコントラスト感が良く、低域イヤホンにありがちな、ブーミーな低域による音の埋没感がなく、音の発色で明瞭に聞き分けられる見通し感があることが魅力です。低域が支配的なモデルなのですが、その低域の中から浮かび上がる発色の良い高域はかなり存在感がある形で聞こえるので、低域の迫力と高域の発色を共存させています。この低価格でこの優れたバランス感覚を持っているのは驚きでしかありません。
DUOZA ZH-DWX10
ZERO AUDIO ハイレゾ音源対応 カナル型イヤホン DUOZA ZH-DWX10
「ソリッド感に優れ、音の粒立ちや材質感を感じさせる兄貴分」
ZERO AUDIOでは珍しい2ドライバーイヤホンです。しかも2ドライバー機種なのにZERO AUDIOらしく値段は抑えられていて手頃です。私の記憶では、この機種くらいからデザインが多様になってきて、初期の白黒以外の色を使うようになってきました。ZERO AUDIOの新時代を感じさせた機種です。音質的には2ドライバーを生かした解像度感があり、ソリッド感がかなり感じられるのが特徴で、さらに高域方向では透明感と光沢感が味わえます。ZB-03に比べると、低域の黒みはそれほど強くないのでコントラスト感はそれほどでもありませんが、楽器の粒立ちは良いのでJAZZなんかではシンバルやドラムが活き活きして聞こえてきます。また音に材質感もだいぶ乗ります。
CARBO MEZZO ZH-DX220-CM
ZERO AUDIO カナル型イヤホン CARBO MEZZO ZH-DX220-CM
「艶味のある高域の豊かな色彩で華やかさを演出しつつ、低域の支えも確か」
今回紹介するなかでは、最も高域がのびやかで艶味のある音を出し、印象的には一番明るい音楽を奏でます。低域は若干引っ込んだ感じで中高域の支えに回る形となりますが、それでも存在感はしっかりしており、中高域を丁寧にアシストして下をスカスカにしません。アニソンや女性ボーカルの明るい快活な曲に向き、優美に音楽を聴かせてくれます。そしてこれもコスパ優秀です。
聞き比べ
Falcom Sound Team JDK「The Silver Will ―ギンノイシ―」
私の好きなファルコムからこの名曲をまずは聞き比べます。情報量はやや多めで上から下までぎっしりした音響ですが、その中でも弦楽の艶味が出てこないとなかなかきれいには味わえません。低域も結構出るので、低域重視のイヤホンだと中高域が埋もれやすいのも難しいところがあります。
The Silver Will -ギンノイシ- <英雄伝説 空の軌跡 FC>
[ZB-03]:やはり低域モデルらしく重厚感は一番です。ただ、高域もしっかりした透明感を持っているので、低域が重い黒い音を出す中でも、かなりクリアに音負けせず浮かび上がり、のびやかに感じられます。むしろ低域の黒みが強い分だけ目立つところもあり、コントラスト感と迫力でドンシャリの理想を体現したようなバランスで聴かせてくれます。
[DUOZA]:高域の光沢感がやや強く、眩しい感じで、低域はソリッド感があってジャリッとした粒立ちを感じられます。ZB-03が明暗のコントラスト感で勝負していたとすれば、DUOZAはこのドライな感じに粒立った低域と光沢感のある瑞々しい高域という対比で曲を表現しています。締まりが良かったZB-03に比べると、ややもっさりに感じられるところはあります。
[CARBO MEZZO]:高域の艶味は一番強く、のびやかでエッジ感もあり、光沢感も強いので明るく華やかな印象を受けます。低域は若干下方向に引っ込み、中高域が自由に奏でる空間を確保しつつ下支えするアシストに回っている印象で、高域の艶味を引き立てる構成になっています。
ハルカトミユキ「朝焼けはエンドロールのように」
「17才」のカップリング曲です。ジャンル的にはなんだろう、フュージョンロックという位置づけで良いのかな?JAZZっぽいメロディーにロック色全開のサビがつながっている感じの曲です。このシングルは表題曲の「17才」も秀逸ですが、カップリングのこの曲と「そんな海はどこにもない」もそれぞれ個性的で楽しめます。
[ZB-03]:低域から中域にかけてに厚みがあり、最初から密度感が高めですが、サビではさらにギターがジュワジュワした熱気のある音で空間一杯に広がります。この曲ではとにかく熱い重厚感で最初から最後まで音が充満して満腹感のある表現で聴かせます。
[DUOZA]:最初から密度感が高かったZB-03に比べると出足は音がサラサラしていて見通しの良い感じがあります。ハイハットはかなり粒立ちが強調され、シャリシャリソリッドな刻みを加えます。ボーカルは少しザラザラしたドライな味付けで、全体的にドラムスの精彩がよく存在感が高まっていて、JAZZ味あるいはハードロック味が少し強まって感じられます。
[CARBO MEZZO]:この曲はあまり高域に伸びる感じではないので、中高域を広く取っている感じのあるこのイヤホンだと、その分空間が空いている印象を受けます。そのため密度感はやや低く、すっきりしている印象を受けます。低域は支えに回っている感じで、この曲ではピアノの精彩が目立つバランスになっており、つややかで深みもある音で情感を強く印象づける、ややJAZZっぽい感じになります。
すぎやまこういち「おおぞらを飛ぶ」(交響組曲「ドラゴンクエスト」コンプリートBOX【2003年版】)
ドラクエⅢのラーミアの飛行シーンで流れる楽曲です。高空の澄み切った空気と地平線の先まで見えるような広大な視界を感じさせる豊かな中高域を味わえる曲です。ドラクエⅢのオーケストラは初期のNHK交響楽団、最新の都響版もありますが、この音源は中期のロンドンフィル版になります。
[ZB-03]:低域方向が黒塗りされたような感じで、コントラスト感を引き立たせ、高域の明るさがとにかくきれいに発色して出ます。弦楽や木管が深淵から確かな明度を持って立ち上がるように聞こえてくるので、立体感もあり、かなり楽しいです。
[DUOZA]:全体的に音に粒立つ感じがあり、輪郭感が強調されていて、なめらかというよりは細かく刻んで音出ししているような印象を受けます。弦楽は弦の細かな材質さえ感じられるようでややドライな印象を受け、木管も息継ぎが結構明瞭に出ます。ZB-03のようなわかりやすい構成にはなっていませんが、個人的には一番オーケストラの生音っぽい表現をしているのは、このイヤホンのような気がします。
[CARBO MEZZO]:高域の発色が一番良く、この曲ではその優美で透明感の乗った高域音を思う存分楽しめます。全体の色味はかなり明るめで、高音楽器の明るさが天からあふれ出るように低域まで満ちてくる感じの音響になっています。中高域の精彩に優れるので、淡い空気感やしなりも感じられ、この曲では最も濃厚で豊かな味わいで聴ける印象を受けます。
【総評】とにかくZERO AUDIOのイヤホンはどれもすごい!
ZERO AUDIO製品のイヤホンを今回聞き比べて思うことは、どれも味は違いますが、共通しているのはバランス感覚の優秀さです。表現の仕方はそれぞれ異なっているのに、どのジャンルの曲でも破綻した印象を受けず、それぞれの個性の音で丁寧に曲を表現します。
たとえば低域モデルのZB-03は低域だけのモデルではなく、高域を生かすコントラスト感のある構成がしっかり実現されているので、あまり相性の良くなさそうなオーケストラ曲でもかなりの満足度で聴かせてくれます。
ZB-03以外のイヤホンもそれぞれに得意な表現というのを持ちつつ、それを生かして自分なりに曲を解釈し、提示して表現する誠実さがあって、期待を裏切らない丁寧な音作りをします。そういう八方美人な方向性でイヤホンを作ると、面白くない製品が出来そうなんですけど、ZERO AUDIOの製品はそれぞれ個性があって、しかも優等生的っていう理想的なのばかりで、どれを聴いてもハズレなしっていうのが素晴らしいんです。
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