【1】小型化・薄型軽量化・ワイヤレス化するエントリークラスDAP
今回の特集はデジタルオーディオプレーヤーを扱います。この記事では私が個人的観点で選んだおすすめ機種を紹介しますが、しかし、その前にどういう選好で私が今回の特集記事のDAPを選んだかを説明することは有益であるように思われますので、しばし説明させていただきたく思います。
前記事
エントリークラスDAPってどのくらいの製品のこと?
DAPのエントリークラスはどの製品を指すのかというのは難しいですが、価格帯としては5万円以内くらいを目安に選びました。また条件としてハイレゾファイル再生能力があるという点を最低ラインとしています(したがってApple iPod touchは選外となります)。
エントリークラスDAP製品の特徴
最近のエントリークラスDAPの特徴は以下のようになっています。
- 携行性が重視され、小型・軽量モデルが増えた。
- ワイヤレスオーディオ機能が重視されている。
- バランス接続機能は省かれていることが多い。
【2】おすすめのエントリークラスDAP
そういうわけで、今回はエントリークラスのDAPの中から、とくにおすすめする機種を選り抜きました。
FiiO M9
- 高音 6/10
- 中音 6/10
- 低音 7/10
- 音場 6/10
- 情報量 7/10
- 音の傾向 はっきり系
- アプリ対応力 5/10
- 通信対応力 8/10
- 対応コーデック SBC / aptX / aptX HD / LDAC / HWA
- 拡張性 2GB (+2TB)
- DAC AK4490EN×2
- ハイレゾ 192khz/24bit DSD128
- バランス接続 2.5mm
- 実売価格 3万円前後
FiiOの新しいMシリーズでエントリークラスDAPの新標準とも言われた高コスパ機種。3万円台で最大30時間の音楽再生、多数のワイヤレスオーディオコーデック対応、バランス接続を実現しており、DLNAやAirPlayに対応しているなど機能性が高い。OSはAndroidベースではあるものの、独自OSで使用できるアプリが制限されるのが非常に残念。
音質は低域に強調がある一方で、中域以上では輪郭を重視したはっきり系で、さらに高域でも音の明瞭感を感じさせる、なかなか洗練された音。目立った欠点がなく、万能系と言えるだろう。低域で一定のインパクトを、高域で華やかさをと余念がない。この機種の音質はレビューによってウォームだったりクールだったりと一貫性がない批評がされているように思われるかも知れないが、低域方向のウォームな感じが強く出るか、高域方向のクール感が強く出るかの問題と思われ、音源とイヤホンによって印象が変わりやすいところがあるのだと思われる。
アプリ対応能力が高くないのだけが残念だが、DAP入門機としてはSONY NW-A55以上の完成度と言えるところがあるので、価格差を許容できるなら、こちらを買えば後々まで満足できそう。個人的にはFiiO系のUIがまだ使いづらいので、その点だけマイナスポイント。
FiiO M6
- 高音 5/10
- 中音 6/10
- 低音 5/10
- 音場 5/10
- 情報量 5/10
- 音の傾向 穏やか系
- アプリ対応力 5/10
- 通信対応力 8/10
- 対応コーデック SBC / aptX / aptX HD / LDAC / HWA
- 拡張性 2GB (+2TB)
- DAC ES9018Q2C
- ハイレゾ 192khz/24bit DSD128
- バランス接続 なし
- 実売価格 2万円前後
FiiOのエントリークラスDAP。2万円クラスでデファクトスタンダードの地位を築いているNW-A55とライバル関係にある。総合的に見ると、NW-A55より機能性は高く、DLNAやAirPlayにも対応するし、アプリで一部のミュージックサブスクリプションに対応している。再生時間目安は有線13時間、ワイヤレス15時間とNW-A55には見劣りするものの、機能面での総合力では互角と言って良いだろう。
音質は中域にやや強調があり、ウォーム感が強い印象。ボーカルの精彩はよく感じるだろう。一方で高域はややおとなしめ。そのためライバルのNW-A55に比べると、メリハリ感に若干欠ける印象を受けるかも知れない。少なくともESS系のDACを使っているわりに音に丸みがある印象を受ける。
NW-A55のメリハリがあるがちょっと無愛想な音に比べて、滑らかで温度感のあるアコースティックなサウンドが楽しめるので、こちらの方が好きという人も多いだろう。とはいえ、M9との価格差がそれほどないので、現状で敢えてこれを選ぶ必要は高くなかったりする。よく調整されているとはいえ、画面が小さい分UIもやや窮屈になっており、洗練さも足りない印象を受ける。
SHANLING M0
- 高音 6/10
- 中音 5/10
- 低音 6/10
- 音場 5/10
- 情報量 5/10
- 音の傾向 はっきり系
- アプリ対応力 1/10
- 通信対応力 8/10
- 対応コーデック SBC / AAC / aptX / LDAC
- 拡張性 0GB (+512GB)
- DAC ES9218P
- ハイレゾ 384kHz/32bit DSD128
- バランス接続 なし
- 実売価格 1万円前後
超小型DAPブームの火付け役的な存在。小型な割に結構しっかりした音が出る。ワイヤレスレシーバー機能もあり、レシーバーとしても邪魔にならず、充分に使えるサイズなのでレシーバー/トランスミッターとしても意外と優秀。
音質はわかりやすいはっきりしたドンシャリ系の音。高域と低域がわかりやすく聞こえる感じで、少なくともメリハリ感はNW-A55より優秀というのが一般的な評価。
明確な欠点は操作性の悪さ。画面が小さいので、音源が多いと検索や切り替えが非常に面倒。メインDAPとするにはちょっと難がある操作性だが、サブDAPとしては非常に魅力的な機種だ。ワイヤレス機能のないDAPをワイヤレス化するのに組み合わせて使うなど、使い勝手の幅が広い。
Cayin N5IIS
- 高音 7/10
- 中音 7/10
- 低音 6/10
- 音場 6/10
- 情報量 7/10
- 音の傾向 くっきり系
- アプリ対応力 9/10
- 通信対応力 9/10
- 対応コーデック SBC
- 拡張性 64GB (+800GB)
- DAC ES9018K2M
- ハイレゾ 384kHz/64bit DSD256
- バランス接続 2.5mm
- 実売価格 6万円前後
ぶっちゃけこの機種はエントリーじゃなくてミドルレンジDAPなんだが、この機種のマイナーチェンジ前のN5IIが実売3万円くらいなんで、お得。しかしN5IIの店頭試聴機は聴けなかったのでほとんど仕様の変わらないN5IISのほうをレビューして印象だけお届けしようというわけ。
N5IIはESS系のDACの無機質になりやすい音をうまく調整して音楽性を加え、「さすがCayin!」と一部を感動させたDAP。N5IIの音は忘れちゃったんで覚えないけど、N5IISはESS系らしい音の輪郭感や見通し感が良く、結構キレがよい感じ。思ったより煌びやかで華やかな印象の音だが、女声ボーカルやピアノのあたりの聞こえが良いのは手持ちのCayin N6IIと共通。音質面での評価は総じて高い機種。
レビューを漁り読みした感じ、筐体変更前のN5IIはおそらくもうちょっと柔らかい中域充実の濃厚系の音だと思うが、基本構成はほとんど変わっていないので、同等クラスの音が楽しめるはず。だとしたら3万円くらいで買えるのは安いだろう。
使い勝手はやや微妙。Cayin N6IIみたいに動作がキビキビしていない。Playストアが使えるのは非常にうれしく、完全ワイヤレスイヤホン&サブスク時代の新時代DAPとして長く使えそうではある。アプリ入れすぎると重くなりそうだけど。
HIDIZS AP80
- 高音 6/10
- 中音 6/10
- 低音 6/10
- 音場 6/10
- 情報量 5/10
- 音の傾向 すっきり系
- アプリ対応力 1/10
- 通信対応力 7/10
- 対応コーデック SBC / AAC / aptX / LDAC
- 拡張性 0GB (+512GB)
- DAC ES9218P
- ハイレゾ 384khz/32bit DSD128
- バランス接続 なし
- 実売価格 2万円前後
SHANLING M0やHiby R3あたりとよく比較される機種。SHANLING M0に比べるとやや大きく、基本部分はあまり変わってない割に値段が高くなっているのも割高に思えるかも知れない。
しかし音質は少し違いを感じる。M0の音が分かりやすいドンシャリだったのに対し、こちらはもう少しフラットで万能感がある。
とはいえ、M0とは五十歩百歩くらいで、どちらにせよ画面は小さめで操作性が悪いので、メインよりはサブDAP向きというキャラクターは変わらず、そうであれば、小さな違いは無視して安い方を買えば良いとなりやすい。
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