Shanling UP4 Balanced Hi-Res Portable Bluetooth Amplifier DAC/AMP
便利なBluetoothレシーバーアンプ
2020年になって、オーディオ業界もBluetoothを使ったワイヤレス化の波が押し寄せています。完全ワイヤレスイヤホンが飛ぶように売れ、オーディオのメインストリームになりつつあるなか、それでもやはり「まだまだ有線イヤホンのほうが音質もいい」という声も消えません。
いずれはBluetoothもリアルケーブル以上の音質伝送を可能とするかも知れませんが、今のところまだ有線イヤホンの方が一般的に音質が良いのも事実ではあり、また手持ちの有線イヤホンの音に愛着がある人が多いのも事実でしょう。しかし、ワイヤレス化できればそれはそれで便利そうだというのも事実。
そうした現状を踏まえて、有線イヤホンを愛していながら、無線化にも興味があるというオーディオファンにとって、有力なオプションになっているのがBluetoothレシーバーアンプというジャンルです。
平たく説明すると、スマホやデジタルオーディオプレーヤーとBluetoothで繋げる機能がある小型のポータブルヘッドホンDACアンプのことで、ポケットサイズで簡単に持ち運びでき、手軽に使用できます。
ポケットサイズゆえにアンプ駆動力はそれなりで、パワフルな高インピーダンスヘッドホンやイヤホンを鳴らせるほど強力とは言えませんが、一般的なイヤホンであれば充分に鳴らせる駆動力を持っていて、DACも内蔵しているので音質的にもエントリークラスのDAPと渡り合えるほどです。接続先を操作できる簡単なインターフェース機能も付いていることが多いので、外出時なんかリモコン感覚でDAPを遠隔操作できますし、家庭内では据え置きのBluetooth対応オーディオ機器とつないで、部屋をいろいろ移動しながらでも音楽を楽しめます。
そんなBluetoothレシーバーアンプの中で多くの人が本命と考えて問題ないだろう機種が、FiiO BTR5、EarStudio ES100そして、Shanling UP4です。
今回Shanling UP4を手に入れることができましたので、その実力をレビューします。
パッケージ
さて、私は実際のところ箱を大事に保管するタイプでもなく、個人的にパッケージングにあまり興味がないのですが、世の中には結構こういうのが好きな人もいるみたいですので、参考になるよう簡単に紹介します。最近スマホ替えたんで、写真撮るのが少し楽しくなったというのもありますが。
化粧箱ですがいたって普通です。1万円くらいの製品では可もなく不可もなくといった感じで、特別豪華な気もしませんが、粗末な感じでもないです。右側面から蓋を開けます。
蓋を開けてすぐ、Shanling UP4がお目見えです。内部は二段になっており、下段に付属品が入っています。
下段はこんな感じ。
付属品を広げると、必要最低限は揃っています。袋に入っているのは本体をポケットやズボンなんかに固定できるクリップです。
外観/インターフェース
次に外観を確認します。まず上部には3.5mmシングルエンド出力ポートと2.5mm出力ポート、さらにゲインを変更する「Mode」ボタンがあります。
「Mode」ボタンを1回押すと、本体前面のLEDインジケーターの色が変わります。それによって現在のゲインモードが何かがわかるようになっており、青ならLowゲイン、緑ならHighゲイン、黄色なら「Boost/Dual DAC Mode」になります。
「Boost/Dual DAC Mode」は、シングルエンドの場合はDACを並列動作させて解像度を高める効果があるようです(Dual DAC Mode)。バランス接続時は出力がBoostされるようですが、説明書にこのBoostモードに関する記載が一切ないので、ぶっちゃけ謎ですが、まあよほど出力の高いバランス接続対応イヤホンなんかを使う場合は試してみるということで良いのではないでしょうか。
シングルエンドのDual DAC Modeのほうは音質改善が見込めるようです。
「Mode」ボタンを2回クリックするとモード切替ができます。また3回クリクすると、DACのフィルターが切り替えられます。フィルターは4種類用意されています。
インジケーターの色でフィルターが判別できます。しかし、個人的にはフィルターによる音質差はわずかに思えます。
- 青色:リニアフェーズ・ファーストロールオフ(最も自然なサウンド)
- 緑色:リニアフェーズ・スローロールオフ(締まりの良い正確性の高いサウンド)
- 紫色:ミニマムフェーズ・ファーストロールオフ(メロウで余韻のあるサウンド)
- 黄色:ミニマムフェーズ・スローロールオフ(ウォームでマイルドなサウンド)
底面はUSB入力ポートのみです。充電あるいは有線での音声入力はここを通して行います。
右側面に操作インターフェースボタンがあります。ダイヤルノブと押しボタンを兼ねている構造になっています。基本操作は以下の通りです。
- 長押し:電源ON/OFF
- ワンクリック:曲再生/停止
- ダブルクリック:曲送り
- トリプルクリック:曲戻し
- ダイヤルノブ:音量調整
またスマホに接続した場合に以下の操作ができます。
- ワンクリック:着信応答
- 通話中にワンクリック:通話終了
- ダブルクリック:着信拒否
- 通話中にダブルクリック:通話をスマホに切り替える
外観比較(vs audio-technica AT-PHA55BT, EarStudio ES100)
ES100とオーテクのAT-PHA55BTだったかな?を並べてみます。大きさ比較😊 pic.twitter.com/kUVE2qruvV
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) January 6, 2020
技術仕様
ここであれこれ書くより、詳しくはHiFiGOの商品ページで確認するのが良いと思いますが、フジヤエービックさんのブログに、ライバル機種とのわかりやすい技術仕様比較があったんで、引用します。(手抜き)
Oriolus1795 / BTR5 / UP4 比較
DACチップ:PCM1795(1795:名前の由来)ES9218P Dual(BTR5/UIP4)
Bluetoothチップ:3モデルともCSR8675*1,Bluetooth5.0,NFC対応
バランス出力:4.4mm5極(1795) 2.5mm4極(BTR5/UP4)
対応高音質コーデック:3モデルともaptX HD / LDAC/ HWA(LHDC)
出力レベル:
1795: 150mW@32Ω(3.5mm) 220mW@32Ω(4.4mm)
BTR5: 80mW@32Ω(3.5mm) 240mW@32Ω(2.5mm)
UP4: 91mW@32Ω(3.5mm) 160mW@32Ω(2.5mm)
重量とサイズ:
1795: 109g, 95.9×50.7×15.4mm
BTR5: 43.7g, 72x32x11.1mm
UP4: 37g, 60x36x13.5 mm
USB-DACモードについて
ES9218PはPCMで32bit/384khz、DSD256までネイティブ再生可能ですが、2020年2月現在、USB DACモードでの動作は16bit/48khzに限られるようです。今後のファームウェアアップデートで対応するかはわかりません。
接続品質
対応コーデックですが、LDAC/aptX HD/aptX LL/aptX/AAC/SBCに対応しています。つまり基本全部入り。また2台までのマルチポイントに対応します。
通信品質はCayin N6II/E01とつないでテストしてみました。テスト場所は関東某ターミナル駅周辺です。胸ポケットに本機、右ポケットにN6II/E01を入れ、LDAC接続でテストしてみました。LDAC固有なのかN6II側の挙動なのかはよくわかりませんが、時々妙に通信が乱れますが、普通に安定しています。ただ通勤ラッシュ時はちょっと乱れがひどそうです。あと、鞄の中にDAPを入れてつなぐと少し厳しいかも知れません。家の中ではかなり安定しています。
なおaptX LL対応については助言を受けて念のため対応を確認いたしました。
テスト後回しにしてたんですが、UP4のaptX LL対応は今日他のLL対応レシーバー/トランスミッターテストしたので、そのついでにつなげて試してみました。ちゃんと対応しているようです👌
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) January 26, 2020
しかしむしろTaoのこいつがRXモードでなぜかaptX使えないみたいなんで、問い合わせ中です😂 pic.twitter.com/qrppUNKxrm
バッテリー性能
たぶん優秀です。スペック上ではシングルエンドで最大15時間、バランスで最大10時間というスペックが与えられているんですが、3時間ほどDual DACモードで鳴らし続けても発熱ありません。電源切れるまでテストするなんてマゾなことは私はしてないのでわかりませんが、体感でもスペックの8割は充分ありそうです。
付属アプリ
アプリがリリースされました。
音質
さて音質です。
ぶっちゃけ多くの人にとって気になるのは音質そのものよりもライバルのFiiO BTR5との音質差になると思いますので、そこから語ります。
FiiO BTR5との音質差は実質的に無視できる可能性が高い
私はライバルとなるFiiO BTR5は聴いたことがないんですが、HiFiGOブログによると、UP4のほうがBTR5より中域がウォームでマイルドだそうです。
冒頭に挙げたPorta.Fiの比較動画レビューでも、BTR5の方がニュートラルでモニター的で、UP4のほうが暖かいという評価ですが、「ぶっちゃけ大差ない」という結論です。
そういうわけでガチライバルのBTR5との差は僅差で実質考慮するに値しないが、敢えて言うなら、UP4のほうがナチュラルなウォーム感があるとなるでしょう。つまり、この2機種はむしろ外観や将来提供されるアプリなどの機能面での差で選ぶのが良さそうです。
ニュートラル系で少しすっきりしている
私が聴いた音質はややウォームなニュートラル系のサウンドで、ちょっと高域方向ですっきり感のある風通しを若干重視した感じに聞こえます。音場はミドルレンジ帯のDAPよりはちょっと狭いくらいに聞こえるかも知れません。バックグラウンドノイズは一般的なエントリークラスDAP並みで、スマホよりはきれいですが、オーディオファンの多くが利用する5万円以上のミドルレンジ帯DAPには劣るという印象です。まあつまり音質の全体的な印象は、スマホ直挿しよりは良いが、エントリークラスの普通のDAP並みですというくらいではないでしょうか。同じエントリークラスでも抜群の音質を持っているiBasso DX160には単体では明らかに敵いません。
アンプ駆動力はポータブル用途では充分
アンプ駆動力ですが、シングルエンドDual DACモードで91mW@32Ωの駆動力があります。私の場合、数値見ててもわかったような、わからないようなところがあるので、例の如く鳴らしにくいヘッドホンの代表格、beyerdynamic T1(インピーダンス:600Ω)でテストしてみました。
結論から言うと、まあ音が少し緩く、なんとか鳴らせている気がしないでもないですが、音がモヤモヤしてるんで、明らかに鳴らし切れていない雰囲気があります。JVC HA-WM90くらいだとたぶん不足を感じないので、まあモニター用にインピーダンスを高めていない、ポータブル用途のリスニングライク系の機種であればだいたい大丈夫でしょう。
総評
ぶっちゃけ肝心のアプリがまだリリースされていないので、この機種の真価を評価するのは不可能なんですが、今の段階でも充分に完成度は高く、現状ではFiiO BTR5との実質的な差は少ないと思われるので、こちらのほうが安上がりに済むだけお得かも知れません。
もう一つのライバルEarStudio ES100に対しては、ES100のほうがアプリ完備で機能性が高いうえにスペックはほぼ同等です。ただしES100のアンプ駆動力は25mW@32ΩでFiiO BTR3並みであり、下位機種となりますが、ポータブル用途では駆動力差はそれほど重要でない気もします。音質差はES100のほうがより暖かい音です。
そういうわけで結論としては、ポテンシャル的には現状のBluetoothレシーバーアンプではこのUP4が最もコスパが高いと言えそうですが、機能性を考慮するとアプリがリリースされていない現状ではES100に対抗できているとは言い難いところがある点に留意する必要があります。
しかし、アプリを無視して単純に音質面と使い勝手だけ見れば、ビルドクオリティも操作のわかりやすさもES100よりUP4のほうが勝っているので、こちらを選んだ方が良いでしょう。
Shanling UP4 Balanced Hi-Res Portable Bluetooth Amplifier DAC/AMP
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*1:元記事では「CSR8075」となっていますが、修正しました。