- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感はSONY WF-1000XM3に似ていて、よく耳に嵌まる感じ。通信品質は良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「インターフェースは物理式。付属アプリは優秀」
- 【3】音質「清潔傾向だが、やや派手さも出してくれるドンシャリ。Noble Audio FALCONを高域で光沢感とツヤを増し、低域のボリューム感を上げてみた感じの音質」
- 【4】官能性「低域の床面をしっかり感じながら、ツヤと粒立ち感のあるグルーヴィーなサウンドが味わえる」
- 【5】総評「率直に言ってこの価格では完成度が高い」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感はSONY WF-1000XM3に似ていて、よく耳に嵌まる感じ。通信品質は良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
8h/32h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX4 |
音質傾向 |
弱ドンシャリ、爽快、シャープ、チャリチャリ、キラキラ、ズンドコ、シャキシャキ、鮮やか、派手め、抜けが良い、清潔、風通しが良い、粒立ちが良い |
ハウジングデザインがSONY WF-1000XM3にそっくりで装着感も似ている。遮音性はそこそこ高めに感じると思う。
対応コーデックはaptX/AAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proで交互に繋ぎながら接続品質をみた。テストしたのは関東某ターミナル駅周辺だが、ほとんど途切れはなく、バスターミナル付近や、人の多い交差点などで途切れが見られた程度である。私の印象ではAVIOT TE-D01gないしTE-D01dとほぼ同等の通信品質である。
QCC3020を使用していると思われるが、私の環境ではQCC3020で稀によくある接続の乱れはあまりない。
個体差や相性の可能性もあるので確実なことは言えないが、あくまで個人的な感想としては、Noble Audio FALCONより通信品質は少し良いように思う。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 ProとONKYO GRANBEATで行っている。
【2】外観・インターフェース・付属品「インターフェースは物理式。付属アプリは優秀」
付属品はイヤーピースの替え、充電ケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書。インターフェースは物理式。反応はまあまあ良いが、ボタンが浅く、本体に比べて面積が小さめなので少し見つけづらい。
付属アプリにはイコライザー機能と音質パーソナライズ機能が付いており、自分の好みにあった音質を味わえるようになっている。残念ながらカスタムイコライザーを組むことは出来ないようなので、用意されたプリセットの範囲での音質調節になるが、それでもパターンは多く、22種類(デフォルト+21種類)用意されている。
【3】音質「清潔傾向だが、やや派手さも出してくれるドンシャリ。Noble Audio FALCONを高域で光沢感とツヤを増し、低域のボリューム感を上げてみた感じの音質」
※この機種には音質パーソナライズ機能がついており、使用すると音の広がりと豊かさ、ボーカルフォーカス感に改善が見られた。しかし、この機能の効果には個人差が考えられるので、以下のレビューではあくまでデフォルトの音質を用いている。
音質的にはNobleAudio FALCONに似たような印象を受けるが、多くの人にとって、より正統派ドンシャリ的な音はたぶんこっちだろう。高域は清潔系でディテールを重視した細かい音で空気感重視のところもあるが、同じ清潔系のFALCONに比べるとより鮮やかで、たとえばギターやシンバルによりチリチリした金属光沢感がある。低域の方も中低域の膨らみがFALCONより量感多めで、音の全体的な印象はFALCONより鮮やかになる。その分音はちょっとくどくなっているところがあり、聞き疲れる感じは増しているが、人によっては高域でとくに、よりディテールを強調されていると感じ、相対的にFALCONより緻密な音に感じられる可能性はある。
とくに高域音で鮮やかさがあり、光沢感を出してキラキラチャリチャリとツヤを出してくれる感じは、ピアノや電子音の透明感を増して感じさせてくれる可能性が高いし、アコースティックギターの刻みにより明確な金属光沢感を感じさせてくれる。ハイハットは少し低いところが濃くなるが、それでも充分に高さを主張して空気感もある。ボーカルはFALCONに比べて少し鮮やかになって、アニソンなんかの明るいボーカル曲でキラキラ感が増す反面、ツ音に尖りが見られるようになったため、人によってはしつこい味わいに感じられるかも知れない。
中域にあまり抱擁感がないので、音の膨らみは弱く、低域は充分に暖かいが、それでもあまり音に暖かみを感じられない可能性はある。そのため、選曲や音源にもよるが、人によってはややギラついた攻撃的な色彩感を感じるかも知れない。それでも奥行き感に配慮した音響設計がされているので、尖る感じが強くなるほど音量を上げなくても充分に音楽に立体感が出るはずである。
音量を上げると高域はやや尖りが強く繊細になり、刺激は強くなるが、低域もほどよく暖かみを増すので、きつさが目立たないようになっている。比較的音量を上げて楽しむ傾向のある人にも充分緻密さを提供しつつ、適度に安定した聴き心地を提供してくれるだろう。
そういう意味で、全体の音響設計は解像度に寄せながらも、聴き心地に適度な配慮が見られるバランスになっており、価格を考えると充分に満足できると思われる。FALCONに比べると、こちらのほうがツヤ出し感が強いので、金管やシンバルの音色などでより「グルーヴィー」だと感じる人はおそらく多いだろう。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
普通。音がドライで少し清潔で、中域で膨らまない分だけ、やや薄味とも思えるが、中高域でツヤや光沢感が出て派手さは充分にあるので、高域方向ではかなり鮮やかに感じられる。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
鋭い。シンバルやギター音はシャープなエッジを持っている上に、やや鋭利な金属光沢感でギラつくところがあるので、人によってはかなり鋭角的で攻撃的な音に感じるはずである。しかし、人によっては刺さりやすいかも知れないが、おそらく一般的には刺さるほど高い音ではない。 |
明るさ (明るい/暗い) |
明るい。中高域の光沢感とシャープネスが目立つので、上で緻密であり、個人差はあるだろうが明るさはかなり強い音響に感じるはずである。 |
派手さ (派手/地味) |
派手。繰り返しになるが、高域で鋭利な感じを強調し、キラキラ感が強めで、ギラつくとことがあるので派手である。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや硬い。高域は鋭利で硬めだが、低域のボリューム感があり、暖かく柔らかめに音場をクッションして支えている感じがあるので、全体を眺めると、硬すぎる感じはない。しかし高域音により敏感な人にはやや硬すぎると思われる可能性はある。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
尖る。高域のエッジ感はかなり鋭く感じられやすい。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや騒々しい。高域の出音が派手でギラつくので、好みにもよるが、ややうるさげなところはある。しかし、音場は良く奥行き感が確保されているので、ゴチャゴチャする感じはたぶんあまり感じられないはず。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや強い。中低域に少し膨らみと量感があるので、低域で少しパンチ力が強く、また高域のエッジ感とキラつきが強いので、全体的にやや攻撃的な力強さを感じる。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや貧弱。中域にあまり充実感はなく、どちらかといえば清潔で音が細い感じがある。 |
太さ (太い/細い) |
やや細い。中域や中低域で膨らむ感じはなく、どちらかといえばミニチュア的な細かさを重視したサウンドに聞こえる。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
ややザラザラ。中高域でキラつく鋭利な感じがあり、質感は少しエッジに毛羽立ちと光沢感があり、手触りはややのこぎり状の、荒い質感に感じられる可能性が高い。たとえば金管の音は粒立ちが良いが、ビビビッという摩擦感が少し強い。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
細かい。高域でややシャープネスが強調され、さらに光沢感も派手めなので、粒立ちはくっきりする。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
やや澄んでいる。清潔感は高め。高域で少し金属的なキラキラ感があるので澄んでいるというほどではないが、一方でピアノの光沢に強めの透明感があり、曲によっては透徹した印象を出してくれる。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いている。中域が膨らまないので基本的には音は少しドライ傾向に聞こえる。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。低域は浮き上がりは良いが、やや膨らめみが強めで量感があり、全体的な印象では少し重みが目立つように思える。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや澄んでいる | やや澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
明るい | 明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか | 伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
やや細い | やや細い |
濃いか (濃い/薄い) |
普通 | 普通 |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | 目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややスカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
普通 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
やや奥まる |
美点
- 中高域、高域のディテールが良い
- 音場が清潔で風通しが良い
- 低域が充分に暖かく、重みも感じられる
- 少し鋭角的で解像度重視だが、それでも聴き心地は相対的に安定している
欠点
- 中域での充実感が薄い
- 音が少し乾燥している
- 人によっては音が攻撃的すぎる
[高音]:高域の高さは基本的に高く、開放的である。音はドライだが、ツヤや光沢感も強く、かなり緻密さを強調する感じがある。シンバルやギター音は高いところの空気感から、下の方のチンチンチリチリしたところまで非常に繊細に出すところがあり、弦楽も細身で少しヒステリック感が強い。またピアノのキンキンした光沢感は透明度高めに表現される。電子音もチャリチャリと粒立ちが強い感じで聴かせる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域は清潔系で膨らみは抑えられている。中高域が目立つバランスになっており、奥行き感が感じられるが、人によっては音に少しか細い印象を受けるかも知れない。低域が少し張り出して中域を支えているので、スカスカな感じは強くないが、それでも曲によってはやや豊かさに欠ける印象を受ける。
[低音]:少し重い厚みのある振動で100hz~40hzまで素直な減衰。30hz以下も振動感が残る。中低域に少し強調があり、曲によってはベースは結構ブンブン感じられるところがある。キックも結構ドシンと出るが、浮き上がりも悪くなく、重低域方向は意外と明るめに感じられる。床面に一定の重量感は出やすく、多くの人にとって不足感はないと思われる。ただしややブンブン感が強く出過ぎる可能性もあるので、人によっては少しうるさいと感じられるかもしれない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:基本的にはドンシャリ。低域に結構な重量感があり、中高域以上にもディテールと明るさの集中が見られ、曲の立体感がわかりやすくなっている。一方で、中域の不足によって、曲によっては低域が少し強すぎたり、逆に高域が少し派手になって尖りすぎるといった若干のピーキーさはある(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:キックは少し重く、パンチも少し強め、上ではスプラッシュ感が少し派手という、かなりロックなドラムスになっている。タムの鼓面の粘りもバチッと強めで手応え多めで、少し重みが強いバランスだが楽しげ。重みの強いバッツンバッツン。ハイハットも濃いチンチンしたあたりから高いシャンシャンまで結構縦軸を出して聴かせてくれる。概ねリズムについてはロックな曲を聴く人にはかなり満足できる出来だろう(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは率直に言って少し薄く、細めに感じる。中性的。女声ボーカルのほうもやや細身でサビで伸びて突き抜け感をやや強調する感じがある。また子音と息感に強調を感じ、ツ音も結構尖るので、少し上でくどい感じはある。
【4】官能性「低域の床面をしっかり感じながら、ツヤと粒立ち感のあるグルーヴィーなサウンドが味わえる」
大原ゆい子「透明な翼」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】この曲だと低域がほとんどキックだけな感じなので、むしろ高域の緻密さや光沢感が強調され、かなり透明感が強い感じになる。ボーカルのふっくら感はほとんどないが、高域ですーっと明るく突き抜ける感じは充分楽しめるので、上の方に向かって開放的な音響に感じられるはずである。ほどよくキラキラした光沢感を感じながら、ギターもウキウキに上に向かって歌い上げるような、澄んだ空間表現を味わえる。
透明な翼(アニメ盤) TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』 第2クールエンディングテーマ
安月名莉子「rise」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】個人的にはどういう感じの音楽をアコースティックというのかというのは結構難しいところがあるが、たとえば仮にこのような曲をアコースティックとするとして考えて語ると、この曲のギターの刻みはギラつく感じやチョーク音も含めて非常に繊細に感じられるので、エレキギターも含めてアコースティックな雰囲気は充分に感じられる。ボーカルが息感重視で少しスーハーしており、ツ音もやや尖るのが好みを分けるかも知れないが、電子音の光沢感もきれいで、弦楽も奥から伸びてくる立体感があり、奥行き感がきれいに感じられる。
TVアニメ「 やがて君になる 」オープニングテーマ「 君にふれて 」
スフィア「Non stop road」
【Hiby R6 Proで鑑賞】このイヤホンでこの曲おすすめ。かなりボーカルが澄んだ感じで上に伸び、その伸びていく空間はキラキラ華やかでありつつも爽やかで、突き抜け感もある開放的な音場。ちょっとギラついた派手めにディストーションする感じのギターの浮ついた感じ、ちょっと上の方で媚びる、少し幼いくらいの若々しいボーカル表現、シンバルのチンシャリした上から下まで細かい感じ、とても完成度が高いと思う。この曲は比較的明るいドラムス表現なのもあって、下で重苦しい感じもなく、ベースラインはかなり明るい感じでじんわり聞かせてくれるので、なおさら快活。
【5】総評「率直に言ってこの価格では完成度が高い」
音質は中高域でちょっと派手さが目立つ感じではあり、曲や好みによってはややトゲトゲしい感じはあるが、それでも一般に充分満足できるはずである。なによりアプリで音質を調整できるので、デフォルトの音質の欠点は容易に改善できる。基本的には解像度重視の人におすすめで、とくにテクノやEDM、ロックを好む人におすすめしたいが、ギターやピアノ主体のアコースティックな曲でも個人的には十分な魅力が感じられる。そもそもイコライザー使えばほぼ万能である。Ankerの本気を見た。
まとめ
- 清潔感と派手さを兼ね備えた音で解像度が高い
- 通信品質やバッテリー性能も充分満足できる
- 甘味や抱擁感のある音楽を重視する人には向かない
【関連記事】
*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。