M-SOUNDS MS-TW21 トゥルーワイヤレスイヤホン完全ワイヤレス (ネイビー)
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で耳への収まりは良い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「充電コネクタはType-C。デザインには高級感があります」
- 【3】音質「少し厚い低域が支える、U字ののびやかで穏やかなサウンド」
- 【4】官能性「ナチュラルで温かみがある。重低音の利きと高域の目立たない清涼感がいい味を出してくれる。中域の奥行き感も良い」
- 【5】総評「ナチュラルで聞きやすい音質。そして使い勝手の良さ」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で耳への収まりは良い」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
9.5h/47.5h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX4 |
音質傾向 |
安定感がある、重低音が利いている、爽やか、ドライ、甘味がある、自然な音場、ナチュラルな色味、ボーカルフォーカスが良い、パワフル |
MS-TW2の頃から基本的にはデザインが変わっておらず、耳への収まりの良い小型デザインになっています。非常に軽量です。遮音性はそこそこ良いです。
対応コーデックはaptX/AAC/SBC。通信性能については、いつもはロケテストをするんですが、今回は行っておりません。というのも、2月第1週の終わりごろにどうもいつもと違って長引く、重症化しない気怠い風邪を引いたんですが、これが時期的に新型コロナじゃないかと思ったりもして、外出を極力控えておりました。というか今も人の多いところには日常的な買い物を除いて基本行っておりません。
そのため、この機種については家庭内テストのみなんですが、通信品質は非常に安定している印象です。距離耐性も高く、5mくらいまでは普通にシームレスで通信が途切れません。さすがに10m近く距離を取ってうろうろしているとプツッと途切れてつなぎなおしてるのかなって雰囲気はありますが、遮蔽物がなければ、かなりの距離耐性はありそうです。
遅延に関してはaptX接続時にamazon Prime VIdeoで「アキラとあきら」を見て試した感じ、遅延は普通に感じられません。いや、風邪の間ずっと池井戸原作作品観てましてね。
テスト環境
今回のテストはONKYO GRANBEAT、Hiby R6 Pro、iBasso DX200、FiiO M15、Cayin N6II/E01で行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「充電コネクタはType-C。デザインには高級感があります」
付属品はイヤーピースの替え(2種類)、専用充電ケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書です。
充電ケースは鏡面仕上げされており、高級感があります。
イヤーピースは2種類付属しており、ドームタイプとハーフドームタイプが付属します。ハーフドームタイプは軸が短いので、音が篭もりにくいです。
【3】音質「少し厚い低域が支える、U字ののびやかで穏やかなサウンド」
周波数特性イメージ(試験運用中)
※周波数特性イメージはあくまでレビューの便宜上、個人的に周波数分布のだいたいのイメージを掴むための参考情報で、測定方法も測定されたデータも非常にアバウトで厳密な信頼性や正確性に欠けます*2。
ファーストインプレッション
今回は標準イヤピの中で、ドームタイプのLサイズを使ってレビューします。
すでに公開したファーストインプレッションでは、このイヤホンが暖かみがある重低音の利いた力強い低域を持ちつつ、中域から高域までは滑らかに伸びていくようなサウンドを持っていることを確認しました。
ファーストインプレッションの記事はこちらでご確認下さい。
音域印象
低域「熱気、穏和、ハートウォーミング」
エレキベースは少し暖かみが強く、ボンボンウンウンし、黒みがあり深いですが、穏和で丸い印象も受けます。ハートウォーミングなスウィートなベース音が活き活きと聞こえるでしょう。
バスドラキックはドシドシ感が強く床鳴りで重みを感じさせますが、一点を強く押し込む感じではなく、タッチは少し優しいです。少しブーミーに感じられる低域ですが、リズムコントロールはスピードが速いわけではありませんが、一般に遅れを感じることはありません。
熱気は強いのでクリアな感じではなく、少しもやがかったライブ感のある音です。中低域で少し膨らみ、胴鳴りに強調があり、また中域に滲む感じが多少あります。そのせいでポップスの温かみのあるドラム音は穏和で支えが良いですが、人によって、中域に近すぎて篭もった印象を受ける可能性はあります。またロックでは低域がやや暖かみのあるマイルドなサウンドになりやすいので、ハードロック的なマッチョさには欠けるでしょう。
低域弦楽は濃厚感に不足はないはずです。やや重くゆったりと沈みこみながら、厚みも出し、躍動感はややセーブして広がり重視に思えますが、それでも音には自然な弾みがあり、躍動感は感じ取れます。少なくともJAZZでは、低域弦楽に充分な濃厚味と躍動感、重みと広がりがあるので、足場に不足を感じることはないでしょう。
全体として安定感に優れ、広がりと厚み、暖かみのある穏和な低域デザインがされています。ほっこり暖まるような雰囲気があるので、アコースティックな雰囲気で甘味を感じます。パワフルでリズムコントロールも悪くありませんが、アグレッシブさは適度に抑えられるので、ガツンとした音を求める人には物足りないかも知れません。
中域「奥行き、甘み、ドライ」
中域は低域からは後退が見られます。低域の暖かみを受けつつ、中高域に向かっては前傾せずにフラットに近く、むしろボーカルの音域では少し後退するような味付けになっています。自然と興味がボーカル表現に向きますが、ボーカルについては詳しく後述しますので、ここでは楽器音に注目します。
中域は低域に比べて奥行きが意識され、楽器音に奥から並ぶような立体感をもたらしています。ピアノは一般に穏和で地味で背景に存在しやすいですが、打ち込みに強調があり量感もあるので埋没感はそれほどないでしょう。それでもツヤが不足するので、潤い感には欠けますが、活き活きしていないわけではありません。甘味がありますが、少し乾燥しています。エレキギターは中域では穏和でアタックを強調しません。そのため中域の主役を明確にボーカルに譲って、サポートしているように聞こえます。アコースティックギターはエッジに強調が出るので、刻みは明瞭で丁寧ですが、やはり中域はおとなしいので、白金色に近い薄い涸れた音色に聞こえます。
総合すると、中域はやや奥行きを強調した、すっきりした見通しのよい感じで、音に甘味はそれなりにあり、低域を受けて温度感もあって聴き心地はよいですが、やや地味で乾燥しています。ボディはわずかに不足を感じ、音に少しかすれる感じはあるかもしれません。
高域「清潔、爽やか、ソリッド」
このイヤホンの高域は非常に爽やかで活き活きしています。ハイハットは軸をしっかり出してアタックしますが、ギラつかない清潔な音なので清涼感があります。アコースティックギターの穂先は非常に整って、しかも清楚に聞こえます。ボーカルの息も清潔に伸びます。少し硬い高域でピアノ、アコースティックギターの解像感を高めていますが、刺さらない音でそれほどシャープではありません。形容する言葉を選ぶなら、シャープよりはソリッドがふさわしいです。
この高域は高いところでは減衰しており、抜けの高さを強調しないために、甘味は適度に閉じ込められています。そのため、楽器音にヒスる感じは出ず、倍音は自然に強調されて分解されすぎない、自然な解像感がありながら、音楽全体に適度な硬さと爽やかさを加えることで聴き心地を調整しています。
この丁寧な高域の調整がやや低域偏重な中域以下にメリハリをもたらしています。
ボーカル「ナチュラル、のびやか、甘味」
すでに述べたように、中域は低域からは後退が見られます。低域の暖かみを受けつつ、中高域に向かっては前傾せずにフラットに近く、むしろボーカルの音域では少し後退するような味付けになっています。そのためボーカルは一般的に少し遠ざかりながら伸びます。また男声ボーカルのほうが女声ボーカルよりは前に出てきやすいでしょう。しかし、伸びが少し後退していくからと言って、どん詰まりの天井感のある感じにはなっておらず、中高域を抜けて高域に向かう、息の伸びがあります。
サ行を除いて、基本的に子音に尖りはありません。またボーカルの媚びも自然でマイルドなので、甘いボイスですが、甘ったるい臭みはなく、シャウトもギャンギャンせずにすっきりとした後味で抜けていきます。ただし、中域のボディに不足する感じがあるので、シャウトする曲では場合によってボーカルに苦しい感じが出るかも知れません。アタックをうまく抑えて清潔感を維持しているので、サ行の強調も刺さることは基本的にはないはずです。
総合すると、甘味があり、すっきりとしていて、媚びを強調せずにのびやかなボーカルとなります。ただしハリと潤い感は物足りないでしょう。そのため甘く朗らかなボイスですが、人によってはモシャモシャしているように感じられるかも知れません。
音場「奥行き、自然な幅、自然な高さ」
音場は中域の奥行き感が意識されます。高さもありますが、完全に開放的ではありません。横幅は耳の幅よりわずかに広いかも知れませんが、とくに広いというわけでもないです。全体として自然に近い広さを意識しつつ、中域で奥行きが少し強調されて、少し音の見通しをよくし、少し没入感を出しているといった感じです。音が近づいてくる親密な感じではないので、音楽との一体感を強く感じられる音でもないですし、ディテールを強調する感じでもないのでモニター的でもなく、音場の観点からすると、ナチュラルサウンドと解釈すべきだと思います。
全体印象
アタックを強調せず、全体として音の質感がナチュラルで地味目に聴かせる感じがあります。低域は温かみがあるので、地味で自然な音に充分な暖かみと実体感を提供するとともに、底で力強さを感じさせ、音楽全体に安定感をもたらしています。全体的に穏和でハートウォーミング名雰囲気がありながらも、高域では清潔感とメリハリが感じられ、音楽全体が緩くならない、軸が立った音楽構造を実現しています。
中域の奥行き感は多くの音楽に見通しの良さとナチュラルな空間的深みをもたらしていますが、特に劇場型の音場表現と相性が良く、オーケストラ音源でホールのリアリティを感じさせてくれます。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
やや色味が薄い。色づきはナチュラルでむしろ地味です。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鈍い。基本的には柔らかみがあります。ただし高域がソリッド感を作り出しています。しかし露骨なシャープさはありません。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。低域は重いですが、暖かく、暗くはありません。高域は輝きは強くありませんが、ハイハットなどが明るさを感じさせます。ボーカルも上向いています。 |
派手さ (派手/地味) |
やや地味。質感は派手さを抑えてどちらかというと、ナチュラルです。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
普通。基本的に柔らかい音のはずですが、何度か述べたように高域はややソリッドです。ピアノ曲は暖かみの割に、思いのほか音が硬く思えるなど、曲によってソリッド感が強く出るかも知れません。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや丸みがある。エッジはあまり強調されず、シャープではありませんが、息は少し伸びます。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや穏やか。温和な雰囲気があります。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。アタックはそれほど強くありませんが、低域は充分な安定感でがっちりとしており、音に根付きの良さが感じられます。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
普通。中低域の存在感によって音は相対的に太く感じられる可能性がありますが、中域は涸れており、色味も地味です。 |
太さ (太い/細い) |
太い。中低域がしっかりしており、一般の楽器音の太さに不足はないはずです。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
滑らか。音はマイルドです。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや粗い。高域でシンバルやアコースティックギターの粒立ちは細かいですが、全体的に自然な滑らかさを重視しています。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
やや濁っている。低域の色づけが少し強く、中域はややもやっとするかもしれません。開放感も抑えめなので、風通しが良いという感じではないです。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
乾いた。乾燥気味です。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。重すぎませんが、ややマッチョです。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや濁っている | やや濁っている |
明るいか (明るい/暗い) |
普通 | 普通 |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか | やや伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
やや太い | やや太い |
濃いか (濃い/薄い) |
やや薄い | やや薄い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
普通 | 普通 |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
普通 |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
深掘り感がある |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
やや後傾的 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
普通 |
定位感 (頭内的/頭外的) |
普通 |
分離感 (拡散的/密集的) |
普通 |
美点
- 太い音
- 熱気がある
- 充実感がある
- ドライ
- 自然な音場表現
- 奥行き感がある
- 穏和
- 軸の立ったサウンド
- 安定感がある
- ボーカルフォーカスが良い
欠点
- 潤い感が足りない
- 中域が涸れやすい
- もっさりしやすい
音質特性(サウンドシグネチャー)
[高域]
- 抜けの高さ*3:B
- 金属光沢感:B
- クラッシュ:A
- アタック:B
- ツヤ:C
- ディテール:B
高域は高いところでハイハットがしっかりアタックしますし、ピアノやアコースティックギターにソリッドな硬さを出します。ギターエッジやボーカルの息にも適度な抜けが出ますが、刺さるところのピーク感は抑えられており、ピーキーさはありません。ただし硬さは少し強めです。それとほどよく開放的ですが、意外と抜けは高くなく、シャープネスの強調はあまりありません。
[中域]
- 甘味:A
- 広がり:B
- 濃厚感:B
- コク:A
- 太さ:A
- ディテール:B
中域は甘味と温かみがありますが、色づきは地味です。中低域の支えのおかげで楽器音は太いですが、中域は奥行き感に優れているので、その太さが露骨に密度を出しません。楽器音はややボーカルの聞こえを意識して、清潔感を出すように穏和に聞こえます。
[低域]
- 深さ:A
- 重さ:B
- パンチ:B
- 厚み:A
- 熱気:A
- 鳴動:A
- ディテール:B
低域はやや厚みを感じ、ブーミーかもしれません。熱気が強く、暖かみがあり、クリアではなく、ライブ感のあるじわじわした雰囲気があります。温かみがあり、少し情熱的で生々しい感じがあります。
[解像度・立体感]
いわゆるピーキーさがほとんどなく、非常にマイルドで聴きやすいです。音場は自然な広さで低域が前面に出るので少し頭内的な雰囲気もありますが、中域の奥行き感が充分にあり、幅も両耳くらいにはあるので、狭い感じはありません。分離感は価格帯では平凡で、総合的な解像度が優れているというわけではありません。少なくともくっきり系の音ではありません。
[パーカッション・リズム]
- ドラムの雰囲気:やや胴の膨らみを感じさせる。キックは少し重いが、膨らみによる浮き上がりも少しあるので、重苦しくはない。リズムは速くなく、わずかに遅れるくらいで、パッツンパッツンといった感じ。
- ハイハットの雰囲気:シンバルは清潔で輝きは強くなく、白金色の締まった色味がある。軸が立っていてよく刻みを聴かせるが、穂先はそれほど高くない。
- 弾け:B
- 粘り:B
- 重み:A
- 濃さ:A
- スピード感:B
スネアのアタックが激しくなく、鼓面に粘りが少しあり、若干柔らかみがあるので穏和に聞こえます。タイトな革張り感はそれなりに感じられますが、ビシバシではなく、パツパツと手応えが柔らかく思えるでしょう。全体にディテールを出し過ぎず、リズムをきつくしすぎない、音の統一感を損なうほど分離感を出さない感じがあるので、解像度が高い感じではありません。
[ボーカル傾向]
ボーカルの甘味は充分です。男声ボーカルのほうが濃く感じられ、女声ボーカルは声色が少し涸れてかすれて感じられる場合もあるかも知れません。息は少し伸びてスーハーしたりハキハキした感じは強調されるので、少しハスキーに聞こえるかも知れません。ツ音の子音はかなりマイルドで声にはふっくら感がありますが、ハリに欠ける印象を受けます。また基本的にドライです。甘味があるのに清潔で、媚びた女声ボーカルをナチュラルに甘味を残したまま清らかな雰囲気で出してくれるところは非常に良いです。
【4】官能性「ナチュラルで温かみがある。重低音の利きと高域の目立たない清涼感がいい味を出してくれる。中域の奥行き感も良い」
いきものがかり「青春ライン」(vs NUARL NT01AX)
【FiiO M15(Pure Music Mode)で鑑賞】このイヤホンのハイハットのアタックの強い感じ、エレキギターが少し立ってのびやかに聴かせる感じ、息が伸びる突き抜け感があるボーカル表現、温かみのある熱気に満ちたハートウォーミングなベースラインにお似合いの曲です。
とくにこの曲の場合、ボーカルは充分にボディがあるので、若干乾燥した感じがありますが、サビでも苦しい感じは出ません。また曲調的にシャウトはやや強いですが、イヤホン側が清潔に聴かせてくれるので、ギャンギャン吠える感じはなく、派手なハイハットは清潔な上に高さがあるので、ボーカルに被りませんが、穂先も高すぎず、輝きを出しすぎないので刻みがきれいで、非常に粒立ちを綺麗に見せてくれます。
また中域でボーカル周りに奥行き感があって清潔感があり、よくフォーカスされます。穏和で爽快、しかし暖かく甘いという、比較的絶妙なバランスがあります。アコースティックギターもきれいに粒立ち、適度なソリッド感を出して手がかりをちゃんと出しており、音楽に軸がしっかりと感じられます。
いきものがかりの曲にはノスタルジックな甘味があることが多いので、その甘い感じをうまく維持しつつ、パワフルなライブ感も損なわず、清潔で聴きやすい形にしています。
さて、同じように奥行き感があり、伸びやかなサウンドを持っているNUARL NT01AXと聞き比べてみます。
ボーカル周りがよく整理されている雰囲気、ちょっと暖かみがある感じ、ハイハットが派手な感じは似ていますが、NT01AXの音はより艶やかで、ハリがあります。スネアの鼓面のパチッと弾ける感じ、ハイハットのシャリシャリした輝き、ギターのアタック感、ボーカルの媚びはやや強いですが、低域の暖かみはMS-TW21のほうが良好で暖かみはより深いところから出ているように感じられるかも知れません。NT01AXの低域はもうちょっとクリアです。
潤い感は明らかにNT01AXのほうが強く、ハイハットはみずみずしいですし、ピアノサウンドもつややかに聞こえます。ただし中高域で色づきが強くなったので、ややガチャガチャ感は多く、解像感と情報量はMS-TW21より多いかも知れませんが、やや詰め込まれている感じが強く思います。ただ中高域のグルーヴ感ではNT01AXのほうがノリよく聴けるでしょう。
雰囲気は意外と似ていて、どちらものびやかです。NT01AXはより潤いがあって艶やかで、みずみずしく、色づきも良く聞こえるでしょう。一方でMS-TW21の音には清潔で自然な奥行き感があり、NT01AXに比べると地味ではありますが、息の伸びやハイハットによりきれいな伸びや粒立ちがあります。
個人的にどっちが好きかと言いますと、NT01AXのほうが楽しい雰囲気ですが、MS-TW21の清潔な雰囲気のほうがちょっと好みです。しかし、これはむしろ聞き慣れているNT01AXの音にない新鮮さを感じたというところがあるかもしれません。
西木康智「Octopath Traveler -メインテーマ-」(vs Noble Audio Falcon)
【Cayin N6II/E01(A)で鑑賞】こういうクラシック系の音源は結構おすすめできます。中域の奥行き感が自然なホールの雰囲気を出してくれるのもそうですが、なにより中域で涸れた潤い感が足りない感じがするのが、木管音や弦楽音にどこか古風な、カントリー的というかアルカイックな雰囲気を出していて、地味めの色合いなのもあって、中世の空気感というようなものが感じられます。
渋い雰囲気がありますが、安定感はしっかりしており、楽器音は深く根立っていて、重厚感は充分にあります。しかし、その重厚感もどことなく、深すぎない、適度に乾燥した原野を思わせるもので、全体の音色の雰囲気に、すすけたような香ばしい草の香りがあります。
アタックは抑えめで、メリハリよくというよりかはゆったりのびやかですが、シンバルは清潔に粒立ち、楽器音の穂先の高さも充分に高いので、軸は充分に立っており、背筋の通った音色が聴けます。
さて、同じように少し爽やかな感じのあるNoble Audio Falconと聞き比べてみます。まず最初の相違点は低域の厚みでしょう。FALCONは足踏みのしっかりした重みのある重低域を持っている一方で、中低域のほうでも少し厚みがあり、重厚感や濃厚感で優れますが、一方で中域の奥行き感は少し甘く、MS-TW21に比べると音が近く、音が重い印象を受け、この曲の場合、MS-TW21に比べると楽器音が少し重力に引っ張られて聞こえます。高域の方は同じように清潔に高さを感じますが、地平線付近に厚みがあって、それが楽器音に胴のリアリティをもたらしていますが、音場の見通し感ではMS-TW21に劣る印象を受けます。その代わり豊穣といえる床面を実現しており、楽器音の潤いももう少し強く、MS-TW21の原野のような音に比べると、もうちょっと豊かでダイナミックに聞こえます。低域の躍動感は強く、MS-TW21のほうが中世の落ち着いた古風な感じを出しているとすれば、こちらの音は開拓村のような若々しさがあり、働く人々の生活感の中で音楽を聴いているようです。
どちらも充分にこの曲を聴かせてくれますが、中世風の雰囲気があるこの曲の場合、個人的にはMS-TW21の、古風な風景を周辺の原野の草の香りを感じながら眺めるような適度な遠さのある音楽体験が好きです。
OCTOPATH TRAVELER Original Soundtrack
sora tob sakana「ささやかな祝祭」(vs Sabbat X12 Ultra)
【Hiby R6 Pro SSで鑑賞】このイヤホンの暖かみのあるハートウォーミングな低域はこういうJAZZ風のアコースティックな曲と相性が良いです。中高域の鮮やかさを適度に抑えた自然な雰囲気もよく、なおかつボーカルにもナチュラルな甘味があって、しかも息が適度にハキハキしていて元気で声色に若々しい感じられ、アイドルらしい快活さが忘れられていないのも好ましいです。
同じように低域に厚みがあり、しかもインイヤー型というSabbat X12 Ultraと聞き比べてみます。さて、低域は明らかにSabbat X12 Ultraのほうが厚みがあり、全体の暖かみが強いです。Sabbat X12 Ultraは中域が濃厚で甘味がよりはっきり聞こえ、密度感がありますが、高域はMS-TW21に比べるとかなり後退しており、音場がやや暗いので、夜祭りの雰囲気があります。ピアノも太く、色づきよいですが、輝きは抑えられており、大人びた雰囲気があります。ボーカルはより甘味が強いですが、息はあまり強調されないので、ふっくら感がより強いです。
Sabbat X12 Ultraは胴鳴りが豊かで、豊満な雰囲気があり、濃厚感もあるのでたっぷりした満腹感のある音楽があり、また夜のように高域が落ち着いているので、この曲の雰囲気を考えると、この方が正解のような気がします。しかし、メリハリがあり、爽やかでアコースティックでありながらアイドルっぽいのびやかな甘さが感じられるのはMS-TW21の方です。
ロザリーナ「音色」(vs M-SOUNDS MS-TW3)
【iBasso DX200(AMP1)で鑑賞】この曲はかなり低域が量感を出し、ドラムは温かみがあります。ブーミーさはありますが、パンチは比較的明瞭です。そのパンチは腹に少し応える感じですが、重すぎない感じで適度な柔らかみもあります。低域のブーム音なども温かみがあって、心優しい雰囲気があります。ピアノは光沢を抑えて、自然なツヤ感を維持しており、地味目ですが、打ち込みは明瞭なので、低域が強い中でも埋没感はありません。ボーカルは乾いていますが、甘味が強く、またこの曲の場合かすれる感じはむしろボーカルの風味に合っています。息に清潔な伸びもあって、うららかよりもう少し強い温度感のある中でも清涼感が感じられます。アタックは抑えられているので、和やかな雰囲気はよく維持されています。
同じM-SOUNDSのMS-TW3と聞き比べてみます。さて、MS-TW21が低域の量感が強く、ドライでホットな感じが強かったのに対し、MS-TW3の音は潤い感があり、中域で量感がはっきりとしており、ボリューミーというかクリーミーです。中高域の色づきがはっきりしており、光沢を出して透明感を出すので、ピアノに少しガラス質のツヤを感じます。ボーカルはよりみずみずしく、ジューシーな甘味があるので、MS-TW21に比べると甘酸っぱい感じです。色づきは良く、解像感はMS-TW21に比べて高めです。一方で高域の硬さはMS-TW21に比べて抑えられているので、ピアノ音をはじめ楽器音は少し柔らかく聞こえます。
MS-TW3の音には中域の濃厚感があり、中高域で光沢もきれいに出るので、少し目鼻立ちが整って聞こえます。ボーカルもはっきり前進してしっかり聞こえます。低域のパワフルさではMS-TW21のほうが勝っている感じがあり、暖かみもMS-TW21のほうがわずかに強いかも知れませんが、MS-TW3にはクリーミーでみずみずしい濃厚な音があります。したがって、充実感はMS-TW3のほうがあり、どちらかといえば高級オーディオっぽい音がします。MS-TW21の良さはやはり、より自然な雰囲気で、中域で全体をちょっと見渡せる奥行き感があり、低域の暖かみにライブ感を感じられることです。ウーファー感はMS-TW21の方が強く、この曲の重低音のブーム感をよく感じさせてくれ、低域ジャンキーに近い私にとってはとても気持ち良いです。
【5】総評「ナチュラルで聞きやすい音質。そして使い勝手の良さ」
音質は少しドライですが、ナチュラルな色味のある聴きやすさを重視した感じになっており、聴き心地が良いです。使い勝手の面ではスペック的に不満はなく、通信品質も安定度が高いと思われる上に、コンパクトで持ち運びも良く外観に高級感もあります。
1万円ジャストくらいの価格設定の中の機種ではクセが少なく、ややアコースティック向きと思われますが、バランスの良い比較的万能な音質を持っています。とくに奥行き感がある中域はやや遠い印象も受けますが、圧迫感がなくて聞き疲れしにくく、比較的おすすめしやすいと思います。
まとめ
- 温かみがありハートウォーミングなサウンド
- 穏和だがメリハリ感もある
- 音がドライで中域に涸れる感じがある
M-SOUNDS MS-TW21 トゥルーワイヤレスイヤホン完全ワイヤレス (ネイビー)
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。
*2:音量による変化、各イヤホンの特性を考慮した補正などを行っておらず、測定環境もスマホマイクで集音しているので非常にアバウトで厳密ではありません。レビュー執筆の参考に使っていたものの、これまでは公表してきませんでしたが、これまでサンプルを取って聴感上の印象と照合してきた感じ、それなりに参考にはなりそうなので、試験的に公開していきたいと思います。いずれ勉強を深めて信頼性を高めていきたいとは思いますが、本ブログは周波数特性の測定をメインとしていませんので、期待しないで下さい。私自身も聴感上の音像印象の解釈の補助として利用しているだけで、この周波数特性イメージを全面的に信頼し、依拠しているわけではありません。
*3:全般的に言えることですが、この評価は主観的であり、しかも音はバランスと好みが大事だということに留意して下さい。Aのほうがその分野では優れていると判断していますが、たとえばシャリ付きが苦手な人はクラッシュがAの評価のイヤホンは避けるべきです。あと稀にSが出てくると思いますが、Sは「やりすぎ」という意味で、必ずしも良い評価とは限りません。ただしその音質特性が好きな人には良いでしょう。
*4:価格帯を考慮した相対評価です。
*5:価格帯を考慮した相対評価です。
*6:価格帯を考慮した相対評価です。
*7:主にサ行が刺さるかどうかです。スーハーしている感じが強いかです。
*8:主にツ音が尖るかどうかです。Aに行くほど尖ります。