Noble audio FALCON (NOB-FALCON)トゥルーワイヤレスイヤホン完全ワイヤレス
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い。通信品質は良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「インターフェースは物理式」
- 【3】音質「清楚なドンシャリ」
- 【4】官能性「低域の床面をしっかり感じながら、清潔感のあるのびやかなサウンドを味わえる」
- 【5】総評「清潔で爽やかにロックやダンスを楽しみたい人にはとくにおすすめ。奥行き感と高さ、床面の広がりがあるので、意外とオーケストラもいけます。かなり万能機」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い。通信品質は良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
10h/40h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX7 |
音質傾向 |
弱ドンシャリ、爽快、シャープ、ドンドコ、シャキシャキ、サクサク、スコンスコン、派手め、抜けが良い、清潔、風通しが良い |
ノズル部分が長めなので、結構耳にしっかり嵌まる感じになっている。装着感は個人的に良好だが、相性はあるかも知れない。
対応コーデックはaptX/AAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proで交互に繋ぎながら接続品質をみた。テストしたのは関東某ターミナル駅周辺だが、ほとんど途切れはなく、バスターミナル付近や、人の多い交差点などで途切れが見られた程度である。私の印象ではAVIOT TE-D01gないしTE-D01dとほぼ同等の通信品質である。
QCC3020特有らしい癖はあって、接続当初に荒れる傾向はあるが、時間経過によって落ち着く。また家の中で何もしてなくてもたまに大きく乱れることがある。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 ProとONKYO GRANBEAT、SONY NW-A55で行っている。
【2】外観・インターフェース・付属品「インターフェースは物理式」
付属品はイヤーピースの替え、充電ケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書。インターフェースは物理式。反応はそこそこ機敏。
【3】音質「清楚なドンシャリ」
音質レビューとしてはやや異例だが、この機種についてイメージを捉えやすいように、ライバルとしてよく挙げられるであろうNUARL NT01AXとKlipsch T5との音質的な違いについて語りたいと思う。なお聞き比べはそれぞれNW-A55に接続することで行い、NUARL NT01AXとの比較ではイヤピもスパイラルドットの同じサイズを用いた。Klipsch T5についてはステム形状の関係上イヤピは共通にしていない。
まずFALCONとNUARL NT01AXとは個人的には音質デザインで結構似ている印象はあり、中域で奥行き感を出す感じ、高域で伸びる感じ、低域の存在感が感じられるような弱ドンシャリ的な音響に共通のセンスを感じた。しかし、細かな質感に違いを感じる。具体的には、NUARL NT01AXがみずみずしさと輪郭を優しく奏でる自然な音の広がりを感じさせるのに対し、FALCONの音はもう少しシャープで鋭角的である。輪郭が優しいNUARL NT01AXの音には、人によってややボンヤリする感じもあるだろうから、もしあのボンヤリ感がいまいち好きになれなかった場合は、FALCONで満足できる可能性は高い。たとえばロックやテクノ、EDMではよりはっきりとエッジ感を出してくれるのが、手がかり多めに感じられて好ましく思えるかも知れない。
次にKlipsch T5と比べると、高低バランスに明らかな違いが見られ、フラット的な音響のT5に対して、FALCONは低域も高域も少し目立つドンシャリ傾向が顕著である。そのため低域の熱量も高域のシャープさもFALCONが勝り、Klipsch T5のほうは全体的に音が丸く、暖かい温和な雰囲気に聞かせてくれる。
音質的には、やや中域が引っ込んで奥行き感を強調するドンシャリサウンドで、高域のシャープネスやディテール感も高く、どちらかというと清潔だが、低域の床面がほどよく音場を支えているので、中域がそれほど充実している感じがないにも関わらず、音楽に一定の抱擁感を出してくれる。
低域に若干の暖かみはあるものの、音場全体を見渡すと必ずしもそれほど温度感が強い感じではない。音はどちらかというとエッジ重視であるが、刺さるような酷薄な感じはなく、聞き疲れる感じはあまりない。
充分に高域でディテールを感じさせつつ、低域の存在感も良好、ボーカルもやや乾燥しているが自然な声色を維持していて、解像度を出しつつ、聴き心地の安定感を丁寧に実現している、万能性を考慮したこの機種のチューニングの妙はさすがNobleといえる。
お客様のご感想を拝見するに、FALCONの帯域バランスの評価については、フラット派orドンシャリ派が中心で、わずかに高域優勢派、と評価が分かれているように思います。が、まずは30時間ほど音楽鳴らしてみてください。結構よい意味で変わります。
— Noble Audio Japan (@nobleaudio_jp) October 25, 2019
あーなるほど、人によってドンシャリだったり、フラットだったり、高音よりだったり、低音強めだったりする理由がなんとなく分かったw
— はし (@hashi84hashi84) October 26, 2019
そういういつもと違う感じ
そうそう。なんていうか、むしろ個人が普段どこを聴いてフラット・ドンシャリを判断してるかで評価が分かれるだろう音🤔 https://t.co/zh3OaVfDgs
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) October 26, 2019
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
少し色味が薄い。音が少しドライで清潔系なので、少し薄味に感じるところはある。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鋭い。シンバルやギターのエッジは強調されるので音楽に鋭い感じは出やすい。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。音場は清潔で高域も明るめに聞こえる。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。ツヤはほどほど抑えられており、風通しも良い感じだが、金属音などはやや派手めに聞こえる。しかし爽やかでもあるので、人によってそれほど派手さを感じないかも知れない。少なくともくどい感じはない。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや硬い。潤い感は少し抑えめで、シンバルやギターのエッジに硬さを感じやすい。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや尖る。耳に刺さる感じはないが、シンバルやギターのエッジ、ボーカルの子音に少し強調を感じる。ややシャープネスは高い。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
普通。エッジ感を強調するところはあるので、人によってはとげとげしいところはあるかもしれないが、音はよく整理されていて、ガチャガチャ混濁する感じはなく、全体的な印象に騒々しい感じはない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや強い。中域以上が清潔なので、相対的に低域の重みは感じやすく、強く強調はされないがパワフル感はよく出ている。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや貧弱。中域にあまり充実感はなく、どちらかといえば清潔で音が細い感じがある。 |
太さ (太い/細い) |
やや細い。中域や中低域で膨らむ感じはなく、どちらかといえばミニチュア的な細かさを重視したサウンドに聞こえる。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
ややざらざら。全体的にツヤは少し押さえたところがあり、ドライな感じがあるので、高域のちょっとシャリシャリしたザラつく感じが目立つ。ボーカルの息感にもやや強調がある。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや細かい。高域でややシャープネスが強調され、粒感が細かに出る。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
やや澄んでいる。清潔感は高め。質感的にはクールすぎる感じではないが、基本的にはちょっと無愛想でやや冷涼な清潔感を出す感じの出音。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いている。ギターやシンバルに潤い感が出ないわけではないが、相対的にドライ。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。低域は量感的にはそうでもないが、中域が清潔なせいか、ほどほど主張するバランスになっていて、重力をほどよく感じられる。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや澄んでいる | やや澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
やや明るい | やや明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか | 伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
やや細い | やや細い |
濃いか (濃い/薄い) |
薄い | やや薄い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | やや目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややスカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
普通 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
やや奥まる |
美点
- 中高域、高域のディテールが良い
- 音場が清潔で風通しが良い
- 低域に量感以上の存在感がある
- 決して暖かみが強いわけではないのに、聴き心地が安定している
欠点
- 中域での充実感が薄い
- 音が少し乾燥している
- 音にざらつきがある
[高音]:高域は高いところまでよく感じられ、シンバルの空気感は多め。輪郭も強調され、金属光沢成分も少し強めの、若干ドライな音になる。ツヤはほどよく抑えられており、派手さは目立ちすぎないようになっている(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域は清潔系で膨らみは抑えられている。中高域が目立つバランスになっており、奥行き感が感じられるが、人によっては音に少しか細い印象を受けるかも知れない。低域が少し張り出して中域を支えているので、スカスカな感じは強くないが、それでも曲によってはやや豊かさに欠ける印象を受ける。
[低音]:厚みのある振動で100hz~40hzまで素直な減衰。30hz以下も振動感が残る。低域はキックが重く、ベースもはっきり聞こえる。低域の色味自体は深すぎたり黒すぎたりする感じはなく、やや明るめに浮き上がりもよい感じで聞こえる。見通しは良い(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:低域と中高域以上が少しはっきり分離される感じになっており、間の中域は少し清潔になっている。奥行き感と上方向への立体感に優れており、オーケストラ的な奥行きのある音響も充分楽しめる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムスはフロアタムやバスドラの音が結構ドカッと重く聞こえるが、全体の雰囲気は明るめ。フロアタムくらいが少し膨らんで聞こえるバッツンバッツン。しかし音が膨らみすぎたり深く沈み込みすぎてリズムコントロールが緩くなる感じはなく、浮かび上がりも良く制動が利いている。シンバルはやや白く高く浮き上がる感じになる。黒いドラムと白いシンバルの二元論になるようなリズム表現になる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは率直に言って少し薄く、細めに感じる。中性的。女声ボーカルのほうもやや細身でサビで伸びて突き抜け感をやや強調する感じがある。また子音と息感に少し強調を感じるので質感的にも少しドライ。
【4】官能性「低域の床面をしっかり感じながら、清潔感のあるのびやかなサウンドを味わえる」
大橋彩香「ハイライト」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲のように低域ドラムに推進力を感じつつ、基本的に高域に抜けていくような清潔感のある曲はとくに満足度が高いように思われる。ボーカルが若干甘味を抑えた清潔感重視で突き抜け重視になっており、中域の楽器音で暖かみがあまり感じられないところは少し好みを分けそうだが、風通しはとてもよく、ギターやピアノの上辺、そしてシンバルのシャリシャリ感がやや強いバランスで疾走感は強め。ドラムも浮き上がりがよく、リズムコントロールが良いので低域でもスピード感がある。
人によっては中高域で若干派手めで質感的にもジャリジャリした感じがあるのが少しうるさげに思うかも知れないところはある。
TVアニメ『叛逆性ミリオンアーサー』 OP主題歌「ハイライト」(彩香盤) (特典なし)
三月のパンタシア「星の涙」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】この曲ではシンバルに空気感があり、清潔でシャンシャンきれいに聞こえるのもそうだが、何よりドラムに濁りがなく、スコンスコン清潔に聞こえてくるのが非常に気持ち良い。ボーカルはややハーハーする息感が強調されて、サビ前では少し溺れているような息苦しさを感じるところもあるが、サビではのびやか。弦楽やピアノもツヤを抑えてやや淡い感じはあるが、それが逆にシンバルとギターのエッジ感をよく目立たせてくれてもいる。個人的な好みで言うと、もう少しボーカルに濃さとつやっぽさが欲しいが、清涼感のある音楽になっているので、これが好ましいという人も多いだろうと思う。
ナナヲアカリ「ワンルームシュガーライフ」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲の場合、ドラムがちょっとドライに少し明るくドンスコくらいな感じで聞こえながら、ボーカルもややスーハー息感を強調し、清潔感を出す感じになる。楽器ではとくにシンバルが炭酸水のようにシュワシュワした感じを少し目立たせつつ、やや薄味気味にキーボードがすっきり聞こえてくる感じになる。風通しが良く、清涼感重視。ナナヲアカリのボーカル特有の媚びた甘ったるい感じは少し減少するので、好みは分かれそうだが、くどい感じなくスカッと楽しめる風味になっている。
ワンルームシュガーライフ/なんとかなるくない?/愛の歌なんて(期間生産限定盤)(DVD付)
Rasmus Faber「The Galaxy Express 999(Jazz Ver.)」
【Hiby R6 Proで鑑賞】上の動画はライブ版なので、私が聴いているアルバム版とは少し異なるが、概ねの雰囲気を味わってもらいたい。
臭みの少ない落ち着いた感じは、JAZZを楽しむのにも向く。ピアノや金管が派手すぎないので、それらが目立ちすぎず、空間に静謐感がたっぷりある。そのため、たとえばシンバルには必ずしもツヤを強調する感じでないにも関わらず、自然な潤い感がある。低域はそれほど音圧が強くないのに、床面の存在感は確かで、低域弦楽が調和的な出音でムーディーにボンボンと鳴動してくれる。この洗練された感じは他の完全ワイヤレスイヤホンではなかなか味わえないだろう。渋みがあるのにグルーヴを感じる。つまり、こいつは大人の味も出せるのである。
ラスマス・フェイバー・プレゼンツ・プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.3~
Christopher Tin「Water Prelude (feat. Angel City Chorale)」
【Hiby R6 Proで鑑賞】そういうわけでFALCONの静謐感に魅了されてしまうと、たとえばこのような曲を味わってみたくなる。どうだろうか?イヤホンによってはこの曲、パンチが強く出過ぎてボヤボヤする感じがあるかも知れないが、FALCONで聴くとかなり音像が明瞭に聴ける。
全体的に落ち着きがあり、音場全体に神話時代から続くかのような歴史を感じさせる重みと奥行き感があり、立ち上がってくる、あるいは響いてくる音の一つ一つが、決して鮮やかではないが、明確な音像を持って聞こえてくる。
その清楚な音色によく耳を澄ましてみれば、そこに薫るような楽器音の味わいが存在して、その淡いけれども芳醇な音色は、我々の意識を瞑想へと導き、沈潜させて浸らせてくれる。低域がドンドコかしましく意識を乱したりはしないので、素直に意識を音の中に没入していける。
そうして意識が音の息吹に包まれながらゆったりと下降していき、そして沈んだ先の意識の底からもう一度音楽が聞こえてくるような、そんな静謐の中でダイナミクスを感じさせるような音楽がある。
FALCONはこうした音像に丁寧に寄り添った表現力を、究極の携行性を備えたポケットサイズで実現してくれている。これに魅了されない者はいない。
The Drop That Contained the Sea
【5】総評「清潔で爽やかにロックやダンスを楽しみたい人にはとくにおすすめ。奥行き感と高さ、床面の広がりがあるので、意外とオーケストラもいけます。かなり万能機」
音質は低域でパワフルさを感じさせてくれつつ、価格帯ではかなり清潔な中域と高域が感じられるバランスになっている。人によってはややとげとげしかったり、ドライなジャリジャリしやすい感じは気になるかも知れないが、それでも多くの人にとって聞きづらかったり聞き疲れのするところはあまりない音のはずである。
基本的には炭酸水を飲むように、のどごしのある、しかし泡立つような爽快感も同時に味わえる音響を楽しめる。シュワシュワ粒立ちが細かで爽やかなシンバルが好きならとくにおすすめ。
まとめ
- 清潔感のある音で風通しがよい
- 通信品質やバッテリー性能も充分満足できる
- 甘味や抱擁感のある音楽を重視する人には向かない
Noble audio FALCON (NOB-FALCON)トゥルーワイヤレスイヤホン完全ワイヤレス
【関連記事】
*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。