【国内正規品】Astrotec LYRA Collection ハイレゾ対応インナーイヤー型イヤホン (150Ω)
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「インイヤー型で優しい付け心地。遮音性は低い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「リケーブルはできない」
- 【3】音質「鮮やかで少し硬質な手がかりが出る、艶やかで元気な中高域が主役」
- 【4】官能性「艶やかで華やか、透明感もある音響だが、好みによっては若干鼻につきやすいところもある」
- 【5】総評「インイヤー型で明るい女声ボーカルが得意なイヤホンを探しているなら選択肢にどうぞ」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「インイヤー型で優しい付け心地。遮音性は低い」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 15~40000Hz |
インピーダンス | 150Ω |
感度 | 102db |
ドライバー構成 |
ダイナミック型(15mmDD×1) |
音質傾向 |
弱ドンシャリ、ボーカルフォーカスが良い、チャリチャリ、ツヤツヤ、ふんわり、コツコツ、繊細、快活、艶やか、華やか、鮮やか |
インイヤー型なので付け心地は優しいが人によって緩い可能性はある。しかし直垂らしだけでなく、シュア掛けもできるデザインになっているので、装着感は改善可能だと思われる。また固定力を高めるイヤーウィングチップも付いている。
遮音性はそんなに高くない。
テスト環境
今回のテストはAstell&Kern KANN CUBE、a&norma SR15、Hiby R6 Pro、ONKYO GRANBEATで行っている。なおインピーダンスを考慮してゲイン設定がある場合はどれも最大にしている。
【2】外観・インターフェース・付属品「リケーブルはできない」
付属品はイヤーウィング、キャリイングケース。リケーブルは出来ません。
【3】音質「鮮やかで少し硬質な手がかりが出る、艶やかで元気な中高域が主役」
音質はこれまで聞いてきたAstrotec製品と共通点が多く、中高域を艶やかにディテールよく聞かせるバランスになっている。インイヤー型らしく、高域は柔らかく抜けていく感じで、シャープネスは強調される感じは強くないが、中高域で少し音が硬くなるところはあり、たとえばピアノはキンキンうるさくはならないが、コンコンという感じの硬さを強調しやすいところがある。
音量を上げると、この中高域は一層艶やかに前進してくれるが、一方で硬い感じも強くなるので、ややうるさげになりやすい印象を受けるかも知れない。またとくに明るめの女声ボーカルは上昇圧が強くなりすぎてギャンギャンする可能性がある。
中域の下の方は中高域に比べると後退してはいるので、少し清潔な印象だが、ほどよく広がりを出しつつ、奥行き感もある。低域はあまり膨らまないが、音圧はそれほど強くない感じでビシバシ感は抑えられていて優しいけれども、ややディテール重視のタイトな印象を受ける音になる。基本的には深さを強調する澄んだ低域と言える。
したがって、全体の印象を眺めると、大抵の音量と曲で、基本的には中高域の印象が目立つ、若干透明度の強いクール系サウンドに聞こえると思われる。中域で実体感があるのでボーカルは優しく膨らんで刺激は抑えめで自然な感触があるが、楽器音でもピアノや高域の電子音はやや硬さを強調されて、刺激強めに感じられるかも知れない。打ち込み系の音楽やEDMは派手さが強くなりやすいだろう。一方でアコースティックギターを主体にしたような曲では透明度を少し強めに、若干の暖かみを感じながら楽しめそうである。高域弦楽曲もあでやかに聞かせるだろう。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。中高域でかなり色づきを強調するので、上方向で賑々しい印象を受ける。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鋭い。決して高いところでシャープに刺さる感じではないが、中高域ではややキラキラ感を強調しやすいので、曲や音量によっては耳に痛い感じは出やすい。 |
明るさ (明るい/暗い) |
明るい。中高域で光沢感を強調される感じがあるので、明るい音場に感じる。 |
派手さ (派手/地味) |
派手。光沢感高めで艶やか。チャリチャリ、コンコン、キラキラといった感じが強く出やすい。女声ボーカルもちょっと高いところで一番色づく華やかな感じがある。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
硬い。ピアノ音でややコツコツした硬質感を強く感じさせる印象がある。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや尖る。シャープネスはそれほど高くないが、光沢的な眩しさは高めで少し尖った印象を受けるかも知れない。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや騒々しい。エッジと光沢を強調して高域が過度に目立ちやすいので、人によってはかなり騒々しいバランスになる。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
普通。低域の主張は強くないが、キックは結構しっかり感じられるから深いところでパワフルに感じる。また中高域がはっきりするのでピアノやボーカルの上昇圧に力強さを感じる。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
普通。中高域で派手なのでやや前屈みで少し頭でっかちな印象を受けるが、中域でも一定の実体感があり、ほどよく広がりを感じられる。 |
太さ (太い/細い) |
普通。細すぎる感じもなく太すぎもせず中庸に感じる。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。中高域で若干硬くなるので、そこだけ少し角張った印象を与えるが、基本的には聴き心地の安定した滑らかな音響表現をしてくれる。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや細かい。シャープネスの強調は強くないが、中高域で少しディテールを強調するので、金管やシンバルが明るく、粒立ちよく感じる。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
澄んでいる。ガラス質の透明感が強く、基本的には透明な感じの清潔感が強め。ガラス張りに感じる音場。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
潤いのある。ギターやボーカルに滲み出るみずみずしさが感じられる。 |
重さ (重い/軽い) |
軽い。基本的に中高域のディテールが高く、ボーカルや楽器音に上向きの上昇圧を感じる。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
澄んでいる | 澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
明るい | 明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
伸びやか | 伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
しっとりしている | しっとりしている |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
やや濃い | 濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | やや目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややスカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
やや奥まる |
美点
- 中高域のディテールが良い
- キラキラした煌めき感が強く派出さがしっかり感じられる
- ツヤも強く、艶やかな色気が楽器音とボーカルに感じられてセクシー。
- 透明感の高い清潔な雰囲気がある
- 高域でシャープネスを強調せず、高域はマイルドに溶け込むように抜けていく
欠点
- 音源と曲によるが、中高域で硬い感じが強くなりやすい
- 音量を上げるとボーカルがギャンギャンしやすい
- 低域は深みとディテール感があるが、音圧も緩めで基本的にやや薄味に感じられやすい
- DAPがパワー不足だと高域の硬い感じが露骨になりやすい
[高音]:このイヤホンは中高域のディテールは非常に高く、高域でガラス張りされたような透明感を味わわせてくれる。ピアノはキンキン感は比較的強めなものの、きつくはないが、コンコンする硬い感じは結構強く出やすい。ボーカルやギター、弦楽も基本的には上昇圧がかかっているような上にのびやかな感じで、明るくキラツヤしたあたりを強く印象づけてくれる。一方でシャープネスは高くないので、たとえばボーカルはスーよりハーがまだ強めな印象で、息感でサ行が刺さる感じはそれほど強くない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はやや清潔感が強めに思う。ボーカルにふっくら膨らむ感じがあるが、下から音が根立ちしてくるというよりは、上から降りてきたり、奥から浮かび上がってくる感じになる。迫力の面ではやや後退的に感じられるだろう。
[低音]:おそらくインイヤー型特有の肌感覚があるせいか、100hz~40hzまで肉厚でぎっしりした振動。30hzでも結構存在感を感じ、20hzでも振動を感じる。低域はモニター的で、深いところのベースとキックがかなり詳細に浮き上がる。中域近くのパンチ力は抑えめ(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:中高域と低域の深いところに分離するような感覚があり、縦軸でワイドレンジな印象を受けると思われる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムスはタムやスネアのパリパリした感じが強い。キックは少し分離されるような、間が少し清潔で透明感の強いドラムスで、明るめのバスンバスンないしバツンバツン。ハイハットも鮮やかにややチリチリ感強めに浮き上がりが強い。やや低域での爆発力に欠けるような気がするが、快活で、上の火花が感じられるあたりでパチパチ弾けてくれる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは艶やかに浮き上がり、明るめになるので少し中性的。女声ボーカルも明るく艶やかで、甘味の強いアイドル系なボイス表現。サビで歌い上げるところでは少し語尾が伸びる感じがあるので、上昇圧が出て、やや外連味強めな印象を受ける。息感も少し強い印象を受け、全体的にややガツガツしているボーカル表現に聞こえやすいかも知れない。
【4】官能性「艶やかで華やか、透明感もある音響だが、好みによっては若干鼻につきやすいところもある」
三月のパンタシア 「風の声を聴きながら」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲みたいに中高域でキラツヤ多めの曲は透明感をかなり詳細に出してくれる反面、硬いぎこちない感じも出やすい。たとえばピアノはDAPや音量次第ではコンコンした硬い感じが強くて、少しガクガクした音を鳴らしているように聞こえる。一方でボーカルはやや明るめに清潔感と甘味を出し、さらに前面に出てくる。低域は柔らかめながらも深いキックの存在感が明確で深みのあるサウンドになっている。若干カツカツしている印象ではあるが、透明感高めで明るく華やかに聞かせてくれる。
清浦夏実「悲しいほど青く」
【SR15で鑑賞】少し音を中域で均して広がりを持たせてくれるようなa&norma SR15につないでみる。聴いてみるのはアコースティック感が強いこの曲。
ディテールはやや中高域重視で前傾している感じであり、全体の透明度は少し高め。一方でSR15独特のわずかにかすれるような清潔な感じがボーカルに加わり、膨らみもやや増して暖かみがより強く感じられる。若干ハスキーさを強調しながらも、丁寧にほっこりした甘味を出してくれる印象を受ける。またこの曲のピアノがやや抑制的なせいもあるだろうが、コンコンした硬い感じはありながらも、目立ちすぎない透明な音色になっている。低域の下で少し優しく重みを出して沈み込む感じも、ベースに泉のように滾々と湧き出るような感触を出して、メロウな雰囲気に貢献している。なかなか良い。
藤田麻衣子「またね」
【KANN CUBEで鑑賞】KANN CUBEと組み合わせると音の透明感の高いパリッとした感じがやや強くなって感じられる。たとえばこの曲を聴いてみると、やや電子的なモニター的な感じがあるものの、藤田麻衣子の曲に多い低域の深いところが清潔に聞こえてくる表現がとても明瞭だし、ボーカルは艶やかさを出しながらも清潔に伸びてくる。ほかのDAPに比べると幾分清楚に中高域を音場広めに落ち着いて余裕ある感じで聴かせてくれる印象がある。デジタル感が強い印象があるのは好みを分けそうだが、解像度は高く感じられる。
KANN CUBEがS/N比がよいせいなのかもしれないが、ほかのDAPで中高域が少し硬いかなという曲でも、その感じは少し取れる。イメージとしてはアンチエイリアスがかかった感じと言えばわかりやすいか。
【5】総評「インイヤー型で明るい女声ボーカルが得意なイヤホンを探しているなら選択肢にどうぞ」
リケーブルができないところがやや残念ではあるが、Astrotecらしい押し出し感のある、透明感を兼ね備えた音質は魅力。音を粒立ちよくきれいに聞かせてくれる感じがあり、華やかで艶やかである。ただインピーダンスは高めでおそらく再生にゲインを必要とする。実際私の手持ちでもKANN CUBEだと音に角立つ感じがだいぶとれて聞こえた印象がある。ボーカル表現は非常に艶やかなのが魅力的だ。
なお興味本位でスマホで聴いたら、なんかもさもさして全く印象が違った。妙にウォームでこれはこれはありかもと思ったりもしたが、せっかくの中高域の透明度がうまく出ず、非常に勿体ない。
【国内正規品】Astrotec LYRA Collection ハイレゾ対応インナーイヤー型イヤホン (150Ω)
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。