オーディオテクニカ audio-technica カナルイヤホン バランスド・アーマチュア2基 ハイブリッド型 ATH-IEX1 ハイレゾ対応 チタンハウジング
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「ケーブルコネクタ部分がやや長いのが好みを分けそう」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
- 【3】音質「デジタル的で輪郭くっきりさせつつ、高域のびやかで高く、低域パワフルで深さも結構出る良質モニター。全体的に目鼻立ち良く力強い」
- 【4】官能性「音は武骨」
- 【5】総評「高域低域のわかりやすさ、デジタル的な輪郭の良さ、パワフルさ。三位一体のモニターライク」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「ケーブルコネクタ部分がやや長いのが好みを分けそう」
おすすめ度*1 | |
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ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 5~50000Hz |
インピーダンス | 5Ω |
感度 | 102db |
ドライバー構成 |
ハイブリッド型(DD×1, BA×2) |
音質傾向 |
弱ドンシャリ、デジタル、ソリッド、前進的な音響、モニターライク、粒立ちが良い、高域伸びやか、低域ドライ |
ネット上の情報でケーブルアダプタ部分が長いので装着感が微妙だというのを見たが、個人的には装着感は普通に良かった。とくにハズレやすい感じはなかった。遮音性もそこそこ。
テスト環境
今回のテストはCayin N6II/T01とAstell&Kern KANN CUBE、a&norma SR15、ONKYO GRANBEAT、Hiby R6 Proで行っている。
【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
試聴品なので付属品は割愛。バランスケーブルは付属してる。
【3】音質「デジタル的で輪郭くっきりさせつつ、高域のびやかで高く、低域パワフルで深さも結構出る良質モニター。全体的に目鼻立ち良く力強い」
スペック上のインピーダンスが5Ωとか書かれているんで、駆動力そんないらないかと思うかも知れないが、このイヤホンは駆動力高めの方が良い。音量取りやすい感じはインピーダンス低めっぽい特徴を持っていて、音がすぐ膨らむんで低ゲインにしたくなるんじゃないかと思うが、駆動力が低いと高域ばかりが目立つ感じになる。私は今回標準のバランスケーブルでレビューするが、バランス接続だとかなり良質に聞こえた音楽も、3.5mmアンバランスで聴くと、かなり迫力不足で高域に寄っているように感じた。
音質的にはオーテクらしいデジタルな質感で個々の音をくっきりさせつつ、音場広めにのびやかに聴かせようという意図が感じられる。とくに高域は顕著に突き抜け感を意識していて、高域で弦楽や木管がきれいに伸びてくるため、クラシック音楽でも華やかさを楽しめる。シンバルの空気感も派手めでしっかりわかるのに、音に刺さる感じはほとんどない。ボーカルの子音も少しくっきりめ。
全体としてフラットっぽい雰囲気ではあるが、中域はわずかに前傾して奥行き感を出しているようで、下では低域のパンチが浮かび上がるくらいの清潔な空間が用意されている。中域音は一定の厚みを感じさせつつ、中高域で鮮やかになってくるバランスになっており、のびてくる前屈みな表現になる。それでいて、左右は自然と広く、とくにボーカル周りはよく整理されており、フォーカスされている感じは強くないのに、よく聞こえる。
低域も聴き心地が良く、SOLID BASSシリーズのようなドライな質感を感じさせ、広がりもほどよくセーブされたまとまりのよい感じで、パンチ・キック・ベースにあまり派手さがないにも関わらず、見通しが良い。
総じて「モニター的な音を丁寧に作りました」という完成度で、しかもオーテクらしい輪郭感とちょっと派手めな高域、ソリッドで地味だけどカッコイイ低域という取り合わせに、哲学を感じる。まさにオーテクファンの好みそうな音でモニター作ってきたという感じだ。シャープネスはほどほどで尖りすぎて聞き疲れしやすい感じもなく、音の繋がりもナチュラルさを意識した感じだ。
DAP相性
事前に高域がシャリシャリするというネット情報を得ていたので、とりあえず露骨にシャリシャリするか手持ちのDAP(KANN CUBE/Cayin N6II/Hiby R6 Pro/GRANBEAT/SR15)で聴いてみたが、バランス接続だととくに露骨にシャリシャリする感じはなく、むしろ結構高くまで音が伸びるのに音が硬くなったり、尖ったりして破綻しない感じで良質に思えた。試聴なので、さすがにDAPごとに詳しく聴き込むほど時間をかけることが出来なかったが、バランス接続ならどのDAPでも普通にパワフルで高域に破綻はない。シャープネスも強すぎる感じはなく、子音に刺さる感じもあまりない。たしかに派手さはあり、白味は感じるのでシャリ感はよく乗るが、それが目立ちすぎるという感じではない。
美点
- 高域のディテールが良い
- デジタル的で輪郭がしっかりしており目鼻立ちが良い
- 基本的には前進的で聴きづらい感じがない
- 低域の量感と派手さはほどよくセーブされているが、ディテールが良い
- 全体的にパワフル
欠点
- 音量は取りやすいが、ボリュームを上げるとすぐ音が膨らみやすい
- やや武骨で発色の割に風味は抑えたサウンド
[高音]:高域のディテールはかなり詳細で、この点モニター的な印象を受ける。大抵のイヤホンで「ここで減衰するだろうな……」と思うところで一段伸びてくる。弦楽の突き抜け感、シンバルの空気感の派手さ、白味がしっかり感じられるが、シャープさがあるのに耳に痛い感じはない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は厚みを出しながらも中高域重視のつややかサウンド。奥行き感があり、オーケストラでも立体感が感じられる。色味的には鮮やかだが潤い感なんかは抑えめで、デジタル的。モニターライクな質感で輪郭くっきり。
[低音]:100hz~50hzまでブォーという厚い振動。色味は明るめ。40hzでわずかにジジッとしたノイズ感があり(エイジング不足の可能性あり)、30hzで沈む。20hzでほぼ無音。低域もクリアでベース音は明るめに良く聞こえ、キックは広がりすぎないバランスでドンと重みを出す。見通しが良く、深さが感じられる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:高域のシャリ味ははっきりめ。低域も量感的に多くはないが、深さをしっかり出す。ロックでは低域のドライブ感と高域のパワフルさが結構出るので、ドンシャリ気味に思うかも知れないが、実際にはフラットに近いんじゃないかと思う。基本的に音は前進的だが、左右よりは縦軸がしっかり感じられる。インピーダンスが低いせいか、音量を上げると音が膨らみやすい(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラム表現はドライで派手さを抑えながらも鼓面の粘り、パンチ・キックの縦軸のソリッド感は丁寧に出る。明るめで深みもあるバチンバチン的な活きの良い音。ハイハットは高いところの浮き上がりが良い(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルも女声ボーカルも前に出てくる感じが強くはなく、むしろ中高域や高域の楽器音が派手に感じる場面も多いが、かぶさる感じはほとんどなく、分離良くしっかり聞こえる。ボーカルは中域で少しボディがあるが、子音や息感を適度に強調しつつ、上にのびやかで明るく、甘味はあるがちょっとドライな感じになっている。
【4】官能性「音は武骨」
澤野弘之「MAIN THEME<Ver.0>」
【KANN CUBEで鑑賞】この曲の弦楽の伸びやかさ、木管の突き抜け感、シンバルの空気感がかなりよく出るので、サビの盛り上がりで充分にいいとこ取りできる。かなり派手めに目立つけど、刺さる感じもなく、分離も良好でうるさげな感じはない。低域弦楽のエッジ感と床面にゴシゴシと出る熱量感も気持ち良い。中域の奥行きも結構出ていて、立体的に聴ける。
機神大戦ギガンティック・フォーミュラ オリジナルサウンドトラック Vol.2
Madeon「You're On(ft. Kyan)」
【KANN CUBEで鑑賞】この曲、高域シャリシャリ系のイヤホンだと結構うるさくなりやすいけど、このイヤホンは高域のディテールが良くて分離もしっかりしていて音像がちゃんとしてるうえに発色も良いので、ごちゃごちゃせずにちゃんと聴ける。中域で奥行き感もあるし、低域の床面もパワフルで充分に活き活きしているのに、被さってこない。中盤に加わってくる派手めのシンセ音も非常にはっきり鮮やかに聞こえるので、この曲の演出感も聞き逃すことなく楽しめる。分離感と粒立ちがよく、よくソリッドされている印象。
AXiS「HEAVEN'S RAVE」
【KANN CUBEで鑑賞】結構うるさげのこの曲でも、派手さと緻密さを出しつつ、スムースによく聴かせてくれる。ボーカルはドライだが明るめで上にのびやか、低域は量感の割にパワフルでドライブ感満点。音はデジタル的で輪郭が良く、この曲の緻密さを奥行きを出して聴かせてくれる。低域のスピード感も充分にあり、リズムコントロールも正確。
安月名莉子「Glow at the Velocity of Light」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】シンバルの派手めの空気感、ギターとピアノの鮮やかさ、SOLID BASS的な雰囲気を持つパワフルドラム。中域での奥行き感の出し方が良く、ボーカルフォーカスは強くなさそうなのに、楽器音から良く分離されてボーカルが伸びてくる。スピード感もきれいに出るので気持ち良い。
TVアニメ 「 彼方のアストラ 」 エンディングテーマ 「 Glow at the Velocity of Light 」
【5】総評「高域低域のわかりやすさ、デジタル的な輪郭の良さ、パワフルさ。三位一体のモニターライク」
下馬評が賛否両論って感じだったので、癖が強いのかと思ってましたが、意外と正統派モニターライクな音でした。オーテクらしいソリッドバス風の分離の良い低域と、高域でのディテールをよく出しているところ、輪郭はちゃんと描き分ける感じでデジタル的にわかりやすく音像を出す感じは好感が持てます。なんだかんだいって、オーテクしてる感じなんで、オーテクファンには響きそうですけど、オーテクの音のこんな感じ(無愛想さ・妙な高域フォーカス・ドライな低域など)が嫌いって人にはいつものオーテクだなぁって感想は出てきそう。
個人的にはオーテクファンなので、新しいフラッグシップにふさわしい音と思いますが、まあ世間の評価はどうでしょうね。デザインも結構好みで、個人的にはおすすめです。
オーディオテクニカ audio-technica カナルイヤホン バランスド・アーマチュア2基 ハイブリッド型 ATH-IEX1 ハイレゾ対応 チタンハウジング
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。