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【ハイレゾ対応ヘッドホン ONKYO SN-1 レビュー】木製ハウジングらしい、カラッとした響きの良く整理された低域とみずみずしい艶やかさを持つ美しく優美な中域から中高域。豊かな響き合うサウンドを持つ貴婦人。つまんない音だと思う人もかなりいるはずだけど、放っておけ。音楽にとって美しい響きが大事だということを私にもう一度気づかせてくれた名機。まどろむように浸れ!おすすめ

ヘッドライン

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ONKYO SN-1

ONKYO SN-1

オンキヨー ONKYO ヘッドホン オンキヨー ブラウン SN-1-BR [φ3.5mm ミニプラグ /ハイレゾ対応][SN1BR]

 

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「軽量で穏やかな装着感」

おすすめ度*1

ONKYO SN-1

ASIN

Amazon登録なし

スペック・評価
再生周波数帯域 10hz~80000hz
インピーダンス 40Ω
感度 99dB
ドライバー

ダイナミック型

音質傾向

情熱的、響きが良い、調和的、ノスタルジック、豊か、潤いがある、密度感がある、充実している、幻想的、明るい

 大きめのヘッドホンですが、桐のハウジングは非常に軽量です。イヤーパッドは充分フカフカとしていて、優しく、側圧も強すぎません。遮音性はそこそこ高めです。

 

テスト環境

 今回のテストはCayin N6II/A01Astell&Kern KANN CUBEONKYO GRANBEATで行っています。またゲイン設定は高設定です。

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【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」

 ONZOのサブスク版なので付属品は割愛します。ONZOのサービスについて興味がある方は以下をご確認下さい。

www.phileweb.com

www.onzo.co.jp


【3】音質「みずみずしい中高域と少し乾いたカラッとした中低域の対比がある。少し明るめの音場だが、パンチは強めで中域の下には少しもやもやした熱気もあり、空間に自然な空気感がある」

 

レコーディングシグネチャー(試験運用中)

 レコーディングシグネチャーはバイノーラル録音されていますが、品質は良くありません。低域は抜けやすくなるので、イコライザーで低域を持ち上げていますが、それでも充分出ていません。したがって聴いたそのままの音質とは異なりますので、あくまで参考情報ということでお願いします。

 

原曲

www.youtube.com

銀の意志 Silver Will / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation

www.falcom.co.jp

 

anchor.fm

 

 音質的な特徴としてはまず桐のウッドハウジングを採用した音の響きの特徴について述べるべき様な気がします。桐材は木材の中でも響きの特性が良いことが知られていますが、ONKYOへのインタビュー記事によると、スピーカーに使った場合とヘッドホンで使う場合では音響的なキャラクターは異なっていたということが述べられています。

「いいヒントをいただきました。スピーカーでは、桐の筐体がアンプのように音を増幅するのに対して、ヘッドホンでは、桐のハウジングが耳もとで鳴る音をきれいに整えてくれました」(山本さん)。

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 で、この「音をきれいに整える」とは何だろうというのがポイントです。あくまで私が聴いている音からの説明になるんですが、まず一聴した印象では、このヘッドホンは非常に音場が明るく、中高域に向かって伸びやかなのですが、中域から低域にかけてでは、中域下のパンチが目立ち、低域も浮き上がりがよく、全体的に上向きのエネルギーを感じます。私が低域ジャンキーのせいかもしれませんが、注目したのは低域音で、重低音の鳴動とか楽器の胴鳴りみたいな部分が風通し良く聞こえます。こうした震える音にカラッとした清潔な音像感があって、臭みがない感じがします。たとえばエレキベースですが、実はかなり熱量を感じ、実際この熱量は中域に滲み出すくらいの結構な量に思えるんですが、そうするとベースは緩くもやっと聞こえるかと思いきや、明るいながらも意外と締まりは良くて立体感が維持されています。バスドラキックも同様です。音の広がりがそこそこあって幅のある音で、鳴動感も感じられるので、なんとなくもやっとしそうなものですが、結構しっかり聞こえます。なのでウォームで中高域の派手さに比べると地味かなと思わせつつ、聴き込んでみると結構なディテール感があるようです。

 このカラッとした風通しの良い低域音は、このヘッドホンの中高域音を加えて考えてみると、一層興味深く思えます。中高域音は立体感を意識して前傾しているように私には聞こえますが、中域の充実感を考慮して清潔感を出し過ぎない、傾斜の強すぎないバランスになっており、たとえば率直に言って個人的な好みからいうと、ギターの縦軸のアタックはやや足りず、歪みが少なくまっすぐ立ちすぎており、さらに横幅が少し広い感じに聞こえます。しかし一方で中高域付近は立体感を過剰に出さないことで、ピアノ音の上辺やシンセ音に安定的な音像が感じられ、手がかりが過剰に多くならないよう、自然な透明感で艶やかな音が丁寧に感じられるようになっています。この中高域を抜けると高い高域は少しマイルドに後退しつつ、ハイハットの穂先が少し中高域を抜けて清潔にシャンと一段高く目立つくらいに高さやシャープネスが感じられます。

 ここまで音を聴きながら考えて、このヘッドホンのコンセプトを私なりに解釈すると、やはり中域音の自然な味わいを目指して設計されているのではないかと思います。低域と中高域は中域での安定感と立体感の配分バランス、それから空気感と清潔感の配分バランスを、それぞれやや安定感より、清潔感よりに調整しながら、丁寧に描き出そうとしています。その結果として、中域にみずみずしい透明感が実現されており、たとえばピアノやアコースティックギター、そしてシンバルなどに少し滲み出す潤いが感じられ、自然な太さと根立ちがあり、暖かいながらも乾燥して風通しの良い低域と対比をなし、質感的なコントラストで丁寧に音楽を描き出してくれます。ボーカルフォーカスについてはアコースティックギターやピアノがかぶさりやすい気がするので、ボーカル周りはそれほど清潔ではありませんが、基本的には良好でしょう。音像のナチュラルさを極力維持しながら、明るい空間に見通しよくフレームを合わせて音楽を聞かせてくれます。結局それが「音をきれいに整える」ということなのかもしれません。

 こう書くと非常に魅力的だと思うかも知れませんし、私もこのヘッドホンは魅力的だと思うのですが、おそらく多くの人が一聴した印象は物足りなさとわかりにくさを感じるんじゃないかと思います。実際私もはじめはなんか面白味のない音と感じました。一聴した印象でこのヘッドホンが物足りないと思う理由はいくつかあります。列挙してみましょう。

  1. 低域が浅く感じられる
  2. 高域も立体感を抑えている
  3. 結果として音楽全体は中域に寄った外連味の少ないものに感じられやすい
  4. あらゆる音が基本的によく響くので、情報量が多すぎて難解

 中域に自然な奥行き感と実体感があり、上方向に向かう明るく、しかも余韻の充分な響きのある音響はフルオーケストラのクラシック音楽でも充分な高さを感じさせてくれ、しかし清潔になりすぎない、豊かな息吹を内包した明るく華やぐ春めいた透明感のある音楽を聞かせてくれます。それはいいでしょう。しかし、床面の鳴動はしっかりしていますが、目立ちすぎないので、重低音に近い部屋鳴り感のリアリティを重視する人には物足りなく思える可能性があります。また立体感にも欠けるので、音の配置が充分に拡散しておらず個々の音が接近しすぎているように感じられ、奥行きはともかく幅は足りなく思えるかも知れません。さらに分離感は抑えめな割に音の情報量が多すぎ、印象の整理が付きにくく、一度にくっきりした響きのある音が聞こえすぎるために、響きの奔流感のある音の中に音楽の全体像を見失いやすいです。

 しかし、弦楽や管楽は低域付近で根立ち、中域で徐々に前屈みに伸びていきながら、中高域付近で少し滞留して豊かな広がりを見せ、さらに高域ではしっかりと筋だってシャープに伸びていく風味と立体感、ディテールを持っており、非常に優美です。この最も優美なあたりでは空間は充分に透明になっており、粒立ちの一つ一つが明瞭に聞こえる解像度が得られます。

 中高域のクリア感はとくに豊かなピアノ表現を好む人に魅力的に思えるはずで、ピアノ音は充分に明るく潤い感を持って色づく一方で、音の沈み込みは低域までしっかりと沈んで聞こえるので、丁寧なディテールを感じられます。もう一つはアコースティックギターで、こちらも潤い充分に湧水のようなサウンドを聞かせてくれます。シンバルも水しぶきを感じさせ、ボーカルも充分に湿っぽい、この潤いのある中域表現に魅力を感じるならば、このヘッドホンを愛してしまうことでしょう。

 そうして中域の潤い感を存分に味わっていると、立体感や清潔感の多少の不足や低域の不足などは、ぶっちゃけもうどうでもよくなってきます。ポップスや弾き語り曲、クラシック音楽、JAZZ、インストなどで、穏やかに優美な響きを持つ潤い感に身を任せて浸ることができます。高域はこの価格帯のヘッドホンとしては、わずかに伸びきらない印象があるかも知れませんが、優美な気品を感じさせてくれます。浮き上がりの良い低域は必ずしも深みや重み、黒みで優れておらず、ヘッドホンならではのダイナミックさを求める人には魅力に欠けるかも知れませんが、一方で意識を充分に中域付近に押し上げ、優しく下から支えてくれます。

 少なくとも潤い感のある音楽が好きな人なら、一聴した優しい感じの外連味の少ない物足りなさを少し我慢して、まずはクラシックから聴き込んでみることをおすすめします。この音を楽しまないのはもったいない、そんな気がします。

 

 

 このヘッドホンはあまりに響きが豊かすぎて難解なところがありますので、もうちょっとわかりやすく響き重視で聞きたい人は、私の聴いてきた範囲ではaudio-technica ATH-WP900が響きの感じが似ていて、いいんじゃないかと思います。ただし、あくまでSN-1と比べるとですが、月並みな立体感のある音になっていて、表現のスケール感でも劣り、余韻が映える幻想性みたいなものがだいぶ抜けている気がします。「分かりやすくなった分だけつまんなくなってしまった」感じがなきにしもあらずです。

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音質因子評価
音質因子 評価
鮮やかさ
(鮮やか/色味が薄い)
鮮やか。輝きは強調しないが、中域下に適度な濃厚感がありつつ、中域から中高域で豊かに色づく。

鋭さ

(鋭い/鈍い)

普通。高域の高いところでやや鋭く音が立ち上がる感覚があるが、中高域の艶やかさがしっかりしていて、中域も豊かなのでバランス的に目立ちすぎない。
明るさ
(明るい/暗い)
明るい。低域から高域まで全体的に一定の見通し感があり、音の浮き上がりが良く、とくに中高域は充分に詳細で艶やかに聞こえるので、音場全体が充分に映えて聞こえる。
派手さ
(派手/地味)
やや派手。艶やかな音が明るく色づくのが目立つ。
硬さ
(硬い/柔らかい)
やや柔らかい。中高域付近の発色は充分に良いにも関わらず、角が立つ感じがなく、優しい。
尖り
(尖っている/丸みがある)
やや丸みがある。音の響きが良く、輪郭は適度に拡散されている。
穏やかさ
(穏やか/騒々しい)
やや騒々しい。女声ボーカル付近やその上くらいで音がややガチャガチャして感じられる。
力強さ
(力強い/嫋やか)
やや力強い。低域は浮き上がりの良い感じのパンチを聴かせて力強く音場を支えてくれる。
豊かさ
(豊か/貧弱)

豊か。相対的に薄味でありながらも低域のディテールは良く、情報量は劣らない。低域上のパンチから上に豊かで艶やかな空間が広がっており、充実感がある。

太さ
(太い/細い)
やや太い。中域下での音の根立ちは良く、ボーカル付近はでも充分太い感じに聞こえる。
手触り
(ざらざら/滑らか)
やや滑らか。全体的に音はマイルド。
粒感
(きめの細かい/粗い)
ややきめの細かい。シンバルや弦楽は少し上でシャープで緻密さは感じられるようになっている。
清潔感
(澄んだ/濁った)
普通。低域の暖かみと中域下のパンチが強く、中域下に床面のライブ感を出すほどの熱気があるが、高域に向かうにつれ空間の透明度は高くなっていくが、完全に清潔まではいかない。
潤い
(潤いのある/乾いた)
潤いのある。シンバルに水しぶきのようなスプラッシュ感があり、ピアノもみずみずしく、アコースティックギターも充分に潤って聞こえる。
重さ
(重い/軽い)
普通。中域はパンチのある床面に安定させられ、上では中高域が艶やかにやや音を引っ張り上げるが、総合するとボーカル付近に安定している。わずかに軽めには思うが、自然な重力感があり、重心は音楽の中心点を捉えているように思える。

 

ボーカル因子評価
ボーカル因子 男声 女声
澄んでいるか
(澄んでいる/濁っている)
普通 普通

明るいか

(明るい/暗い)

やや明るい やや明るい

伸びやかか

(伸びる、突き抜ける/天井感がある)

やや伸びやか

やや伸びやか

潤っているか

(しっとりしている/乾いている)

潤っている 潤っている

太いか

(太い/細い)

普通 普通

濃いか

(濃い/薄い)

やや濃い やや濃い

子音が強調されるか

(目立つ/目立たない)

普通 普通

 

空間因子評価
空間因子 評価
主に中域の密度
(ぎっしり/スカスカ)
ややぎっしり
主に高域の高さ
(抜けが良い/天井感がある)
やや抜けが良い
主に低域の深さ
(深掘り感がある/浮き上がりがよい)
浮き上がりが良い
主に低域と中域の横幅
(広い/狭い)
普通
主に中域の奥行き感
(奥まる/前屈み)
やや前屈み

 

美点
  1. 適度な透明感
  2. 適度な濃厚感
  3. 艶やかな音
  4. 潤いがある
  5. ボーカルフォーカスは悪くない
  6. ディテール感をほどよく抑えたナチュラル系サウンド
  7. 見通しの良い低域
  8. 音に根立ちと自然な実体感がある
  9. 非現実的なほどに響きの情報量が多く、幻想的
欠点
  1. 立体感に少し欠ける
  2. ボーカル周りにやや音が集中しやすい
  3. 外連味が少なく、縦軸の抑揚に乏しい
  4. 情報量が多すぎる

 

[高音]:高域はかなり高いところは清潔で、シンバルの穂先や弦楽の切っ先が少し細くシャープに出ているのがわかるが、中高域の方が艶やかでそのエッジ感が目立ちすぎる感じにはなっていない。高域の立体感は適度に落ち着いており、ギターや管楽、弦楽のアタック感は強くなく、穏やかに音像を描き出すように感じられる。色づきはよいながら手かがりは適度にマイルドになっており、音が角立つ感じは強くなく、輪郭は一定の丸みを帯びている(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:中域は前進的で、とくにボーカルは充分に押し出されるとともに、ピアノやアコースティックギターも前進されるが、高域方向の立体感が十分でないために音が横に広がりやすいところがある。そのため、太い音がやや中域で滞留する感じになり、とくにピアノやアコースティックギターなどボーカルとほぼ均等なパワーバランスで聞こえてくる楽器音は、その音がボーカルにかかって聞こえるかも知れない。中域下のパンチは少し強くなっており、音の根立ちを感じさせて中域に安定感をもたらしており、実体感のある空間を作っているが、このあたりも低域との分離が緩く感じられるので暖かみが少し強くなりやすく、ボーカル付近までもやっとした空気感が滲み出しているような印象を受ける。それが中域の空間に人肌を感じさせるほどには自然な温度感をもたらし、音に温和な雰囲気をもたらしてもいるが、一方で中域が充分に清潔でないと感じられる人もいるだろう。

[低音]:100hz~40hzまで少し重く沈み込みの強いボーッという振動音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域の個性を説明するのは少し難しいので、わかりやすい消去法で語ると、まずタイト系の空間が多い清潔な低域ではない。そして暖かすぎてブーミーな低域でもない。パンチが強いのと熱気が高めなところがあるので、透明度が優れているというわけではないが、どちらかというとクリアでレイヤー感のある透けた感じの音に近いように私には思われる。

 暖かみが充分にあり、中域近くのパンチはしっかりあって中域を押し上げるパワーがある。低域弦楽が重みが強く出ないので深掘り感は強く感じず、量感的にはやや抑えめに軽く思えるが、意識を潜らせて集中して聴いてみると、淡いながらも描き込みはしっかりしており、少し透明な感じでありながらもディテールを感じる。この透明感はより深い音の存在感を適量の音でしっかりと聴かせるためであろう。重低音の鳴動は強くないが、ベース音はやや明るめに暖かくはっきり聞こえ、キックは踏み込みはそれほど強くないが、一定の広がりがあり、重みを感じさせる。

 この低域音の表現は個人的にはやや独特で、私の解釈ではこのヘッドホンにおけるONKYOのセンスが凝縮されているポイントでもあると思うが、あくまで低域ジャンキーの私からすると、重厚味と深みに欠けて物足りないところがあるのは事実。しかし、中域から自然につながって、ディテールも感じさせる見通し感があるので、ブンブン唸る低域が苦手な人には好ましく思われるかも知れない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:すでに何度も述べたが、中域にフォーカス感があり、高域の立体感はやや緩く、価格の割に音場表現は広くは感じられないだろう。奥行きも幅や縦軸に合わせた自然なバランスを考慮されている。そのため、開放的で分離感が強い拡散的な音場表現が好きな人には価格を考えると、かなり物足りなさを覚えるかも知れない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラムスは全体像を眺めると、やや豊満で優しい感じに聞こえるだろう。中域下にパンチが利いており、胴鳴り感もあるが、重みは強くなく、浮き上がる床面を形成するように聞こえる。タムやスネアの鼓面は表面に少し硬さがあるが、すぐに柔らかくなり、革張り感のあるバツバツした感じの音に変わる。明るめのバッツンバッツンといったところ。シンバルはチリチリしたところから、シャーンという穂先にいたるまでの充分な縦軸を持っているが、色味は少し淡く白味は強くないので、大抵の楽器音よりはおとなしめに聞こえる。しかし、穂先は充分に高いので、楽器音の間から頭が出ており、存在感はしっかりしている(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:男女ともにボーカルは甘く、濃い。男声ボーカルは一般に甘いマスクを思わせるコクや深みもあるが、それを強く感じさせないマイルドな味わいがある。息感は少し強調されるが、子音はなめらかで、歌詞を明瞭に聴かせるというよりは、メロディアスに歌い上げる傾向に聞こえやすい。女声ボーカルもほぼほぼ同様で、潤いは充分で湿っぽさを遺憾なく味わわせてくれ、じんわりと聴かせてくれるし、明るいボーカル曲でもほどよい甘味のある吐息を聴かせつつ、ちょっと媚びたあたりのキュンキュンするところを、ギャンギャン吠えさせずに聴かせてくれる。

 

【4】官能性「潤いがあり、ノスタルジックな人肌感があり、適度に甘美な麗しく色づく中域を楽しみませんか?」

パスピエ「スーパーカー」

スーパーカー

スーパーカー

【GRANBEATで鑑賞】正直に言うと、このヘッドホンでこの曲聴いて泣きました。最近なるべく音楽に入り込まないような、分析的な姿勢で聴こうと心がけてたんでレビューしてて泣くことまでいくことはあまりなかったんですが、これにはやられました。この曲の独特の泣きそうなボーカルがむっちゃ映えます。音場の立体感は甘いので、率直に言って疾走感はありませんが、ノスタルジックなセピア色の暖かい雰囲気の中で、少し穏やかな表情のエレキギターが情感を盛り上げるように、じんわりした音を広がりよく聴かせてきて、スネアの音も柔らかくて温かみがあり、潤いのあるボーカルラインを追っていくだけで、いつだかわかりませんが、とにかく懐かしいあの頃に連れて行かれるような気持ちになれる幻想的な空間が広がっています。豊かに響きすぎて明らかに非現実的で幻想的な音なのに、質感に生々しい温もりのある走馬灯のような音に包まれて、不意に「あ、なんか切ないな」と感じ始めると、ボーカルの暖かみと広がりのある甘い声が優しく胸に沁み込んでくるようになり、気づくと胸からあふれ出るものがこみ上げて、頬を濡らしてしまいました。不覚。

 あなたも非常に艶やかで豊かなグルーヴ感に身を任せて、ちょっと昔に戻ってみませんか。

 


&DNA(初回限定盤)

 

fhána「calling」

calling

calling

【Cayin N6II/A01で鑑賞】この曲は元々奥行き感の強調があるので、このヘッドホンで聴くと、素直に音にふくよかな豊かさが出つつも、音場はほどよく広く感じられます。特筆すべきは縦軸に長いボーカルが充分な甘味と肉づきを持って、サビで突き抜ける最後の最後まで潤いと温度感を維持して聞こえてくることです。

 ボーカル周りに弦楽やギター、ドラム音などが容赦なくかぶさってきてガチャガチャしてくる感じがあるので、人によってはやはり清潔感の不足を感じて好みじゃないと思うかも知れません。しかし、私には気になりません。音は確かに被さって聞こえます。どちらかといえば騒々しいです。しかし、最初のうるさい印象で躊躇せず、音楽に入り込んでいくと、ボーカルの実体、弦楽の響き、ドラムの鳴り、ピアノの音色すべてが丁寧に質感的に描き分けられています。それに気づいた途端にこれまでゴチャゴチャしていた空間が、実際には豊かな、多くの色に満ちていて、一見乱雑に重なり合っていたように見えたそれらは、お互い響き合い、支え合い、調和し合って音楽を構築しているのだと理解できます。そこではどんな音も孤立せずに、お互いの響きを愛し、高め合い、ボーカルですら一つの音楽の中に混ざり合っています。その音の奔流のようなものに浸っていると、まるで自分もその音楽の一つの音となって混ざり合っていける感覚を覚え、最初はとっつきにくく思えたその空間に、むしろ心地よく意識が入り込んでいけます。覚醒感は必要ありません。豊かな音に包まれてまどろむように音楽を楽しみましょう。

 音場?そんなん気にすんなバカ。

 音楽は結局どれだけ心に「響かせるか」が大事で、音場などというのは所詮音楽の主要素ではない、そういうことを主張する響きに満ちた音楽を奏でます。

 


TVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』ED主題歌「calling」(アニメ盤)

 

TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」ED主題歌「ここから、ここから」

ここから、ここから

ここから、ここから

【KANN CUBEで鑑賞】KANN CUBE先生は比較的音場を意識した理性的な音を持っていますので、このヘッドホンとはお互いを補い合うベストパートナーかもしれません。なんて考えて組み合わせましたけど、KANN CUBE先生の低域ドライブ力が実にパッションに満ちているということを忘れておりました。

 ドラムのパンチの響きに実体感増し増しで、ついさっきまで「低域はちょっと物足りないかも知れない」なんて言っていた気分が吹き飛びました。とくにギターは雄々しく、力強く暖かみを増して突き上げるパワフルサウンドになっていて、おそらくロック曲に変えたせいとKANN CUBE先生のドライブ力の複合作用で、明らかにギラつきが違います。おまえ、そんなハングリーな音だったっけ?って目を疑います。

 ボーカルも少し上にガツッと伸びる貪欲さが感じられるようになり、「なにこれ嘘やん?」と思って、同じESS系DAC搭載のHiby R6 Proと聞き比べてみましたが、明らかにKANN CUBE先生の音がアタックが増し、こちらにパンチも浮き出てくるようになり、ドライブ感が桁違いです。

 音場は奥行き感が出て、ギターの高さもわずかに伸び、ジュワジュワした熱気のあるエッジをわずかに高くまで引き上げてくれているように聞こえます。ボーカルはドラムのパンチが響いている中域下の渦の中から、生身の温かみのある声色のまま、高く突き抜けます。ちょっとこそばゆいくらいに吐息を甘く尖らせながら、ふわっと綿菓子のように浮き上がったり、逆に太く根立ち良く突き抜けたり、実体感とディテールに優れているので縦横無尽に味わい尽くせる万能感があります。ボーカルのボディはしっかり中域に存在しているので、どこまで伸びていっても、人肌の温もり感は消えません。

 空間はやはり少し暖かく艶やかに色づき、ギターが黒く伸びる分だけさらに熱気が感じられるほど情熱的で、そしてどこか懐かしいノスタルジックな風景を感じます。夕焼けの中で音楽を聴いているような、眩しくぼやけて音が広がる響きの豊かさがあって、ただただひたすらに美しいです。ピアノの上辺は川の水面のようにつややかで優しい光を放ち、熱く雄々しいギターと交互に入れ替わってときどき空間の熱気を逃がしながら、響き合っています。そうした中で聞こえてくるボーカルの甘味の中に、なぜか切なく、儚く、そして愛おしい繊細なものを感じることができるのは、響き合う音が意識を充分に音楽に没入させてくれるからに他なりません。

 


TVアニメ「 宇宙よりも遠い場所 」エンディングテーマ「 ここから、ここから 」

 

【5】総評「響き合う音、豊かにまどろむ空間、そして懐かしい情景。魂の籠もった音が生まれるところ」

 ぶっちゃけ半分宗教臭くなるくらいにはこの音に私は情感を揺さぶられました。いいですか皆さん、私は声を大にしていまここに宣言したい!音の本質は「響き」です。音場?立体感?分離感?それは全部飾りです。音は孤立すべきではありません。最終的にはハーモニーとして調和すべきです。人間が個人で生まれ、個人で死ぬ運命にありながら、社会というハーモニーの中でしか自己を完成させられないように、孤立した音の一つ一つは調和し、一体化することで芸術として完成されるのです。

 私の情熱を呼び覚ましてきたのはいつもJVCの製品ばかりだったんですが、ONKYOのこいつはぶっちゃけ、私が聴いた感じではVictor HA-WM90よりパッショネイトしててやばいです。魂が揺さぶられる響きを持っています。これまで私はそれこそ揺さぶる重低音の振動でしか心の深いところは動かないと思っていましたが、そんなことはありません。響きこそが音楽の情熱的な成分のあらゆる源泉であり、本質は中域にあるのだという確かなメッセージがここにありました。内心ONKYOはDAPだけ作ってれば良いとか思ってましたが、あらゆる意味で私のONKYOを見る目がまた変わりました。

 

 ONKYO SN-1。少なくとも俺は、おまえの響きを胸に刻み込んだので、いつまでも忘れない。

 

  • 豊かで響き合う情熱的な中域
  • 艶やかでみずみずしく、優美な音色
  • 分離感や立体感に欠ける

 

ONKYO SN-1

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

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