Klipsch T5 TRUE WIRELESS トゥルーワイヤレスイヤホン完全ワイヤレス
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「コンパクトで装着感は良い。通信品質は安定している」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルはType-Cです」
- 【3】音質「やや暖かみのある充実感の中で、中域上から中高域あたりをややフォーカスして聴かせる感じがあるが、基本的にはフラットに全音域に配慮されている」
- 【4】官能性「適度に詳細ながら、情熱と品格を感じさせるバランス感覚のあるサウンド」
- 【5】総評「音の完成度は高く、デザインも秀逸です」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「コンパクトで装着感は良い。通信品質は安定している」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
8h/32h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX4 |
音質傾向 |
ギターがきれい、温もり感がある、高域が詳細、キラキラ、ウォーム、ドシドシ、調和的、音場に一体感がある、ボーカルフォーカスも良い、ややデジタル、適度な膨張感 |
独特のハウジングデザインで、Klipschっぽいノズルが尖った感じがあり、耳に深く入る感じです。遮音性は悪くありません。
対応コーデックはaptX/AAC/SBC。ONKYO GRANBEATとHiby R6 Proで交互に繋ぎながら接続品質をみました。テストしたのは某関東ターミナル駅周辺です。駅構内の改札付近などでは途切れはありませんでしたが、街中を歩いていると少し途切れが見られました。バスロータリー付近でも少し途切れます。
QCC3020を搭載している機種で、私の環境の場合接続当初などに通信の乱れが見られます。時間が経つと通信品質が安定してきます。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 ProとONKYO GRANBEAT、Cayin B6II/A01で行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「充電ケーブルはType-Cです」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル(Type-C)、専用充電ケース、説明書です。
ONZOのサブスク版なので付属品が異なる場合があります。ONZOのサービスについて興味がある方は以下を確認下さい。
ノズル形状は特殊で付属イヤーピースも特殊なデザインのため、イヤピの自由度が気になっていましたが、結構自由度は高いです。
Klipsch T5。ノズル形状が特殊なために気になっていたイヤピの自由度ですが、意外といろいろいけます。Sedna Short、AET08はLサイズでもちゃんとケースに収まります。ただしノズルが長いので、小さめのサイズの方が耳への収まりは良さそうです🤔 pic.twitter.com/S9aATBNcOz
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) November 21, 2019
【3】音質「やや暖かみのある充実感の中で、中域上から中高域あたりをややフォーカスして聴かせる感じがあるが、基本的にはフラットに全音域に配慮されている」
音質はギターの付近にフォーカス感があり、アコースティックギターは結構前面に出てきて聞こえてきます。空間は完全な透明感を目指しておらず、わずかに空気感があるために音場に人肌くらいの温もりが感じられます。ボーカルフォーカスも良く、とくに女声ボーカルはギター音やスネア・タムあたりにほどよく包まれながら、適度に前に出てきてくれます。
低域から中域までがやや暖かみを感じさせるのに対し、高域はやや爽やかにさっぱりして抜けていく感じがあります。たとえば弦楽は上では少し筋立ちを強調して細くなって抜けていく感じが出ますので、人によっては少しヒステリックに感じるかも知れません。ボーカルの子音も強調感があって、ソフトタッチで透明感もあるわりに、高いところではツ音や息遣いにややディテールの強調が出ます。口の運びを明確に感じる一方、人によっては少し滑らかさに欠けるという印象を持つかもしれません。
低域と中域の境目は少しゆるやかでライブ感を出しますが、人によっては篭もっている印象を受けるかも知れません。低域自体は印象に比べると案外透明度があり、バスドラキックやベースの音が鮮やかによく聞こえますが、温度感も強いので少しほの暖かい感じで聞こえます。意外と低域の支配力は強いようで、音の重心は少し下がっていくような、安定感のある音響に聞こえやすいです。
低域の暖かみは中域に滲み出す感じがあり、清潔さを少し減少させ濃厚感を演出しているので、好みを分けるところはありそうです。ドラム表現に暖かみを求める人には、ディテールもほどよく、満足できる低域でしょう。低域弦楽も透明に寄せている感じですが、膨らみがあり、ボンボンと空気を伝わる生々しさも維持されています。JAZZに空気感を求める人にも好まれそうな出音です。低域の量感は多くなく、小音量ではやや厚みが足りなく思える可能性はありますが、音場全体に適度な深みをもたらしており、音には安定感があります。
総合すると、やや中高域以上でデジタルな感じや少しシャープネスを強調するような細い感じがありますが、基本的にはほどよい暖かみの中でライブ感を大事にしつつ、全音域にほどよくディテールをまぶしたモニター的な音になっています。低域が中域に少し滲み出すところがあるせいで、濃度感がわずかに強いところもあり、低域のディテールや中域に鮮明さを出すのに音量を必要とするところはあります。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。中域から中高域にかけては充分に鮮やか。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鋭い。全体的に柔らかい音に見えて、高域では意外とシャープネスを強調する感じがある。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。中高域で少し明るめで自然光よりは少し明るいくらいの音場に感じる。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。中高域以上で少し鮮やかさを強調し若干派手めに聞こえる。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
普通。音に手応えはあるが、硬い感じはない。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
普通。前述のように意外と音に鋭いところはあるが、輪郭の鋭さで、エッジの尖りという感じではない。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや穏やか。全体的に温和な空気感があり、適度な暖かみの中で音を聴かせる。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
普通。低域は厚みのあるライブ感があり、一点で力点を強調するよりは全体的にやや押し出し感のある感じである。ダイナミックさは抑え気味に聞こえ、やや穏やかに聞こえるが、押し出し感を感じると、印象よりはもう少しパワフルかも知れない。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや豊か。全体的に音に一定の太さがあり、適度に膨らむ実体感がある。音の情報量も多めである。空間も少し濃厚。 |
太さ (太い/細い) |
普通。高域の高いところで少し細くなる傾向があるが、基本的には音に一定の太さがあり、低音は少し膨らむくらいである。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。全体的に音の質感は滑らかに感じる。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや細かい。金管やシンバル、弦楽は少し上で細い感じがあり、アコースティックギターもやや刻みが細かく粒立ちが少し強めに感じられる。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
やや濁っている。低域の熱気が中域に滲み出す感じがあり、空気感がある。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いている。ややドライである。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。わずかに低域に向かって重心を感じ、音が緩やかに下がっていく感じがある。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや濁っている | やや濁っている |
明るいか (明るい/暗い) |
やや明るい | やや明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか | やや伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
普通 | やや濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | やや目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
やや前屈み |
美点
- 全体的に適度な温度感がある
- 適度に前屈みでボーカルフォーカスは悪くない
- ギターサウンドがきれい
- 全音域に適度なディテール感がある
- ライブ感がある
- 全体的に音に適度な太さがあり、鮮やかさもある
欠点
- クリア感に欠けると感じられる可能性がある
- 篭もっていると感じられる可能性がある
- 音が乾燥して感じられやすい
- 曲によっては低域は膨らみやすい
[高音]:高域の上の方はマイルドに抜けていく感じがあるが、ハイハットは結構高さを感じ、弦楽も少し筋立ちを出しながら上に伸びる感じがある。人によってはわずかにボーイングが強く、ギシギシしているように感じるかも知れない。ボーカルも少し上に伸びる感じがあり、子音は強調されやすい(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域上から中高域あたりに強調感があり、とくにギターは良くフォーカスされ、曲によってはボーカルよりも目立つかも知れない。中域は奥行き感が適度に持たせられているが、強調感はなく、少し空気感と鮮やかさを出しながら、音をソフトタッチで聞かせる。音には充分な太さがあり、実体感がある。
[低音]:100hz~40hzまでややボーッという感じの厚みのある重い振動。30hzで沈み、20hz以下でほぼ無音。ベース音が鮮やかでキックもやや濃い感じで深さを感じるが、暖かみも少し強いので人によってはぼんやりして感じられるかも知れない。低域弦楽や低域管楽も少し膨らんで聞こえてくる。音量を上げるとベースの輪郭がはっきりしてきて、明瞭感は増してくるだろうが、低音量だとややぼんやり具合が強いかも知れない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:ディテール的には低域はやや抑えめで、中高域に自然と音楽的な焦点が作られるようになっている。音は少し沈んでいく感じはあり、重心は低めで安定感がある(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:スネアのパリパリ感は結構出て、上辺でバチバチとした粘りを感じるが、少し膨らみながら聞こえる感じがあり、フロアタムがやや豊満に出やすい。少し重いバツンバツン。ハイハットは高さもそこそこ出しつつ、チンチンしたあたりに強調があり、濃い感じである(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは女声のほうが前に出てくる。男声ボーカルはつややかで自然な甘味はあるが、どちらかというとドライで子音は少し強調されている。女声ボーカルは男声よりはもう少し甘味が強く、上に少し伸びやすい感じではあるが、媚びた感じは強くなく、意外と情緒は安定して聞こえる。
【4】官能性「適度に詳細ながら、情熱と品格を感じさせるバランス感覚のあるサウンド」
Arty McGlynn「Jigs: The Humors Of Kilclogher」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】ギター曲です。これまでT5はどちらかというとドライ、という話をしてきたと思いますが、この曲のようにギターだけのサウンドに集中してみると、充分な潤い感と立体感、そして温もりが感じられます。充分な煌びやかさと胴鳴りの沈む音も感じられ、深みのあるサウンドを味わわせてくれます。アコースティックギターのツヤのある音は本当にうまいと思いますね。
Snail's House「なつまつり」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】まず音場全体に適度な暖かみがあり、この曲のノスタルジックな温度感を丁寧に感じさせてくれます。高域の電子音はくっきりとしており、ディテールの集中があり、鮮やかに聞こえる一方、ピアノ音から下の方は徐々に柔らかいディテールになっていき、低域は温度感を増して祭りの熱気を感じさせてくれるように暖かみがあります。ほの暗い夕刻に、祭りの提灯の明かりだけ少し鮮明な中、行き交う人が暗がりでひしめいている、独特の明暗のあるノスタルジックな情景が目に浮かびます。人肌の温度感があるサウンドが、生々しい人々の息遣いの篭もった存在感を感じさせてくれるようです。
LiSA「一番の宝物 ~Yui final ver.~」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】この曲ではギターの繊細な表現が鮮やかです。温もり感があるので、ボーカルには生々しい感情がのっており、フロアタムもそのボーカルを支えるような膨らみを出して、上に優しく押し上げます。弦楽はややヒステリックに高さを強調しますが、それがまた感情の高ぶりを感じさせてくれ、音場全体に充分な温もり感がありながらも上では気持ちが抜けていく、高い空が感じられます。音楽の重心は低く、地に足が付いた安定感がありながらも、サビでは楽器音すべてが上に向かい、高い空の星空の輝きに吸い込まれていくような、静かな突き抜け感を感じさせてくれます。
ただし、私の好みよりはわずかにボーカルが明るすぎて、上で子音を強調するのが少しだけ気になります。
一番の宝物~Yui final ver.~(DVD付)【完全生産限定盤】
Kimii「ikanaide」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】高域の粒立ち感はしっかりしており、緻密な明るさを感じさせてくれつつ、中域から低域にかけては少し熱量感のあるダンスフロアが広がっており、深みと適度な重みを感じさせてくれます。中域のピアノ音や弦楽音は艶やかでありながら、しっかりと低域とつながって深く沈む感覚があり、明るく詳細で明瞭感のある高域音と適度な対比を見せつつ、一方で全体像は適度に一体的な空気感に包まれて、わずかに熱狂するダンス空間が展開されています。ディテール感を丁寧に出しつつ、適度にノスタルジックで馴染んでくるような音は、テクノの電子音に沁み入るような深みを与えています。
【5】総評「音の完成度は高く、デザインも秀逸です」
正直に告白します。T5について、私はこれまで必ずしも高い評価を与えていたとは言えません。Klipsch好きではありますが、この機種の音はどことなくデジタルで、優美で自然な、いつものKlipschサウンドとはわずかに異なる匂いを感じていました。しかし、実際静かな環境で聴き込んでみると、高域のちょっと輪郭が高めのデジタルな音を、適度な温もり感の中で印象づけて聴かせるバランスはなかなかに感動的で、またギターサウンドの艶やかさに心打たれました。
それでも独特のノズルが使いづらいかも知れないと思っていましたが、実際試してみると、イヤーピースの自由度も低くないことがわかりました。そうすると、思ったよりも完成度が高いということが見えてきて、これはむしろおすすめ度が高くなりました。
まとめ
- ギターサウンドが素晴らしい
- コンパクトでかっこいいデザイン
- イヤーピースの自由度も低くない
Klipsch T5 TRUE WIRELESS トゥルーワイヤレスイヤホン完全ワイヤレス
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。