ポータブルオーディオの新しい世界がすぐそこまで来ています
2020年は完全ワイヤレスイヤホンにとってさらなる飛躍の年となりました。2019年にSONY WF-1000XM3とApple Airpods Proが切り開いたアクティブノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホンという地平は、すぐに完全ワイヤレスイヤホンのフロンティアとなり、低価格化が進みました。最先端の完全ワイヤレス技術はもはや一流メーカーの独占物ではありません。そして2021年はさらなる前進が待っています。ポータブルオーディオはワイヤーから完全に自由になり始めました。
この記事では現在市場で手に入る代表的な完全ワイヤレスイヤホン用通信SoCについて簡単に解説し、さらに将来的な展望について語ります。
代表的な完全ワイヤレスイヤホン向け通信SoCとその特徴
ここでは代表的な完全ワイヤレスイヤホン向け通信チップセットとその特徴について解説します。完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ際のヒントにしてください。
Qualcomm
Qualcommは完全ワイヤレスイヤホンの通信チップの分野ではリーディングカンパニーであり、その製品の信頼性は一般的に最も高いものとみなされています。最高品質の完全ワイヤレスイヤホンは基本的にQualcomm製品を搭載しているでしょう。Qualcomm製SoCの最大の利点は高音質コーデックであるaptX規格をサポートしていることです。低価格のQCC302X、304Xはとても人気で競争力がある製品です。ハイエンドの機種に採用されるQCC5124、QCC5126などはANC機能も提供するハイエンドチップです。QCC512XシリーズはaptX HDもサポートしているはずですが、対応機種は稀です。
Apple
W1やH1チップはQualcommと並んで業界の最先端に位置していますが、基本的にサードパーティに開放されていません。Apple AirpodsシリーズやBeatsのワイヤレス製品に使用されています。驚異的なペアリングスピードと優れた音質で知られています。
Airoha
台湾の通信チップメーカーAirohaはその安定した通信品質で知られています。消費電力の点でも優れており、SONY製品にもチップを提供しています。Airoha製チップを選べば通信品質で不満を覚えることはあまりありません。AB1532、AB1536などが代表的な製品です。
RealTek
Airohaと並ぶ台湾の通信チップメーカーで、カニマークでおなじみです。RTL8763B、RTL877Xが代表的な製品です。
BES
2020年完全ワイヤレスイヤホン市場の台風の目となったメーカーです。アクティブノイズキャンセリングを得意としており、ANC完全ワイヤレスイヤホンの低価格化をもたらした主役であることは間違いありません。その代表的SoC BES2300は低価格ANC完全ワイヤレスイヤホンに搭載されているほか、HUAWEI Freebuds 3i、Freebuds 2 pro、OPPO Enco W51など強力なANC性能で話題になった機種にも採用されています。
JL
コスパ重視メーカーです。基本的に2000円以下くらいの安い機種に採用されていますが、JL6936Dはそれなりにパフォーマンスが良いらしく、通信品質はだいぶ向上したようです。
Bluetrum
コスパ重視メーカーです。代表的なチップはAB5376で、JLの競合です。
Actions
JLやBluetrumより上位のメーカーとみなされていますが、Airoha、Realtekより格下と考えられているようです。
Broadcom
アメリカのファブレスメーカーです。SamsungがBroadcom製のチップを使っています。
Cypress
アメリカの通信チップメーカーです。CYW20721が代表製品ですが、採用例を知りません。
そして、Qualcomm QCC305X登場!!さらに進化は加速する
去る12/16、Qualcommの次世代TWS用SoC QCC305Xシリーズが発表されました。このチップは今後規格化される予定のBluetooth LE Audioに対応し、QCC304Xに引き続きaptX Adaptiveコーデックもサポートします。さらに、QCC305Xではアクティブノイズキャンセリング機能が装備され、製造者は複雑な手間をかける必要なく、簡単にANC搭載完全ワイヤレスイヤホンのソリューションを提供でき、ゲームにも最適な低遅延ワイヤレス環境も実現できるとされています。
QCC305X搭載機種は来年後半以降の登場になると思われますが、この新世代チップによりますます完全ワイヤレスイヤホンの進化は加速しそうです。ミドルレンジ以上の機種はANCを搭載しているのがほとんど当たり前になりそうです。
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