- EarFun Free Proの概要
- EarFunについて
- 競合機種との比較表
- EarFun Free Proの特徴
- パッケージ
- 装着サンプル
- 音漏れ
- 接続品質
- インターフェース/操作方法
- ヒアスルー&ANC性能
- 音質
- 音楽鑑賞
- レコーディングシグネチャー
- 総評
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今回取り上げる機種はアクティブノイズキャンセリング搭載完全ワイヤレスイヤホン、EarFun Free Proです。
EarFun Free Proの概要
こんな人におすすめ
- 装着感のしっかりしたスポーツでも使えるイヤホンが欲しい
- 比較的長いワークアウトの間やひとり仕事中、家事の合間も音楽やゲームをイヤホンで楽しみたい
- ブーム感のある生き生きした低域が好き
- ANCやヒアスルーがある機能的なイヤホンが欲しい
- ゲームをするので低遅延な完全ワイヤレスイヤホンがほしい
基本スペック
- 連続/最大再生時間:7h/32h
- 防水性能:IPX5
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:211-200914
説明書のダウンロード
- ダウンロードできません
長所 |
短所 |
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audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
EarFunについて
EarFunテクノロジー株式会社は、2018年に、経験豊富な工業デザイナー・音響エンジニア・音楽愛好者で構成されたチームによって設立されたブランドだそうです。次世代のワイヤレスオーディオ機器を製造することを基本理念としており、デザインから製造まで完結して行っています。その製品は国際的にも高く評価されており、2つのCES 2020 イノベーションアワードを受賞し、CES 2020にて最も受賞した賞の多い新オーディオブランドとなりました。さらにCNET、PCMag、What Hi-Fi?など、一流のメディア企業に推奨され、急速な成長を遂げている最先端オーディオブランドです。
競合機種との比較表
EarFun Free Pro | Earfun Air Pro | TaoTronics SoundLiberty 94 | Tribit Flybuds NC | SURIA T12 | |
タイプ | カナル型 | カナル型 | カナル型 | カナル型 | カナル型 |
連続再生時間 | 7h | 7-9h | 5-8h | 8h | 8h |
最大再生時間 | 32h | 32h | 32h | 24h | 40h |
対応コーデック | AAC/SBC | AAC/SBC | AAC/SBC | AAC/SBC | AAC/SBC |
防水性能 | IPX5 | IPX5 | IPX4 | IPX4 | IPX7 |
ANC性能(10) | 5.5 | 9 | 7 | 7 | 4.5 |
ヒアスルー(10) | 6(自然) | 8(自然) | 7(自然) | 7(自然) | 6(自然) |
音質傾向 | V字型 | 弱U字型 | 低域寄り | フラット | フラット |
EarFun Free Proの特徴
-28dBのアクティブノイズキャンセリング性能
EarFun Free Proは内蔵マイクで周囲の騒音を拾い、ドライバーユニットから逆位相の音を発することで、最大28dBの騒音を低減できるとされています。さらに使用環境によって、アクティブノイズキャンセリングモード/外音取り込み(ヒアスルー)モード/ノーマルモードを切り替えることができます。
アクティブノイズキャンセリング性能は5000円くらいの機種として標準的なスペックに思えます。EarFun Air Proの最大38dBのアクティブノイズキャンセリングに比べると、劇的な効果は期待できないかもしれません。しかし、スペック値から判断すると、dyplay ANC-Shield ProやTaoTronics SoundLiberty 94相当のノイズカット効果は期待できるはずなので、価格帯では平均以上であろうとは思われます。
6.1mm径の低歪みドライバー
EarFun Free Proは複合振動板を採用した6.1mm径のダイナミックドライバーにより、力強い低音と伸びやかな中高音を再現するとされています。EarFunは比較的音質は評価が高いブランドなので、期待はできそうです。EarFun Freeと同じような音質に調整されているなら、低域重視かもしれません。
長時間再生&ワイヤレス充電に対応
EarFun Free Proはイヤホン単体で最大7時間の連続再生が可能とされています。充電ケースを含めて最大32時間まで音楽を楽しむことができます。充電ケースはワイヤレス充電に対応しているので、対応する充電パッドがあれば、置くだけで手軽に充電ができます。
ゲームに最適な低遅延モードを搭載
EarFun Free Proには遅延を100ms(0.1秒)以下に抑える低遅延モードが搭載されています。これにより、ゲームや動画視聴をする際に、通常再生よりも少ない遅延で音声を再生可能とされています。低遅延モードのON/OFFを切り替えるたびに、音声ガイダンスが流れ、切り替わりを直感的に判断することができます。
パッケージ
パッケージは価格帯では上質なほうです。EarFunのパッケージは統一感のある白と黄色、黒の3色を基調としており、それはEarFun Free Proのパッケージデザインでも変わりません。
ビルドクオリティは価格を考えるとかなり上質です。ケースデザインやイヤホンのデザインには安っぽさはありません。
デザインの点で気になるところといえば、イヤホン本体のイヤーウィング部分がまれにつっかえて、うまく充電ドックにイヤホンが収まっていない状態になることです。ケースに収納したつもりになっても、接続が維持されていることが何度かありました。
装着サンプル
イヤーウィングの効果もあり、装着感は良好です。固定は十分で、多少激しい運動をしても問題なさそうです。
気になる点としては右耳と左耳でEarFunのロゴが上下逆さまになっていることです。このデザインに何らかの意図があるのかもしれませんが、洗練されていない印象があります。
音漏れ
EarFun Free Proの遮音性はなかなか優秀です。EarFun Free ProをHATS(ダミーヘッド)に装着し、FiiO M15に接続して、図書館レベルの静かな環境で30cm程度離れて正面に座ってサウンドリークを聞き取ってみました。サウンドリークのテストではイヤホン側に独立した音量調節がある場合は音量を最大にした状態で、M15の音量調整だけで判断できるようにしています。
ボリューム半分では少し音漏れが目立ち、気にならないレベルですと1/5程度までボリュームを下げる必要がありました。図書館など静かな環境では1/5、公共の場ではボリューム1/3くらいまでを目安に音量を調整すればよいと思われます。
さて、1/5程度の時のEarFun Free Proの音圧を1khzテストトーン測定で確認したところ、私の測定系でだいたい-45dBくらいであることが確認されました。これは私の普段聞く音楽の音量くらいで、もしかするとわずかに大きいくらいです。
私は普段小さめの音量で音楽を聴く傾向があるので、人によって変わるとは思いますが、EarFun Free Proは比較的多くの人にとって、音漏れを気にせず、公共の場でおそらく十分な音量で音楽を楽しめる環境を提供してくれると思われます。図書館のような静かな環境では、わずかに音漏れを気にする必要があるかもしれません。
接続品質
接続品質について、いくつかレビューを確認しましたが、否定的な意見はほとんどないようです。
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5mくらい離れてもシームレスでそのままつながっています。ただし、遮蔽物を挟むと少しの間通信が途切れがちになります。それでも接続は維持され、しばらく経つと通信は安定し、音楽を問題なく聴くことができました。
ANC OFF時でもホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースはタッチコントロール式です。
電源ON
充電ケースの蓋を開けると、イヤホンは自動で電源ONになります。
電源OFF
充電ケースにイヤホンを収納し、ケースの蓋を閉じると、自動で電源OFFになります。
ペアリング
充電ケースからイヤホンを取りだした際に接続先がない場合、自動でペアリングモードに移行します。
曲再生/停止
多機能ボタンを2回タップします。
曲送り
右耳側の多機能ボタンを3回タップします。
音量を上げる
右耳側の多機能ボタンを1回タップします。
音量を下げる
左耳側の多機能ボタンを1回タップします。
通話応答
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2回タップします。
通話終了
通話中に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2回タップします。
着信拒否
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2秒長押しします。
音声アシスタントの起動
右耳側の多機能ボタンを2秒長押しします。
ANC ON/OFF/ヒアスルー切り替え
左耳側の多機能ボタンを3回タップします。
低遅延モードの切り替え
左耳側の多機能ボタンを2秒長押しします。
ヒアスルー&ANC性能
ヒアスルー性能
ヒアスルーは少しサーッというホワイトノイズが大きくなりますが、概ね自然な雰囲気です。自分の声は少し太く低く聞こえる傾向はあり、また、位置は少し近く聞こえる感じがあります。
ANC性能
下はヘッドホン(beyerdynamic DT990 Edition 2005 600Ω)から-30dB@1khzに音量レベルを合わせた上で、基準ホワイトノイズを流して測定し、その後標準イヤーピース Sサイズをつけ、ANCをONにして、もう一度ヘッドホンから基準ノイズを流し、このイヤホンの遮音性能を1/6オクターブごとに測定したものです。今回の測定では、基準ノイズに対し、20hz~20khzの可聴域での平均遮音性能は13.23dBくらいありました。
まず測定グラフを見てみると、私の経験からすれば、これは効果的に作用するANCの形ではありません。聴感上最もよく作用すると思われる、低域から中域下部のカット性能があまりよくありません。聴感上も、空調は少し静かになりますが、効果が高いという印象は受けません。
私が読んだいくつかのレビューでもANC性能はあまり評価されていませんでした。レビュアーの1人はバッテリー駆動時間を延ばすために、ANCをOFFにしたほうがよいと薦めているくらいです。
総じてANC性能は5000円付近の価格帯では標準的な性能と言えます。効果がないとは言いませんが、効果は非常に限定的で補助的です。使用状況にもよりますが、一部の人にはその効果がほとんど役に立たないレベルに思えるかもしれません。ANCだけを目的にこの機種を検討しているならば、ほかの選択肢を選んだほうが良いでしょう。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [ANC OFF 標準イヤーピース S装着時]左右別
- [ANC OFF 標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [ANC OFF 標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [ANC OFF 標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [ANC ON 標準イヤーピース S装着時]左右別
- [ANC ON 標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [ANC ON 標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [ANC ON 標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [ヒアスルー 標準イヤーピース S装着時]左右別
- [ヒアスルー 標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [ヒアスルー 標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [ヒアスルー 標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- モード別音質比較(自由音場補正済み)
サウンドシグネチャー解説
EarFun Free Proはノーマルモード時、アクティブノイズキャンセリング時、アンビエントサウンド時の間で音質に全くと言っていいほど差がありません。中域が少し後退するV字型のサウンドを持っており、中域から離れて重く深堀りされる低域とディテール感の高い高域を持っています。
THD+N特性
THD+N特性は高級イヤホンの場合、1%以内であることが望ましいです。下の図は上が@-40dB(適正音量レベル)における、スイープでの周波数毎のTHD+N特性、下が同条件で1khzでの音量レベルによるTHD+N特性です。このイヤホンはどちらでも概ね1%未満で優秀です。
- THDN平均値:0.0915927975%
- THDNL平均値:0.07185676%
- THDNL平均値(-60dB以上):0.052202413333333%
この価格帯の完全ワイヤレスイヤホンとしては歪みが少ないです。聴感上も付帯音が少なく、かなり歪が少ない印象で、音像はしっかりしています。音量を上げても歪みが増えづらいのも美点でしょう。
音質解説
すでに説明したように、このイヤホンはいわゆるドンシャリの典型的なサウンドを持っています。しかし、低域方向でも高域方向でも比較的丁寧に傾斜が調整されており、しかも谷型に広がっていく形をしています。サウンドは中域で引き締まっていますが、中域もボーカルの背景に奥行き感があり、響きの広がりが感じられ、空間性が高い印象を受けます。人によって低域の鳴動が少し強すぎる印象を受ける可能性が高そうなあたりが好みを分けそうです。
なお以下の解説は一般的な使用状況にかんがみて、ANC ON時を基準に行っています。
※各評価項目はあくまでリファレンスサウンド(当サイトの機器測定における自由音場フラット)から見ての周波数特性データと私の聴感に基づく評価です。たとえば迫力のある低域を重視する人は「存在感」「太さ」「重み」「臨場感」が高い低域を好むと思いますが、このような音は本来最も重視されるべき「原音忠実度」はおそらくあまり高くありません。
再生機器にとって「原音忠実性」こそが最も重視されるべきというのはオーディオ界隈の共通認識であると思われますので、本ブログの音響機器の評価も「原音忠実性」を最も重視しています。
「原音忠実度」は基本的に高ければ高い方が多くの人にとって良いと思われますが、ほかの評価値は中間値である「B」を離れるほど原音忠実性が薄れます。そのため「S」や「A」はその音要素を好む人には最も心地よい音かも知れませんが、他の人には不快かも知れません。そして不快な音要素が決まっている人は、むしろその音要素が低い評価のものを選ぶとより心地よく音楽を楽しめると思います。
このように、当ブログでは原音忠実(リファレンスサウンド)からの距離を提示することで効率的にあなたの好みに合ったオーディオ機器を発見できるように工夫しています。
評価が高ければ高いだけ良い評価値というのは「原音忠実度」「クリア感」「おすすめ度」で、とくに「原音忠実度」+「クリア感」がオーディオ製品としての単純な優秀性を表します。
「原音忠実再生」についての参考動画:創造の館「いい音とは何か」
※以下のリンク先はpdfです。
低域(原音忠実度:B-/臨場感:B/深さ:A-/重み:A/太さ:A-/存在感:A-)
低域は重さや深さに比重が置かれており、太さも十分で、重厚感があります。人によっては重みが強すぎる印象を受ける可能性がありますが、ブームが深く重いので、EDMは楽しいですし、個人的には好みに近い音です。また厚みが相対的に少ないので、ブーム感は強いですが、印象的には膨張感が少なく、タイトに聞こえます。
私が読んだ多くのレビュアーがEarFun Free Proの低域に最も注目しています。低音の深さについて不足を言っているレビュアーはおそらく存在しません。しかし、その鳴動(ランブル)の強さにはわりと賛否両論があるようです。たしかにドラムキックは重く、ドシドシとしています。それをゴツゴツと表現するレビュアーもいますが、エレキベース音も黒くブンブンした感じが強いので、ブーム感ははっきり聞こえるでしょう。
低域はより深い重低域の底にまでは到達していないので、床鳴りのノイズ感のようなものはありません。そのため、低域の透明度は高く階層性もはっきりしているように思えます。私は低域ジャンキーなので、EarFun Free Proの低域を好ましく評価します。nerdtechy.comも私と意見を同じくしているようです。彼は単純に歪みが少なく、クリアに聞こえる低域に讃辞を惜しみません。androidguys.comはこのよく調整された低域を勝者であると表彰します。この存在感のある低域は実際、中域へのつながりもよく調整されており、中域の透明感、みずみずしさを損なうことはほとんどありません。
しかし、Headhonesty.comの厳しい声に我に返る必要もあるでしょう。彼はこの低域が中域に滲み、うるさいと述べています。彼にとってはむしろこの低域こそがEarFun Free Proの最大の欠点のようです。
どちらにせよ、このイヤホンを好きになれるかどうかはこの低域をどう評価するかにありそうです。全体の中で低域がとりわけ主張が強いことは事実です。
ポイントを整理しましょう。それは非常に重く、鳴動が強く、ドシドシ、ゴツゴツ、あるいはゴリゴリとしたような轟く印象を与える音を持っています。たとえばロックサウンドの底に、それこそ岩が転がるようなゴロゴロとした雷鳴を聴きたい場合、このイヤホンはその願いをよく叶えてくれますが、その音が印象的に聞こえすぎることですべてを台無しにしてしまうと思う人もいるでしょう。
たとえばNulbarich「Sweet and Sour」のようなおしゃれなシティポップスもバスドラムが強調されて、クラブミュージックのように聞こえます。言い換えれば、低域はSkullcandy的です。少し頭をノックされてると感じるくらいには重く響くサウンドです。
中域(原音忠実度:B/厚み:B+/明るさ:B/硬さ:B/存在感:B-)
EarFun Free Proの中域は少し奥の暗い位置にいますが、実際のところ、それは印象的にはあまり暗く聞こえません。
中域は明らかに高域や低域よりも奥に聞こえますが、しかし、中域は広く聞こえるので、印象的には埋没感は強くありません。また中高域が十分に艶やかなために、中域はその暗さに反して、ディテール感や鮮やかさの点で印象的です。中域のスポットライトは実際にはほの明るいといった感じですが、高域の粒立ち感とシャープネスの感覚が鮮明度を補っています。中低域の支えはしっかりしているので、中域は安定感があり、ドンシャリのわりに比較的みずみずしく、透明感があるように聞こえます。
ボーカルもボディが確かに思え、ニュアンスは少し強調されるように思われますが、V字型にありがちな子音のアグレッシブさはそれほどありません。サ行よりはツ音のほうがもう少し尖る傾向があり、サ行もタ行に近く聞こえるかなと思えるくらいで、唾が多めに飛んでいる印象を受けるので、それがもしかすると好き嫌いに影響するかもしれません。息も少し伸び、女声ボーカルは全体的にのびやかに聞こえます。曲によってはわずかにシャウティになりやすい感じはありそうですが、個人的にはあまり気にならず、むしろエネルギッシュさを引き出してくれるので悪くないように感じます。
高域(原音忠実度:B-/艶やかさ:B/鋭さ:B-/脆さ:B+/荒さ:B-/繊細さ:B+/存在感:B+)
中高域は艶やかさが十分にあり、高域に向かってもシャープさが強調されるので、キレがよく伸びも勢いが良い爽快な印象を与えてくれます。
高音は実際にはかなりアグレッシブなように思われますが、低域と同じく中域からの傾斜がうまく調整されているので、耳当たりがよく、その比較的高い輝度にも関わらず滑らかに聞こえます。シンバルクラッシュは実際はかなり派手で、シャーシャーした風通し感が強調されやすいですが、ギラつきはそれほど強くないので、高域はわずかに派手さに傾いているにも関わらず、うるさい印象はあまりなく、むしろ爽やかで清潔に思えます。ただし静寂感はあまりないので、音楽に落ち着きはなく、中高域で音数が多く、人によってはうるさい感じがあるでしょう。光沢はしっかりしており、緻密な印象を受けるので、EDM向きに思えます。そのサウンドは少しモニター的で分析性が高いので、ディテールは強調されて聞こえ、それがクリスタルサウンドの印象を与えます。もともとの歪みの少なさに加えて、この印象的な光沢感の強さにより、全体的な音像印象の透明度(くっきり感)は高く思えるでしょう。
グルーヴ/音場/クリア感(グルーヴの中心:中域/音場:B+/クリア感:A-)
※一般にグルーヴの最も大きいところが最も活き活きと聞こえるので、音楽の中心になります。グルーヴの中心範囲の大きさは変動的です。グルーヴの中心は個人の音楽の好みを決定し、音響機器選択のヒントになります。音響機器のグルーヴの中心が個人の好みと離れている場合、むしろその不自然さが強調され、その音響機器を楽しくないと感じる可能性が高いです。音場の評価はBが自然な広さです。クリア感の評価は全高調波歪の測定値を参照して決めています。
このイヤホンのグルーヴの中心は一般に中域に存在すると思われます。
音場は深さと奥行きに優れ、幅も少し広く、高さも少し高いように思えます。音場は標準よりは広く感じられるでしょう。
音質総評(原音忠実度:B-/おすすめ度:B+/個人的な好み:A)
深く重い低域と艶やかで印象的な中高域を持つこのイヤホンは、どちらかというとEDMやテクノサウンド、クラブミュージック向きに思えます。ロックはスネアの打ち込み感やエレキギターの押し出し感が、個人的には少し足りない気がしますが、悪くないと思います。
すでに解説したようにこのイヤホンの最大のポイントは低域にあり、低域が強調されるサウンドが苦手な人には向きません。逆に低域好きの人には十分な存在感と深さのある楽しい低域とディテールに満ちた艶のある中高域をしっかり聞かせてくれるイヤホンとしてかなり歓迎されると思われます。少なくとも私はかなり好きです。
個人的にはロックやポップスはどちらかというとEarFun Air Proのほうが合う気がしますが、EDMはEarFun Free Proのほうをおすすめしたいですね。電子音は緻密できれいです。
音質的な特徴
美点
- 中域のフォーカス感は悪くない
- 安定感のあるサウンド
- ディテール感がある
- 少し元気でアグレッシブだが、荒々しくなりにくいボーカル
- 深く重厚な低域
- 階層的でレイヤリングの良い低域
- 鳴動感があり、力強いブーム
- 光沢感があり、艶やかで色気のあるサウンド
- 奥行き感があるサウンド
欠点
- 低域の主張が強い
- 唾が多いように聞こえるボーカル
- 曲によっては埋没する中域
- 静寂感に欠ける
音楽鑑賞
河瀬茉希「Let's get started!」
鳴動のしっかりした深いブームを持ち、中高域の電子音がきれいに聞こえるので、こういうEDM的な楽曲を聴くのは個人的にとても楽しいです。ボーカルは少しニュアンスが強調され、歯切れが良い感じがあり、元気で艶やか、印象的に聞こえます。中域は引き締まっていて、中域の上のほうで少し音が多く、ぎっしりしている感じがありますが、それがデジタル的なこの曲の緻密な雰囲気と相性が良く思えます。
その中域もTronsmart Apollo Boldほど貧相な感じではないので、意外と充実感があり、ボーカルのボディもしっかりしています。
やなぎなぎ「夏凪ぎ」
中高域の光沢感と、高域の強調による風通しの良い雰囲気が曲全体に爽やかで清潔な明るい雰囲気をもたらしており、この曲の透明感を引き出してくれます。少し眩しく情報量のある空間に、息遣いやニュアンスがわずかに強調されて聞こえるボーカルは印象的に聞こえます。また、シアター的な低域の強調と奥行き感の出し方は、映画音楽的な演出感をこの曲に加え、壮大なドラマを感じさせるシネマティックサウンドの重厚感で映画のワンシーンのように、この曲の感動を盛り上げて聞かせます。
はてな「夢?」
鳴動が強くブーム感の強い低域は、頭を振動させるように感じられ、音楽に音を体感しているような没入感をもたらします。また中高域の光沢感とマイクロディテールが強調され、少しシャープに繊細な粒立ちが聞こえる高域によって、音楽の全体は引き締まってのびやかにダイナミックに聞こえます。ディテールの強調によって、ギターエッジは鋭く、印象的で、低域のブームも歪みが少なくはっきりしており、低域と高域ともに情報量が多めに明瞭性が高く聞こえます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。ANCはONで、コーデックはSBC、使用イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
EarFun Free ProはEarFun Freeの低域重視のサウンドを引き継ぎながら、ANCやヒアスルーを搭載し、イヤーウィングの追加によってよりスポーツ向きの高い装着感を実現したイヤホンです。そのサウンドは重低域の深いブームを強調し、鮮やかで印象的な中高域が緻密なディテールを聴かせてくれます。アクティブノイズキャンセリング性能は高いとは言えませんが、価格を考えると全体的な完成度は高く、魅力的な選択肢であることは間違いありません。
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