- 神崎エルザとは何者ですか?
- 「disorder」のここが好き
- 「disorder」の聞きどころ
- 各機種の周波数特性比較
- 聞き比べレビュー
- 【総評】個人的にはこの曲のようなロックを聴くなら、この中ではAU-Stream Hybridを選びます
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神崎エルザとは何者ですか?
久しぶりに完全ワイヤレスイヤホンの聞き比べ特集をしてみたいと思います。今回の課題曲は神崎エルザ starring ReoNa「disorder」です。そもそも「神崎エルザって誰よ?」って人も多いでしょう。そこから解説します。
神崎エルザは「ソード・アート・オンライン(通称SAO)」シリーズの外伝作品「SAO オルタナティヴ ガンゲイル・オンライン」に登場する人物で作中では女性シンガーソングライターという設定になっています。作中歌の大部分を歌っているアーティストなんですが、その楽曲を常々「クソかっこええなぁ」と思ってたら、なんと作曲してる人よく見たら、私がわりと好きな毛蟹さんでした。
「動く、動く」とか「清廉なるHeretics」とか個人的にかなり好きな曲です。
「disorder」のここが好き
まずなんといってもパワフルで火力なドラム表現が最大の魅力ですが、わりとシックでありながら情熱的なギター表現、時々空間を冷ますように透明に響くシンセ音、どことなくアンニュイで達観した雰囲気がありながら、息遣いなどのニュアンスが豊富で意外とセクシーなボーカル表現が最高です。
「disorder」の聞きどころ
今回は聞き比べるに当たって、この曲の聞きどころ要素を個人的に分析し、その満足度で評価してみることにします。
- ドラムのパワフルさ:ドラムの精彩、火力感はこの曲の肝です
- 低域の深み:低域の深みが感じられないとわりと中域に音が集まりやすい曲です
- ギターの艶やかさ:ボーカルとのバランスが大事です
- 静寂感:ボーカルフォーカスやシックさ、コントラストに影響します
- ボーカルのセクシーさ:息遣い、適度なボディがあるかで満足度が変わります
- 熱気:ボーカル周りの清潔感です。個人的にはこの曲は熱気が強いライブ感の高いサウンドで聞くのが好きです
各機種の周波数特性比較
聞き比べの内容に進む前に、参考用に各機種の周波数特性の比較グラフを掲載します。イヤーピースはAET07 Mを使用し、ANCをONにした状態で各機種の自由音場補正済みの測定グラフを1khzで交差するように調整しました。
聞き比べレビュー
聞き比べは接続先としてFiiO M15を使って行っており、コーデックはaptX対応の場合はaptXで、それ以外はSBCで標準接続されたものを聴いています。
Technics EAH-AZ70W
今回取り上げている機種の中で「一番中域がすっきりしていて清潔なのはどれですか?」と言われたら、間違いなくEAH-AZ70Wです。ボーカルの聞こえは一番よく、その周囲は清潔です。楽器音とボーカルの分離はよく、ドラムキックも明瞭で、パワフルさも感じられますが、空間はあまり熱気がなく、個人的にはライブ感には少し欠けます。また子音がややとげとげしく、ところどころツ音がきつく感じられるところがあります。
- ドラムのパワフルさ:B
- 低域の深み:A
- ギターの艶やかさ:B
- 静寂感:C
- ボーカルのセクシーさ:C
- 熱気:C
今回の中ではおそらく一番フラットに近いとも言えるので、空間はわりと清潔で隅々までよく聞こえるのですが、個人的にはロックを聴くにはどうしてもダイナミズムが少し不足している印象を受けます。ボーカルは聞き取りやすいですが、エアコンが効いた部屋で歌っているのか、ややスースーしますし、音数が多くて静寂感に欠け、わりと軽っぽいサウンドに聞こえます。ただし、モニター的に聴きたい人にはこのイヤホンが一番優れていると感じられるでしょう。
SENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2
中域の豪華さを重視している機種でもあり、低域の深さや重みより厚み、膨張感が強めの味付けのドラムなのがわりと好みを分けそうです。火力感はありますが、エンジンルームに余裕がある大型車のような音が充分に膨らむ鳴り方になります。安定感がありますが、ロックを聴く場合には少し紳士的すぎる気もします。また今回の機種の中ではボーカルがおそらく一番くらいに理性的に聞こえるので、情熱がちょっと不足気味に思うかも知れません。中域が充実し、中高域はわりと落ち着いていて静寂感があってかっこよく、余裕がある鳴り方ですが、全力を出していないようなところを感じます。
- ドラムのパワフルさ:B
- 低域の深み:B
- ギターの艶やかさ:B
- 静寂感:B
- ボーカルのセクシーさ:C
- 熱気:B
楽器音は一番豪華な雰囲気がありますが、低域は少し腰高気味で、中域に音が押し上げられてくる雰囲気があります。ボーカルはかなり理性的で、この曲だと落ち着き払いすぎている印象を個人的には受けます。ライブ感は悪くありませんが、膨張感が強いせいもあって、少し中域の濁りが強めで、音楽の全体像がボツボツモシャモシャしている印象を受けるかも知れません。ただし音の密度と充実感には最も優れています。
audio-technica ATH-ANC300TW
低域であまり深みがないために、深みを重視する場合は少し物足りないかも知れませんが、重みはわりとしっかりしています。厚みも適度にあり、おそらくドラムのパワフルさに不足は感じません。しかし低域は深さを抑えて(おそらく意図的に)少し見通し感が悪い感じがあり、ノイズ感はないので聞き苦しくはありませんが、人によってはボーッとした床面に思うかも知れません。
一方で中域はわりと地味なのに比較的しっかりフォーカスされる感じがあり、静寂感があって引き締まって聞こえます。ボーカルには妖艶と言えるような独特の艶やかさがあり、暗い中から幽玄に浮き上がります。高域方向はシックでありながら、音のエッジにはわりと賑々しい感じもあり、決して目立って派手ではないのですが、充分に鮮やかです。こうした細やかなチューニングはこの曲の熱気もうまくコントロールしていて、全体を見ると決して熱すぎないバランスなのに、中域には充分に熱気があってライブ感があります。この機種はとにかく聞き心地も良く、ピーキーなところもなく、パワフルなのに圧迫感もなく、聞き疲れしにくいのも特長です。
- ドラムのパワフルさ:A
- 低域の深み:C
- ギターの艶やかさ:A
- 静寂感:A
- ボーカルのセクシーさ:A
- 熱気:B
とにかくこの曲のボーカルの妖艶さを引き出すのがうまく、独特のチューニングが素晴らしい機種です。個人的には恐ろしく芸術的なセンスを感じる音なのですが、よく考えると味付けが強く、癖のある音のように思えます。個人的にはこの曲をすごくかっこよく、しかもいつまでも聴けるような魅力的な音なのですが、「これは癖が強すぎて嫌い」という人も多そうです。
Ausounds AU-Stream Hybrid
ぶっちゃけ一番ロック向きっぽいドンシャリのサウンドシグネチャーを持っているのは事実なので、少なくともこの曲に関する限り、最もダイナミズムがあり、わりと多くの人に楽しい音がするのはこのイヤホンであることは間違いありません。かなり重みもはっきりしたキックが聞こえるので、低域は活き活きしています。低域の深さという点では、わりと見通しの良い低域で深いところで強調を感じるEAH-AZ70TWのほうがはっきりと深みがわかるので、それには劣るでしょうが、おそらく二番目くらいに深みを感じます。熱気も充分でライブ感に満ちており、ハイハットもかなり飛沫を上げていますが、空間に熱気があるせいか、うるさい感じには聞こえません。
今回の機種の中では中高域の色づきが最も良く、エレキギターが賑々しく聞こえますが、そのギターがボーカル周りにかかってうるさい感じはあまりなく、付かず離れずの関係でありながらよく調整されています。ボーカルはのびやかで息遣いを中心にニュアンスに強調がありますが、ボディがしっかりあるので薄い感じはなく、充実感は充分です。低域の張り出しのせいか少し暗いところにいる気がしますが、ニュアンスがしっかりしているので、聞こえづらい感じはありません。
- ドラムのパワフルさ:A
- 低域の深み:B
- ギターの艶やかさ:A
- 静寂感:B
- ボーカルのセクシーさ:B
- 熱気:A
熱気のあるドンシャリという感じでドラムにパワフルさがあり、ロックサウンドを重厚かつパワフルに聴きたい場合はこのイヤホンがおすすめです。低域ジャンキーを満足させるほどかというと、個人的にはもっと重くてもよいと思いますが、少なくとも存在感は充分です。
【総評】個人的にはこの曲のようなロックを聴くなら、この中ではAU-Stream Hybridを選びます
最終的には個人の好みになることですが、個人的にこの曲を聴くのにこの4機種の中でどのイヤホンが一番おすすめかと言えば、AU-Stream Hybridです。一番ドンシャリなせいもあって、ダイナミズムに優れているだけでなく、ドラムのパワフルさをかなり引き出して聴かせてくれ、ギターの色づきにも優れています。ボーカルニュアンスもよく、情熱的な歌に聞こえます。
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