「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はSENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2(MTW2)です。SENNHEISERはドイツが誇るオーディオの名門で、プロ用途から民生品までオーディオ製品を幅広く製造しているメーカーです。
MTW2は2018年末に発売されたSENNHEISER MOMENTUM True Wireless(MTW)の後継機種に当たります。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:7h/21h
- 防水性能:IPX4
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
競合機種との比較表
製品名 | Master&Dynamic MW07 Plus | BOSE QuietComfort Earbuds | Jabra Elite 85t | SENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2 | Technics EAH-AZ70W |
タイプ | カナル型 | インナーイヤー型 | カナル型 | カナル型 | カナル型 |
連続再生時間 | 10h | 6h | 7h | 7h | 6.5h |
最大再生時間 | 40h | 12h | 25h | 21h | 19.5h |
対応コーデック | aptX/SBC | AAC/SBC | AAC/SBC | aptX/AAC/SBC | AAC/SBC |
防水性能 | IPX5 | IPX4 | IPX4 | IPX4 | IPX4 |
ANC性能(10) | 5.5 | 10 | 9.5 | 7.5 | 8 |
ヒアスルー(10) | 7(自然) | 9.5(集音的) | 9.5(自然) | 8.5(集音的) | 7.5(自然) |
音質傾向 | U字型 | フラット | U字型 | U字型 | U字型 |
プライストレンド(2020/12時点) |
価格は値下がり傾向だが、大きく下がることはあまり期待できない。色によってはアマゾンの大型セールなどで3万円を切る価格で入手することも可能。
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入手困難気味で価格はまだ安くならない。割安で出回るようになるのは2021年半ばごろ以降と予想。
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Jabra製品は定期的に新製品が出るので、コンスタントに値下がりする傾向がある。2021年前半くらいからセールに出てくる可能性がある。
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基本的に発売後1年程度は価格は堅調に推移することが多い。割安で手に入りやすくなるのは2021年後半以降と予想。
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最近は比較的値が落ち着いているようで30000円前後で定着している。現在値がだいたい過去最安。
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パッケージ
イヤホンのパッケージ全体は高級感があります。付属品はイヤーピース、充電用ケース、充電用ケーブル(Type-C)、説明書です。
イヤホンケースはMTWから引き続きファブリック加工されており、高級感があります。
装着サンプル
装着感は悪くありません。初代から一回り小さくなり、耳への収まりは良くなりました。それでも耳が小さい人にはわりと嵌めづらいかも知れません。
接続品質
価格帯ではかなり優秀です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では接続は良好です。距離耐性も優秀らしく、5m離れてもシームレスで乱れはありません。遮蔽物があっても問題なく繋がります。
ホワイトノイズはほとんどないと思います。
ONKYO系DAPであるXDP-20やXDP-30ではどうも相性問題があるようです。
あら、ほんとだ。試してみたらMTW2、XDP-20とつながらないというか、ペアリングするとすごい音がしてバグる。https://t.co/AVDZlmLFpV pic.twitter.com/wDM3fqdFEJ
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) June 6, 2020
アクティブノイズキャンセリング性能
こちらの記事を参照して下さい。
Technics EAH-AZ70Wとの比較
こちらの記事を参照して下さい。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右別
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右平均
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右別
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右平均
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Mサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
わりとジグザグノイズが出ていますが、詳しいことは分かりませんが、これはノイキャン機種をスイープ測定するとこういう傾向が出る気がします。
まず最初に断っておかなければいけないのですが、MTW2は最新のファームウェアは4.7.0ですが、私の手持ちのMTW2は日本国内販売時のファームウェアバージョンに基づいているということです。4.7.0にすると音質が変化するという話があり、元々のMTW2の音が気に入っていた私は、とくに不都合がないのでアップデートしておりません。そのため、最近のファームウェア版とは音が違う可能性があるということにはご注意ください。
サウンドシグネチャーを全体的に確認すると、U字型というべきサウンドをしており、中域から低域はとくに目立つウォームサウンドになっています。中域は充分に充実して明るく、また高域にも一定の派手さがあります。
低域の中心から中低域付近に強調があり、また中域に対して低域がやや優位な関係にあり、量感の強調があります。中域は低域よりは少し奥になりますが、ボーカル帯域の上は清潔になっており、ボーカルフォーカスは良いです。傾向として中域にやや音が集中するところがあります。そのため中域は厚みがあり、豪華で充実感がありますが、ベース音などは中域に張り出しやすく、人によっては濁りを感じるかも知れません。少なくとも温かみがあり、清潔な中域ではないと感じるでしょう。
中高域が落ち着いているために、ボーカルの上ぐらいは静かになっており、刺激的なピークは存在しません。また金管音やバイオリンは落ち着いた背景から浮かび上がるようにダイナミックに伸びるので、音の筋道が優雅に聞こえます。
全体として豪華さと高級感を意識した芸術性の高いサウンドに仕上がっています。クラシックやJAZZに向く高級オーディオっぽい音を求めているリスナーにとって非常に魅力的な音に聞こえるでしょう。
SENNHEISER MOMENTUM True Wirelessとの比較
上のグラフは両者ともにイヤーピースをAET07 Mサイズにして測定比較したものです。初代MTWとMTW2の音質差についてはいろいろ言われていますが、実際上それほど大きな印象差はないと思います。ただ、ANCによる環境ノイズ低減効果やハウジングの大きさの差から来る装着感の差があるので、実際は状況によりわりと音質差を感じるかも知れません。
音質比較&聴き比べ記事
High-End Sound Tuning モード
4.13.0のアップデートにより新たにHigh-End Sound Tuningモードが追加されました。
ゼンハイザージャパンは、ノイキャン完全ワイヤレスイヤホン「MOMENTUM True Wireless 2」のHigh-End Sound Tuningモード対応を実施。スマホアプリ「Smart Control」経由で利用できるようになった。
High-End Sound Tuningモードを適用すると、「音場が広くなる」「音の定位がつかみやすくなる」といった効果があり、音楽だけでなく動画などもより臨場感豊かに再生できるとしている。
High-End Sound Tuningモードは通常のEQと同じようにSENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2の本体に保存され、アプリでOFFにしない限り、他の接続機器とつないでも有効状態のままです。通信品質が少し劣るようになると説明されていますが、たしかに時々プチプチします。
音質的にはわずかに音場が改善され、中域の聞こえも良くなります。劇的に変化するというほどではありませんが、効果があることは確かです。
High-End Sound Tuningモードについて、測定に基づく、より詳細な情報についてはSENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2の有料レビュー記事を参照して下さい。
録音比較
以下、実際に録音した音源でHigh-End Sound Tuningモードの効果を体験できます。
Sophisticated Fight(ロック系)
Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ケノーピ火山(JAZZ系)
ケノーピ火山 / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
日本版初期バージョン(4.3.0)と最新版(4.13.0)に音質の違いはありますか?
MTW2について、巷間ではファームウェアバージョンアップによって音質が変化したという意見があります。この点に関して、測定に基づく、より詳細な情報についてはSENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2の有料レビュー記事を参照して下さい。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。aptXで接続し、ANCをONにしたうえで、標準イヤーピース Mサイズを使用しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
現状の完全ワイヤレスイヤホンの中では最も優れたサウンドの1つを実現していることは事実で、さらに初代MTWの不満点が大幅に改善されています。付属アプリのイコライザーは少しわかりにくいですが、全体的に非常にレベルが高い完成度になっています。とくにクラシックやJAZZで豊かな中域音や、豊穣なボーカルを味わいたい人には文句なくおすすめできる機種と言えます。非常にウォームでムーディーなサウンドを奏でてくれます。
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