※この記事はコペックジャパン様から試聴機を提供して頂いて執筆しております。
「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はAusounds AU-Stream Hybridです。Ausounds(「オーサウンズ」と読みます)はアメリカのプレミアムオーディオメーカーで、BOSEやSENNHEISER、JBLなどで研究開発に携わった開発チームが製品作りを行っています。サウンドチューニングと品質管理においては業界最高水準であることを自認しているとAusoundsの公式サイトでは高らかに宣言されています。
そのAusoundsが日本展開を開始しましたが、その第一号の機種の一つがAusounds AU-Stream Hybridです。この機種は9.2mm径のチタンドライバーを搭載し、透明感とダイナミズムを共存させたサウンドを実現しているとされています。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続(ANC ON時)/最大再生時間:8.6h(5h)/25h
- 防水性能:IPX5
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:211-200326/211-200327
パッケージ
イヤホンのパッケージ全体はこの価格帯では標準クラスです。付属品はイヤーピース、充電用ケーブル(Type-C)、説明書などです。
本体はメタリック加工されていて光沢感があり、クオリティは標準以上に思えます。
イヤーピース相性
この機種はケースがコンパクトなので、イヤーピースは完全ワイヤレス用のを使わないと収まらないかも知れません。個人的に確認した範囲ではSpinfit CP360 Lサイズはケースに収まりましたが、AET08 Lサイズは収まりませんでした。
装着サンプル
個人的には装着感は良好です。ANC搭載イヤホンとしては軽量なほうです。空豆型で耳への収まりは悪くありません。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では良好です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では接続は良好です。距離耐性も優秀で、5mくらい離れてもシームレスに繋がります。遮蔽物がある場合は少し乱れますが、通信は比較的すぐ回復します。
ホワイトノイズはほとんどありません。おそらく多くの人にとって気にならないと思います。
ヒアスルー&ANC性能
このイヤホンにはモニターモードという名の外音取り込み(ヒアスルー)モードがあります。モニターモードの品質はかなり自然に聞こえますが、少し音が明るく感じるかも知れません。
ANCの効果はイヤホンサイズの機種としてはそれなりに良好なレベルです。下はヘッドホン(beyerdynamic DT990 Edition 2005 600Ω)から基準ノイズを流して測定し、その後標準イヤーピース Mサイズをつけ、ANCをONにして、もう一度ヘッドホンから基準ノイズを流し、このイヤホンの遮音性能を1/6オクターブごとに測定したものです。今回の測定では、基準ノイズに対し、20hz~20khzの可聴域での平均遮音性能は14.06dBくらいありました。
中域のノイズカットに大きな効果があるようです。アクティブノイズキャンセリングの効果自体ははっきりと感じられます。強力と言うほどではないですが、効果は確実に体感できるレベルです。
ただ、サーキュレーターの音をANC ONで聴いていたときに気づいたのですが、ANCが働いている時は若干ホワイトノイズのような背景音が強く感じられるかも知れません。
アクティブノイズキャンセリング体験
ここでは録音されたアクティブノイズキャンセリングを体感できます。
録音はOneAudio A9のアクティブノイズキャンセリングをONにして各環境音源を再生したものが最初に録音されています。次に、ANC機能をONにしたAusounds AU-Stream Hybridを装着した上から、同様にOneAudio A9から各環境音源を再生したものが続いています。装着感などにより、実際は微妙に異なるとは思いますが、参考としてお楽しみください。
なお環境音源は効果音ラボさんの音源を利用しています。
電車内
基準環境音
ANC ON
大通り
基準環境音
ANC ON
飛行機内
基準環境音
ANC ON
Qi規格のワイヤレス充電に対応
Qi規格のワイヤレス充電にも対応しています。対応充電器に置くだけでケーブル要らずの充電ができるのはわりと便利です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右別
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右平均
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 M装着時 ANCあり]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右別
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右平均
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース M装着時 ANCあり]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Mサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
上のグラフはSBC接続でANC ON時のものです。サウンドシグネチャーを全体的に確認すると、V字型と言える形をしていて、ドンシャリ傾向の音だと思います。中域でボーカルが少し遠く、奥行き感が強調される感じがあります。ダイナミックな音を目指したというのはその通りだと思われ、ダイナミックレンジが不足しがちに聞こえやすいロックを聴いてもドンシャリらしいダイナミズムのある音楽が楽しめます。
まずこのイヤホンの低域ではかなりバスドラムキックの重みに強調を感じます。わりとドスッと重い踏み込みが目立つようになっていますので、ロックでもポップスでもパワフルで活き活きしている低域リズムを感じることが出来ます。エレキベースは熱気があり、重めで黒みも強くて締まってますが、輪郭はわりとおとなしめで、どちらかというと大抵の曲でバスドラムキックが低域では主役になりやすい気がします。絨毯爆撃のようなドラムキックが好きなら、わりとおすすめ度は高いです。nano.RIPE「面影ワープ」みたいな曲はかなり熱気と重みと黒みのある低域がかっこよく、個人的にかなりの満足感があります。ただ、低域でノイジーさが強い感じが嫌いな人は少し苦手に思うかも知れません。低域の存在感が強いので、エッジ感はゆるく感じられやすいところはあり、メリハリ感を重視する場合はやや物足りない人もいそうです。
中域は曲によっては低域の熱気の影響を受けやすく曇る感じもあり、少し濁った中で聞こえやすいと思います。暖かみがあり、ウォームで、ピアノ音などには深みが感じられ、ボーカルも深みが感じられます。女声ボーカルは少し暗く感じられ、ややドライに思いますが、ニュアンスは少し強調されて、のびやかさが感じられ、息遣いはわりとはっきり聞こえます。ボーカルはやや埋没的で楽器音との距離が近めです。
一般にバイオリンのような楽器は熱気の奥から前屈みに立ち上がってくるように聞こえ、高いところに少しのびて聞こえます。アコースティックギターやエレキギターのエッジは鮮やかですが、たとえば山崎まさよし「One more time, One more chance」は少しぼんやりした暖かみの中で聞こえます。ピアノ音には落ち着いた光沢があります。ややローファイ的な少しレトロな雰囲気だと思うかも知れません。シンバルのクラッシュは割と派手ですが、低域の熱気のせいか耳に痛い感じはあまりないでしょう。
このイヤホンの最大の魅力は、個人的にはやはり熱気と重みのある低域で、とくにバスドラムのパワフルさが好みです。音の全体はわりとドライに聞こえやすい感じがあります。たとえば川田まみ「JOINT」はもやもやした熱気のある空間の中で、ボーカルが少し艶やかに、しかし全体の熱気の中からは完全に分離されない雰囲気で聞こえてきます。あるいは、エド・シーラン「Shape of You」で腹に応えるドラムを聴きたいって人にはわりと好ましく思えるでしょう。
音質比較&聴き比べ記事
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。SBCで接続し、ANC機能をONにしたうえ、標準イヤーピース Mサイズを使用しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
ANC性能はわりと満足できるレベルで、ヒアスルーも少し明るいですが、かなりナチュラル傾向で、通信品質も悪くなさそうです。音質的には低域の重みと熱気がわりと強く出やすいので、中域が濁る感じが苦手な人にはやや向かなそうですが、腹に応える低域が好きな人にはかなりおすすめできます。奥行き感とライブ感のある熱気重視のサウンドが好きなら、見逃すべきではありません。
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