【国内正規品】完全ワイヤレスのBluetoothイヤフォン EARIN M-2 Black EI-3002
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で装着感は良い。高音質aptXコーデックに対応」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「携行に便利なコンパクトデザイン」
- 【3】音質「MTWを軽くした感じの音で音場重視」
- 【4】官能性「どんな曲でも空間表現力を生かして優雅に聴かせるところがある。アタック感は減る」
- 【5】総評「音場重視の安定感のある音質はクラシック・JAZZ・バラード・R&B向き。MTWはちょっと高いという人には有力な代替機の一つになり得る」
- 【6】他機種との聞き比べ(vs MTW, NT01AX)
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【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で装着感は良い。高音質aptXコーデックに対応」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
小型で耳への収まりも良いイヤホンは耳にしっかり嵌まる。かなり装着性は高く、激しい運動でも取れないだろう。遮音性は結構高めで音漏れも少ない。
ハウジングが小さいイヤホンは何かと快適なところがあり、たとえば歩いている時の振動音や風切り音のようなものをほとんど感じないので、移動時でもクリアに音を楽しめる。個人的にこのイヤホンの気に入っているポイント。
ただし、小さいイヤホンは着脱時に取りこぼしやすい。
aptXに対応。通信は安定している。遅延・途絶はない。
【2】外観・インターフェース・付属品「携行に便利なコンパクトデザイン」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。
充電ケースはかなりコンパクト。持ち運びに不便はない。取り出しはスムーズだが、小さめのイヤホンのため、取り出し時に取りこぼしやすいところがあるので注意。外出中に使用しようとして、何度か取りこぼしそうになって背筋が凍った。
連続再生時間はイヤホン単体で4時間、ケース込みの最大再生時間は14時間。お世辞にも価格に見合っているとは言いづらい。コンパクトなデザインなのでバッテリー容量とトレードオフになるのは仕方のないところ。
防水性能は不明。
流行のヒアスルー機能も備えている。ただしヒアスルー機能はマイクの位置関係が悪いのか、あまり良質ではない印象を受ける。
【3】音質「MTWを軽くした感じの音で音場重視」
音質については音場重視の鳴らし方で、手持ちのイヤホンの中ではSENNHEISER MOMENTUM True Wireless(MTW)に近い鳴らし方。俯瞰して見通しよく音を聴かせるような少し離れた音場感が似ている。
この機種の音を「篭もる」と表現するレビューも結構見かけるが、おそらくこの遠めの俯瞰した音場感が聴きづらいと感じているのだろうと思う。ワイヤレス系のイヤホンは音を近くに聴かせるもの(ついでにいえば低域を前面に出すドンシャリなもの)が多いので、こういう俯瞰した音響は珍しいから、慣れていないと違和感を覚えるのは無理もない。
高低バランスがMTWに比べて高域方向に寄っていて、どちらかといえばより薄味で高域重視のさっぱり味な音になっており、ドライバーもこちらはBAでMTWはDDなので、厚みにも差を感じる。
しかし、音楽空間の表現に表れる世界観については、私の印象では、上にマージンを取る音楽の構図の取り方、アプローチの距離感はMTWにそっくりで、音場重視の高級オーディオっぽい鳴らし方をし、静的で安定感のある音を奏でる。
[高音]:高域の発色はおとなしめで上方向に少し空間を作る。音色は自然な感じに聞こえ、透明感やキラ味を強調する印象はほとんど受けない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中低域は厚みと柔らかさがあり、アタック感は抑えられている。ゆったりとした空間性を重視した音の鳴らし方をするので、MTWと同じような濃厚感を味わえる。
[低音]:太く厚いがおとなしめの振動で100hz~30hzまでしっかりした減衰。少しブーミーに聞こえるようなおぼろげな感じのある音で柔らかい(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:音場は広め。MTWよりは若干狭く思うが、それでも完全ワイヤレスでは充分に広い方。音のため方、空間への広げ方はMTWに似ていて、ゆったりと調和性のある音で聴かせる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは膨張感と爆発力がある。厚みはそれほどでもなく、中身は少し詰まっている肉があるが、MTWに比べると柔らかく、中身も薄い印象で軽めに聞こえる。シンバルは空気に溶け込ませて聴かせる感じがあり、シャンシャンと耳に柔らかい音(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:自然な色づきでふっくらとしている。少し暗めに聞こえやすいところはある。
【4】官能性「どんな曲でも空間表現力を生かして優雅に聴かせるところがある。アタック感は減る」
石川智晶「スイッチが入ったら」
ぶっちゃけると、この曲をM-2で聴くと躍動感が減ってもっさりして面白味に欠けるというのが個人的感想だが、逆によいと感じる人も多いかも知れない。上方向にマージンが取られているせいか、音のダイナミズムを表現する場が狭くなっているところがあり、アタック感もうまく出ないので、ベターッと平たい音場にエネルギーが閉じ込められてしまっているような閉塞感がある。
一方でこの曲の左右と奥行き感の豊かな広がりについてはより感じやすく、ゆったりとなめらかに音が広がり、高域でも空間に溶け込むような広大な音場感がある。ボーカルは力強さよりはのびやかさ重視でゆったりと歌う、優美で空間を漂うような声色で聞こえる。色味は少し暗い。
菅野よう子「Home」
弦楽の空間的魅力を出すのはうまく、たとえばこの曲だとゆったりと空間全体を流れ、たゆたう柔らかな弦楽音を暖かな色味で厚みも感じながら楽しむことができる。音の光沢感がウォームでキンキンしない優しい温もり感を持っており、ノスタルジックなこの曲の雰囲気も丁寧に出る。中域付近の充実した空間がそのままゆったりと上方向まで続いていて、上では溶け込んでいる、そんな調和的な鳴らし方。
saya「The Girls Are Alright!」
個人的な見立てでは、この曲はどちらかというとこのイヤホンの不得手なジャンル。この曲にはドラムスやギターのロック成分と弦楽とピアノのクラシック成分があるが、本来はロック成分にクラシック成分を足すという表現が求められる。このイヤホンの表現は完全に逆で、弦楽ののびやかさとピアノのメロディー感が強調されて、ドラムの躍動感とギターのアタック感は抑え気味。ボーカルも発色おとなしめで暗めに聞こえる。低域が弱めのせいで床面もゆるく、ロックのリズムを刻んで支えるはずの足場も心許ない。
TVアニメ「 宇宙よりも遠い場所 」オープニングテーマ「 The Girls Are Alright! 」
久石譲「Summer」
ピアノの発色と透明感、弦楽の透き通るような伸びやかさを丁寧に出し、しかし発色をほどよく抑えて浮ついたキラキラ感を出さない。中域付近に安定的な濃厚味を維持して、曲全体の空気感を大事にするバランス感覚を感じさせる。
奥華子「恋」
空間を広く取るおかげか、弾き語りの音が空間に吸い込まれていく感じが丁寧に表現される。空間を音が穏やかに染め上げていくそのグラデーション感を味わえるだけの充分な広さがあり、ボーカルも少し下からゆったりと伸びてきて、空間のマージンを生かして、溶け込ませるように空間を染めていく。サビで突き抜ける声も、その声自体のダイナミックさを味わうというよりは、その振動波が広がる空間を楽しむといった味わい方になる。ライブを聴いているような感じでとても充実している。
【5】総評「音場重視の安定感のある音質はクラシック・JAZZ・バラード・R&B向き。MTWはちょっと高いという人には有力な代替機の一つになり得る」
小型で見た目にも違和感なく装着できることは第一の美点。持ち運びしやすいケースなのが第二の美点。そして小型なイヤホンとは思えない豊かな音場表現を持つのが第三の美点というように、音質と使い勝手で独特の良さを持っているのが魅力。
個人的には音場表現重視の傾向と音の出し方が現状で最もMTWに近い印象で、MTWの代替機としての魅力もある。値段的には高めになり、スペックは優秀とは言い難く、お世辞にもコスパが良いとは言えないのが残念だが。また最大音量でも音圧・量感はあまり感じられず、パワフルなイヤホンではない。
ジャンル的にはクラシックが一番向きそうで、ほかに弾き語りの曲などは空間を感じられる。JAZZは個々の楽器の躍動感には欠けるかも知れないが、俯瞰して楽しめる。バラード・R&Bはボーカルの伸びやかさをそのまま楽しむというよりはその空間への広がりを楽しむ感じで聴きたいなら、もってこい。
【6】他機種との聞き比べ(vs MTW, NT01AX)
ここではライバルとなり得るであろう2機種を取り上げて音質比較をし、よりこの機種の性格を浮き彫りにしてみたい。今回比較する2機種はすでに言及したSENNHEISER MOMENTUM True WirelessとNUARL NT01AXである。
Jess Glynne「Hold My Hand」
[M-2]:ゆったりとした空間を感じさせ、圧迫感がなく、俯瞰した視点でこの曲を楽しめる。音は全体的にやや遠目だが、厚みは感じるので印象的なボリューム感にそれほど不足感はない。ただし量感はやや感じづらい。
[MTW]:構図的にはM-2とよく似ている。ピアノの発色や透明感はM-2より明るく感じ、ドラムの弾みもM-2より重量感があり、メリハリが増していて空間の密度感に優れる。M-2より音は全体的に力強く、しかも音場は少し広いので、充実感はさらに勝る印象を受ける。
[NT01AX]:ボーカルは一番強く、低域も近くかなり厚みを持って感じられる。全体的に音楽に最も近づいており、その熱気と躍動感に飲み込まれるほどの迫力があり、ボーカルも天井知らずに思えるほど力強く伸びていく様子をダイナミックに感じられる。ただし、相対的に圧迫感は感じる。
Falcom Sound Team JDK「アプリエス神殿」
[M-2]:音が空間に広がっていく様子が見渡せるように広く、濃密で浮揚感のあるサウンドになっている。下から音が包み込んで地平線の向こうまで広がり、空にはやや開けた空間を感じるといったバランス。音には床面から立ち上がる立体感が感じられ、浮かび上がってくるように聞こえる。
[MTW]:M-2より低域音の広がりが強く感じられるので、浮遊感のあったM-2に比べて、より地面が感じられる。M-2ではフワフワした感じが幻想感につながっていたが、MTWの表現は底が見える、より現実感のある空間である。これは個々の音の立体感の印象の差になっており、音の立ち上がりだけが感じられたM-2に比べて、MTWはその音が湧き上がってくる深淵が感じられる表現となっている。その分立体感が増して感じられるので、ダイナミックさではM-2に勝る。
[NT01AX]:空間の底面により近い感じで、音の立ち上がりを俯瞰して見ていたM-2やMTWに比べると、低域が作る床面をしっかりと感じて、そこから音が立ち上がるのを見上げるような感じになる。音が伸び上がる突き抜け感を明瞭に味わうことができ、また左右はより近く、音に包み込まれている感覚が強い。
鹿乃「Iberis Song」
[M-2]:ボーカルはふっくらした自然な甘味があるが、少しドライで暗めに聞こえる印象がある。この曲だと全体的に発色抑えめでアタック感もセーブされているので、ドラム周りの主張がやや弱く、少し平板に聞こえる感じはある。
[MTW]:音の引き締まり、輪郭感がM-2より良く、その分音像に明瞭感とメリハリがある。低域の重厚感も出ているので、音の高低のコントラスト感もある。ボーカルはふっくらややウォームでドライな傾向はM-2に似ているが、もう少し息感が強調されてハスキー感も感じられるようになっており、起伏が増している。暗めではあるが、元気のない感じはなく、発色はM-2より少しよいような印象。
[NT01AX]:音の発色と輪郭感は最も明るく明瞭に聞こえる。シンバルも元気良く撥ねるので、音場の躍動感も随一。ドラムは表面は硬く弾けながら、下では膨張感もあってそこそこ肉厚と、個人的には秀逸に思うバランスでこの曲ではアクセントとなるロック成分をしっかり感じさせてくれる。ボーカルはふっくら甘く、高域方向へも明るく伸びるので、暗い印象はない。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。