- 旭化成のフラッグシップAK4499EQをデュアル搭載するハイエンドDAP
- 技術仕様
- サイズ
- 画面サイズ
- ストリーミングサービスやアプリへの対応
- デザイン/インターフェース
- アンプ性能
- バッテリー性能
- 音質
- 総評「音にこだわるならSP2000です。しかし、多くの人にとってベターな選択肢はM15です」
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旭化成のフラッグシップAK4499EQをデュアル搭載するハイエンドDAP
世界的DAPメーカーであるFiiOの最新DAP M15は旭化成のフラッグシップDACチップであるAK4499EQをデュアル搭載しています。業界最高水準のこのDACチップを2基も搭載しているDAPは地球上に2つしか存在しません。そう、FiiO M15と……Astell&KernのフラッグシップDAP「a&ultima SP2000」です。
今回は店頭試聴でM15とSP2000 Copperモデルについてじっくりと音質と使い勝手を比較してきましたので、その感触をお伝えしたいと思います。
技術仕様
まずは双方の技術仕様を確認しましょう。
Device | FiiO M15 |
a&ultima SP2000
|
DAC | Dual AK4499EQ |
Dual AK4499EQ
|
USB Chip | XMOS XUF208 |
/
|
Storage | 64 GB |
512GB
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DSD | 512 |
512
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Output power 3.5 SE | 490 mW / 32 Ohm ; 70 mW / 300 Ohm*1 | 3.0Vrms |
Output power 2.5/4.4 balanced | 800 mW / 32 Ohm ; 280 mW / 300 Ohm*2 | 6.0Vrms |
Battery capacity
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7490 mAh | 3700 mAh
|
MQA | Yes | Yes |
Price | 1459.99$ | 3499.00$(国内価格:約48万円) |
サイズ
FiiO M15の寸法重量は134mm × 75mm × 18mmで310gです。対して、SP2000は132 mm × 76.3 mm ×15.7 mmで寸法的にはわずかにコンパクトですが、Stainless Steel/Onyx Blackモデルで410.8g、Copperモデルで432.4gの重量があります。この差は大きく、SP2000は携帯するにはだいぶ重く感じられる人もいるかも知れません。
画面サイズ
M15の液晶は5.15インチHDディスプレイで、1440 × 720pの解像度をサポートし、10点までの同時タッチに対応しています。SP2000のディスプレイもほぼ同様のサイズですが、解像度は1280 × 720pになっており、M15よりはわずかに劣ります。しかし基本的には同等と言えるでしょう。
ストリーミングサービスやアプリへの対応
FiiO M15はほぼ完全なAndroid OS準拠のDAPなので、apkを利用することで、基本的にはあらゆるAndroid用アプリに対応します。したがって、好きな音楽プレーヤーアプリや利用中のストリーミングサービス、サブスクリプションサービスをインストールできるだけでなく、WebブラウジングやTwitterなどのSNSを使うことすら可能です。
それに対し、SP2000はOpen Appという仕様によって一部のプレーヤーアプリやストリーミングサービスに対応しています。Open Appによってサブスクリプションにはそれなりに対応していると言えますが、amazon music HDのULTRA HD再生に対応していなかったり、ワイヤレスイヤホンの付属アプリが使えないなど、限界はあります。
一般に、機能的で先進的な音楽サービスを利用したい場合はAndroid OSのほうが有利です。この分野ではFiiO M15のほうが現代的で、ユーザーを充分に満足させてくれるでしょう。
Androidがむしろ煩わしいし、音質が劣化するかも知れないと不安に思ってますか?大丈夫、FiiO M15には「Pure Music Mode」が搭載されており、そのモードにすれば伝統的な音楽プレーヤーと変わらない使い心地で、音質も向上します。
デザイン/インターフェース
外観の好みはあるかも知れませんが、それでも率直に言ってFiiO M15のほうが優れていることは事実です。出力インターフェースは3.5mmシングルエンド/2.5mmバランス/4.4mmバランスと揃っており、さらにアンプのようなボリュームノブの動きはより滑らかで、無段階音量調整に近い感覚を得られます。筐体の側面はNW-WM1Aを意識したかのようなグリップレストとインターフェースボタンを備えており、握りやすいだけでなく、HOLDボタンも付いていてアクシデントによる誤操作を防いでくれます。ウォークマンユーザーはより自然な使い心地でFiiO M15を使用できるでしょう。
SP2000はより平たく、角張っていて、シンプルです。Astell&Kernがバランス出力で頑なに2.5mmだけを採用し続けていることは大変残念です。折れやすく、破損しやすい2.5mmプラグはハイエンドにふさわしくありません。ボリュームノブは縦型デザインで、M15ほどではありませんが、それでも充分にスムーズです。このデザインのよいところは、本体を握った指の腹で簡単に音量調節できることでしょう。
アンプ性能
どちらもハイエンドフラッグシップであり、現状最高の音を目指しているとともに、オールインワンであらゆるヘッドホンに対応するコンセプトを持っています。SP2000はSP1000までとは異なり、外部のサブアンプシステムがありません。Astell&Kernの見解によれば、SP2000は単体で完全なアンプ出力を得たので、SP1000とは異なり、それ自体で完成(ultima)していると言うのです。
すでにM15のファーストインプレッションにおいて、このFiiOのフラッグシップモデルがアンプ出力においてオールインワンの理念を充分に体現していることは確認しましたが、 SP2000はどうでしょうか?少なくとも公にされているスペックはCayin N6II/E01よりは高いですが、FiiO M15の数値にはわずかに届いていないように見えます。
実際にbeyerdynamic T1(インピーダンス:600Ω)を店頭に持ち込み、駆動力が充分であるか確認しました。私のテストではAstell&Kernの主張が正しいと思われます。SP2000はT1を鳴らすのに不足があるようには思えませんでした。
したがって、オールインワンDAPとしての完成度は同等と見て良く、しかしわずかにFiiO M15のほうが優れているだろうという結論になります。
バッテリー性能
私がDAPを選ぶ際、最も重視している項目の一つがバッテリー持ちです。DAPを持ち運ぶという観点からすると、やはりできるだけ長時間もった方が良く、必要最低の時間としても8時間から10時間はもってほしいというのが私の希望です。M15はすでに充分なバッテリー能力(10時間~15時間!)があるということが証明されていますが、SP2000はどうでしょうか。
Astell&KernのDAPに関して、そのバッテリー持ちの悪さをかつての私は嫌っていました。しかしKANN CUBEはゲイン次第なところもありますが、まだ不足感を多少感じることもあるものの、充分な再生時間を提供してくれたので、ちょっと見直したという事情があります。
というわけで多少期待していたわけですが、率直に言ってSP2000のバッテリー持ちはよくありません。にわかには信じられないと思いますが、beyerdynamic T1をつないで相互につなぎ替えて聞き比べていたところ、FiiO M15はバッテリーが1%も減っていないのに、SP2000のバッテリーは10%以上減りました。SP2000は10時間の再生時間はないことは確実で、下手をすると5時間程度しか音楽再生ができないのではないかと私は思っています。
SP2000は発熱もひどく、FiiO M15も発熱しますが、SP2000のほうが上昇が顕著でしょう。
音質
さあ、真のハイエンドを決めるときが来ました。音質比較の時間です。これまではFiiO M15が健闘していたように思えますが、DAPは音質の評価が最も重要であることは間違いありません。両者は同じDACチップを搭載し、しかし価格差は2倍以上あるわけですが、それは公平と言えるでしょうか。聴いてみなければわかりません。
手持ちの気に入った曲をDSD256にアップサンプリングした音源5つで、FiiO M15とSP2000 Copperの音質を聞き比べました。Copperを選んだのはSP2000の中ではより暖かい音だと一般に言われており、私もつねづね店頭試聴でそういう印象を抱いていたので、ウォーム系の音であるM15との比較にはちょうどよいだろうと思ったからです。
結論から言いましょう。あなたがピュアオーディオ的要素(音場、背景の静寂感、分解能、立体感)を求めるならば、SP2000を選ぶべきです。M15は上記のピュアオーディオ的要素において、SP2000には一般に敵わないと判断されると私は思います。
M15の音はより暖かく、背景はほんのり色づき、低域もパワフルですが少しゆるやかで、SP2000と比べると、音の雰囲気が牧歌的です。ナチュラルなサウンドと評価することもできるでしょうが、音のハリや粒立ちの細かさ、ルームの静寂感で明らかにSP2000のほうが高級オーディオっぽい音だと判断されるでしょう。差は歴然です。ダイナミックレンジの良さを感じさせるような立体的で、より奥行きのある音となっており、少なくとも価格差があることを納得させられるくらいの差は感じられるでしょう。
ただし、差が感じられることと、それが値段にして2倍以上あることとは別問題です。SP2000の音は素晴らしいですが、2倍以上の価格を払って買うべきかというと、私は高いと判断します。
そういうわけで真にハイエンドなピュアオーディオ的サウンドを求めるならば、SP2000を買った方がよいでしょうが、音質面でもコスパはM15のほうがたぶん上です。しかし、M15の音はとてもSP2000には及ばないということははっきりと申し上げる必要があるでしょう。
総評「音にこだわるならSP2000です。しかし、多くの人にとってベターな選択肢はM15です」
結論です。音質以外のほぼすべての面でSP2000に対し、FiiO M15の方が優れています。しかし音質に関する限り、Astell&KernはSP2000で真にハイエンドでピュアなサウンドを実現しています。FiiO M15はしかし、SP2000の半額以下です。
この2つの機種の違いについて、あなたが何を気にして悩んでいるか私は知りませんが、この記事を読んだ今、あなたはどちらを買うべきか、なんとなく答えが見えてきたのではないかと推察します。
FiiO M15 FIO-M15-B DSD対応 ハイレゾ対応 4.4mmバランス出力 2.5mmバランス出力 高音質デジタルオーディオプレーヤー
Astell&Kern AK-SP2000-CP A&ultima SP2000 Copper