- 基本スペック
- TaoTronics SoundLiberty 97の特徴
- パッケージ
- 装着サンプル
- 接続品質
- インターフェース/操作方法
- 音質
- 音楽鑑賞
- レコーディングシグネチャー
- 総評
- 【関連記事】
今回取り上げる機種は最新の完全ワイヤレスイヤホン、TaoTronics SoundLiberty 97です。
TaoTronicsは、SUNVALLEYグループのオーディオブランドです。主にECサイトを中心にワイヤレスオーディオの分野でコスパの高い製品を作ってきました。その製品は最近はe☆イヤホンなどでも店頭販売されるようになっています。
廉価な完全ワイヤレスイヤホンでは定番のブランドとして知られ、SoundPEATS・ANKER・AUKEY・Mpowなどとともに高い人気を誇っています。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:9h/36h
- 防水性能:IPX8
- 対応コーデック:aptX/SBC
- 技適番号:204-B00231
TaoTronics SoundLiberty 97の特徴
QCC3020を搭載し、エントリークラスでありながら高音質コーデックaptXに対応
TaoTronics SoundLiberty 97は通信SoCとしてQualcomm社のQCC3020を採用しています。QCC3020は1万以上の完全ワイヤレスイヤホンにも採用されることの多い、定番の高品質完全ワイヤレスイヤホン用SoCで、高音質BluetoothコーデックであるaptXに対応しています。
エントリークラスとは思えない長時間音楽再生能力
QCC3020の電力効率性の高さのおかげで、1回フル充電するだけでイヤホン単体で最大9時間の長時間再生を実現しています。ケース込みで最大36時間の再生にも対応し、さらにバッテリーが切れてもわずか10分間の急速充電で2時間分のバッテリー容量が回復します。これはエントリークラスではかなり優秀なスペックです。
防水規格IPX8に対応
TaoTronics SoundLiberty 97の防水性能はIPX8です。この等級はIPX規格の最高等級であるIPX7以上であるということを示す例外等級で、水没耐性でIPX7を上回り、激しい雨の中や水上で使用しても大丈夫という防水性能になります。通勤通学やスポーツ用途であれば充分すぎる性能と言えます。
[外来固形物に対する保護等級]
※いわゆる防塵性能
0級:特に保護がされていない
1級:直径50mm以上の固形物が中に入らない
2級:直径12.5mm以上の固形物が中に入らない
3級:直径2.5mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
4級:直径1mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
5級:有害な影響が発生するほどの粉塵が中に入らない(防塵形)
6級:粉塵が中に入らない(耐塵形)
[水の侵入に対する保護等級]
0級:特に保護がされていない
1級:鉛直から落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴I形)
2級:鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴II形)
3級:鉛直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防雨形)
4級:あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない(防まつ形)
5級:あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない(防噴流形)
6級:あらゆる方向からの強い噴流水による有害な影響がない(耐水形)
7級:一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水することがない(防浸形)
8級:継続的に水没しても内部に浸水することがない(水中形)
パッケージ
パッケージは価格帯では標準か少し豪華です。パッケージデザインはTaoTronicsの共通デザインになっており、大抵のTaoTronics製品と同じ品質、同じ開け心地です。本体とアクセサリボックスというわかりやすい配置が機能的でしっかりしたパッケージですが、とくに感動などはないでしょう。
付属品にはイヤーピースの替え、充電用USBケーブル(Type-C)、説明書などが含まれます。
ビルドクオリティは価格を考えると上質です。基本は黒一色でありながら、鏡面仕上げとマット仕上げが使い分けられており、同じ価格の多くの機種より品があるデザインになっています。またブロンズ色のロゴデザインもかっこよく映えます。ケースは薄型コンパクトタイプで、ポケットに入れやすく、持ち運びに便利です。
装着サンプル
かなりコンパクトな本体は耳への収まりは良いですが、耳から出る部分は少し多いように思えます。耳に当たる面積をかなり絞ってあるので、小さな耳の人でも比較的装着しやすいと思われます。
接続品質
aptXでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5mくらい離れてもシームレスでそのままつながっています。遮蔽物があっても接続は維持され、とくに切断もありませんでした。
QCC3020機種にありがちな接続当初の通信荒れのようなものも、私の個体にはありませんでした。気になった点としては左右別でペアリングされないので、おそらくTWS+には対応していないかと思ったのですが、どうやらamazonの商品ページでは対応と明記されているようです。
ホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースはフェースプレート部分にあり、タッチ式です。
電源ON
ケースの蓋を開けると、自動で電源ONになります。
電源OFF
イヤホンをケースに収納し、蓋を閉じます。
また10分以上どこにも接続されないと自動で電源OFFになります。
ペアリング
イヤホンは接続先がないと自動でペアリングモードになります。
手動でペアリングを行う場合は、イヤホンをケースに収め、ケース背面のボタンを3秒間長押しするとペリングされている機器との接続が切断され、ペアリングモードになります。この操作でペアリング履歴は解除されません。
リセット方法
イヤホンをケースに収納して蓋を閉じ、ケース背面のボタンを8秒間長押しします。LEDインジケーターが青と白に交互に点滅したらリセット成功です。
曲再生/停止
左右どちらかのマルチファンクションボタンを2回タップします。
曲送り
右耳側のマルチファンクションボタンを3回タップします。
曲戻し
左耳側のマルチファンクションボタンを3回タップします。
音量を上げる
右耳側のマルチファンクションボタンを1回タップします。
音量を下げる
左耳側のマルチファンクションボタンを1回タップします。
通話応答
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
通話終了
通話中に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2秒長押しします。
着信拒否
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2秒長押しします。
音声アシスタントの起動
左右どちらかのマルチファンクションボタンをビープ音が鳴るまで長押しします。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L/RightMark Audio Analyzer
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
マガジン専用コンテンツになります。
サウンドシグネチャー解説
マガジン専用コンテンツになります。
THD+N特性
マガジン専用コンテンツになります。
音質解説
全体的な印象はかなりバランスが良く、SoundPEATSやMpowのエントリー機で音楽が重いような気がしたり、中域が聞こえづらい、音のツヤが足りないというように感じる場合、このイヤホンの明瞭感の高さが印象的に思われて好ましく思えるかも知れません。
※各評価項目はあくまでリファレンスサウンド(当サイトの機器測定における自由音場フラット)から見ての周波数特性データと私の聴感に基づく評価です。たとえば迫力のある低域を重視する人は「存在感」「太さ」「重み」「臨場感」が高い低域を好むと思いますが、このような音は本来最も重視されるべき「原音忠実度」はおそらくあまり高くありません。
再生機器にとって「原音忠実性」こそが最も重視されるべきというのはオーディオ界隈の共通認識であると思われますので、本ブログの音響機器の評価も「原音忠実性」を最も重視しています。
「原音忠実度」は基本的に高ければ高い方が多くの人にとって良いと思われますが、ほかの評価値は中間値である「B」を離れるほど原音忠実性が薄れます。そのため「S」や「A」はその音要素を好む人には最も心地よい音かも知れませんが、他の人には不快かも知れません。そして不快な音要素が決まっている人は、むしろその音要素が低い評価のものを選ぶとより心地よく音楽を楽しめると思います。
このように、当ブログでは原音忠実(リファレンスサウンド)からの距離を提示することで効率的にあなたの好みに合ったオーディオ機器を発見できるように工夫しています。
評価が高ければ高いだけ良い評価値というのは「原音忠実度」「クリア感」「おすすめ度」で、とくに「原音忠実度」+「クリア感」がオーディオ製品としての単純な優秀性を表します。
「原音忠実再生」についての参考動画:創造の館「いい音とは何か」
※以下のリンク先はpdfです。
低域(原音忠実度:B+/臨場感:B/深さ:B+/重み:A/太さ:B/存在感:B)
低域は重みがあり、深みもかなり感じられ、ブームは少しはっきり聞こえます。
臨場感という点ではもうちょっと深いところまで届いている方が個人的には好みですが、多くの人にとってはわりとどうでもいい問題のような気がします。この低域は原音忠実ではありませんが、原音忠実性への配慮が見られ、音の質感が不自然に感じられないように慎重に調整されています。
低域のノイズ感はほとんど低域内で処理され、中域が濁るような感覚はないでしょう。
中域(原音忠実度:B/厚み:B-/明るさ:B/硬さ:B-/存在感:B-)
中域は全体の中では凹んでいて、厚みがわずかに足りず、バランス的には少しスカスカして迫力に欠ける気がします。
中域の雰囲気は概ねニュートラルだと思いますが、奥行き感は少し強調されています。中域の透明度は比較的丁寧に維持されているとは思われますが、少しドライで、あまりみずみずしさが感じられません。
ボーカルフォーカスは比較的良好ですが、その声色は少し鼻にかかるような媚びた感じで、またわずかにハスキーです。中高域のツヤの強調によって女声ボーカルや平井堅のようなボイスの色気は増して満足感が高まる可能性が高いですが、わざとらしくも聞こえやすく、人によっては浮ついた雰囲気で軽薄に聞こえるかも知れません。
ピアノはかなり光沢感が増し、エレキギターやアコースティックギター、金管はグルーヴの中心がこのあたりに来ることもあり、かなり色気のある音を鳴らします。
高域(原音忠実度:C/艶やかさ:A/鋭さ:B+/脆さ:A-/荒さ:B/繊細さ:B+/存在感:B+)
高域は輝度の強調によってマイクロディテールが強調されており、人によっては時々ボーカルの息がスースーしたり、シンバルが少し派手すぎてシャリシャリしている印象を受ける可能性があります。
それでも、わりと落ち着いた感じではあるので、高域のシャリ感については最初は違和感を感じても、聴いているうちに落ち着く可能性がありますが、高域に対して敏感な人には気になるポイントかも知れません。どちらにせよ高域の派手さは少し強く、印象的にも中域から高域のあたりにグルーヴの中心が来やすいうえに、静寂感もあまりないので、人によってはガチャガチャとうるさい印象を受ける可能性はあります。
グルーヴ/音場/クリア感(グルーヴの中心:中域上部~高域/音場:B+/クリア感:B)
※一般にグルーヴの最も大きいところが最も活き活きと聞こえるので、音楽の中心になります。グルーヴの中心範囲の大きさは変動的です。グルーヴの中心は個人の音楽の好みを決定し、音響機器選択のヒントになります。音響機器のグルーヴの中心が個人の好みと離れている場合、むしろその不自然さが強調され、その音響機器を楽しくないと感じる可能性が高いです。音場の評価はBが自然な広さです。クリア感の評価は全高調波歪の測定値を参照して決めています。
このイヤホンのグルーヴの中心は一般に中域から高域に比較的広く存在すると思われます。
音場は深さと奥行きが強調されています。幅と高さはほぼ自然だと思われます。
音質総評(原音忠実度:B/おすすめ度:A-/個人的な好み:B+)
低価格完全ワイヤレスイヤホンの中では全体印象の原音忠実度は比較的高いですが、注意が必要なのは中域の充実感の低さです。この点で、原音忠実再生に特に敏感なクラシックファン、JAZZファンを満足させる可能性は低くなります。現代的なポップス、クラブミュージックやロック好きの人は中域より低域や中高域を気にするでしょうから、むしろこのイヤホンの少しスカスカした中域を、清潔感があって聴きやすいと思うかも知れません。
個人的な好みで言えば、わりとこういう媚びてる感じの音は印象的なクリア感は高いですし、結構好きですが、ときどき作為的に感じられる不自然さが出るので興ざめするところがあります。さらに、静寂感に乏しい音は基本的にあまり好きではないところもあるので、このイヤホンは時々私にはうるさすぎます。一方で、山崎まさよし「One more time, One more chance」のような比較的静かなアコギ弾き語りに近い曲なんかはわりと気持ちよくて、このイヤホンで聴くのが好きです。
音質的な特徴
美点
- ブーム感と重みのある深い印象を与える低域
- 奥行き感がある
- 艶やかな色彩感
- 色気があるボーカル
- 標準よりは少し広い音場
- 賑やかで楽しい音
- 明瞭感が高い
欠点
- 場合によって媚びすぎてわざとらしいボーカル表現と楽器音
- うるさいかもしれない高域
- 静寂感に欠ける
- 少し薄っぺらく、いまいち充実感のない中域
音楽鑑賞
パスピエ「スーパーカー」
わりときれいに色づきよくこの曲を楽しめます。ボーカルは媚びてニュアンスも強調されており、エレキギターとともに非常に印象的に聞こえますが、ボディが薄いので安定感に欠け、ときどきギャンギャンと吠えるように聞こえます。音場は奥行き感があって、この曲の最も魅力的な中高域を中心にフォーカスされるので、世界観に吸い込まれるような没入感があるのは事実ですが、一方でどことなく薄っぺらい聴かせ方にいまいち最後まで気持ちが入り込めないところがあります。また静寂感がイマイチなので、サビ付近ではややうるさくガチャガチャして聞こえます。音数は比較的多く聞こえ、個々の音のディテール感は強調されて聞こえるので、ディテールサウンドを好む人はかなりかっこよく楽しく聞こえるでしょう。
後ろから這いより隊G「太陽曰く燃えよカオス」
いい意味で頭悪そうな媚び媚びな雰囲気を強化するのはわりと得意なイヤホンなので、こういう明るい曲との相性は良いです。ボーカルはよりのびのびと聞こえますし、清潔感が出ているので、こういう曲では中域の薄さはたぶんほとんど気にならないでしょう。低域がわりと深く表現されるのもダンス風のこの曲と相性が良く思えます。この曲のウキウキ感、ワクワク感を出すのはうまいイヤホンです。高域方向のうるさい感じも、音楽全体を盛り上げる賑やかしとしてうまく作用しているように思われます。
山崎あおい「Just Friend」
少し掠れながら媚びた感じで聞こえるボーカルがこの曲の色気をうまく出してくれる気がします。アコースティックギターはツヤのある音ですが、粒立ちも強調されているので、非常に繊細でディテールが鮮やかに聞こえます。音楽は中域の充実感がないのでエネルギッシュなわりにいまいちパワフルさが足りませんが、そのおかげでこの曲の独特の儚さがよりはっきりと味わえるところがあります。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。使用イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズで、コーデックはaptXです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
TaoTronics SoundLiberty 97は低価格でありながら、比較的バランスの良い音質と優秀な使い勝手を実現しており、デザイン的にも洗練されていて、総合的に高い満足度をもたらしてくれます。そのサウンドはどちらかというと現代的で、アイドルやポップスターの曲、EDMを好む人々に高い満足感をもたらしてくれると思われます。
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