「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる中華イヤホンは1more E1025です。
1moreはFoxconn出身のスタッフによって創業された中国のオーディオブランドで、2013年に設立されました。設立にXiaomiの支援を受けたことから、伝統的にXiaomiと深い関係にあり、この世界的なスマートフォンメーカーの事実上のオーディオ部門の一つとして、その音響製品のOEMメーカーでもある関連企業です。1moreは当初からマルチドライバー技術を導入した高音質のイヤホンやヘッドホンを手頃な値段で提供する高コスパ製品づくりを目指しています。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:20hz-20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:98dB
- ケーブルコネクタ:なし
パッケージ
廉価なイヤホンですが、1moreの統一感のあるパッケージに収まっており、同価格帯では比較的上質に思えるかもしれません。外蓋の内側にはイヤホンのデザインラフのイラストが書かれており、目を楽しませてくれます。イヤーピースは2種類ついてくるだけでなく、キャリイングケースまで付いてきてアクセサリも多く、3000円クラスのイヤホンにしては満足できるパッケージ内容です。
装着サンプル
デザインはよく考えられており、素直に耳に収まります。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース(カバー付きタイプ) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(カバー付きタイプ) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(カバー付きタイプ) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(カバー付きタイプ) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
全体を見ると低域の比重が多めのウォームなドンシャリサウンドになっており、低域寄りのU字ないしV字のサウンドシグネチャーを持っています。
低域は深み重視のあるサウンドになっていて、かなり地鳴りが感じられ、ノイズ感のあるライブ感のある低域になっています。重みはわりと感じられますが、厚みはほとんどなく、中域付近は清潔になっていますが、エレキベースが強いロックなどでは熱気が少し中域を滲ませる気がするかもしれません。熱気が強いので、一般的に明瞭感が高い低域ではありませんが、キックとエレキベースの分離はよく、わりとしっかり聞き分けられます。私の聴感上はキックは心持ち軽く、エレキベースのほうが縦と横に幅があって生き生きして聞こえます。低域弦楽は厚みがわずかに足りない気がするので、濃厚感を重視するリスナーにはやや物足りないかもしれませんが、中域の透明感とのバランスが良いので、個人的には悪くないと思っています。
中域はメロウで甘みがあります。一般に風通しが強い音場ではないので開放的ではなく、音が少し中域に滞留する雰囲気があります。楽器音は色づきも派手で、わりと賑々しいですが、繊細さはあまり強くなく、強い輝きはない、どちらかというとアクリル質の透明感が感じられます。ピアノは音の稜線が少し明るく色づきも艶やかですが、まろやかであまり音が跳ねず、派手すぎないので聞き心地は安定しています。ボーカルは最前列にいるわけではなく、とくにエレキベースのほうがつねに前面に出てきますので、その熱気に影響されやすいですが、ロック以外では周囲はわりと清潔なので、フォーカスは悪くありません。中域の後退によって音の質感はドライに聞こえます。
中高域から高域にかけては手がかりが多く、光沢感もあり、きらめきがあります。クラッシュ感が強調されるものの、その粒立ちの輝きは相対的に抑制されており、派手になってうるさい感じはありません。シンバルのギラつきは出やすいので、わりとジャリジャリした輪郭が感じられ、存在感は強めです。またスネアのスナッピーさは少し強調され、キレの良いアタックを感じることができます。ドラムリズムはタムやスネア主導で聞こえやすいです。
超高域は基本的に閉じていて中域に甘みが感じられますが、ピークによって余韻をもたらしており、適度な残響感が感じられるようになっています。決してわかりやすく解像度が高いというイヤホンではなく、ディテールを適度に抑え込んで、むしろ聞き心地重視のサウンドなので第一印象では少し面白みがないように思うかもしれませんが、聞き疲れしにくく、メロウで甘みのあるサウンドを持っています。
個人的にはmoumoon「Let it shine」とか、大原ゆい子「ユビオリ」、清浦夏実「風さがし<full-colored samba mix>」のようなゆったりしたピアノとボーカルメインの曲をこのイヤホンで浸って聞くのが好きです。深い低域のもたらす熱気が空間全体を少しぼんやりさせ、セピア色に色づかせているように思わせ、それでいてボーカル周辺は適度に清潔でフォーカスがよく、ピアノは色づきがよく艶やかなのに調和的でエッジが優しく、沈み込みのよい深みのある抱擁感のあるサウンドを持っています。またアコースティックギターのサウンドも深みのある色づきの良いサウンドでどこか懐かしげに聴こえるので、Gipsy Kingsの曲なんかと相性が良いでしょう。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース(カバー付き)のSサイズ、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
重低域が強調気味でノイジーになりやすい熱気が強いこともあり、第一印象は人によってあまりよくない可能性があります。また一聴して解像度が高いのがわかるという類のイヤホンではありません。しかし、ライブ感のある低域とメロウで色づきの良い中域を味わってみると、聞き心地がよく抱擁感がある音楽を楽しめ、しかもわりとボーカルフォーカスは悪くなく、しっかり味わえることがわかってきます。パッケージも外観、内容ともに比較的充実しており、かつイヤホンの装着感はかなり良好です。
ぶっちゃけ個人的にも第一印象は普通で、わりと平凡と思っていたイヤホンですが、聴き込んでみると実はわりと味が染みた色づきの良い音に感じられてきました。何より長時間聴いても聞き疲れしません。
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