「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はHolyhigh EA2です。HolyHighはShenzhen YUANGU Technology社のオーディオブランドでMuzili、Arbilyなどの姉妹ブランドになります。ここはわりと真面目に技適やPSEを取って日本展開しているメーカーで、サポートも悪くありません。
Holyhigh EA2は低価格の完全ワイヤレスイヤホンにも関わらず、5000mAhもの大容量バッテリーを備えているだけでなく、Qi規格のワイヤレス充電器としても使えることが特徴です。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:5h/240h
- 防水性能:IPX7
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:214-105249
パッケージ
パッケージは価格帯の標準レベル以上です。付属品はイヤーピース、充電用ケース、充電用ケーブル(Type-C)、説明書です。 本体のビルドクオリティは特別優れている感じはありませんが、チープでもなく、標準的といった感じです。
装着サンプル
耳うどん型の形をしています。装着感はわりと良好です。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では貧弱な通信品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では一応普通に使えますが、それでも時々プチプチ途切れがちになります。距離耐性はあまりよくなく、5m離れると通信が不安定です。遮蔽物があると通信が完全に遮断され、送信元から切断されました。
またホワイトノイズはわずかにありますが、敏感な人でないと気にならないのではないかと思います。
Qi規格のワイヤレス充電器として利用可能
この機種はQi規格のワイヤレス充電器として使用できます。対応機種に対してであれば、外出先でいつでもどこでもケーブルレスのワイヤレス充電が可能です。
下の画像はQi規格のワイヤレス充電に対応している完全ワイヤレスイヤホンLibratone Track Air+を使ってワイヤレス充電のテストをしているところですが、充電中を表す白いインジケーターが点灯しており、しっかりとワイヤレス充電に対応していることが確認できました。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時]左右別
- [AET07 S装着時]左右平均
- [AET07 S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Sサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
全体を見ると低域が隆起し、高域に向かってなだらかに下がっているようなウォームサウンドのサウンドシグネチャーをしています。中域上部に大きな谷があり、ウォーム寄りの穏やかなU字型とも言えるかも知れません。
低域はかなり重みの強調があり、キックがズドンと重く出て、胴鳴りがしっかりしています。エレキベース音は暖かみが少し強く、人によってはボワ付く雰囲気に感じられるかもしれません。どちらにせよ、ややブーミーに聞こえやすく引き締まりが良い低域ではないでしょう。低域弦楽は太く重く、黒みがあり、床面に重く沈む、ゴリっとした音をしています。ライブ感のある低域ですが、輪郭が緩く、レイヤリングには優れていません。
中域は低域よりは凹んでいますが、充分に前進的でそれほど埋没感はありません。輪郭はやや抑えめで丸い暖かいサウンドで適度な静寂感があります。ボーカルフォーカスはよく、ボディは充分で温かみがありますが、ボーカルの下半分くらいまでは低域の熱気が滲みやすいので、中域に清潔感を求める人には向きません。ボーカルは暖かみと甘味があり、芯はしっかりしていますが、のびやかさには少し欠けます。男声ボーカルは深みが感じられ、充実感のある太い声が好きならかなり楽しめます。
高域は光沢感があり、手がかりもあって、わりと高い超高域にもピークがあるので適度な煌めき感と抜けも感じられ、単体ではわりと派手ですが、ボーカルより暗い感じになるので、開放感や存在感は強くありません。中域を引き立たせる、若干静寂な高域です。
全体として安定感が重視され、シャープネスはやや抑えめで輪郭感も強調しすぎないウォーム系のサウンドになっており、重厚感のあるサウンドになっています。個人的には安月名莉子「たたくおと」とか岡部啓一「NieR:Automata Orchestral Arrangement Album」の「Orchestra: 遺サレタ場所」のような静かで重厚な曲は非常に聴き応えを感じますが、派手さがない大人びた音なので、明るい曲は少し重たく鈍く聞こえますし、音数の多い曲では低域によるマスキングが気になりやすいかもしれません。ただしレンジ感は悪くなく、音場にわりと立体感があり、ボーカルフォーカスは良好なのでブーミーサウンドが好きな人や重厚感のあるサウンドが好きな人には楽しいイヤホンでしょう。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使い、コーデックはSBCです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
重厚な曲を静寂感を出しつつ、ゆったり丁寧に聴かせる雰囲気は個人的には好きですが、万能な音質とは言い難く、とくに明るいアニソンやスピード感のある曲を好む若い層には受けが悪いと思われます。重みとライブ感はありますがブーミーになりやすい低域もモニター的な音質を好む層からは嫌われそうです。何より通信品質がよろしくなく、家庭内でも途切れがひどいくらいです。ただし、Qi充電機能を備えたモバイルバッテリーとして使えるという点は面白いです。
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