- コスパ最強クラスの中華イヤホン「BGVP DMG」
- 「BGVP DMG」パクリ疑惑の製品「NICEHCK M6」
- 「JVC見えない福袋 2019」のキャンセル分で買いました
- パッケージ内容比較
- スペック比較
- 音質比較方法とプレビューテスト
- 課題曲聞き比べ
- 【総評】
- 【関連記事】
amazonを覗くとおびただしい数の中華イヤホンがあります。有名メーカー製に比べてドライバー数などスペック上は驚くべき性能を持ちながら、比較的廉価に売られていて、大変魅力的に思えます。
コスパ最強クラスの中華イヤホン「BGVP DMG」
さて、そんなコスパ最強の中華イヤホンの中でもとくに注目に値する機種の一つが「BGVP DMG」です。15000円程度の価格で、4BA+2DDのハイブリッド6ドライバー搭載、しかもドライバー素材にグラフェンを導入して音に対する反応速度を向上させつつ、交換可能なノズルシステムを備えて3種類のノズルで音質変化を楽しめるという、数ある中華イヤホンの中でも、スペックだけ見るとコスパ最強伝説のある製品です。ケーブルにも銀メッキコーティング5N単結晶銅を採用しているというこだわりようです。ただケーブルに関しては先日詳しく取り上げた感想からすると、あまり細かなスペックにこだわる必要はないだろうと思います。もちろん上質なケーブルを使ってくれるのに越したことはありませんが。
「BGVP DMG」パクリ疑惑の製品「NICEHCK M6」
さて、そんな人気機種「BGVP DMG」ですが、その人気にあやかり、これをパクったのではないかと噂されているのが「NICEHCK M6」です。4BA+2DDの複合ドライバー構造を持ち、交換可能な3種類のノズルシステムを搭載し……ってあたり、クリソツです。まあコンセプト自体をまねるのはよくあることなので、これを非難してもしょうがないかもしれませんが、ハウジングデザインまでクリソツです。
例の如く画質が悪いんで勘弁して欲しいのですが、並べた図が下の写真です。青がBGVP DMG、緑がNICEHCK M6です。M6のほうがベント穴が1個多く、細部に申し訳程度にデザインが足されているというごくごくわずかな違いがありますが、金型流用したかデザインをコピーしたとしか思えないほどクリソツです。ついでに言えば、ケーブルデザインまでクリソツです。
まあ中国のオーディオ製品は頻繁にOEMしたり同じ業者がブランドを変えて販売したりということは普通なので、いつも通り、よくあるチャイナ流マルチ販売かと思いきや、BGVP側がNICEHCK M6をパクリ商品だと非難しているとの情報が!
BGVP側の言い分によると、NICEHCK M6は外観やノズルシステムなどのアイデアをパクった商品ですが、内部までパクることは出来ておらず、新技術をふんだんに使ったDMGは、M6の悪質コピーとは音質に格段の差があるとのこと。なんだなんだ、珍しく話が面白い方向に進んでいるじゃないですか。
というわけで、興味を持った私は急遽amazonの初売りセールでBGVP DMGとNICEHCK M6両方がタイムセール対象になっていたのを確認し、期待を持ってポチりました。中華製品は比較的エイジングによる音質差も大きいところがあるというのが一般認識ですので、丁寧に検証するには、どちらも同じ時期に手に入れないと意味がないところがあります。今回はその絶好の機会だったというわけです。
「JVC見えない福袋 2019」のキャンセル分で買いました
ちなみに当初はJVCの「見えない福袋 2019」を買おうと思っていたのですが、注文後に中身の情報が全てじゃないんですけど見えるので、確認すると、どうも中身はJVC HA-FX1100(HA-FX850の可能性もあるが、参考価格が29900円になってたのでたぶんHA-FX1100兄貴のほう)にJVC SU-ARX01BTを合わせた内容っぽいんで、いらない感じだったのでキャンセルしました。いくら私がJVC HA-FX1100を愛しているからと言って、2個もいらん。ていうか、そもそもJVCの高価格帯イヤホンは比較的熱心に揃えているから、福袋自体いらんかった説濃厚。JVCならこの価格でVictor HA-FW10000を買わせてくれる男前を発揮してくれるだろうというかすかな期待もあったけれども、そんなわけないですよね。
さて、私は消費者としてはあまりイヤホンの高価格化を歓迎しておらず、HA-FW10000はさすがにひでぇ、売れるわけねぇだろって思ってましたが、世の中には物好きが多いのか、これが結構売れている雰囲気があります。amazonで品切れしてたり、オーディオ系ネットショップで取り寄せになっていたりしてるんですよね。まあモノがモノなんで、在庫は極力減らして受注生産に近い販売スタイルにしているのかも知れませんけど。あるいはJVCファンとしての本気度とか忠誠心が試されていると思えば良いのかな。私は買わないので「にわかファン決定」ってところですか。
パッケージ内容比較
話がそれました。次はパッケージ内容も比較したいと思います。
まずBGVP DMGですが、付属品は豊富です。付属イヤーピースは低反発×1/青色シリコンイヤーピース×3/グレーシリコンイヤーピース×4とかなりのバラエティ。ノズル3種類とイヤーガイド、クリップが含まれています。
一方のNICEHCK M6はノズル3種類は共通。イヤーピースは低反発×1/ブラックシリコンイヤーピース×3/グレーシリコンイヤーピース×3とライバルより1個少なく、イヤーガイドやクリップも付属しません。そのかわり専用のイヤホンケース付属です。
結局イヤーガイドあたりがほしいかどうかと、イヤホンケースほしいかどうかで差が付く程度で大差ないんですけど、梱包はBGVP DMGのほうがやや丁寧です。
あと個体差があるかも知れませんが、細かな相違として、BGVP DMGのケーブルのmmcxのコネクタの方がかみ合わせが硬いです。
スペック比較
スペックをまとめて比較しておきます。各スペックの意味、それを考慮した選び方などについては以下の記事を参照してください。
感度 | インピーダンス | 周波数 | 防水性能 | |
BGVP DMG |
110dB |
18Ω |
20hz-45khz(ハイレゾ認証取得済) |
IPX5 |
NICEHCK M6 | 106dB±2dB |
17Ω |
20hz-20khz |
なし |
音質比較方法とプレビューテスト
まずNICEHCK M6のケーブル両端にそれぞれの右耳用イヤホンを着けて、モノラルな音域確認用音源を用いて、音質差があるか確認します。これをプレビューテストとします。ちなみにエイジングは全く行っておりません。
左右同時につけて行わないのは、人間の耳には左右差があるためです。また右耳で行うのは一般的に左脳の方が明瞭に音が聞き分けられるという考え方があり、こちらからフィッティングするのが広くおすすめされているためです。このあたりの詳しい解説は以下の記事を参照してください。
まずこの右耳しかない特製イヤホンをPCにつないだOPPOのヘッドホンアンプ HA-2SEにつなぎ、以下のサイトで「Frequency Response」を聞き比べます。
結果としては可聴域に差を感じられませんでしたが、NICEHCK M6のほうが音量はわずかに大きく聞こえます。感度的にはBGVP DMGのほうが高いのですが、インピーダンスに1Ωの差があるので、その影響かなとも思います。ただこれは私の主観的な感覚の差なので、はっきりとわかるほどの差が感じられません。
また音の瞬発力や明瞭性を見るために130BPMのメトロノームを聞き続けるという苦行も行いました。こういう音質テストは個人的に楽しくもなんともないんですが、結論を言いますと、BGVP DMGのほうがわずかに音の締まりが良く、シャープ感が上で、より明瞭に聞こえます。これは音の後味の爽やかさの差にもなっていて、BGVP DMGのほうが後味スッキリです。NICEHCK M6のほうがベント穴が多いので、爽やかさでは勝ると予想していたんですけど、私の印象的には真逆です。
課題曲聞き比べ
お待たせしました。ここからがメインコンテンツになります。BGVP DMGとNICEHCK M6それぞれの標準構成に戻して、Astell&Kern SR15で課題曲を聞き比べていきます。ノズルはどちらも最初に付いている標準ノズル。
【課題曲その1】ずっと真夜中でいいのに。「君がいて水になる」
個人的に好きなアルバムから。どれも名曲なので買って損はないアルバムです。いくつかの曲はYoutubeに公式でアップされているので、気に入ったなら買い。では聞き比べていきましょう。
[BGVP DMG]:全体的に輪郭感良く見通しよく聞こえます。音はシンセっぽい感じなんですけど、表面は滑らかでつやっとしているし、立ち上がりもよさげ。低域音もそこそこ厚いですけど、あまり膨張感はなく、締まっている印象です。
[NICEHCK M6]:印象は完コピに近い感じがしますけど、音場が少し近く、DMGに比べて音の輪郭はややもたつくところを感じます。DMGに比べて少し中低域強めのバランスになっているのか、クラップのようなデジタルドラム音が少し重いですね。音量設定いじってないんですけど、やはり音量気持ちデカく聞こえます。
[結論]:音場の広さ、解像度感ではDMGが勝ります。この曲だとデジタルドラム音の締まりに差があって、DMGのほうが輪郭がはっきりしていて、しかも後味ももたつかず、臭みが少なくスッキリ抜けます。これに比べるとM6の音は重く、ちょっと野暮ですね。あと背景音の味が違います。M6に比べるとDMGのほうがより音がすっきりと落ち着いていて、空間の隙間もきれいに表現されます。それに比べるとM6はやや音同士が近いです。充実感の意味ではM6のほうがいいのかもしれませんが、個人的にはDMGの見通しのよい音の方が、この曲ではきれいに聞こえます。
【課題曲その2】fhána「虹を編めたら」
比較的音が多いので密度感もありますが、意外とボーカル周りがスカスカしたところがある爽快味のある曲です。今回のイヤホンたちのようなイヤモニ系で聞くと、解像度感を楽しみやすい一方、ミニチュア的になって迫力は出にくいところがあります。
[BGVP DMG]:若干スカスカします。個々の音の輪郭はよく、シンバルのしつこいくらいの粒感も細かく、しかもシルクのように手触り良く聞こえます。尖りやすいボーカルですが、のびやかさはそのままに、声の端は丸められていて尖らないです。ドラムはほどほどの膨張感でウォームな印象です。全体的に見通しよく楽しめます。
[NICEHCK M6]:相対的にボーカルが近く聞こえます。あとスカスカした感じは似ていますが、シンバルの粒感が少し粗いですね。表面が少しザラザラしています。さらにドラムの輪郭感が薄いので、膨張感のやわらかみが少し薄味になっています。これは結構差が付いたかな。
[結論]:この曲くらい緻密感があってしかも個々の音が分離している曲だと、表現力の差が感じられやすいです。DMGはだいぶシルキーで全体的に滑らか、しかし輪郭と肉厚感もそこそこ出てドラムの膨張感を楽しめます。M6はそれに比べるとドライで、よく似せてはいますが、音場がやはりやや狭く、全体的に音が近いです。色味もDMGよりはクールですね。難しいですが、面白味があって解像度感が高く、聴き心地が良いのはDMGです。
【課題曲その3】TVアニメ「ハクメイとミコチ」ED「Harvest Moon Night」
アコースティックな楽器音が多く、全体的に肉厚傾向で密度感の高い曲です。あとボーカルの息感が結構出ますので、イヤホンによっては刺さって感じられることもあり、その点なめらかに出せるかが味わいポイントになります。
[BGVP DMG]:見通しよく、すっきりしています。音場が広めで隙間はありますが、低域弦楽の深掘り感と膨張感がウォームに音場を下から支えるので寂しい感じはありません。ハーブの音色の色味やボーカルの表面がさらさらとシルキーでのびやか、瑞々しいです。これはいいね。
[NICEHCK M6]:音量差を考えて、少し音量下げているにも関わらず、やはり全体的に音が近いです。さらさらしていたDMGの音に比べると、全体的にとっかかりが多い音の出し方で、メリハリ感は強いかも知れません。あとDMGにあった隙間がもう少し埋まっている感じなので、全体的に密度は高いです。ボーカルも少し息感などに突っかかりがあり、スムーズ感はDMGに劣ります。さらにドラムの輪郭が相変わらず少し薄味、おとなしめです。これはベント穴1つ多いせいで張りが抜けているのかなとか勝手に予想してます。
[結論]:NICEHCK M6には悪いですが、明らかにBGVP DMGの圧勝です。私の好みでいえば、ウォームで調和的かつサラサラで解像度の高い表現を両立させているDMGはアコースティックな音色でより妙味を発揮しやすいようです。
【総評】
できれば、もっと曲をいろいろ聞いて比較したものを詳しく深掘りしていきたいんですが、時間も限られております。とりあえずの初出し比較レビューとしては、ここらでおいとましたく思います。楽しい時間はすぐに過ぎてしまうものですね。
いまのところの結論としては、BGVP DMGのほうが音質的には面白味が多く、解像度感も高くて、NICEHCK M6がコピーだという非難もさもありなんという印象を受けます。まだ両方のイヤホンの全てを試したわけではないので、早急に結論を出せる状態ではないですが、私の個人的見解から言えば同じ価格帯で競合する両者のうち、よりお得に感じられるのはBGVP DMGではないかということをお伝えしたく思います。
これから慎重にエイジングして変化があれば追跡レビューなどを入れつつ、最終的には個別レビューに仕上げていきたいと思います。とりあえず今日はここまで。
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