音質と価格のバランスが最も均衡している1万円台ワイヤード
ワイヤード(有線)イヤホン全体を見回すと、この1万円台というあたりはちょうどバリューモデルとハイパフォーマンスモデルの中間に位置し、各社ハイエンドと同じような高音質技術を部分的に導入しつつ、材質などに工夫を加えてコストを抑えた機種が多いです。
そのため1万円台はハイエンドの技術的知見を生かした完成度の高いモデルが多いのが特徴で、低価格機種とはデザインも異なり、ビルドクオリティと音質のバランスが取れた機種が多く、全体的に最もコスパが良く思える価格帯になります。
たしかにこの価格帯より低価格でも音質はよい機種があったりもしますが、ビルドクオリティが低かったり、デザインがチープだったりすることが多く、1万円台以上のイヤホンとは付属品やパッケージングでも差を付けられていることが多いです。1万円以上になるとリケーブル対応機種も多く、趣味的なオーディオカスタマイズにも対応しやすくなります。
今回はそんな魅力的な1万円台の価格帯から、とくに私が選りすぐって注目している女声ボーカル向きの機種を紹介したいと思います。
女声ボーカル好きにおすすめするイヤホン
[1]SIMGOT EM2
甘い女声ボーカルが優美に明るく浮揚する
中国のIEMメーカーSIMGOTのエントリーモデルです。ダイナミックドライバー1基とバランスドアーマチュアドライバー1基を組み合わせたハイブリッドなサウンドデザインで、高域がよく拡張された清潔感のある表現が魅力です。低域に強調はなく、フラットサウンドになりますが、中高域付近に焦点があります。ドラムも明るく弾ける音なので、全体的にさわやかで元気、しかもちょっと甘酸っぱい感じのあるサウンドが楽しめます。
このイヤホンで聴くおすすめの曲!
雨宮天「奏」
低域はベースよりはドラムが主役。熱気のある輪郭感の確かな、ウォームなキックで情感をたたき込んでくる。アコースティックギターとピアノもつややかで、光沢を強調してよりキラキラ。女声ボーカルはちょっと甘味を出しつつ、少し明るく、コケティッシュさが出ている。青春時代の輝きと脈打つ感動を上気した感じで聞かせる艶めかしさがある。
情感にメリハリと抑揚が聞いており、アコースティックギターの音色にもエロティシズムがあって妙に惹きつけられる。このイヤホンで聴く雨宮天はちょっとセクシーで、聴き込むと少しドキドキしちゃうくらいのバランス。
ClariS「irony」
元気のあるドラムサウンドと艶めかしい抑揚のあるボーカルを味わうなら、おすすめはこの曲。ベースはしっかり聞こえるけど、重たくならないバランスで、ドラムが躍動的に音場を弾ませるから、重みはあるけど、もっさり感はない。中高域はキラキラ感を散りばめるほどには明るいが、暗い背景もしっかり見えているから、ボーカルの艶めかしい抑揚のある色味が鮮やかに浮かび上がる空間もしっかりある。上では少し透明感も出して透けて輝くし。1万円台前半でこの音響はレベル高いね?
おすすめポイント
- 女声ボーカルが明るく前に出てきて、浮き上がりがよい
- すっきりした清潔感のある見通しの良い空間
- 音場全体が明るく、高域もよく拡張されている
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[2]FiiO FH1
女声ボーカルの息感、ディテールを緻密に聴かせる
中国の大手オーディオメーカー、FiiOのIEMです。この機種でまず注目して欲しいのは、1万円台では破格に豪華な付属品が付いてきます。なんとケーブル2本。通常の3.5mmミニプラグ用とバランス接続できる2.5mmプラグ用が付属しており、バランス接続も気軽に楽しめますが、価格的にはほぼ1万円で割安感があります。音質はフラットで中域で最も緻密に音が感じられるようになっており、ハスキーボイスのボーカルやシンバルの表現が緻密なロック曲と相性が良いです。
このイヤホンで聴くおすすめの曲!
ヨルシカ「藍二乗」
この曲はドラムセットが多彩なので、パーカッション表現に優れたイヤホンを手に入れるとつい試したくなる。
とにかくノリノリで刻みが良くドライなシンバルが楽しい。ギターもエッジが締まってドライ。ピアノが控えめで目立たないのは、この曲が元々そういうバランスっぽいけど、このイヤホンもそれに合わせて目立たせないから、なおさら相性良いかな。この曲はそれで味気なくなることもなさそうだし。ドラムは柔らかく中高域を支える縁の下の力持ちになっていて、主張は強くないから火力感は少し不足して感じられるかも知れない。
YUI「again」
YUIの繊細な息感のあるボイス表現を楽しむなら、価格帯ではかなりおすすめ。ドライで緻密なシンバル表現とやや柔らかいドラム音の温度感も雰囲気に合っていて、細密に音を鳴らすので奥行き感も感じられる。スピード感と繊細さを兼ね備えた、しかしドライな感じが聴き応えを感じさせる。
おすすめポイント
- 息感や輪郭が丁寧に再現されるボーカル
- 緻密でドライ、奥行き感もある中域
- 低域は柔らかく、中域に焦点が自然と合う楽しみやすい音響デザイン
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[3]AZLA ORTA
女声ボーカルを濃厚に、余韻たっぷりに味わいたいならこれだ!
韓国のオーディオメーカー、AZLAのIEMです。この機種もFiiO FH1と同じく、2.5mmプラグ対応のバランスケーブルが付属していて、付属の3.5mmプラグで一般的なミニプラグにも問題なく使えるというリバーシブルな機種になります。デザインも低価格機種とは一線を画すカッコよさになっています。音質は中低域が濃厚でボーカルを豊かに余韻たっぷりに味わえるのが特徴です。
このイヤホンで聴くおすすめの曲!
Aimer「ポラリス」
Aimerの曲の中でも1,2を争うくらい好きな曲なんだけど、この曲の濃厚なボーカル表現を味わうにはまさにこのORTAが素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれる。中低域に豊かな少しふっくらした感じになるが、分離感はしっかりしていて、音が低域に埋もれる感じがない。全体的に濃く、余韻たっぷりに味わえる。素晴らしい!
rionos「ウィアートル」
濃厚感と透明感のバランスを感じる音響。高域は強調されないので、明るすぎない自然な暖かさが音場にある。ウォームで聴き心地はよい。低域もディテールは良いが、ディテールを強調しすぎず、中域の鮮やかさを大事にしている。全体として濃く鮮やかに温度感を大切にして聞かせる。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』オリジナルサウンドトラック
おすすめポイント
- 濃厚でしっとりとした余韻もたっぷり、豊かなボーカル表現
- ウォームで聞き心地が良く、ゆったりとした中低域
- 高域は煌めきを強調せず、自然な温度感がある
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