- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い。通信品質も悪くない」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「割愛します。充電口はType-Cです」
- 【3】音質「低域は中域近くのパンチが利いた明るい浅い音、中高域は少し鮮やかに聞こえるが、アタックは適度で、ほどよい押し出し感のある音楽を聞かせる」
- 【4】官能性「やや熱気が強めの充実系サウンド」
- 【5】総評「透明感のある派手めではない音質は万能でもあるが、メリハリに欠けやすい」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良い。通信品質も悪くない」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 |
35h/- |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | LDAC/AAC/SBC |
防水性能 |
なし |
音質傾向 |
充実感がある、透明感がある、聞き心地が良い、安定感がある、パンチがある、聞き疲れしにくい、穏やか、マイルド |
プラスチック製で軽量な上、ヘッドバンドのスライドもほどよい感じで、硬すぎないので比較的装着感を合わせやすいです。側圧が強いということもあまりないです。遮音性もそこそこです。
対応コーデックはLDAC/AAC/SBC。ONKYO GRANBEATとCayin N6II/A01で交互に繋ぎながら接続品質をみました。テストしたのは都内某駅周辺です。混雑する時間帯でなかったせいもありますが、駅の改札の通過、電車の乗り降り時の間もほとんど途切れる感じはありませんでした。基本的に通信品質は安定していると思われます。
テスト環境
今回のテストはONKYO GRANBEAT、Cayin B6II/A01、SONY NW-A105で行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「割愛します。充電口はType-Cです」
ONZOのサブスク版なので付属品は割愛します。ONZOのサービスについて興味がある方は以下をご確認下さい。
アクティブノイズキャンセリング性能は1万円以下の中華よりは優秀だが、使いづらい
この機種はアクティブノイズキャンセリングとヒアスルーに対応します。あくまで主観的な部分も入りますが、アクティブノイズキャンセリングの性能は、私が中華の格安ワイヤレス最高峰レベルと考えているOneAudio A9と聞き比べて見ると、それよりは少し良いです。サーキュレーターの音と電車の音で聞き比べましたが、まずサーキュレーターは静かな環境で聴くと、わずかに差が感じられるのと、ホワイトノイズが少ない点でWH-H910Nが優れていると感じました。
電車の走行音もほとんど変わりませんが、WH-H910Nのほうがガタンゴトンのガタとかゴトが少し柔らかく聞こえるような気がします。仔細に聴いてみると、OneAudio A9のほうが少し空間に音の清潔さがあって逆にガタゴトが強く聞こえている感じもあり、甲乙付けがたい印象です。
総合的にはおそらくWH-H910Nのほうがノイキャン性能はわずかに上だと思いますが、一方でWH-H910Nには使い勝手で明確な欠点があります。それはノイキャンだけをONにし続けられないことで、OneAudio A9がノイキャンだけをONにしてANCイヤーマフのような使い方ができるのに対し、WH-H910NはBluetooth電源をONにしないとANC機能が使えず、さらに一定時間音楽を受信しないと勝手に電源が切れてしまうようです。通信が繋がっていればおそらく長時間ノイキャンだけを続けることができるようですが、外出時はどうしても状況によって勝手に切れてしまうことが多いように思います。
普段のイヤホンリスニングや、イヤホン店頭試聴時のために、あるいは作業に集中するためのANCイヤーマフとしての使用を考えている人は注意が必要です。
【3】音質「低域は中域近くのパンチが利いた明るい浅い音、中高域は少し鮮やかに聞こえるが、アタックは適度で、ほどよい押し出し感のある音楽を聞かせる」
まず全体像を確認してみますと、低域ドラムが中域に近いやや浅めの床面を作るのに気が付きます。少し腹にこたえるような胴鳴りを感じさせますが、量感は強くなく、また温かみも少し抑えられているので、フロアタムの幅や低域弦楽の厚みはよく出ますが、主張は強い感じではありません。ただこのボディをよく感じさせる低域のおかげで楽器音は太くしっかり聞こえるようです。中域では必ずしもボーカルフォーカスが強く感じでもなく、とくに女声ボーカルはあまり上に伸びる感じがありません。高域方向はあまりアタックは強くなく、立体感を出すというよりは音像を聞かせるマイルドな味付けになっているようです。全体的にフラットな音響が意識されているように聞こえます。
次に各音域を確認していきます。まず低域ですが、ベースラインを聴いてみると、あまり黒さはありません。ブンブンウンウン重みと深みは感じられますが、ベースのボディはしっかり濃いという感じではなく、ややボサボサとして聞こえます。バスドラキックもそれほど目立たず、柔らかい輪郭でそれほど広がらずにボンとドンの間くらいの音で聞こえます。基本的に低域の深いところは、存在感を少し出しつつも、聞こえすぎないように配慮されているように思われます。印象的にはやや浅く聞こえやすいでしょう。低域弦楽はやや胴が重い、のっそりした感じの音で、ボーンという豊満なボディを感じさせます。深いところにのしかかる感じは少なく、厚みはありますが、立体感はあまり感じさせません。一般に低域はブーミー系でやや立体感に欠けてボコボコして聞こえるかもしれません。
中域はどちらかといえば低域方向の安定感が強い感じに聞こえます。立体感はあまり強くなく、音場表現的には平坦であまり広さを感じないかもしれません。奥行き感もあまり強調がありません。ボーカルは相対的に前出てきますが、ギターサウンドなどとはほぼ均等な力関係で、ロックではドラムのパンチに埋もれやすい感じがあるので、ボーカル周りは整理されておらず、フォーカスが優れているとは言えませんが、楽器音がボーカル周りに適度に充実するので充実感のある形で聞こえます。ボーカルは伸びやかというよりは安定的に聞こえます。息感や子音が強調される感じはほとんどなく、女声ボーカルは少し暗いです。
高域方向はなだらかに閉じているように聞こえますが、閉じる前に伸びる感じがあります。シンバルの空気感の強調はわずかに透明な感じで聞こえますが、あまり目立ちません。しかし色味を抑えている割に高さがあるように感じられると思われます。ボーカルの息はわずかに強調される感じがありますが、基本的にはほとんど息感は抑制されています。弦楽も高いところは透明で、あまり高く伸びているような見た目をしていませんが、印象よりは高いところが聞こえているようです。大抵の曲で高域は少し落ち着いた、やや暗い印象で聞こえると思われます。中高域のアタックは強くなく、鮮やかさもほどほどに抑えられています。
総合すると、あまり明るくない高域と厚みを出しつつも深くない低域が、意識を自然と中域に向けさせるような音響設計を感じます。その中域は音が少し密集していて適度に濃厚感がありますが、高域方向は必ずしも高さを意識させないものの、実際には透明感があるので音が適度に抜けていく感覚があり、JAZZを聴いても濃厚感は強くなりすぎず、上では適度に開放感があるような形で聞けます。全体的には温和に音像を丁寧に聞かせる感じがあり、安定感のある音響になっています。聞き心地はマイルドですが、立体感に欠けて聞こえやすいところはあります。少なくとも音源の味付け以上にキレを出したりするような機種ではありません。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
普通。中域で鮮やかさを感じるが、強く出しすぎない。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
普通。シンバルが少し派手に出やすいが、全体的にマイルド。 |
明るさ (明るい/暗い) |
普通。ボーカル周りが自然に明るく、高域は高さはあるが明るさは適度に抑えられている。 |
派手さ (派手/地味) |
普通。派手なきらめき感は適度に抑えつつ、地味にならない程度には色づいて聞かせる。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
普通。手応えはしっかりありつつ、角が立ちすぎない。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
普通。高域でシンバルが少し細かいが、輪郭はマイルド。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
普通。中域のボーカル周りに少し音が集まりやすいが、音像が落ち着いているのでガチャガチャ感は多くない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。中域下の低域のパンチはバランス的に少し強く、やや力強さを感じやすい。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
普通。全体的にほどよく情報量がある。 |
太さ (太い/細い) |
普通。高域で少し細かくディテールを出すが、そこらへんは透明感が強いので目立ちすぎず、中域の自然な太さと低域のパンチが一番感じられる。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
普通。高域は少し細かいが、基本的にマイルド。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
ややきめの細かい。高域のハイハットの粒立ち感が少し細かく目立つ。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
普通。高域は透明で澄んでいる感じがあるが、中域はややぎっしりしている。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや潤いのある。音は少しみずみずしい。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。バランス的にはやや安定感重視で、低域が少し重く感じられる。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
普通 | 普通 |
明るいか (明るい/暗い) |
普通 | やや暗い |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
やや伸びやか | やや伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
普通 | 普通 |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
普通 | 普通 |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
普通 | 普通 |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
普通 |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
前進的 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
普通 |
定位感 (頭内的/頭外的) |
頭内的 |
分離感 (拡散的/密集的) |
やや密集的 |
美点
- 中域に充実感がある
- 透明感のある高域
- 適度に厚みもあって重みの感じられる低域
- 聞き疲れしにくい
欠点
- 立体感に欠ける
- 全体的に音がマイルドでメリハリに欠ける
[高音]:一聴した印象では高域はあまり出ていない感じがするが、よく聴いてみると透明に近い感じでありながら、そこそこ高いところまで伸びて聞こえる。たとえばシンバルの空気感は派手にシャーンとは明瞭には広がらないが、聴いてみれば淡い感じでかなり広がっている。弦楽も透明に高いところに伸びていくが存在感は目立たないようになっている。そのため高域は薄味であるにも関わらず、閉じている感じは強くなく、適度に開放されているように感じる。中高域はそれほど鮮やかさを強調せず自然な色味に聞こえる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、菅野よう子「Power Of the Light」でテスト)
[中音]:中域は少し安定的で中域真ん中で安定するように聞こえる。ギターのアタック感などは少し感じるが、強い感じではない。どちらかというとボーカル周りに少し音を集めて充実感を出すように聞こえる。中域はほどよい透明感も考えられているが、わずかに音に密集感があり、音場が狭めで整理されていない印象を受ける可能性がある。ロックでは低域のドラムが少し中域にかぶさる感じもある。
[低音]:100hz~40hzまでそれほど太くない輪郭が少しだけ締まったボーッとした振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は深いところで少し地熱を感じる。ベースは真っ黒というよりはもう少しぼやっとした感じで温かみの中で音が聞こえてくる。バスドラキックもやや輪郭がゆるい感じで優しく聞こえる。ドラムの胴鳴りに一定の厚みを感じ、ロックではその弾力感でやや浅いところで音が浮き上がってくる感じもあり、活きがよく感じられる。低域弦楽は重みより豊満さのあるボディの豊かさを聞かせ、やはり少し浮き上がりが良い印象を受けます(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:あまりワイドレンジな立体感を出す感じではない。どちらかといえば中域に音が集中するが、高域は地味なものの開放的で、中域に濃厚感を閉じ込めすぎない。そのため全体の音楽的なイメージとしては、低域の厚みから浮き上がってくる音が中域で一度滞留するが、そこからほどなく透明になって抜けていく、ややゆるい立体感に感じられる。音像のくっきり感はそれほど重視されないので解像度を強調する感じは強くなく、またアタック感も抑えめである(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムは少し胴鳴り感が強め。スネアの鼓面はやや明るくバツッと弾けるが、胴鳴りの安定感のほうが基本的には強いので、若干下に重い感じがある。一方でバスドラキックも深くないので、中低域の浅いところで音が跳ね返ってくる感じがあり、床面はそこほど深く潜らない。ちょっと浅いバツンバツンくらい。ハイハットはチンチンしたあたりが少し目立つが、シャンシャンしたあたりもかなり淡いながら聞こえ、立体感は感じられる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは子音の強調はあまりないが、息の伸びは少し感じる。そのためボーカルは全体としてみるとあまり伸びやかという感じではないにも関わらず、語尾で少し伸びて抜ける印象がある。ボーカルフォーカスが強い感じもなく、やや楽器に埋もれながら聞こえやすい。ボディ感の強い、どちらかといえば豊満系の声色なので、人によっては暖かすぎ、ややもさっとして聞こえるかもしれない。
【4】官能性「やや熱気が強めの充実系サウンド」
藍井エイル「月を追う真夜中」
【NW-A105で鑑賞】この曲では結構低域方向でドラムの胴鳴りと床鳴りする感じが強調されていますが、そのボコッとした浮き上がりの良い胴鳴り感は強く聞こえます。ボーカルは少し埋没気味で、楽器音が周囲に集中している感じがあって、人によっては狭い感じがあるでしょうが、逆に充実感が高いと思う可能性もあります。高域方向は中高域の発色はそこそこ抑え、アタックも強調しすぎないので、ギター・スネアを中心としたロック要素よりは、透明感を出しながら高く伸びる弦楽のほうが主導的で、ややオーケストレーション感を重視して聞こえます。したがって高域では意外と高さが感じられますが、ギターはあまりボーカルの周りから離れてくれない感じがあり、外連味は強くなく、適度な落ち着きがあります。
月を追う真夜中 (期間生産限定盤) (DVD付) (特典なし)
TVアニメ「まちカドまぞく」OP主題歌「町かどタンジェント」
【NW-A105で鑑賞】立体感的に甘いところがあって、たとえば金管は透明度が高く、プーッという音に伸びてくるアタックをあまり感じないので、どちらかというと中域の「パラリラパヤパヤパー♪」みたいな雰囲気を緩い温度感で、すこしぼーっと楽しむ感じになります。どちらかというと優しい系で、ベース音も深堀りされないので、ふんわりした感じで味わうことになり、浸るには良いかもしれませんが、メリハリは少し足りない印象を受けそうです。
TVアニメ「まちカドまぞく」オープニング&エンディングテーマ 町かどタンジェント/よいまちカンターレ
渕上舞「Fly High Myway!」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】やはり少し中域に音が集まる感じがあります。一方でその分高域で透明な感覚があり、この曲の高いところで突き抜けを感じさせる弦楽が透明な色合いのまま、そそり立つ感覚があります。ボーカルは滑らかさを重視していて、中域で甘みを十分に出しつつ、息は少し透明に抜ける感じがあり、落ち着いているのにほどよく開放的で聞きやすいです。透明感が感じられる音で、派手さはありませんが、聞き込みやすい感じです。
【5】総評「透明感のある派手めではない音質は万能でもあるが、メリハリに欠けやすい」
中域に適度に音を集めつつ、高域で透明感を出すような味付けになっています。ボーカルは子音が目立たず、滑らかに聞けるバランスになっています。比較的万能に聞ける感じではあると思いますが、アタックを強調する感じではないので、立体感は少し緩く思えるかもしれません。キレを強調する感じではないでしょう。
機能面ではアクティブノイズキャンセリング性能はさすがのSONYといった感じですが、最近の1万円未満の中華のノイズキャンセリングイヤホンの進化が著しいので、体感的な差は少なくなってきています。
まとめ
- 聞き疲れしにくい
- 適度に透明感がある
- アクティブノイズキャンセリング性能もそこそこ優秀
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。