- 【1】装着感/遮音性/通信品質「この機種自体がAirpodsへの最大の賛辞」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「使い勝手は良い」
- 【3】音質「Air、それは翼を授ける」
- 【4】官能性「アニソンさえ聴ければ、それでいい。」
- 【5】総評「もはや音質的には上位機種に遜色ない」
- 【6】このイヤホン向きの曲
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【1】装着感/遮音性/通信品質「この機種自体がAirpodsへの最大の賛辞」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
もはや言い訳もしないし、隠しもしない。「Air」という名前にしっかりと表れている「Apple Airpods」へのリスペクトとオマージュ。Ankerは完全ワイヤレス界に燦然として君臨する王者に本気で向き合っている。明らかに似ている装着感とケースに至るまで似せたデザイン。この形状で出すのはある意味危険でもある。市場にはびこる劣悪なAirpodsコピーを人々は冷めた目で見ているのだから。
しかし、AnkerはあえてAirpodsコピーを悪びれもせずに堂々とここに出してきた。それも価格帯最高の品質で。この機種はAnkerが「俺たちもAir名乗れる機種ようやく作れました」っていう卒業制作なのかもしれない。←滅茶苦茶
装着感はAirpodsライクで収まりは良い。しかも「Air」ってくらい軽い。いわゆる「うどん」と言われたりする出っ張り部分も安定感に貢献しており、首を振っても吹っ飛ぶことはない。私はよく盛大なくしゃみで完全ワイヤレスイヤホンを飛ばしてしまうことがあるが、このフィット具合なら飛んでいったりはしないだろう、試してないけど。これまで装着感って個人差もあるから比較的甘めに点数付けてたけど、この機種はこれまでの採点なら5点満点で6点取れるくらい。密着度は意外に高く、遮音性はなかなかのもの。音漏れは少し。
AAC/SBCのみ対応。通信は安定している。遅延・途絶はない。
【2】外観・インターフェース・付属品「使い勝手は良い」
付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。
丸みを帯びた充電ケースは収納に困らず、コンパクト。比較的場所を取らない。ただ丸いデザインは少し取りこぼしやすいところもあって、鞄から出し入れするときは注意が必要かも。
充電ケースからのイヤホンの取り出しはスムーズで、同じような形状のRHA Trueconnectにあった、硬い感じはない。手でハウジングを摘まんであげれば、スポッと取り出せる。
充電ピンは出っ張り部分の先の位置にあり、ケースの深い部分で充電する形となる。RHA Trueconnectは手前側にピンがあったが、どちらがいいとは一概には言えないものの、あくまでRHA Trueconnectとの比較で言えば、私は奥にあった方がいいかな。このほうが余計なテンションがかからなくて破損しづらい気がする。取り出しが少し硬いこともあって、私はTrueconnectの手前のピン部分を結構神経質に気にしていて、それに比べると安心して使える印象。まあイヤホン単体のデザイン的にはTrueconnectのほうが洗練されている感じだけど。
イヤホンの連続再生時間はスペック上5時間。ケースで3回満充電できるので、ケース込みで最大20時間。ここらへんは最近低価格でもバカみたいにバッテリー長持ちする機種が多いけど、それに比べると落ち着いてる。メーカー品でも20時間はあまりないんで、充分。
充電用のMicro-USBコネクタの位置がケース下部にあるのは悪くない。これが背面にあるものもあるが、この形状では充電時寝かせた方が安定するし、ケースカバーの開閉にも干渉しないから、この位置は個人的に好印象。
イヤホンをケースから取り出すと自動でペアリング、接続モードになる。収納すればそのまま充電モードに。ここらへんの使い勝手は低価格モデルでは充分に実現できてないものもまだ多いなか、堅実に実現しているのでこれも好印象。使い勝手に安定感がある。
操作はタッチパッド式。正直押下感がないからあんまり好かないけど、最近は出てくる機種の8割がたこれになっちゃったな。ほんとはいろいろ文句言いたいけど、まぁいっか。この機種のタッチパネル自体は他機種と比べて反応が悪いわけじゃなくて、普通。個人的にタッチパネル自体があまり心地よくないんで、こき下ろしてやりたいところだけど、それ言っちゃうとあまりに理不尽だよね。使わなければいいわけだし。実際私はデジタルオーディオプレーヤー(DAP)にワイヤレスイヤホンつないで音楽聴いているから、曲操作はDAPで行うので、ここらへんの使い勝手の悪さは苦になりません。むしろ使い勝手で気になるのがこの点くらいってあたりはすげぇな。
忘れてたけど防水性能はIPX5ね。雨濡れしても大丈夫で、水たまり落としてもすぐ拾えばギリギリセーフなんじゃないかな。比較的良いよ。一番じゃないけど。
【3】音質「Air、それは翼を授ける」
音質的にも「Air」のイメージに合ったところがある。低域を抑え気味にしたおかげか、中高域を素直に楽しめて浮揚感のある溌溂とした音楽が楽しめる。
最近流行のグラフェンを使ってきてる。この素材は最初は日本のMaxellが使い出したんだけど、あまりに鮮明度が高くて「ハイファイ志向」とかいわれる最近のクリア感重視主義の風潮に乗って、あれよあれよという間に低価格ハイレゾ機種の定番素材ってくらいまで普及した。事情は知らないけど、これを日本製品以上に積極的に取り入れているのが低価格帯の中華製品。率直に言って、私はこの素材、場合によってつんざくようにシャリシャリするところもあるし、妙にキラキラしてるので嫌いではないけどあまり好きでもないんですけど、ハンパない鮮明度を持っているのは確か。実際の解像度はそうでもない機種でも、このグラフェン使うだけで高域の鮮明感だけ格段にパワーアップして、体感的な解像度がバリバリ上がります。
それがどこらへんに影響するかって言うと、たとえばこの機種だとシンバル周りの鮮明感が高くなって埋没しなくなり、高域は突き抜けて天高く上っていくように感じるし、その透明感はクリスタルかって思うほど透徹する。グラフェン系の音の魅力はこうした天上の音楽を思わせるような、見通しの良い中高域でもっとも威力を発揮する。それに比べると低域は硬くなったり、膨張感が失われる感じがあるので、私が一番好きじゃないのはこの点。だから低域ゴリゴリ出てるって言われているZolo libertyの低域を評価していないのも、個人的な好みに合わないからってところが大きい。まあこの点客観的でないのは認める。最終的には音楽って好みだからなぁ。
逆に言うと、この機種はそのあまり好きじゃない低域のゴリゴリ感が抑えられているバランスになっていて、個人的にかなり好印象。中高域に幾分集中してる分、むしろ良バランスに思える。
※あともしかすると勘違いされるかも知れないので言いたいんですけど、おすすめ度グラフで低域5にしてますけど、これ、低域が出てるって意味じゃないですからね、低域が「イイ感じ♡」って意味ですからね。このイヤホンの場合、中高域とのバランス感覚が絶妙で連携がよいので、個人的に好きだから5にしてます。
[高音]:高域ではやや尖りやすい。突き抜け感は良好で透明感が強い(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:音が緻密に出るので、音場は相対的に広く感じられやすい。ぎっしりした音も綺麗に描き分ける感じ。時々くどいけど。ピアノの発色は強めで、弦楽も少しヒステリックなくらい伸びるところはあるので、コントラスト感は良好。あとエッジ感良好なのでアタック感も強めに感じるかな。こういうグラフェンの特性が愛されている。なんとなく不自然な音だけど。
[低音]:振動は少し芯がある感じで100hz~40hzくらいまでは鮮明。30hz以下はおとなしい。傾向としては膨張感に乏しいクールな感じのベースになる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:コントラスト感があり、個々の音の輪郭も明瞭なので発色は良く感じる。音は細い傾向なので、その分背景も感じられて定位感も良く、広さは感じやすい(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ハイハットやライドシンバルは砂粒のようにきれいに立ち上がる。繊細かる埋没しにくい明るさのある音で色彩感は比較的豊か。ドラムはシャープ感があるが、やや薄味で輪郭や表面だけ硬く感じられる。粘りが出やすいところもある。傾向的にスネアドラムなんかはきれいに感じられる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:高域に透明感があるので女性ボーカルなんかかなり浮き上がって、分離感よく思える。男性ボーカルは少し細くて中性的になるが、やっぱり輪郭感は良いのでボーカル中心に歌詞を聞き取る感じで聴くのに向く。
【4】官能性「アニソンさえ聴ければ、それでいい。」
たとえば私の好きなfhánaだと「青空のラプソディ」とか明るく清潔に、のびやかに楽しめる。元々細身のメインボーカルだから突き抜ける感じが強いけど、この曲は背景も結構緻密で密度があるところがあるから、イヤホンによっては埋没するところもある。このイヤホンは緻密な音をそれぞれきれいに聴かせるし、ドラムあたりがうるさくバンバン響いてこないから、素直にボーカルの突き抜ける感じを楽しめる。
プレイリストいじってて良かったのはHALCALI「Long Kiss Good Bye」。ていうかこの曲だいぶ久しぶり。若干エレクトロダンス色もあってラップも入るガールズロック曲なんだけど、まず歌詞が鮮明に聞き取れるからラップ部分も満足にこなすし、少し硬めのドラムとかキラ味のしっかりしたハイハットがこの曲のイメージに合うし、ミキシングが入る感じも明瞭で、中毒的。何よりボーカルの透明感がきれいに出て、緻密で少しうるさげな背景の曲なのに、埋没せずに突き抜けて伸びるからいい。
若干好みは分けそうだけど、個人的に伊藤美来「Shoking Blue」も楽しめる。結構うるさいくらい背景が響いてくる密度感の高いロック曲なんだけど、低域が厚くて重厚感を出すようなイヤホンだとちょっとボーカルが埋没する感じがあるし、金管あたりの鮮明度が高くないと、軽妙な感じが薄くなるんだよね。その点、このイヤホンはバッチリ。少し尖りが強い感じではあるので、聞き疲れする感じではあるんだけど、シャープなエッジ感でブラスが煌めき感を伝えてくれるので、爽快感が高い。それに比べるとカップリング曲の「Rouge Back」のほうは全体的に少し音が硬くて相対的に微妙かな。最終的には好みだけどね。
以前知ったんだけど、もう少しウォームな方が味わいがいいと思ってた鹿乃「Linhara Girl」って、結構中高域鮮明度高いこういうグラフェン系の音の方が楽しめるところもあるね。この曲のイメージ的にほんわかした調和的なイヤホンがいいとずっと思ってたんだけど、元々ボーカルがふっくらした甘味があるせいか、中高域が鮮明だと緻密な表現が引き立って、ボーカルはふっくらしたままあまり細くならずに浮き上がって、なかなか中毒的。あと低域が硬めになるけど、目立たないバランスで出るのが逆に軽快な足音になっていて、それも好印象につながってるのかも。なんていうか、曲とイヤホンの両方が良いところを殺さずに悪いところを消している良好な関係があって、これはいいね。ただ、シンバルが多少自己主張が強いから、耳に固着してうるさいって人はいるかも知れない。
少し電子音っぽい打ち込んだ雰囲気の強いこうした曲に比べると、より伝統的なロック曲(←この言い方も謎だけど)に近づけた表現は好みを分けそう。たとえばヨルシカ「カトレア」って好きな曲聴いてみたんだけど、シンバルがうるさくてドラム硬い。ちょっと好みじゃない。以上。……ってまとめたら少し乱暴なので、もうすこし言葉を継ぎ足すと、たしかに個々の音が鮮明でボーカルの分離感もよくて気持ちいいところも多く、これを好きって人も多いと思うんだけど、パーカッションが少し目立ちすぎて、しかも耳に粘るので、個人的に落ち着けない。こういうのがいいって人もいるので、一概に言えないんだけど、まだ「靴の花火」くらい落ち着いた感じだと逆にいい感じ。「あの夏に咲け」とこの曲くらいのバランスだと金属的な硬質感が目立っちゃって個人的には少し苦手。
【5】総評「もはや音質的には上位機種に遜色ない」
Ankerの完全ワイヤレスイヤホンの中ではいまのところ個人的には一番好み。低域の硬さが抜けた分、「Air」って感じで高く突き抜ける高域と伸びる広大な中域を味わいやすくなってるので、良バランスに思える。通信品質的にも落ち着いてきてて不満はない。ケース周りの使い勝手も良いし、こりゃあ一本獲られたね、AnKerさんに。これじゃ率直に言って1万円台の国産品はほとんど相手にならんよね。国産メーカ-は完全ワイヤレスに関しては完全に出遅れちゃってる感じでスピード感に欠けてて一周くらい差を付けられそうだけど、まじで大丈夫かってくらい心配。iKanzi X9でもポロッと言っちゃったけど、1万円~2万円台のイヤホンをほとんどアクセサリーにするくらいのインパクトがあることは確かだよ、個人的にはね。機能面での差別化がある分、高級機種にも一日の長はあるけど、そこはすぐ追いつかれそう。あーあ、どうすんだこれ。JVCさんオーテクさん、私の閉塞感を癒やす機種を出してください。
本機種のライバルとしては音質傾向が似ているKOMODO U10が最有力だろう。あるいは同じAnkerのZolo Liberty。よりドンシャリなCANAVIS J29も得意とする曲は近いので、敵手たりうるかもしれない。少なくとも装着感はその全てに勝ってるけど。
【6】このイヤホン向きの曲
まず私の好きなヨルシカから薦めるとしたらこの曲。このイヤホンではこの曲の立体的な表現が思う存分味わえます。低域とパーカッションのバランスもこのイヤホン向きで臭みを感じずに曲に没入できる。最高だね。
このイヤホンで聴くなら、この曲もオススメ。全体的にアタック感良好で疾走感はノリノリだし、サビでのボーカルの突き抜け感も高く、透明に、まさしく天上に向かう純粋で清潔な色を持っている。はい、最高。音楽って本当にイイですね。それでは皆さん、さよなら、さよなら、さよなら。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。