- 【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で付け心地が良い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「ビルドクオリティは高く、付属品も豪華」
- 【3】音質「開放的な高域表現が特徴です」
- 【4】官能性「繊細でのびやか、かつ風通しの良い音です」
- 【5】総評「ディテール感は価格帯最高クラスで、音に分解能を求めるならおすすめできます」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で付け心地が良い」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
B07Y51JQ57 | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 20~30000Hz |
インピーダンス | 18Ω |
感度 | 104dB |
ドライバー |
コンポジットハイブリッド型(ダイナミックドライバーの静電コンデンサー型ドライバーのコンポジット) |
音質傾向 |
音場が広い、抜けが高い、風通しが良い、スネアが気持ち良い、ギターのエッジがきれい、倍音成分が多い、透明感がある、ディテール感が良い、爽やか、金属的 |
カセットテープの2つのリールを模したデザインのハウジングは耳への収まりがよく、遮音性は良好に感じられるはずです。
テスト環境
今回のテストはFiiO M15、Cayin N6II/E01、Galaxy A30、ONKYO GRANBEAT、Astell&Kern KANNで行っています。ゲイン設定は基本的に「高」設定です。
【2】外観・インターフェース・付属品「ビルドクオリティは高く、付属品も豪華」
付属品はイヤーピースの替え、2.5mm→3.5mm変換アダプタ、キャリイングケースです。イヤピは3種類付属し、ダブルフランジ1セット、軸が薄いシリコンのものが3セット、軸が厚いシリコンのものが3セット付属します。
標準ケーブルは2.5mmバランス出力に対応し、3.5mm変換アダプタでシングルエンド出力に対応しています。
【3】音質「開放的な高域表現が特徴です」
周波数特性イメージ(試験運用中)
※周波数特性イメージはあくまでレビューの便宜上、個人的に周波数分布のだいたいのイメージを掴むための参考情報で、測定方法も測定されたデータも非常にアバウトで厳密な信頼性や正確性に欠けます*2。
レコーディングシグネチャー(試験運用中)
レコーディングシグネチャーはバイノーラル録音されていますが、品質は良くありません。低域は抜けやすくなるので、イコライザーで低域を持ち上げていますが、それでも充分出ていません。したがって聴いたそのままの音質とは異なりますので、あくまで参考情報ということでお願いします。
原曲
銀の意志 Silver Will / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ファーストインプレッション
今回は標準イヤピの中で、軸の厚みがあるタイプのLサイズを使ってレビューします。
このイヤホンのインピーダンスは18Ωで、一般的なスマホでも充分に鳴らすことができます。実際Galaxy A30で聴いても不足を感じませんが、低域がわずかにゆるやかに思えるかもしれません。
さて、テストに入る前にこの機種の特徴を説明しておく必要がある気がします。この機種はこれまでヘッドホンやイヤホンの高級機種にしか搭載されてこなかった静電型ドライバーを1万円台の低価格で実現しているのが特徴です。たとえばこれまでイヤホンで静電型ドライバーを搭載した機種ですと、Oriolus Percivali(約30万円)ですとか、Jomo Audio TRINITY(約30万円)、FitEar EST(約15万円)などといった具合になるのですが、この機種は1万円台という低価格で静電型の音を提供するというのだから驚きです。
Head-Fiの議論によれば、実際にはこのイヤホンは静電型パーツをダイナミックドライバーとコンポジット(複合)させて駆動させているので、純粋な静電型ではなく、静電型特有の外部電源を必要とする構造を回避しているらしいのですが、技術的な話を深めるのが当ブログの目的ではないので、この話はここでおしまいにしておきましょう。
そういうわけで、難しい話は置いておいて、音を楽しみましょう。デフォルトテスト環境であるONKYO GRANBEATにつないで音質を見てみます。一聴して気づくのは、TAPEの高域音に静電型っぽい繊細さがあることです。ハイハットやギターのつま弾きを聴いてみると分かるのですが、非常に粒子が細かくさらさらと散っていくシルキーさがあります。それだけでなく、木管音や金管音、弦楽音を聴いてみると、高域で手がかりが多く、倍音成分が多めに感じられます。高域のディテール感は価格帯ではおそらく抜群に近いでしょう。私が普段STAX SR-009Sで聴いているような、静電型らしさがあります。
生の静電型らしい音をこの価格で遺憾なく発揮しているのに驚きながら、各音域を見ていきます。HiFiGOやPrime Audio Reviewが言うように、TAPEの低域は全体の中では前に出てきています。ただし、その低域は比較的クリアで厚みはあまり強くなく、熱気はそれほど強くないので、中域の明瞭感にそれほど影響しません。エレキベースギターのラインははっきりと黒く見え、少し地熱を帯びていますが、あまりモヤモヤとはしていません。バスドラキックも比較的音がまとまっていて、一点を押しており、ベースラインに埋もれる感じはなく、ドンドンとはっきり聞こえます。胴鳴りは強くなく、空間に音が膨らむ感じは強くありません。コントロールは効いており、ディテール感はよく、リズムスピードに遅れはありません。低域弦楽も透明な音で、厚みよりも重みを出す音で、ドーンと沈みます。躍動感は適度にありますが、基本的にはずっしりとしています。ゆったりではなく、ずっしりです。
中域は低域を受けて、それなりに濃く聞こえるところもありますが、太さはそれほどでもありません。低域がはっきり聞こえているので、音の根立ちは悪いとはそれほど思わないはずですが、中域下部は少しスカスカするくらいの清潔感を感じます。音のつながりが悪い感じはありませんが、音がまっすぐ立っている感じは薄く、音の印象も末広がりで低域の根立つところから中高域が少し浮き上がっている感覚があるかも知れません。クラシックを聴くと、中域の真ん中くらいに音の密度が少し減る部分を感じるという人もいるでしょう。音の実体感にどれだけ影響するかは個人の好みもあるのでわかりませんが、私にはわずかに音場の一貫性に欠けるような感覚があることは事実です。低域が充分に離れて中域にマージンを感じるので、ワイドレンジ感はあります。
中高域に向かってアタックが強調されてきます。スネアには明らかな強調点があり、たたきつける音をはっきり聴かせてくれるでしょう。高域は徐々に色づきが透明になっていくように丁寧に調整されており、ハイハットの音は充分に高く空気感もあって抜けを強調しますが、一方で輝きは抑えられ、透明に近く、中高域の色づきを邪魔しません。ボーカルの息も伸びますが、息の穂先を強調せず、刺さらずに透明になりながら空間に消えていくのが心地よく感じられるでしょう。子音に強調はありますが、抜けが高いこともあり、驚くほど滑らかです。同様に楽器のエッジ感は強調されていますが、輝きは適度に抑えられているため、ギラつく感じはなく、シルキーな手触りに思うでしょう。美しいギター音の繊細な金細工のような音が好きなら、このイヤホンは魅力的に映るはずです。色は濃くありませんが、ディテールに優れた細密な音を奏でてくれるでしょう。倍音成分も多いですが、それを透明に近い形で聴かせてくれるのも個人的にはポイントが高いところです。ヴァイオリンには詳細なディテール感と高さ、そして倍音の響きがありますが、倍音を強調してヒステリックになることはなく、どこまでもシルキーで優美です。
総合すると、とくに高域のディテール感と透明感の丁寧なバランスを取る間隔が非常に素晴らしく、とくにクラシック音楽で丁寧な倍音表現を愛するような人には、とても1万円台で買えるとは思えないコスパを感じさせてくれるはずです。清潔でのびやかなボーカル表現が好きな人にもお勧めできます。ボーカルは少し細く薄い気がしますが、充分に伸びやかで突き抜けてくれ、しかも高域での声の消失は自然で、適度な余韻があります。ボーカルは子音が明瞭でディテールに満ちており、歌詞が明確であるにも関わらず、刺々しさがありません。まさに静電型らしい、ディテールと聴き心地を両立させた高域表現が存在しています。率直に言って、驚きに値します。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
普通。色味は適度に抑えてさわやかに聞こえる。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鋭い。エッジ感は強調されており、音は細めに感じる。 |
明るさ (明るい/暗い) |
明るい。基本的に風通しの良い感じのスーッとした明るさがある。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。輝きは露骨に強調されないが、キラキラした派手さは感じられる。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
硬い。音は全体的に金属的。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや尖る。抜けが高く刺さりはうまく抑えられているが、全体的にエッジ感が強い。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや騒々しい。よく整理されていてガチャガチャするという感じではないが、手がかりは多めで人によってはうるさげかもしれない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。スネアの打ち込み、スピード感のあるバスドラムの支えなど、パワフル感はある。ただし音に厚みはないのでマッチョな感じはあまりない。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや貧弱。音は少し細め。 |
太さ (太い/細い) |
やや細い。音は少し細め。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
ややざらざら。抜けはシルキーではあるが、エッジ感の強調がある。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
きめの細かい。繊細。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
澄んだ。風通しが良い。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
乾いている。音はやや硬質でハイハットが乾燥した空気感を強調する感じがあるので、ドライに聞こえる。 |
重さ (重い/軽い) |
やや軽い。低域も重みを結構出すが、それ以上に高域の浮揚感は強い。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
澄んでいる |
澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
明るい | 明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
伸びやか |
伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
乾いている | 乾いている |
太いか (太い/細い) |
細い | 細い |
濃いか (濃い/薄い) |
普通 | やや薄い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | やや目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややスカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある。 |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
前傾的 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
広い |
定位感 (頭内的/頭外的) |
やや頭外的 |
分離感 (拡散的/密集的) |
拡散的 |
美点
- 空間が清潔
- 音の抜けが良く、高い
- 爽やか
- 音場が広い
- アタック感がある
- 開放感がある
- 繊細
- 倍音成分が多い
- 風通しが良い
- ボーカルのディテールが良い
欠点
- 音が金属的
- 音が細く、充実感に欠ける
[高音]:高域は充分に高く、抜けも良く開放的だが、高いところでは透明感があって、ギラつきやシャープネスを強調しすぎないようによく調整されている。息は透明に高く突き抜けて伸びるし、ハイハットも穂先が高く、風通しの良い雰囲気を出してくれる。音は繊細で緻密で、倍音成分も多いが、刺さらないよう色味や輝きが適度に抑えられている(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は基本的に清潔。低域の存在感があるので、床面が不足する感じはないが、その低域には暖かみも膨らみもないので、中域で厚みを感じることはなく、全体の中では少しスカスカして感じられる。低域との分離はよく、少し中高域に寄ったあたりに音が集中している。楽器音は基本的に上に伸びやか。太さは少し細いくらいで、色味はやや薄い。中高域では充分に濃いので、ピアノには虹色の色づきが感じられるし、ギターのエッジに金色くらいの色味が乗るが、エレキギターに黒い感じはあまりないし、ボーカルに厚みがあまりない。
[低音]:100hz~40hzまで、グレーくらいの明るみのあるボーッという音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。エレキベースは充分に黒くラインは明瞭に聞こえる。熱気は少しあるが、強くないのでブンブンする感じはそれほどうるさげにならないだろう。ベースラインにバスドラキックが隠れる感じもない。そのバスドラキックは一定をしっかり押す明瞭なステップ感のあるスピードコントロールの良い音で比較的機敏。低域弦楽は重みを出すドーンとした音に聞こえる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:音場は奥行き感・幅・高さ・深さの三次元でなかなか広く、価格帯では優秀なレベル。とくに高さの表現には個人的に感心する。中域の充実感には少し欠けるので、人によってはスカスカ気味の塩っぽい味付けに思うかも知れない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:スネアのアタックは強調され、鼓面の一番上辺は少しパシパシと明るく飛沫を上げて弾けるように聞こえるだろう。ボディは少し透明でドラムはバスドラキックと鼓面が目立ちやすい印象。明るめのパツンパツン。ハイハットは充分に高く立体的で、アタックするスネアのさらに上ではっきりと高く浮かび上がるが、輝きは適度に抑えているので、静寂感もあってうるさげにならない。シンシン系の音(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは少し明るく、男声ボーカルは中性的に聞こえるところがある。息や子音に手がかりが多く、ディテールが良く、歌詞はわかりやすい。コクには欠け、色味も少し薄く、上で細い感じがあるが、ボーカルフォーカスは良い。清潔感があり、女声ボーカルも清涼感があって思春期から青年期くらいの声色に聞こえやすい。色味は濃くはないし、パワフルさに満ちている感じでもないが、のびやかでよく突き抜けるので声量を感じる。
【4】官能性「繊細でのびやか、かつ風通しの良い音です」
The LASTTRAK「夏を待ちわびて (feat. somunia)」(vs WG T-one)
【KANNで鑑賞】こういうEDMトラックを繊細に楽しむのにはなかなか良いです。リズムは明瞭で遅れはなく、電子音はかなり細かくエッジが立って、しかもアタック感も少し強く感じられるのでメリハリが利いています。さらにボーカルが清潔系で透明感がある表現なのもこの曲向きなところがあって、この曲の爽やかな、息遣いを強調するような歌い方を、息を露骨にスーハーさせずにうまく抜けの高さまで出してくれます。吹き抜ける風のような清涼感の形で楽しめます。
ほぼ同価格でテスラドライバーを搭載しているWG T-oneと聞き比べてみます。同じように低域の反応速度もよく、抜けも良い感じがありますが、T-oneのほうが明らかに色味が濃く、ボーカルは甘味がしっかりしており、電子音にツヤと実体感があります。抜けの高さやディテールはTAPEのほうが優秀ですが、TAPEのカサカサした感じがT-oneにはなく、艶やかな味わいがあります。音場はTAPEよりは縦軸で狭い感じがあります。
最初TAPE聴いたときはいいなって思ったんですが、そのあとT-oneを聴いた途端、「あ、こっちのほうがいいね」って感じでした。個人的にTAPEの色味が薄い感じがやっぱり気になって、音の充実感・実体感に欠けやすい気がします。とくに分解能を考えると、解像度的にはTAPEのほうが優れているとは思います。
22/7「空のエメラルド」(vs TINHiFi T4)
【FiiO M15(Pure Music Mode)で鑑賞】はっきり言って、解像度は凄く高く、繊細です。弦楽の倍音の出ている感じ、ギターエッジの繊細さ、電子音の緻密さ、ボーカルの息遣いの明瞭さ、歌詞のわかりやすさ、この価格帯では抜群に近いのではないでしょうか。しかし、音が細く、手がかりが少し多すぎ、金属的で、そしてこの曲だと少しギャンギャンします。分解能良く、スピード感も充分に楽しませてくれますが、ちょっと軽く、チャラい感じもあり、音が硬く、個人的にはいまいちな印象を受けました。あと意外なことに、音が細いせいか、この曲では音場もちょっと窮屈に聞こえます。
同価格くらいで人気のある機種、TINHiFi T4と聞き比べてみます。T4のボーカルはTAPEより太く、濃く、コクもあって実体感と充実感があります。楽器音は広がりも良く、ツヤも乗って、艶やかです。音の根立ちも悪くなく、中域にスカスカした感じはなく、音がしっかりと支えられて力強く聞こえます。逆説的なことに、音の広がりがよい分、この曲ではT4のほうがTAPEより音場が広いような印象があります。実際の音場はTAPEのほうが広いのですが、空間がスカスカしているうえに、中高域以上で音が密集する感じがあるので、なんかところどころ音場が窮屈に聞こえます。T4は安定感のある形で音が広がっているので、スカスカする場所がなく、そのため音楽全体で安定した音場を感じ取ることができ、聞き終わった印象でむしろ音場が広いような感覚を覚えるところがあります。
個人的にはT4の音の方が好みです。TAPEはディテール感が素晴らしいですが、やはりスカスカする感じが気になります。ただこれは本当に個人的な好みの気がします。
西木康智「Octopath Traveler -メインテーマ-」(vs SIMGOT EM2)
【Cayin N6II/E01(A)で鑑賞】木管音や金管音に倍音成分が感じられ、少しギザギザ感を出しながら高く抜けていくリアルな感触が非常に味わい深い印象を与えてくれます。シンバルの粒立ちも細かく、清涼感があって、空間はドライですが、シンバルの飛沫には少し潤い感を感じます。明るく爽やかに風通しのよい雰囲気でディテール良く、しかしさっぱりと聴けます。
同じような価格帯の人気機種、SIMGOT EM2と聞き比べてみます。一聴して分かるのはEM2の音にはTAPEにはあまりなかった華やかさがあるということです。色味が濃いのもそうですが、音に潤い感もあり、木管音は倍音成分ではTAPEに劣りますが、中域でしっかり音を吹き込み、それが潤いにつながっていて、同様に弦楽音や金管音にも潤いのあるツヤのある色づきがあるのがわかります。音場ではTAPEのほうが優秀ですし、ディテール感も明らかにTAPEが勝りますが、実体感と充実感のあるEM2の音には華やかで色づきよい春めいた香りがあります。
個人的には風味の点でEM2を推したいです。もちろんディテール感はTAPEが素晴らしいのですが、TAPEの音にはやはりどこか「生感覚」が足りない気がします。
OCTOPATH TRAVELER Original Soundtrack
【5】総評「ディテール感は価格帯最高クラスで、音に分解能を求めるならおすすめできます」
音場は広く、開放的で、ディテールにも優れており、非常に高解像度なサウンドを持っています。しかしその音はミニチュア的で、金属的な感触があり、中域の暖かみに欠け、充実感を感じづらいかも知れません。静電ドライバーらしい音を充分に実現しており、完成度が高く、パッケージもビルドクオリティも素晴らしいので、おすすめできますが、しかし、じつのところ意外と選り好みされそうな音です。繊細な音が好きなら、文句なくおすすめできるでしょう。
- 抜けが良く、風通しが利いていて、開放的な音場
- 繊細で緻密
- 音が金属的で細く、充実感に欠ける
【関連記事】
*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。
*2:音量による変化、各イヤホンの特性を考慮した補正などを行っておらず、測定環境もスマホマイクで集音しているので非常にアバウトで厳密ではありません。レビュー執筆の参考に使っていたものの、これまでは公表してきませんでしたが、これまでサンプルを取って聴感上の印象と照合してきた感じ、それなりに参考にはなりそうなので、試験的に公開していきたいと思います。いずれ勉強を深めて信頼性を高めていきたいとは思いますが、本ブログは周波数特性の測定をメインとしていませんので、期待しないで下さい。私自身も聴感上の音像印象の解釈の補助として利用しているだけで、この周波数特性イメージを全面的に信頼し、依拠しているわけではありません。