Victor HA-FX100T 完全ワイヤレスイヤホン 本体質量4.5g小型軽量ボディ 最大28時間再生 生活防水仕様 Bluetooth Ver5.1対応
今回取り上げる機種は最新の完全ワイヤレスイヤホン、Victor HA-FX100Tです。
JVCは日本を代表するオーディオブランドです。JVCの源流である日本ビクターは1927年に設立された日本でも有数に歴史の古いメーカーです。ビクター時代の代表的な業績といえば、世界的なビデオカセット規格となったVHSビデオの開発です。先行していたSONYのベータマックスに対し、利便性を武器に規格戦争を勝ち抜いた歴史があります。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:8h/28h
- 防水性能:おそらくありません
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
- 技適番号:215-JCD065
Victor HA-FX100Tの特徴
ワイドレンジな音を実現する音響空間
Victor HA-FX100Tは小型ボディでありながら、ドライバーユニットの背面に音響のための空間をしっかりと確保しており、心地よいゆとりのある低音とワイドレンジな音を実現します。
高音質コーデックaptXに対応/Victorスタジオによるプロチューニング
Victor HA-FX100TはQUalcomm社の通信SoCを採用し、高音質BluetoothコーデックであるaptXに対応しています。
また音質チューニングに関してはビクタースタジオの音響エンジニアが監修しています。ビクタースタジオはいわずと知れた、日本最高のレコーディングスタジオの1つで、日本の音楽の生まれる心臓部です。
最大28時間の長時間リスニング
Victor HA-FX100Tはコンパクトサイズでありながら、本体のみで約8時間の連続再生と、充電ケースによるフル充電(約8時間×2.5回)を合わせて最大28時間の長時間再生を実現しています。10分の充電で約1時間の再生が可能なクイック充電にも対応しました。
※使用条件により変わります。
パッケージ
パッケージは価格帯では標準的です。JVC製品の共通デザインパッケージに収まっています。開梱体験は比較的シンプルですが、パッケージにチープさは感じません。
付属品にはイヤーピースの替え、充電用USBケーブル(Type-C)、説明書などが含まれます。
ビルドクオリティは価格を考えるとやや上質です。全体的にクセのないエレガントなデザインで、JVCらしくない静かな気品があります。
装着サンプル
かなりコンパクトな本体は耳への収まりは良好です。小さな耳の人でも問題なく装着できるでしょう。
接続品質
aptXでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯ではかなり優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5mくらい離れてもシームレスでそのままつながっています。遮蔽物があっても接続は維持されます。
接続当初の通信荒れのようなものは少し見られます。公式でTWS+への対応が明記されています。
ホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースはフェースプレート部分にあり、タッチ式です。
電源ON
ケースからイヤホンを取り出すと、自動で電源ONになります。
また3秒長押しすることで手動で電源ONにできます。
電源OFF
イヤホンをケースに収納すると、自動で電源OFFになります。
ペアリング
イヤホンは接続先がないと自動でペアリングモードになります。
リセット方法
イヤホンをケースに収納して、左右どちらかのマルチファンクションボタンを同時に3回タップします。LEDインジケーターが点滅したあと消灯したらリセット成功です。
曲再生/停止
左耳側のマルチファンクションボタンを1回タップします。
曲送り
右耳側のマルチファンクションボタンをピッと鳴るまで1秒長押して、離します。
曲戻し
左耳側のマルチファンクションボタンをピッと鳴るまで1秒長押して、離します。
音量を上げる
右耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
音量を下げる
左耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
通話応答
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
通話終了
通話中に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
着信拒否
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンをピッと鳴るまで1秒長押して、離します。
音声アシスタントの起動
左耳側のマルチファンクションボタンを3回タップします。
ヒアスルー ON/OFF
右耳側のマルチファンクションボタンを1回タップします。
ヒアスルー性能
ヒアスルーは少しホワイトノイズが多いように思えます。周囲の音は少し明るく強調されているように思われますが、概ね自然に聞こえます。自分の声の聞こえる位置もわりと自然だと思いますが、少し明るく聞こえます。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L/RightMark Audio Analyzer
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
マガジン専用コンテンツになります。
サウンドシグネチャー解説
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THD+N特性
マガジン専用コンテンツになります。
音質解説
全体的な印象は中域が引っ込んでいる弱ドンシャリサウンドです。音楽の全体印象は少し暗めで、少し落ち着いた静かな雰囲気で音楽を楽しめます。
※各評価項目はあくまでリファレンスサウンド(当サイトの機器測定における自由音場フラット)から見ての周波数特性データと私の聴感に基づく評価です。たとえば迫力のある低域を重視する人は「存在感」「太さ」「重み」「臨場感」が高い低域を好むと思いますが、このような音は本来最も重視されるべき「原音忠実度」はおそらくあまり高くありません。
再生機器にとって「原音忠実性」こそが最も重視されるべきというのはオーディオ界隈の共通認識であると思われますので、本ブログの音響機器の評価も「原音忠実性」を最も重視しています。
「原音忠実度」は基本的に高ければ高い方が多くの人にとって良いと思われますが、ほかの評価値は中間値である「B」を離れるほど原音忠実性が薄れます。そのため「S」や「A」はその音要素を好む人には最も心地よい音かも知れませんが、他の人には不快かも知れません。そして不快な音要素が決まっている人は、むしろその音要素が低い評価のものを選ぶとより心地よく音楽を楽しめると思います。
このように、当ブログでは原音忠実(リファレンスサウンド)からの距離を提示することで効率的にあなたの好みに合ったオーディオ機器を発見できるように工夫しています。
評価が高ければ高いだけ良い評価値というのは「原音忠実度」「クリア感」「おすすめ度」で、とくに「原音忠実度」+「クリア感」がオーディオ製品としての単純な優秀性を表します。
「原音忠実再生」についての参考動画:創造の館「いい音とは何か」
※以下のリンク先はpdfです。
低域(原音忠実度:C+/臨場感:B-/深さ:B+/重み:A/太さ:A/存在感:A-)
低域は少しリラックスして聞こえます。重みと深さのある低域で、全体印象は安定的です。
ドラムはかなり太さがあり、どっしりと目立ちますし、エレキベースの幅も少し広く聞こえます。ややブーミーなところがあり、熱気があってライブ感がありますが、エレキベースとドラムキックの描き分けは少しあいまいで、人によってはもっさりした感じがあると思われます。中域へのつながりもよく、厚みもしっかりしているので、ボリューム感がありますが、篭もり感を気にする人には少し苦手に思えるでしょう。
中域(原音忠実度:B-/厚み:B+/明るさ:B-/硬さ:B-/存在感:B-)
中域は全体の中では凹んでいますが、マージンは少し広く、ボーカルが聞こえづらいということはそれほどありません。一般にこのイヤホンのグルーヴの中心は中域近くに存在するので中域へのフォーカス感があります。
中域は低域方向で少し埋没感があり、ボーカルは最前列ではありません。曲によって空間がややもやもやして聞こえる場合があります。中域は少し暗い雰囲気でぼんやりして透明感に欠ける印象があるかも知れません。中域単独領域での構造はウォームで安定感があります。それほどみずみずしさが感じられません。奥行きは少し強調されて聞こえます。
高域(原音忠実度:C+/艶やかさ:B+/鋭さ:B-/脆さ:B+/荒さ:B-/繊細さ:B/存在感:B)
高域は自然に近い派手さの色気とマイクロディテールの強調があります。
高域は全体的に自然な質感を意識していますが、輝度は高く、マイクロディテールは少し強調されており、繊細さだけは少し強く思えます。全体印象は少し暗いので、高域がうるさくなることはほとんどありません。少し音の輪郭が硬いような気がしますが、艶やかさのレベルは自然に近く、アコースティックギターや金管の質感は自然に近く思えます。
グルーヴ/音場/クリア感(グルーヴの中心:中域~中高域/音場:B+/クリア感:B)
※一般にグルーヴの最も大きいところが最も活き活きと聞こえるので、音楽の中心になります。グルーヴの中心範囲の大きさは変動的です。グルーヴの中心は個人の音楽の好みを決定し、音響機器選択のヒントになります。音響機器のグルーヴの中心が個人の好みと離れている場合、むしろその不自然さが強調され、その音響機器を楽しくないと感じる可能性が高いです。音場の評価はBが自然な広さです。クリア感の評価は全高調波歪の測定値を参照して決めています。
このイヤホンのグルーヴの中心は一般に中域~中高域に存在すると思われます。
音場は奥行きが強調されています。高さ、深さ、幅はほぼナチュラルだと思います。
音質総評(原音忠実度:B-/おすすめ度:A/個人的な好み:S-)
ビクタースタジオチューニングだという触れ込みですが、実際全体の音場感や音像印象はわりとHA-MX100Vに近い方向性が感じられます。しかしHA-MX100Vがより中域を重視していたのに比べて、こちらは中域は少し引っ込んでいます。中域から中高域にかけてはグルーヴが強調されており、クラシックを聴くと楽器音は奥行きを出しながら、ゆらぐようなダイナミズムを感じさせてくれます。雄大な印象を受けるでしょう。
個人的な好みの点では、とても好きなサウンドです。適度な静寂感と中域でのグルーヴダイナミズムの強調、全体的に自然な質感を意識したピーク感の少ないチューニングと、わりと万能系に楽しめる気がします。
音質的な特徴
美点
- 重厚感がある
- 静寂感がある
- 自然な質感
- 聞き疲れしにくい音
- ボリューム感がある
- 中域への適切なフォーカス
- グルーヴ感に優れた中域表現
欠点
- 音像が少し暗い
- もっさりしやすい
- 輝度が少し高く、自然な雰囲気を損なう可能性がある
音楽鑑賞
angela「ANGEL」
重厚でエネルギッシュな曲です。
このイヤホンはこの曲の重厚感を少し増し、静寂感はやや高めつつ、グルーヴは増して聴かせるので、自然な色気の中高域が少し引き立てられて聞こえる感じがあります。ダイナミズムは増しているので音楽全体に少し躍動感が出ていますが、質感はわりと自然なので不自然な演出感みたいなものはあまり感じません。マイクロディテールの強調によって、わずかに高域がガシャガシャしている印象を受けますが、それも目立つ感じではないので、耳に心地よいアクセントと感じる人も多いでしょう。
すぎやまこういち、ロンドン・フィル・ハーモニー管弦楽団「Love Song 探して」
中域のグルーヴの良い感じはこういう曲を少しウキウキと弾ませて聴かせてくれます。全体的に躍動感が少し増していますが、静寂感と重厚感があるので、完全に浮かれきるというよりは、秘めた恋心に人知れず胸ときめかせているような密やかな味わいがあって、この曲の雰囲気に合っている気がします。全体としてオーケストラらしい重厚感は失われていませんし、質感はかなり自然です。
Rasmus Faber「Rise [Vocal Version]」
楽しいグルーヴ感と、少しリラックスした安定感のある低域によって、この曲の楽しい中域が思う存分味わえる気がします。その中域はわずかに暗いので、透明感が足りない気もしますが、聴き心地の点では安定感があります。若干もっさり感が出ている気がしますが、個人的には少し厚みが強いくらいの方が音が優しい感じで好きです。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。使用イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズで、コーデックはaptXです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
Victor HA-FX100Tは適度な重厚感と静寂感、グル-ヴ感とバランス感覚の良さを発揮する完全ワイヤレスイヤホンで、安定した聴き心地を提供します。スペック的には1万円台の機種として標準レベルはクリアしていますが、アクティブノイズキャンセリングは搭載されていません。また通信品質はおそらく良好だと思われますが、ときどき通信乱れがあります。しかし、デザインや使い心地なども含め、総合的にこの価格帯ではわりと魅力的な選択肢だと思います。
Victor HA-FX100T 完全ワイヤレスイヤホン 本体質量4.5g小型軽量ボディ 最大28時間再生 生活防水仕様 Bluetooth Ver5.1対応
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