世界経済の中での中国の存在感は日増しに大きくなっていますが、オーディオ業界でもその状況は変わりません。音響技術の上でも、ビルドクオリティの面でも、サウンドチューンにおいても中国ブランドは世界中で支持を集め始めており、先進国のオーディオブランドを追い落とす勢いを示しつつあります。
グローバルマーケットの拡大により、国境の障壁は低くなり、こうした中国製品に比較的簡単に手が届くようになったこともその背景にあります。amazonなどを通じて国内の代理店を通さなくても、中国製品を簡単に買うことができるようになったのです。
さらに中国ブランドの新しい点は、開かれたネットを通じてオーディオコミュニティから直接情報を入手するとともに、オーディオコミュニティに積極的に情報を開示し、既存の商業メディアに頼る閉鎖的なオーディオブランドとは異なる手法で急速に進歩しました。
中国のオーディオブランドの多くは、急速に広がったグローバルネット社会とグローバルマーケットの申し子です。
もちろん最大の要因は中国が世界の工場であり、オーディオメーカーも軒並み生産拠点を中国に設けていたことです。2000年代後半以降、こうしたオーディオメーカーで経験を積んだ技術者や下請けのOEM/ODMメーカーが独立し、前述のグローバルな商流を利用して世界中にオーディオ製品を出荷するようになりました。中国のオーディオ業界は受注型の状況から自立し、自ら先頭に立って製品を提案するようになったのです。
さらに、中国独特の高度な水平分業はこうしたイノベーション型社会への移行を促す推進力ともなっており、深圳は急速に生産型都市から開発型都市へと変貌しています。オーディオの世界でも中国深圳が世界的な開発の中心地になりつつあるのです。
中国のオーディオ業界の発展は技術蓄積と生産力、そして販売網とマーケットというオーディオ(に限らず工業生産全般)に必要な全てが整っていたために、今から振り返れば、起こるべくして起こった出来事と言えるでしょう。
この記事では音響技術の世界最先端を走り始めている最新の中華イヤホンの中から、2021年10月時点でオーディオマニアの間で評価がかなり高く、聴き応えがあると思われる製品を紹介します。
Moondrop Quarks
わずか2,000円程度で買えるドラムタイプのかわいいイヤホン「Moondrop Quarks」はしかし、丁寧なチューニングでなめらかかつ自然なサウンドを実現しています。6mm径のドライバーの振動板にはポリマー素材を用い、プレミアムレベルのネオジム磁石で構成された外部磁気構造、CCAWボイスコイルなど、低価格でも最高のパフォーマンスが実現できるよう最善のビルドが施されています。
MoondropはこのイヤホンのためにHRTFを参考にして細やかな調整を行い、広い音場と高解像度の明瞭さを実現しつつ、自然でナチュラルなサウンドが実現されるようチューニングに苦心を重ねました。とくに力を入れたのは高域の制振で、不要なリンギングを極力排除することで自然な倍音表現をもたらす、なめらかな周波数応答を実現しています。
- ボーカルが美しい
- 自然でなめらかな高域の抜け
- 自然な倍音表現
Moondrop Quarksについての記事
TRN VX Pro
TRNは今年、そのイヤホンラインナップで最も人気のあるモデルのひとつである「TRN VX」を再調整してリリースしました。人気があった軽量で頑丈な、高精度のCNC加工された航空宇宙グレードのアルミニウムシェルはそのままに、デザインとサウンドをより洗練した上位モデル「TRN VX Pro」をリリースしました。
一般に多くのドライバーを搭載するほど音の表現の幅は広がりますが、その間のバランスを取り、一体的な音響として仕上げるのは困難を伴います。しかし、TRNは1DD+8BAという驚異的な数のドライバーをコンパクトな筐体の中にうまく収めることに成功し、しかもサウンドの統一感を損なうことなく、流麗でダイナミックなサウンドを実現しました。やや高域で派手さが出る華やかで繊細さのあるサウンドは、音楽の細部をきらびやかに浮き上がらせ、緻密で精細感のあるディテールと、抜けが良く広く感じられる中域を実現しています。
- 繊細できめ細やかな高域
- ややすっきりとした、広く聞こえる中域
- 軽量でつけ心地が良い
TRN VX Proについての記事
- 人気のVXシリーズから待望の第2弾「TRN VX Pro」リリース - audio-sound @ hatena
- 中華イヤホン TRN VX Pro レビュー - audio-sound@premium
TForce Yuan Li
新進気鋭のブランド「TForce」の最初の作品「Yuan Li」は徹底的な市場調査とオーディオファンの助言によって練られたサウンドカーブにより、音楽の明瞭性と聞き心地の良さを高度にブレンドし、実現した優れたイヤホンです。中域で高い透明度を維持しつつ、長時間のリスニングでも耳に疲れを感じないよう、ウォームでマイルドな聴き心地にチューニングされています。
限られた予算の中で最高の製品を求めるオーディオファンのために、Yuan Liは厳選した素材とビルドを実現しており、シンプルでありながらエレガントな完成度の高い外観と、オーディオファンの多くから称賛を受けたサウンドを実現しています。そのサウンドに派手さはありませんが、バランスに優れ、聞きこむほど耳に馴染むような自然な音のつながりと質感を実現しています。
- ウォームで聞き心地が良い
- 中域の透明度が高い
- クリア感が高く立体的なサウンド
TForce Yuan Liについての記事
- シングルダイナミックIEMの帝王「Tforce Yuan Li(李淵)」 - audio-sound @ hatena
- 中華イヤホン TForce Yuan Li レビュー - audio-sound@premium
- TForce Yuan Li レビュー - audio-sound@premium
- TForce Yuan Liの海外レビューまとめ - audio-sound@premium
QOA Adonis
QOA Adonisは片側2基のバランスド・アーマチュアドライバーと1基のダイナミックドライバーを搭載するQOAのミドルレンジモデルです。
日本の人気シンガー「May'n」がサウンドと外観のデザインに関わったコラボレーションモデルでもあり、一貫して女性の感性を大切にしてきたQOAらしい製品づくりがされています。
そのサウンドはウォームニュートラルといえるバランスの良いサウンドで、これまでのQOAイヤホンは必ずしも得意としていなかったスピード感のある曲にも対応できるチューニングになっています。トップレベルの歌い手からのフィードバックがQOAに新たな感覚を吹き込み、Adonisは世界的なヒット商品となっています。
- 高級感のあるデザイン
- ウォームでボーカルベースでありながら、繊細な楽器のスピード感やアタック感も表現できる
- ボーカルものからロックまで幅広く対応できる万能系
QOA Adonisについての記事
- 【HiFiGOニュース】最新のトリプルドライバー中華イヤホン「Queen Of Audio Adonis」がリリースされました - audio-sound @ hatena
- QOA Adonis:開封&クイックレビュー「見事なまでにスムーズ!」 - audio-sound @ hatena
- インプレッション|DUNU EST112/FiiO FD5/Tanchjim Darling/Kinera Norn/QOA Adonis - audio-sound @ hatena
7Hz Timeless
7Hz Timelessは14.2mmの平面磁気ドライバーと超薄型の振動板を搭載し、強力な両面N52ネオジム磁気アーキテクチャを採用しています。またCNC加工されたアルミニウム製のイヤーシェルを採用し、美しい外観にまとめあげられています。
斬新なサーキュラードーム形状の外観とプラナーマグネットドライバーを採用したTimelessは、パワフルな低音、自然なボーカル、繊細な高音域のレスポンスなど、豊かで洗練されたトーンを提供します。
そのサウンドはまさに平面駆動型のサウンドの極致と言えるもので、中域を豊かに聴かせつつ、超高域までなめらかに伸びている空気感のある音場表現を実現しています。ホログラフィックなイメージングと、楽器のレイヤリング、ディテール、トーンの表現を含む優れたダイナミクスを備えた7Hz Timelessは、$300以下の価格帯で卓越したパフォーマンスを発揮し、多くのオーディオマニアを現在進行系で唸らせています。
- 透明感のある中域
- なめらかで伸びやかなサウンド
- 開放的な音場
7Hz Timelessについての記事
- 7Hz Timeless レビュー - audio-sound@premium
- 最新の平面駆動型IEM「7Hz Timeless」の魅力はサウンドだけではない。外観も美しい - audio-sound @ hatena
DUNU Falcon Pro
DUNU ECLIPSEダイナミック・ドライバー・テクノロジーは、これまでDUNU LunaやDUNU Zenシリーズのようなフラッグシップグレードのものに限られていました。しかし、DUNUはこの評判の良い技術を低価格機種に導入し、古典的な人気モデルであるFalcon-C 隼に再び大空を舞う力を与え、生まれ変わらせました。
DUNU Falcon Proは、アモルファスダイヤモンドライクドームと完全に独立したサスペンションサラウンドを備えた10mm ECLIPSEダイナミックドライバーを搭載しています。このドライバーは、1.6T以上の磁束を発生させる高度な磁気構造を採用しています。パワフルな低音域と美しいボーカルで、さまざまなジャンルの音楽を豊かにする没入型の体験を提供するようにチューニングされています。
- 優れたディテールとマイクロダイナミズム
- 優れたバランス、交換可能なチューニングノズルにより広がるサウンドの幅
- 美しく質の高い外観
DUNU Falcon Proについての記事
- この価格では「ありえない音と品質」。$200台で買える最高品質を目指したIEM「DUNU FALCON PRO」リリース - audio-sound @ hatena
- TECHPOWERUP、「DUNU FALCON PRO」を称賛 - audio-sound @ hatena
- DUNU Falcon Pro:DUNU最新のECLIPSEダイナミック・ドライバーIEMをお求めやすい価格で提供 - audio-sound @ hatena
See Audio Bravery
新しいプロジェクトのチューニングや最終的な外観の決定にコミュニティ全体を取り込むブランドを見るのは非常に珍しいことですが、See Audioは最新のSee Audio Braveryでまさにそれを行いました。
彼らはインターネット上でいくつかの投票を行い、コミュニティにBraveryの最終的な外観と最終的なチューニングを選ばせました。実売価格$279のBraveryには、クアッド構成でバランスド・アーマチュア・ドライバーが搭載されています。このペアは、スムーズなチューニング、高い技術的ディテール、機敏な低域レスポンス、そして当然ながら豊富なアクセサリーで、素晴らしいリスニング体験を提供します。
- スムーズで飽きのこない表現
- 優れたディテール
- 高速で正確な低音域のレスポンス
- 豊かなボーカル表現
See Audio Braveryについての記事
- 人気ブランドがオーディオコミュニティとともに作り上げたマルチBA IEM「See Audio Bravery」 - audio-sound @ hatena
- 中華イヤホン SeeAudio Bravery ファーストインプレッション - audio-sound @ hatena
FiiO FD7
FiiO FD7は、12mmの大型ダイナミック・ドライバー・ユニットとピュア・ベリリウム・ダイアフラム・コイルを搭載し、高精細なサウンドを実現する究極のパフォーマンスを発揮します。
外観的にはブラックとゴールドの組み合わせによる独自の新色処理が施されており、非常に美麗です。FD7は、交換可能な3つのサウンドチューブ、セミオープンバックアコースティックデザイン、フロントアコースティックプリズムを採用し、フラッグシップグレードの体験をユーザーに提供します。FiiOは、FD7と組み合わせるために高純度の単結晶純銀ケーブルを設計し、付属しています。
FiiOのサウンドチューニングはここ最近とくに高く評価されるようになってきており、FD7も多くのレビュアーから好評を持って迎えられています。
- 機敏で応答の良い低域とスムーズな高域
- 豊かな中域
- ハイエンドにふさわしい魅力的なビルドとパッケージ
FiiO FD7についての記事
- FiiO、最新のピュアベリリウム・シングルダイナミック・フラッグシップ「FiiO FD7」を発表 - audio-sound @ hatena
- FiiO 14周年記念モデル「FiiO FDX」 - audio-sound @ hatena
- 「FiiO FD7」国内リリース!限定版「FiiO FDX」も同時発売 - audio-sound @ hatena
ThieAudio Monarch
Thieaudioは業界最高のオーディオ製品を実現するために、最高のエンジニアチームを集めて、オーディオファンと専門家の両方に革新的なオーディオ製品を提供するためのクリエイティブなプラットフォームとして設立された意欲的なブランドです。プロジェクトごとに、製品の設計、エンジニアリング、製造を監督するために、その分野で最も革新的で有名なエンジニアを厳選しています。
このプロジェクトのフラッグシップIEMとして生み出されたMonarchは多くのオーディオマニアの度肝を抜いたレジェンドモデルです。
その名の通り、IEMの君主として君臨することを目指したMonarchは、最新技術である静電型ドライバーを2基搭載し、従来技術のバランスド・アーマチュアドライバーとダイナミックドライバーに統合しました。そのサウンドは聴感上のニュートラルを意識し、高い水準でスタジオレコーディングを詳細にモニタリングできるように設計されています。
- 繊細で伸びやかな高域
- 詳細で立体的な中域
- 良質なスタジオチューニング
【関連記事】