去る11月2日、3日、4日の3日間に秋葉原&新宿に連泊して、いろいろ買い物してきました。しかしただ買い物するだけではつまらない、せっかく人口密集地に行くのでワイヤレスオーディオの通信性能を試そうではないかと選り抜きの製品をかき集めて持って行き、路上でテストを敢行してきました。この記事ではその結果をレポートします。
【今回持っていった製品】
音源機器(発信元)
1. 完全ワイヤレスイヤホン
- JVC HA-XC70BT
- BOSE SoundSport Free
- Lesoom S1
- HAVIT G1
- CANAVIS J29
- Qitian Touch Two V5.0
2. ワイヤレスイヤホン
- The House of Marley SMILE JAMAICA WIRELESS
- KSCAT BC05(JVC HA-FX1100 カスタム)
3. Bluetoothオーディオレシーバー
- RADSONE EarStudio ES100
- audio-technica AT-PHA55BT
ワイヤレスイヤホンに「KSCAT BC05(JVC HA-FX1100 カスタム)」とありますが、これはKSCAT BC05の着脱可能なワイヤレスレシーバーをJVC HA-FX1100のハウジングに接続したもの。つまり実質的にKSCAT BC05の通信性能テスト。
BC05のレシーバーはシュア掛けタイプ。おかげでコードが邪魔にならず、装着感はかなりいいです。通信性能は日常使用なら問題なく、音質的にはドライバーはHA-FX1100なので、悪くありませんが、EarStudio ES100など高品質レシーバー使用時の音質には劣りますね。
【完全ワイヤレスイヤホンの通信性能】
率直に言って、今回テストした機種はどれも、完全に安定した通信品質を確保できませんでした。秋葉原や新宿の街中を徒歩移動時にはどれも多かれ少なかれブツブツ通信は途切れましたし、駅構内などのより密集性の高いところでは使い物になりませんでした。ただ通勤ラッシュ時ではない80%くらいの乗車率の電車内では駅での出入りの時を除いて安定動作しましたし、飲食店内などでの利用も安定していました。一方で人通りが少なくても、移動しながらの利用は不安定なところが見られました。
後述するワイヤレスイヤホンやワイヤレスレシーバーに比べても通信安定性は低いので、まだまだ完全ワイヤレスイヤホンは都心部で快適に使えるほど成熟していないというのが実情なのでしょう。
JVC HA-XC70BT
JVC HA-XC70BTは、今回の機種の中では比較的通信が安定していたように思います。それでも街中の移動時にブツブツ切れることはありましたが、電車内や店舗での使用は安定。
BOSE SoundSport Free
今回のテスト製品の中ではスポーツ向けを謳っていることもあり、期待は高かったのですが、結果から言うと少し微妙。歩行時は片耳だけ途切れることも多く、数回完全に通信が途切れてプレーヤーと切断されました。切断されると、自動接続で復帰できる場合もありますが、プレーヤー側で再接続してやらないといけなくなる場合もあるので面倒です。音質は最高レベルの満足度で人気が高い機種ですが、通信品質はそれほど実力が高いわけではないようです。
Lesoom S1
音質と装着感が好みで日常生活で使用頻度が高く、通信品質の安定性はそこそこ確認していたので期待していましたが、街中はだめですね。電車内などでは稀に途切れる程度で不便は感じませんでしたが、新宿駅構内に入るとブツブツ。街中歩行時も途切れ途切れで全くいいところなしでした。人口密集地で使用できるほどの通信品質はありません。
HAVIT G1
こちらはネット上で評判の良い機種です。音質は良いのですが、ハウジングの形状が私の耳には合わないのか、装着性はあまりよくないので、それほど使ってません。通信品質的にはS1とあまり変わらないですね。電車内や飲食店内のようにあまり動かない場面では稀に途切れる程度で安定してますけど、新宿駅構内、秋葉原の街路歩行時などの人の移動が多い場所ではほぼ使い物になりません。
CANAVIS J29
音質が気に入っており、装着感も良いので最近よく使っている機種です。こちらも近所のスーパーに買い物に行く程度の日常使用では安定した通信品質なので期待していましたが、やはり都心部では使い物になりません。新宿駅構内、秋葉原の往来などではブツブツ。
Qitian Touch Two V5.0
人気機種のバージョンアップ版です。こちらも日常使用ではほぼ通信が途切れることのない優秀な機種ですが、やはり都心部の往来では厳しいですね。繰り返しになりますが、飲食店など建物内に入ったり、電車内のような移動の少ない箇所では問題ありません。しかし、街中を歩くと途端にブツブツ。人通りの量からいえば、決して負けているとは思えない町田や八王子駅前付近を歩いていても、ここまではブツブツしないので、やはり都心部は電波状況が混雑しているのでしょう。
【ワイヤレスイヤホンの通信性能】
正直今回のテストでは完全ワイヤレスイヤホンとレシーバーのテストが主目的でしたので、左右分離型ではないワイヤレスモデルのイヤホンは比較対象として参考にするつもりでした。しかし結果的には今回持参した完全ワイヤレスイヤホンはおしなべて通信品質で満足できるものはなかったので、都心部では最低限ワイヤレスイヤホンを使用することを推奨します。
The House of Marley SMILE JAMAICA WIRELESS
音質が気に入っていて、寝ホンにも使っているネックバンド型のワイヤレスイヤホンです。完全ワイヤレスイヤホンに比べるとかなり通信安定性は高く、完全ワイヤレスで一番健闘していたJVC HA-XC70BT以上に安定しています。往来の移動時にはブツブツ切れますが、完全に切断されることはほぼありません。最低限これくらいの使い勝手でないと快適に音楽は聴けませんね。
KSCAT BC05(JVC HA-FX1100 カスタム)
標準付属のイヤホン部分ではなく、JVC HA-FX1100を接続してテストしました。シュア掛けタイプで固定感もよく、通信品質も結構安定しています。やはり街中では途切れることも多いですが、完全ワイヤレスイヤホンよりは断然安定しています。
【Bluetoothオーディオレシーバーの通信性能】
まだ個別レビュー記事は書いてないのですが、今回のテストの主目的の1つは、人気の高いオーディオレシーバーのレビュー記事を書くため、その通信品質を確認することにありました。レシーバーとプレーヤーの位置関係をいろいろ変えてテストした結果、レシーバーの位置関係については以下のことがわかりましたので紹介します。
- Tシャツの首回りや襟にクリップ止めしたり、胸ポケットにレシーバーを入れるのはあまりよくない。通信があまり安定しない。
- ズボンのポケットか上着の腹ポケットが比較的安定する。
- プレーヤーもポケットに入れた方が基本的には安定するが、手持ち鞄やバックパックの内側ポケットなどに入れてもよい。プレーヤーがズボンや上着の腹ポケットにあるときは、それでかなり安定した。
少なくとも今回のテストでは、オーディオレシーバーの通信性能が一番安定していました。顔に近い胸ポケットよりズボンポケットなど低い位置のほうが通信が安定するので、おそらく都心部では地面に近いほうが通信の混雑が少ないのではないかと思います。なのでレシーバーが一番安定するのでしょう。
レシーバーには上のKSCAT BC05のように、リケーブル対応イヤホンをワイヤレスイヤホン化するタイプがありますが、通信品質の安定性を考えると、個人的には低い位置に持ってこれるポータブルボックスタイプの機種をオススメします。
RADSONE EarStudio ES100
EarStudio ES100は、AAC/aptX/aptX HD/LDACという高品質ワイヤレスオーディオコーデック対応を謳い、さらにDACを2つ搭載してバランス出力可能という高い使い勝手と音質を誇る人気機種です。テストした結果からは実際はLDAC対応ではない(※)ようですが、aptX HDにはしっかり対応しており、充電しながらも使用可能と、ほぼあらゆる点で次に紹介するaudio-technica AT-PHA55BTに勝っています。音質的にも AT-PHA55BTよりも解像度が明らかに高く、なめらかな音質です。
通信安定性は高く、今回のテストでは人の密集する都心部の歩行時や駅構内でも、時々ブツ切れするものの、かなり安定していました。
※その後11/8にリリースされたファームウェア ver. 2.0.1に更新したところ、正常にLDAC接続された。
audio-technica AT-PHA55BT
audio-technica AT-PHA55BTも人気が高い機種です。こちらはAAC/aptX/LDACに対応しています。ES100と違い、LDAC対応はしっかり確認できましたので、こだわる人ならLDAC対応プレーヤーにはAT-PHA55BTを使うと良いかもしれません。個人的には、DACはES100と比べて少し表現が無味乾燥でやや見劣りし、またLDAC対応プレーヤーはSONY製ばかりですが、現行のNW-A55もNW-ZX300もaptX HDに対応しているので、ワイヤレス通信音質的にもLDACが使えないという理由だけでは、ES100でもほとんど遜色はありません。充電時には音楽再生が出来ないところも残念です。
美点としては、音質をダイナミック向け(MODE A)とバランスドアーマチュア向け(MODE B)の2種類の出力抵抗(インピーダンス)切り替えが出来、調整できます。ただJVC HA-FX1100やKlipsch X11iなど手持ちの主要イヤホンで使ってみた感じ、ダイナミック向け(MODE A)は低音ブーストした感じでややウォームに、バランスドアーマチュア向け(MODE B)は音が少し輪郭良く感じられるので、個人的にはドライバーの種類に関係なく、音が好みなMODE Bを常用してます。
通信安定性はやはり相対的に高いです。ズボンのポケットに入れれば、都心部の街中でもあまり途切れる場面がなく、比較的安定して使えました。
【結論】
人口密集地では完全ワイヤレスイヤホンはほとんど使い物になりません。ワイヤレスイヤホンでも途切れる場面は多く、オーディオレシーバーを使用するのが一番良いようです。ただしオーディオレシーバーでも胸ポケットや首回りなど上の方に持ってくると、通信安定性は落ちます。使用するならズボンポケットが良いようです。