final E5000 ハイレゾ・リケーブル対応カナル型イヤホン
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「耳への収まりが良いコンパクトボディ」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「リケーブルはmmcx」
- 【3】音質「濃厚で充実感のある音楽空間を作る。香りが漂ってくるかのような厚みのある暖かで豊かな音」
- 【4】官能性「スカスカしたところのない、充実感と重量感がありながら、音場は広いという秀逸バランス。アコースティックな曲に、とにかく浸れる」
- 【5】総評「finalらしい濃厚さのあるサウンド」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「耳への収まりが良いコンパクトボディ」
おすすめ度*1 |
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ASIN |
ファイナルらしいコンパクトボディになっており、耳への収まりは良好。開放的なハウジングデザインなので、音漏れは少し目立ちやすいかもしれないので音量注意。遮音性は意外と高いので、環境音は結構カットしてくれる。
【2】外観・インターフェース・付属品「リケーブルはmmcx」
付属品はイヤーピースの替え、キャリーケース。mmcxリケーブル可能。標準ケーブルにタッチノイズはほとんどない。
【3】音質「濃厚で充実感のある音楽空間を作る。香りが漂ってくるかのような厚みのある暖かで豊かな音」
音質はとにかく味のある濃厚さに優れている。豊穣といえる、色味がしっかり載るかなり分厚い中低域が音場を支配するが、距離感もしっかり取られていて、濃厚なのに圧迫感がない。かなりなめらかでコクがある、まろやかさを感じる音で濃密に空間を演出する。ボーカルはそうした濃厚な楽器に包まれて、少し奥から一体的に聞こえてくるバランスになっており、高級オーディオっぽい定位感になっている。
高域はつややかだが、光沢は目立ちすぎないバランスになっていて、落ち着いているため、どちらかといえば、中低域の方に意識が向きやすい印象を受ける。音響設計としてはやはりムード感が大事になってくる、JAZZや室内楽に向く感じではなかろうか。
同じような価格帯でライバルになり得るJVC HA-FX1100に比べると、重低域の地熱感からくる、全体の熱量感に差があり、パワフルで熱気に満ちたHA-FX1100の音楽空間に比べると、より大人びたムード感のある、しっとりした感じの味わいで聴くことができる。ジャズホールの熱気が感じられるのがHA-FX1100の音とすれば、こちらはバーや高級レストランでムード感に浸りながら音楽を聴く感じに近い。
[高音]:つややかでなめらかな感じがあり、上品な印象を受ける音。発色を強く出さず、中低域との連携を重視した、やや地味な印象を受ける(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:豊かな厚みがしっかり出て充実感を感じさせる。恐るべきはピアノ。つややかな光沢を出しつつも、キンキンしないバランスで地平線付近に豊かな音を作る深みがある。弦楽も厚みを持って音場の輪郭を遠くにしっかり描き、濃密な音場が広く充実していることを教えてくれる。
[低音]:100hz~40hzまで素直な減衰をする鈍い鳴り方の振動。30hzでだいぶ沈む感じ。厚く深掘り感がありながら、熱気を若干抑えた穏やかな低域を作る。輪郭を強調しすぎない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:中低域が濃厚なバランスになっており、高域の明るい発色を楽しむというよりは、中低域の色の濃さを味わう感じになる。そのため音場は全体的に地平線付近に音が集まりやすく、パノラマ感のある形で濃密に音が包み込んでくる感じで聞こえる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:シンバルは少し太く音を鳴らし、ドライな後味で引ける。ドラムも膨張感が感じられ、ボボンボボンという音で聞こえる。表面の反発力は抑えられているため、ロック向きの音響ではなく、どちらかといえばウォームな空気感と重量感を出すふくよかな音である(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは楽器に包まれて聞こえてくるので、一体感がある。ふくよかさは出るが、キラキラ感は少し控えめで自然な感じの声色である。個人的にこのバランスだと女声ボーカルで少し暗い印象を受けるかと思ったが、発色は悪くなく、意外と透明感も出て、充分な明るさが出る秀逸なバランス。これはちょっとすごい。
【4】官能性「スカスカしたところのない、充実感と重量感がありながら、音場は広いという秀逸バランス。アコースティックな曲に、とにかく浸れる」
鹿乃「それがあなたの幸せとしても acoustic cover.」
このイヤホンで聴く、この曲は個人的に大当たり。ピアノとボーカルのみという弾き語りに近いバランスでシンプルな音響構造になっている曲だが、このイヤホンで聴くと、音場全体が充実して、とても満足感を得られる。濃厚で色味の変化が多く、表情豊かで広がりも厚みも素晴らしいピアノがとにかく美しくて、しかも楽しい。上では透けるような清明感、下ではググッと落とし込む鳴動感、間には躍動感とともに広がる音の生命感があり、音の力点の移動が豊かな音の中で見えてくるような錯覚を覚えるほど。そしてふっくらと甘味を出しながら、透明感のあるボーカルがピアノの色味を素直に受け入れながら響いてくる一体感が素晴らしい。
UVERWorld「CORE PRIDE」
率直に言ってロックはきつそう。ドラムの重量感は充分なんだけど、まとまりが悪く機敏さに欠けるので、リズムがもっさりした感じで聞こえてしまいがちになる。爆発力が足りず、妙にボワボワした熱湯風呂になっており、シンバルの色味もシャープネスが足りず、少し地味で鈍重な感じになっているので、発色が悪く感じられてしまう。ボーカルも楽器と一体性が高いので、そうした音にひっぱられて、のびやかさが足りず、もさつくところがあるかな。このイヤホンにスピード感は禁句かも知れない。
高田梢枝「秘密基地」
この曲くらいのスピード感だと充実した感じで聴ける印象。シンバルがすっごく活き活きしているのが、すっごくいい。イヤホンによってはこの曲のシンバルはだいぶ薄味で出ることもあるんだけど、このイヤホンは「ツッ」とか「チッ」とかいう音がかなり濃い感じでしっかり聞こえるので、叙情感が高めに聞こえます。ベースは深掘りされるけど、輪郭を強調しないので、ピアノや弦楽をウォームに支えてほっこりした熱量を加えてくれるし、それも熱すぎないぬるい感じで、ノスタルジックなこの曲にちょうどいい温度感に思うし、中高域と分離してなくて、連携感もある。何よりボーカルね。ハスキーなところを出しながらも、ふっくら濃厚に中盤柔らかな聴き心地があるから、ギスギス感全くなくスムーズに伸びて、しかも伸びすぎずに空間に溶け込む。息感にも温もりがある。
TVアニメ「やがて君になる」ED主題歌「hectopascal」
再び苦手かな~って曲を挙げると、たとえばこれ。高域は発色良くなくて正直暗いから、この曲の楽しい緻密感はあまり感じられない。デジタル音の光沢感や鮮明さを出すのは苦手っぽい。あと低域も躍動感に欠けて、ぬたーっと塗り固めたような粘土質の感じがあるんで、いまいち楽しい気分になれない。
TVアニメ「 やがて君になる 」エンディングテーマ「 hectopascal 」
Jess Glynne「Ain't Got Far To Go」
はーい。私の大好きなJess GlynneのR&Bを聴くなら、かなりイイ感じだよ。まず重量感がしっかりありながら、優しくボンと膨らむ低域音がウォームで心地よい。熱すぎない、ほどよい地熱感も丁寧に出してくれる。広い音場を弦楽が太めに囲むので、圧迫感がないのにスカスカしたところは全くなく、充実している。その弦楽も厚みがあってエネルギッシュ。ボーカルと弦楽は低域との連携が良く、低域の熱気を空気感として纏いながら聞こえてくる。すっげー浸れる。これ聴いてたら、電車内で思わずニヤニヤしちゃって、目を開けたら視線を感じて赤面。
eufonius「遙かな日々」
この曲だとちょっと暗かったりするかと思ったんだが、そんなことなかった。濃厚なピアノ音が豊かな音響で、曲全体に深みを出してくれるので空間に充実感がある。本来結構明るめに細く高く抜けるボーカルは、このイヤホンだともうちょっとふっくらして発色は穏やかに、ふんわりと空間に溶け込む感じで抜ける。普通はピアノラインを突き抜けて聞こえてくるような感じだと思うんだが、このイヤホンだとむしろピアノラインに乗って聞こえてくる一体感がある。ただeufoniusの曲はボーカルの尖りながら透ける感じが好きって人もいそうだから、好みを分けそうではある。
【5】総評「finalらしい濃厚さのあるサウンド」
このイヤホンは基本的にピアノ・弦楽・管楽中心で組み立てられたアコースティックなサウンドに強い印象。エレクトロ系のデジタルサウンドは発色や輪郭感が良くないところがあって、少し緻密感に劣って聞こえる。やはり得意ジャンルはバラードとか、R&Bとか、JAZZ、クラシックあたりになるのかな?
とにかく充実感のあるサウンドが凄くて、さすがfinal様って感じで空気感は最高に醸して聴かせてくれます。
final E5000 ハイレゾ・リケーブル対応カナル型イヤホン
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。