- 【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で装着感が良い」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
- 【3】音質「現状の完全ワイヤレスイヤホンでは最高レベルまで分離感を突き詰めた、高解像度系サウンド」
- 【4】官能性「ややデジタルでモニター的だが、万能感がある」
- 【5】総評「単純にAVIOTを応援したくなる」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「小型で装着感が良い」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
連続再生時間/最大再生時間 | 7h/25h |
Bluetoothバージョン | 5.0 |
対応ワイヤレスコーデック | aptX/AAC/SBC |
防水性能 |
IPX5 |
音質傾向 |
フラット、モニターライク、デジタル、清潔、バランスが良い、見通しが良い、ディテールが豊富、分離感重視、ややドライ |
イヤホンは少し出っ張り気味ですが、装着感は悪くありません。
通信チップはQCC3020。対応コーデックはaptX/AAC/SBC。店舗内テストでは通信品質全く問題ありませんでした。しかし、あまり通信の混雑していない店舗内でのテストでしたので、当てになりません。
テスト環境
今回のテストはHiby R6 ProとONKYO GRANBEATで行っています。
ピヤホン版のレビューはこちら
【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
付属品は割愛。
最近問い合わせの多い「TE-BD21f,(ピヤホン)」のイヤーピース付け替え方法です。
— ねこし (@nyanmaru_ch) September 27, 2019
苦手な方はまず裏返して軸を指で固定して、『斜めからスライドさせて』装着するのをオススメします。
☞Youtubeでも詳しく解説してます!https://t.co/LnGEV2er7f pic.twitter.com/BkHqVR75TH
【3】音質「現状の完全ワイヤレスイヤホンでは最高レベルまで分離感を突き詰めた、高解像度系サウンド」
音質はフラットか弱ドンシャリで高低感での凹凸は抑えめになっている印象です。たとえば比較的女声ボーカルに焦点を当てることの多かったこれまでのAVIOTとは異なり、中域ではより均等にディテール感を散りばめ、男声と女声のフォーカス感はほぼ対等になるよう調整されています。質感的にデジタル的な光沢感があるのも、これまでのAVIOTの主流な機種と共通していますが、より輝きを抑え、むしろシンバルやボーカルの高いところにはドライな清潔感が増しています。そのため、たとえばTE-D01dのように、眩しい高域音にボーカルが埋もれるということがなくなり、ボーカルの派手さは抑えられ、女声ボーカルはやや後退したものの、適切なフォーカス感が感じられます。
音場のデザインは明るい味付けを好むAVIOTですが、このイヤホンも明るい傾向は似ており、低域の床面の上辺は比較的高い位置でパンチを利かせ、爽快感を出します。しかし、この明るい低域は見通しが良く、その下にバスドラキック、ベースとレイヤーを丁寧に重ねてくれて、高さが把握しやすく、そのため明るいにも関わらず、深みを出すことができます。
ややぎっしりだったTE-D01dに比べ、音場も開放的になっており、横幅と高さ、奥行き感の三次元全てで向上が見られます。全体的に音の手がかりが多く、分離感だけを考えれば、現状の完全ワイヤレスイヤホンで最もディテールが詳細ということができます。高低感的にもなるべくフラット、色味もなるべくニュートラル、音場もなるべく広めとモニターライクな音を目指して作り込まれている印象を受けます。
美点
- バランスが良く見通しの良いフラットサウンド
- 男声と女声への均等なフォーカス
- レイヤー感のある見通しの良い低域
- 音場が広い
- 清潔感がある
- 風通しが良い
- 不自然な派手さがない
- 全音域に均等に散りばめられたディテール
欠点
- 音がどちらかというとデジタル
- モニター的で包容力に欠ける
- ツヤは不足気味
[高音]:AVIOT的なデジタル感のある音響で、シンセの電子音を少しキラキラさせるところがあるが、シンバルなどにはドライなシャリ感があり、ロック・EDM双方で比較的クセが少なく味わえるような万能感のある高域デザインを目指したことが窺える。とくに現代的な音楽を好むリスナーにとってこの高域は分離感も良くされて、派手さも適切に抑えられているために、解像度が高く音の聞こえが良く感じられるはずである。素直に賞賛したい。
基本的に明るく、抜けが良く、潤い感にだけは欠けるが清潔。弦楽の張りはやや弱く、金管も少し渋く乾燥してみずみずしさに欠ける感じなのが、クラシック音楽やJAZZでは好みを分けるかも知れない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は比較的フラットで均等に音の厚みとディテールが分散しているように思え、若干強調点を把握しづらい、平坦な印象を受けるところがある。バランス的には高域と低域に比べてわずかに凹んでいるようで、弱ドンシャリの印象を受けるが、基本的に前進的な把握しやすい中域で、聞こえづらい感じはない。ピアノはやや乾燥した音で、ボーカルもどちらかといえばドライになる。
[低音]:100hz~40hzまで、ブーッという厚みのある振動。30hzで沈み、20hz以下ほぼ無音。AVIOTのイヤホンは比較的高井床面を好む傾向があるように思うが、このイヤホンもご多分に漏れず、床面の上辺はやや高めに出やすく、パンチに爽快感がある。しかし、これまでのAVIOT製品と異なり、低域に薄くなったり単調になる感じがなく、そこからキック・ベースと全体として三段階のレイヤーを構成するような、高さの分かりやすい見通し感がある。そのため下に行くほど濃くなるのがわかる、深さの把握しやすい音響となっており、これまで縦軸でやや狭く出るところのあった音場デザインが改善されている。ここも好感を持った。ただしこの低域は一方で分離感を強調する、やや親しみづらいところもあるので、音楽全体の調和性を考えると、浮き上がって聞こえやすいかも知れない(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:低域と高域にわずかな強調があり、中域~中高域は少し引っ込み、弱ドンシャリ的な構造を感じる。縦軸はしっかりしているが、高さ毎にやや分離を強調するようなレイヤー感を感じるので、音楽全体の統一感には少し欠けるように思うこともあるかも知れない。一方で高低の把握はしやすく、のびやかなサウンドを定規で測るように把握しやすい感覚がある(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムスはタムやスネアがやや暗めで、表面ではドライにパツパツした革張り感を感じさせる。シンバルはその上でチリチリ火花を散らしながら、上に向かってシャリッと白味のある清潔な空気感も出し、精彩に富んでいる印象を受ける。モニター的ではあるが、面白味のある音でリスニング的にも気持ち良い。床面のパンチも強く、リズムコントロールの制動力に優れているため、少し広がりの大きいキックもスピード感で遅れる感覚がない(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:中域から中高域は比較的フラットに感じるため、ボーカルは伸びと厚みのバランスが中庸的で、若干平坦な印象を受ける。ただ男声と女声にバランス良くフォーカスが当てられ、それぞれ少し清潔な感じでクセがなくまとめられており、息感と子音にも適度な強調があって、不自然な演出感を極力排したモニター的な声色になっている。
【4】官能性「ややデジタルでモニター的だが、万能感がある」
鈴木聖美「熱くなれたら」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】パンチはよく、ポップス的な少し床面を高く強調する感じをうまく出して、低域に浮き上がりの良い快活な味を出すことができる。中高域以上にはドライな感触があり、高域まで派手なところがあまりないような、清潔な空間が広がっているため、高さも素直に把握しやすい。それでも空間が乾燥しているせいなのか、むしろシンセサイザーの音にツヤの強調があるように感じられ、適度な潤い感を出している。ギター音も手がかりが多く、この曲は派手めなので、実は意外とギターラインが埋没しやすいが、ほどよく清潔な空間を持つこのイヤホンはしっかりチャリッと輝かせながら、音を逃さず聴かせてくれる。鮮やかさとかみずみずしさは少しセーブされているので、必ずしも感動するほど凄いってわけではなかったけれども、率直に言って感心した。
City Hunter Sound Collection X-Theme Songs-
米津玄師+菅田将暉「灰色と青」
【ONKYO GRANBEATで鑑賞】男声ボーカルのボディは充分濃いが、濃すぎることはなく、息感に清涼感があるので、もっさりする感じはなく、自然な色味を持っている。この曲では低域に深みが出るので、静寂感を出しつつ、サビではドラムが入って、パンチが加わり、床面が少し高くなって、ほのかに明るくスポットが当たるような、丁寧な演出も感じられる。高域もすっきりと浮かび上がる感じがあり、見通しが良い印象を受ける。
本多俊之「Going To "Zone"」
【Hiby R6 Proで鑑賞】ピアノがあると「少し乾くのがどうかな、そこは賛否両論だ!」となると思うけど、JAZZでもあんまり鮮やかでない、ピアノのないこういう曲だと、清潔に渋い感じが出る。音場はどちらかというと明るめに感じるが、ドライな感じがあるので、金管含め音に渋みが十分のって、低域弦楽と低域木管もクリアに深みを出して音場を支えてくれる。この低域の弦楽と木管に混濁感がなく、しかもそれぞれ結構深いところまで潜るのに、浮き上がりも良くて躍動感も感じられるのが良い。量感もほどよく、うるさげに低域が前に出てこない。そして全体的にレイヤーがきれいに描画されているような、音の分離が高さを伴って感じられる感覚がある。
UVERWorld「Touch off」(TE-D01d/NT01AX/WF-1000XM3との簡単な聴き比べ付き)
【Hiby R6 Proで鑑賞】こういう比較的上から下まで音が多いようなハイファイ系の現代ロックをきれいに味わえる感じがある。ギターが最もチャリチャリギラギラと鮮やかに目立つ感じで、しっかり手がかりを感じさせつつ、金管は派手さを抑えて渋く男らしく、ボーカルはドライにホットな感じで、シンバルは少しコシを感じさせつつ清潔に、低域ではベースとドラムがきれいに分離した形で、と曲の構造を余すところなくレイヤーに振り分けて、それぞれの役どころをかっつり聞かせる感じがある。こういう曲を聴くと、なるほど解像感はすごいなと思わせてくれる。
で、この曲は結構ディテールが全音域にばらけているんでちょうどいいかと思って、手持ちの機種と音質を比較した。
まず同じAVIOTのTE-D01dだが、この曲では床面が少し高く、音場の縦軸が少し狭い。ギターが明るく目立つので、横幅的にもぎっしりする感じが出てしまう。上が明るい感じも派手めにキラキラ出てしまって、デジタル感の強い、本来の意図された曲調からすると、若干チャラい感じになっているように思う。
NUARL NT01AXはHDSSの効果か音場に明らかな奥行き感があって、少なくとも奥行きでは、TE-BD21fよりも優秀なように聞こえる。横幅も開放的だが、こちらはTE-BD21fのほうが見通しが良く広くなっている感覚がある。質感的には明らかに違いがあり、NT01AXの音には自然なみずみずしさが出て、潤い感が強く、たとえば金管は色気のある音になっている。それに比べるとTE-BD21fの音は男らしい渋みがあるが、少し華やかさに欠ける気もする。ここらへんは好みによるかも知れない。音の分離感という面では、やや低域で見通しを悪くする感じのあるNT01AXに比べると、上から下までしっかりレイヤーを構築しているのはTE-BD21fのほうだろう。
SONY WF-1000XM3に対しては、やはり音場表現でWF-1000XM3が格上で若干広く感じる。デジタル的な音作りに共通性があるが、音の質感的には大きく違い、どちらかと言えばツルッと滑らかに上から下まで音がつながる統一感のあるWF-1000XM3に比べると、TE-BD21fは極端に言うとギザギザ感を重視して出す感じがある。そのため、聞き心地という面では滑らかな感じのWF-1000XM3のほうが自然に没入できる感覚があるが、エッジ感ではTE-BD21fに軍配を上げたい。
【5】総評「単純にAVIOTを応援したくなる」
この機種、出る前も出た後も話題に尽きなかったし、不具合なんかもあったりし、なかなか聴けなくてイライラさせられたけど、なんだかんだいって「完成度高いですね、AVIOTさん」って感じでした。好みの音かどうかはともかく、少なくとも分離感とエッジ感に関しては現状で最強なんじゃないかと思います。とにかく見通しは良いし、ちょっと無愛想なほどクセがない音で、比較的万能に聴かせてくれます。
個人的にはもうちょっと媚びた音のほうが好きで、ちょっと武骨な音に感じますけど、少なくとも予想以上に完成度の高い音でした。突っ込んで言えば、NUARL NT01AXみたいなみずみずしさがないんで、色味的にちょっと淡泊で、普段聴くなら艶味が欲しいなぁって思うんですけど、これはいいですよ。好みではないですけど、素直に感心させられました。これはよい。
清潔でさわやか系の音が好きなら、結構どストライクな好みの音を出してくれるかも知れません。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。