ULTRASONE ( ウルトラゾーン ) / PRO900 i 密閉型ヘッドホン
- 基本スペック
- ULTRASONE Pro 900iの特徴
- パッケージ
- 装着サンプル
- 音質
- 音楽鑑賞
- レコーディングシグネチャー
- 録音機材
- GENS D'ARMES(ロック系)
- Sophisticated Fight(ロック系)
- TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
- 白き魔女(クラシック系)
- 小さな英雄(クラシック系)
- 淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
- FEENA(EDM系)
- The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- Sophisticated Fight(JAZZ系)
- ケノーピ火山(JAZZ系)
- 浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- QUATERA WOODS(OST系)
- 幻の大地 セルペンティナ(OST系)
- 愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
- 魔王ヴェスパー(OST系)
- 花と風のうた(JAZZ系)
- 総評
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今回取り上げる製品はULTRASONE Pro 900iです。
ULTRASONEは1990年12月に設立されたドイツのオーディオメーカーで、独自のS-Logicと呼ばれるサラウンドサウンドシミュレーションテクノロジーを使っているのが特徴です。直接音が耳に到達する従来のヘッドホンとは異なり、このS-Logicによってスピーカーの音のように拡散されて音が届くようになるとされています。
なおこのレビューはONZO様の素晴らしいサービスを利用して作成されました。感謝とともにONZO様のますますのご発展をお祈り申し上げます。
ONZO様のサービスについて興味がある方は以下をご参照下さい。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:6Hz~42kHz
- インピーダンス:40Ω
- 感度:96dB
ULTRASONE Pro 900iの特徴
ULTRASONE PROシリーズにおける密閉型トップモデル
ULTRASONE PRO 900iは、再生全帯域においてクリアなモニタリングを可能とする、PROシリーズ・リファレンスモデルの密閉型フラッグシップヘッドホンモデルです。
ULTRASONE特許技術「S-LOGIC™ Plus」テクノロジー採用
ULTRASONE Pro 900iにはULTRASONEの音響特許技術「S-LOGIC™ Plus」テクノロジーが導入されています。「S-LOGIC™ Plus」テクノロジーは「S-LOGIC™」テクノロジーをその後の音響特性研究によって得られた知見に基づいて、さらに洗練したものです。これにより、ヘッドホンでありながら、スピーカーで聴いているような自然な定位感を実現しているとされています。
ULTRASONEの特許技術S-Logic™ ナチュラル・サラウンドサウンド・システムは、ヘッドフォンでもスピーカーで聴いているような自然な音の響きと定位感を実現します。
S-Logic™の特徴は、発音源であるドライバーを鼓膜の軸上から意図的にオフセットした位置に組み込むその機構にあります。ドライバーから発した音は、そのまますぐに内耳の中に投入されず、外耳に反射します。そして、個々人が通常聴いている聴き方で脳に音が届けられます。
ですから、人間の脳は本来感じるはずのイメージどおりに音を受け取ることができ、脳への負担が軽減され、自然なかたちで音像の構築と、音の聴き取りやすさが実現するのです。 S-Logic™は、終日ヘッドフォンをつけたまま過ごすことも多いプロフェッショナルのために耳と脳への負担を抑え、長時間のリスニングであっても疲れにくいヘッドフォンを提供したい、という思いから開発された技術です。
電磁波低減技術「ULE」搭載
ULTRASONE Pro 900iには電磁波による健康被害を抑制するため、ドライバーから発生する電磁波を低減する「ULE(Ultra Low Emission)」技術が導入されています。これは潜水艦がレーダーから探知されないように開発された軍用の特殊金属「ニューメタル」を用いて電磁波を遮断し、安心してヘッドホンを利用できるようにする技術です。
強力に電磁波を誘導する性質を持つ素材を電磁波発生源と人体の 間に設置することにより、電磁波が人体に到達する前に進行方向を曲げ、結果的に最大98%の電磁波をシャットアウトするよう設計されています。
快適な装着感の追求とULTRASONEによるプレミアムデザイン
ULTRASONE Pro 900iはプロの現場環境でも快適に使えるよう、上質な外観と装着感、使いやすい取り回しの良さなどに十分配慮されて設計されています。銀色のアルミニウムハウジングに刻印された「ULTRASONE」のロゴは上品に輝き、プレミアムな雰囲気をヘッドホン全体に纏わせます。上質な合成皮革で作られたヘッドパットはソフトで快適な装着感を実現するだけでなく、汚れも目立たせません。ヘッドバンドの剛性はしっかりと頑丈に作られており、過酷な環境で長時間使用してもしっかりと形をとどめるでしょう。
イヤーカップは柔軟に回転し、片耳モニタリングスタイルでも違和感なく取り廻せます。首掛けしても負担感がなく、見た目も高級感があっておしゃれです。
PRO900iは、従来モデルのヘッドバンドの仕様を見直し、バンド全体を厚手のクッション構造とし、頭部にかかる圧を分散することで装着感を大幅に向上させました。
ヘッドパッド素材には合成皮革を採用。上質感に加え、汚れなどによる劣化も低減されます。
ロングラン・モデルとして定評のあるサウンドクオリティーはモデルチェンジの度に引き継がれ、洗練を重ねてきました。
長時間のタフな使用に耐えるヘビーデューティーな構造は、プロの現場を想定した仕上がりとなっています。
プロユースの厳格な使用感をサポートするケースと付属品
ULTRASONE Pro 900iは付属品も豊富です。パッケージにはこのヘッドホンをどこでも安全に持ち歩ける専用のヘッドホンケースが付属しています。さらにケース内部には最初から予備のイヤーパッドが1セット付属しており、万全の使い勝手が目指されています。プロユースでは現場でのイヤーパッドの損耗が激しいため、予備のイヤーパッドも持ち運びたいというニーズに応えられるよう、ケースには専用のスペースまで用意されているのです。
パッケージ
業務用ヘッドホンは比較的簡素なパッケージングであることが多いですが、ULTRASONE Pro 900iは業務用にしては豪華なパッケージに収まっています。すでに述べたように付属品も多く、ケーブルも3.5mmプラグと6.35mmプラグのものが揃っており、不足はありません。
本体のビルドクオリティは文句なく高く、柔軟な使用ができるように設計されており、アルミフレームの剛性もしっかりしています。大きいイヤーカップのせいか、少し音漏れが目立ちますが、フカフカのイヤーパッドは装着感も快適です。
装着サンプル
厚みのあるイヤーパッドは肌触りもよく快適で、遮音性も良好です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
マガジン専用コンテンツになります。
サウンドシグネチャー解説
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THD+N特性
マガジン専用コンテンツになります。
音質解説
ULTRASONE Pro 900iの音響的な特徴がその低域にあることは間違いありません。作曲用や音楽レコーディングのモニター用として考えた場合、明らかに低域は過剰に思えるでしょう。どちらかといえば、このモニターヘッドホンは映像音声用で、とくに独特の低域は明らかに映像作品のシアターでの聞こえ方の再現を目指しているように思われます。効果音が適切に響いているか、ホームシアターで聴いたときに低域に音響的インパクトが期待できるかなどを的確にモニタリングすることができます。
低域は独特の階層的構造をしており、一番聞こえにくい重低音が最も張り出し、中低域がそのすぐ後ろ、中域が少し奥で聞こえる奥行き感のあるシアタータイプの音場を持っています。低域は床鳴り感、地熱、空気感の再現に非常に優れており、しかも中低域と重低域で分離的になっているため、ヘッドホンでありながら、完全に別の重低域ウーファーを備えているかのように、シアター的な生々しさがある低域がしっかりと感じられます。音楽を聴く場合、人によってはかなりうるさい印象を受けるだろうと思いますが、映像作品を見るとその迫力に驚きます。この低域はしかも、中域とも分離的にされており、わりと存在感があるのに、中域は比較的クリアに再現されて、音楽作品のボーカルはやや埋没的ですが、映像作品のボイスは埋もれません。ライブ感の高い低域はクラブサウンドを愛する人にはとくに好ましく思われる可能性があります。
ブームに優れた迫力のある低域を持っているにも関わらず、中域はかなりクリアです。音楽作品では少し奥行きが過剰に思われるので、ボーカルは音場の消失点近くに遠く聞こえますが、遠いわりに意外とはっきりしており、しかもナチュラルです。中域はかなり前方定位的で奥行き感を重視するユーザーには広い音場がライブ会場のように思えるでしょう。
中域上部から高域はMajor Hifiも不均一性を指摘しているように、ピークが少し極端に続いており、自然な雰囲気よりはディテールが強調されています。音場は上の方で少しダイナミックに聞こえ、クラシック音楽ではバイオリンや金管が少しヒステリックに聞こえる可能性があります。音場の奥からダイナミックに伸びてくる音と、少し不自然ですがグルーヴ感をもたらす倍音の揺らぎは、ホラー作品などの映像作品の緊張感を高めます。
さらに、中域上部は前傾しているように聞こえました。4.7kHzと6kHzでブーストすると、ボーカルはミックス内で他の場合よりも少し高くなります。ただし、2 kHz、3.5 kHz、および5kHzでもカットがありました。この中域の不均一性は、シンバルと弦楽の倍音をやや不自然なトーンに感じさせますが、それらの楽器がもたらす情緒的なインパクトは依然としてうまく再現されました。
ULTRASONE Pro 900iの音場は完全にスピーカーレベルの奥行き感を実現しており、それはまるで持ち運べるホームシアターシステムのようです。ただし、その音場はクラシック音楽を聴くと、コンサートホールのリアルな臨場感というよりは、分割された複数のスピーカーシステムに囲まれたサラウンド視聴環境のようであり、独特の不統一感を感じます。しかし、それゆえにその雰囲気の再現度の高さに驚かざるを得ません。
ホームシアターを設置できないけれども、特別な設備やソフトウェアなしにヘッドホン一つでサラウンド的なホームシアターに近い音響環境を体感したいという人にとって、ULTRASONE Pro 900iはとても魅力的に思えるはずです。もちろん映像用のモニターとしても優秀です。
音質的な特徴
美点
- ブーム感があり迫力と深みのある低域
- 優れた定位感
- 奥行きに優れ、確かな前方定位感が得られる
- 分離感が良い
- ダイナミズムに満ちたサウンド体験
- 没入感が高い
- ほぼ完全なスピーカーサウンド
欠点
- 一般的な音楽用としては中域が遠すぎる印象
- 音楽用としては強すぎるかもしれない低域
- 高域はやや不自然
- 音楽全体に独特の不統一感がある
音楽鑑賞
すぎやまこういち、ロンドン・フィル・ハーモニー管弦楽団「栄光への戦い」
この曲を聞けば、ほぼ完全にホームシアターが再現されているのがわかります。各パートはややまとまってそれぞれの定位置に存在しており、音の方向性は前方と横の違いがはっきりしており、ブームによる床鳴りの再現度も高く、場の空気感がほぼ完全に把握でき、非常に高い臨場感を感じます。自然なサウンドに比べると、高域は妙に分離的で質感的にディテールが中域より強調されており、やや中域とは表現的な不統一を感じ、ツイーターで鳴らしているような若干浮き上がった感じがありますが、それも含めてかなりリアリティがあるサウンドです。低域も重低域と中低域で空間的に分割されており、ウーファーの存在感があります。私には完全にサラウンドシステムのベストポジションをとったような音に聞こえ、非常に楽しく迫力があります。
ReoNa「Disorder - Acoutic Live Ver. -」
床鳴り感がよく聞こえるのでライブ音源には会場にいるかのような空気感が備わり、音にリアルな臨場感があります。ピアノペダルを踏み込む音もしっかり聞こえ、マイクのわずかなポップノイズもかなり生々しく捉えられます。空間は音が聞こえない暗い背景がしっかり再現され、静寂感と奥行き感があるので、音場は広く感じられ、優れたスピーカーセットと同等のライブ感のあるサウンドが実現されます。
ポップノイズをかなり的確に拾う傾向があるのは、マイクチューニングのヒントになり、動画配信者にはうれしいかもしれません。
Yosi Horikawa「wandering」
Yosi Horikawaの映像的な3Dサウンドを楽しむのに、ULTRASONE Pro 900i以上の優れものはなかなかいないでしょう。Wanderingを聞けば、本当に森の中に迷い込んだかのようです。風のそよぎ、低音が生み出す空気感がこの音楽に内包された卓越した臨場感を解き放ちます。目を閉じればそこはもう部屋の中とは思えません。ヘッドホンをつけていることさえ忘れることができます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(ロック系)
Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
小さな英雄(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 小さな英雄 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
淡い恋 ~Too full with love~ / イース・ヒーリング / Copyright © Nihon Falcom Corporation
FEENA(EDM系)
FEENA / PROVINCIALISM Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ケノーピ火山(JAZZ系)
ケノーピ火山 / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
QUATERA WOODS(OST系)
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
幻の大地 セルペンティナ(OST系)
幻の大地 セルペンティナ / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
愛を感じていたい「終焉」 / オリジナル・サウンドトラック 「海の檻歌」~後編~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
魔王ヴェスパー(OST系)
魔王ヴェスパー / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
花と風のうた(JAZZ系)
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
ULTRASONE Pro 900iは映像クリエイターの優れたサポーターになるだけでなく、都会の小さなアパートの一室でホームシアターシステムを楽しみたい人にとっても魅力的な製品です。そして臨場感あふれる低域を愛するベースヘッド(低域愛好者)にとっても至高のコレクションの一角を占めるにふさわしいでしょう。ULTRASONE Pro 900iは、きわめてすぐれた定位とスピーカーシステムに相当する前方定位感をこの価格で十分に実現している驚異のヘッドホンで、プライベートに映像作品をド迫力で楽しみたい人にとってかけがえのない相棒になるでしょう。
ULTRASONE ( ウルトラゾーン ) / PRO900 i 密閉型ヘッドホン
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