- このレビューは誠実な品質レビューを読者に伝えるためにGRANPROから提供されたサンプルに基づいて書かれています。
- これを掲載することによる原稿料のような報酬または対価は一切受け取っておらず、個人的な試験での測定データや個人的見解に基づいて誠実に評価したものです。
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こんな人におすすめ
- 聴き疲れないヘッドホンが欲しい
- ふくよかなボーカル表現が好き
GRANPRO V1の概要
「アウトラインレビュー」は製品の概要を簡潔に紹介するレビューシリーズです。今回取り上げる製品は「GRANPRO V1」です。
GRANPRO V1の完全なレビューはこちらにあります。
基本スペック
- 周波数特性:10Hz-24000Hz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:110dB
- 価格帯:3000円~5000円
GRANPRO V1の特徴
GRANPROについて
GRANPROは2018年に始動したばかりの日本の新しいオーディオブランドです。ギターアイテムや楽器、ポップガードなどの音響用アクセサリーを展開してきましたが、今回ブランドとして初めてDJモニターヘッドホン「GRANPRO V1」をリリースしました。
GRANPROは初心者でも気軽に楽器に触れ、音楽を楽しむことができる製品づくりを目指したいという創業者の思いが詰まった製品展開を行っています。GRANPRO V1も手軽な値段で高品質な音楽体験をもたらしたいというGRANPROのコンセプトに則って制作されました。
40mm大口径ドライバー
GRANPRO V1は40mmのダイナミックユニットを使用し、迫力満点な低音と高音でクセの無いストレートなサウンドが楽しめます。イヤホンや他のヘッドホンには再現不可能なバスや、空間の広がりを原音の表情のまま体感できます。
低音から高音まで逃さない
独自構造ドライバを搭載。映画や音楽などのデジタルコンテンツをタイトで重厚な低音域から繊細でのびやかな中高音域まで臨場感豊かに高高解像度で再現します。まるでスタジオでアーティストのレコーディングを生で聞いているかのような感動と共に、各楽器の配置や音色の空気感といった空間全体を正確に、ありのままお伝えします。
パッケージ
パッケージは価格の標準を満たしています。紙製でエコですね。
パッケージ内容
- ヘッドホン本体
- 着脱可能なケーブル(長/短)
- キャリイングポーチ
- 説明書
ビルドクオリティ
ビルドクオリティは価格の水準を満たしています。
装着サンプル
装着感は良好です。
音質
今回はFiiO M15につないでレビューしています。
GRANPRO V1は中域寄りのサウンドシグネチャーを持っています。どちらかというと中域下部が主張する音なので、中域充実系とはいっても高域方向寄りで艶やかなCLASSIC PRO CPH3000とは異なる、充実感の高い系統の音になります。
音質についての詳しいレビュー内容はこちらを参照して下さい。
音質総評
- 原音忠実度:A+
- おすすめ度:B
- 個人的な好み:B+
全体の解像度が抑えられており、聴き疲れ感はないので、長時間にわたる映像作品のモニター用としてはわりと優れているとは思います。中域が広く、ボーカルやナレーションがしっかり聞こえるのもこうした現場には非常に適しているでしょう。
つまるところこういう音は積極的に音を捉えて作り込んでいく制作側に必要なツールというよりは、受け身的に音を聞く消費者側に寄った音と言えます。
個人的にはわりと心地よくて好きな音ですが、モニターヘッドホンとして評価するとなると、曲作りに必要なのはこういう音ではないでしょう。
低域
DJモニターを名乗っているので、低域モニタリング用にV1の購入を検討する場合もあるかもしれません。しかし、V1はその用途ではほとんど役に立ちません。
V1のこの低域は太さの目立つ深みに欠けるブームな音で量感はありますが見通しが悪く、膨張的で引き締まっていません。この用途ではほぼ同じ価格で買えるTASCAM TH-06という優れたモニターヘッドホンがあり、そちらのほうがDJモニターとしての信頼性で優ります。
中域
V1の中域は横に広く、すっきりと整理されており、ボーカル音像が大きめに聞こえます。分離はよく整理された音に聞こえるため、第一印象は悪くないですが、よく聞いていくと硬さに欠け、モニター的に音を捉えるに必要な音楽の心臓部の構築感の把握にあまり向かないことがわかります。それは曲作りに活用したり、マスタリングに使うというよりはリラックスして鑑賞するのに向くような、少し柔らかく聴き心地の良い音です。
たとえば、同じ価格帯のCLASSIC PRO CPH3000と聞き比べれば、誰もがその欠点をはっきりと認識するでしょう。明瞭で、一定のフレームの範囲にくっきりと音の一つ一つの輪郭を丁寧に描き分けて聴かせるCPH3000の優れた描写力と比べて、V1の中域は漫然としており、ボーカル音像がやや大きすぎ、全体的に無駄に音場を使っているように思えます。
たしかにボリューム感のあるV1の中域は押し出し感があり、音が前面に出てくるため、最初はインパクトを感じ、一見説得力があるように思いますが、CPH3000の明度も高く、透明で階調性に優れた高解像の高級カメラで音像を捉えるような中域に比べると、V1の中域は、かつて流行った「写ルンです」みたいなインスタントカメラで撮ったような音像を無駄に引き延ばしたようであり、粗く、ぼんやりしたものになります。いや、さすがに「写ルンです」は言い過ぎかも。一昔前のコンパクトデジカメくらいかな。
両者は同じ価格帯に入るにもかかわらず、一音一音へのフォーカス感、音楽のフレームでの切り取り方、すべてにおいて隔絶した実力差があります。あなたがDJ活動や曲作りにおいて優れたパートナーが欲しいならば、それは明らかにV1ではないでしょう。この2つのモニターヘッドホンの間には明らかに、メーカーの音作りの実力において、圧倒的水準差があるように思われます。
高域
V1の高域は鮮明感を重視しているようです。そのため解像度が低いわりに音ははっきりと聞こえる傾向があり、かなりの精細感が確保されています。歯擦音やサ行の刺さりはよく抑えられていながら、アコースティックギターの粒立ち感やハイハットを細やかに表現できる繊細さがあるのは非常に良いと思います。
この高域はV1のサウンドの中で個人的に大変気に入った部分ですが、クリティカルリスニングに使えるような音ではないため、音楽制作用のモニターとしては優秀ではありません。
音質的な特徴
美点
- 優れた原音忠実性
- 中域への適切なフォーカス
- 長時間聞いても疲れにくい
- 精細感があり、繊細
- ふくよかなボーカル表現
- 聴き心地が良い(解像度が低いので)
欠点
- よくない解像度
- よくないレンジ感
- 低域の深さに欠ける
- モニター向きではない
- ミキシングに使えない
- 立体感に欠け、表層的な音楽表現
- 眠い音
総評
日本の新興オーディオブランド「GRANPRO」のモニターヘッドホンデビュー作「GRANPRO V1」は長時間聞いても聴き疲れない音が魅力です。しかし、モニターヘッドホンとしては総じて価格帯でも水準が低く、DTMや製作現場でこれを必要とする人はほとんどいないでしょう。リスニングヘッドホンとしては大変心地よく、私も好きな傾向の音です。聞き心地の良いヘッドホンが欲しい人にはお勧めできますが、その音楽表現には深みがなく、価格なりだということには注意が必要です。
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