DENON ヘッドホン オーバーイヤー/ハイレゾ音源対応/ウッドハウジング 木目 AH-D7200
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「頑丈だが、比較的軽量で良好な付け心地」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
- 【3】音質「ウォーム感を出してくれる温和な低域と適度なアタック感とツヤのある中高域が奏でる、適度な密度感のあるサウンドが楽しい」
- 【4】官能性「濃密な雰囲気」
- 【5】総評「太く豊かで、包み込んでくれる音楽を聴きたいならおすすめです」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「頑丈だが、比較的軽量で良好な付け心地」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
B01N06AJ2Q | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 5hz~55000hz |
インピーダンス | 25Ω |
感度 | 105dB |
ドライバー |
50mmダイナミック型 |
音質傾向 |
パワフル、濃厚感がある、根立ちが良い、密度感がある、濃密、音が太い、ウォーム、丸みのある音 |
ウッドハウジングとアルミニウム製のヘッドバンドを持ち、頑丈ですが軽量です。イヤーカップは耳をしっかりと覆うので、遮音性も良好です。ヘッドバンドやイヤーパッドのクッション性はよく、柔からかな付け心地で長時間着けていても疲労感は出ません。
テスト環境
今回のテストはCayin N6II/E01とAstell&Kern KANN CUBE、ONKYO GRANBEAT、FiiO M15で行っています。
【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
ONZOのサブスク版なので付属品は割愛します。ONZOのサービスについて興味がある方は以下をご確認下さい。
【3】音質「ウォーム感を出してくれる温和な低域と適度なアタック感とツヤのある中高域が奏でる、適度な密度感のあるサウンドが楽しい」
周波数特性イメージ(試験運用中)
※周波数特性イメージはあくまでレビューの便宜上、個人的に周波数分布のだいたいのイメージを掴むための参考情報で、測定方法も測定されたデータも非常にアバウトで厳密な信頼性や正確性に欠けます*2。
ファーストインプレッション
この機種のインピーダンスは25Ωあり、一般的なスマホでは鳴らすのにやや力不足を感じるはずですが、私の手持ちのGalaxy A30でも何とか鳴らせてる感じでした。EDMなんかを聴くと露骨に緩く、メリハリが足りない感じがありますが、元々このヘッドホンは穏やかな雰囲気があるので、駆動力不足のせいとも言い切れない感じがあります。なぜなら、比較的フラット系のサウンドであるGRANBEATでも同じように穏やかな雰囲気があるからです。
さて、デフォルトテスト環境であるONKYO GRANBEATにつないで音質を見てみます。まず一聴して気づくのは適度に膨らんで柔らかい感じがありながらも、パンチも利いていて力強くパワフルな低域でしょう。浮き上がりもよく中域をよく支え、充実感をもたらしています。ややボーカルに近い感じがあるので、GRANBEATで西沢幸奏「Brand-new World」のような曲を聴くと、とくに小音量ではドラム音がボーカルに少しかかり、人によってはボーカルが埋没気味に思えるかも知れません。
一方で、この中域下の支えの良さが音楽にしっかりとした土台を提供してくれることがこのヘッドホンの美点でもあり、まずはその点で好みが分かれると思います。低域は位置的にも縦軸的の深度の上でも深い感じではなく、やや中域を圧迫するかもしれないことは事実です。しかし、中域にしっかりした太さと充実感をもたらしているので、私はこういうチューニングが嫌いではありませんが、音場の開放感を重視する人には少し野暮ったく思えるかも知れません。どちらにせよ密閉型っぽい、少し頭内的な雰囲気のある音です。音楽に包まれている雰囲気を出してくれるでしょう。
さて、次に各音域を確認していきます。まずエレキベースですが、かなり温かみがあります。黒みは感じられるものの、ブンブンウンウンしている感じも強く、ボリューム感は適度にありますが、人によっては少しボンヤリしているように感じるかも知れません。ライブ感のある音なので、個人的には好きですが、クリアではありません。バスドラキックは場合によってベースとの境目が曖昧です。少しモスッとした音で重みはありますが、少し音が膨らむので、人によってはボワついている印象を受けるかも知れません。胴鳴り感はあって、ロックでは少し重たいボディのしっかりした充実したドラムサウンドを聴かせてくれますが、リズムコントロールは少しだけゆったりして聞こえるかも知れません。低域弦楽は厚みもあり、重みもずっしりと出ます。透明度は少し抑えめで、暖かく、濃厚感はありますが、重みはあっても深い感じはあまりないかもしれません。ボディの鳴りの中に弦の動きも収まりやすい印象があるので、躍動感は高くありません。一般的に温かみのある、穏和な印象を受けるでしょう。
中域は低域にしっかりと支えられているので、音が太く、温かみがあり、沈み込みが良い雰囲気があります。音は調和的な印象があり、たとえばピアノは上辺を少し輝かせながらも、その音が孤立せずに豊かに空間に沈んでいく重力感の感じられる、実体感のある音になります。弦楽も中域では首をもたげるような、重みを感じさせながらのびる感じがあります。中域がしっかり低域と繋がっているので、突然空間から浮き上がってくるような不自然さはなく、下から音が根立っている充実感があります。ボーカルも中域で充分甘味と膨らみがあり、女声ボーカルがサビで上に伸びる時もボディを持ち上げていくような、高音を出すのに力を込めている感じがあって、その雰囲気に生々しさを感じる人には好まれるでしょう。
高域は低域から続く暖かみが中高域付近まで感じられる調和的な雰囲気の中で聞こえます。スネアにはスナッピーさを感じ、ハイハットの穂先は少し中高域より高く聞こえないこともないですが、一般的には透明で、おとなしめに聞こえると思います。高域は低域、中域に比べると基本的には後退しているように聞こえます。中高域では少し鮮やかさを強調してくれる感じがありますが、輪郭は丸みを帯びていて、手がかりは多くありません。
音場はこの価格帯のヘッドホンとしては広くなく、奥行きは適度に感じられるものの、左右の幅は両耳の幅とほぼ変わらず、ボーカルは近く、どちらかといえば頭内的です。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
やや鮮やか。音が太く、中域で充分実体感が感じられる。ただし高域がおとなしめなので派手さは抑えられている。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鈍い。中低域の膨らむ感じが高域の手がかりも丸めてマイルドに感じさせやすい。 |
明るさ (明るい/暗い) |
普通。高域はあまり明るくなく、自然光くらいの明るさに思える。 |
派手さ (派手/地味) |
やや地味。派手さは少し抑えられて聞こえる。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや柔らかい。中低域のパンチの利いた膨らむ感じが全体を柔らかく感じさせやすい。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや丸みがある。基本的にはマイルド。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや騒々しい。個人差があると思うが、中域に音が集まりやすい感じがあり、人によっては密度感の高さが気になるかも知れない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
力強い。低域はパンチが利いていて、床面に力強さがある。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
豊か。パワフルさと充実感を感じさせる中域が豊穣。 |
太さ (太い/細い) |
太い。音は基本的に太い。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。音は基本的にマイルド。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや粗い。中高域で艶やかさを出してくれるが、手触りは滑らか。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
やや濁った。中域の上くらいまで熱気が感じられる雰囲気になりやすい。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
普通。ピアノ音やシンバルの音の端にも潤い感がそこそこ感じられるが、低域の熱気が強い感じで逆に乾燥して感じられる場面もあるので、総じては普通くらいだと思う。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。低域の重量感は多め。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや濁っている | やや濁っている |
明るいか (明るい/暗い) |
普通 | 普通 |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
普通 |
やや天井感がある |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
普通 | 普通 |
太いか (太い/細い) |
太い | 太い |
濃いか (濃い/薄い) |
やや濃い | やや濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
目立たない | 目立たない |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや天井感がある |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや浮き上がりがよい |
主に中域の奥行き感 (前進的/後傾的/前傾的/後退的) |
前進的 |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや狭い |
定位感 (頭内的/頭外的) |
頭内的 |
分離感 (拡散的/密集的) |
密集的 |
美点
- 中域に充実感がある
- 適度な奥行きがある
- 適度な濃厚感がある
- 力強い中低域
- 密度感が高い
- 音に太さがある
- 調和的で浸りやすいサウンド
- ウォーム
欠点
- 暖かみが強め
- 音場は少し狭い
- 開放感に欠ける
- 人によってはメリハリ感が足りなく思うはず
[高音]:ハイハットの粒立ちは透明に近い感じではあるものの、ポップスではしっかり感じられるが、一般的には中域よりは後退しており、ロックではスネアやギターに羽燃えれるかも知れない。わずかに高域で風通しが感じられるが、基本的にはあまり抜けている感じはなく、中高域音を強調した後マイルドに減衰している印象を受ける。開放的な感じはあまりない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はウォームで甘味があり、充実している。中域の充実感を好む人には素晴らしいサウンドに聞こえるかも知れない。ボーカルは比較的前に出てくるが、中域下のドラム音などが少し近いので、曲によっては少し埋没気味に聞こえるかも知れない。ボーカル周りは清潔な感じではなく、むしろ楽器と近く、一体的である。音の根立ちはよく、少し豊満で太い音で頭がしっかりと密閉される音楽のコクピットに入り込む感覚がある。奥行きは適度にあるが、ステレオ的な雰囲気が強く、音は頭内的に聞こえる。
[低音]:100hz~40hzまでややボーッとした太い振動で膨らみを感じる。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は基本的に暖かみが強く、ベース音やバスドラキックには地熱が乗って少し沸騰しているくらいに聞こえる。ライブ感のある音だが、見通し感が高いとは言えないので、モニター系の音が好きな人からすると、「ボワ付いている」と評されやすいだろう。ドラムは鼓面を叩く音に対してボディがしっかり揺れる感覚があるので、生々しい感じがある。シャープでタイトな感じではないので、その分スピード感はわずかにゆっくりするが、遅れを感じるほどではないだろう。低域弦楽は濃厚で重みもあり、JAZZでは豊かな土壌を形成してくれる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:密度感が高く、音場の広さはそれほど優れている感じではないが、重厚で音も太い充実感のある音楽を奏でてくれるのが特徴。奥行きが少し感じられるが、立体感を強調する感じではない(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:一般的に、このヘッドホンでは、パンチを感じるボディの震えが特徴的になりやすい。鼓面を叩いた音が豊満なボディに響く、そのボディの厚みに意識が向きやすいリズムサウンドになるだろう。キックも重みがあるが、広がってやや熱気の中に隠れる印象があるので、ボディの膨らみが最も印象的に映ることが多い。スネアの鼓面は膨らんでパッツンした弾力のある感じで聞こえ、バスドラキックも少しタッチが柔らかい膨らんで聞こえる。膨張感のあるパツンパツン。ハイハットはドラムに比べると薄味で聞こえやすく、ドラムが活き活きしているロックでは少し奥で聞こえやすい。白味は少しあるが、透明なシンシンした音で雪景色のような落ち着いた雰囲気を感じやすい(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:ボーカルは楽器音から分離されているとは言いづらいので、比較的前面に出てくることが多いにしてもフォーカス感が高いとは必ずしも言えない。むしろ左右の耳を囲むステレオ的な楽器音のほうが囲い込みが強い分だけ、前に出てきている感覚を受けることも多い。男女ともにボーカルは太く力強いが、より力強いドラムも近くに来やすいので、場合によって埋没感を感じやすい。ボディはしっかりしており、子音の尖りはなく、息も透明に伸びる感じがあって、安定感がある。ちょっと大人びて聞こえやすい。
【4】官能性「濃密な雰囲気」
TRUE「Sincerely」
【KANN CUBEで鑑賞】この曲みたいな落ち着いたポップスで中域で濃密な感じが味わいたい場合は、このヘッドホンはかなり魅力的に映ると思います。パワフルなドラムが適度に膨らんで支える温かみのある雰囲気の中で、楽器とボーカルを少し近めに密閉感を少し感じながら、豊かに包まれる感触で聴くことが出来ます。ボーカルや弦楽にボディに重力的な沈み込みがあり、太さを感じながら実体感のある音楽を楽しめます。中高域の色づきも結構良く、弦楽は重さを感じさせて少しゆったりしながらも、サビでは鎌首をもたげて音を立ち上がらせます。ハイハットは透明な雰囲気なので、豊かな楽器音を邪魔する輝きがなく、静かに風通しの良い清潔感を出してくれます。
「ゴルベーザ四天王とのバトル FFRK Ver. arrange from FFIV」
【FiiO M15で鑑賞】かなり重厚感を出して聴かせてくれます。密度感が高いので、音の奔流の中に頭を突っ込んで聴く感じになるのですが、低域弦楽が濃い音で支える中を、楽器音が重みをしっかり感じさせながら頭を囲い込んでくる、濃密空間が広がっています。奥行き感は少しありますが、たぶん左右はちょっと狭いかも知れないので、人によっては圧迫感を感じるかも知れませんが、楽器音が空間によく響き、下でも鳴動し、渦巻く圧倒的迫力があります。
ファイナルファンタジー レコードキーパー オリジナル・サウンドトラック
Void_Chords feat. LIO「FLARE」
【Cayin N6II/E01(A)で鑑賞】この曲を床面の力強さを感じながら、濃密に聴きたいならおすすめできます。中域に音が集まる感じがあるので、充実感重視で、金管やドラム、ピアノほとんどすべての楽器がボーカルの周囲に濃密に近づいていますが、質感の描き分けは丁寧なので、混然とした感じはありつつも、それぞれの音が聞こえにくい感じはないでしょう。ただしいわゆる分離感はよくないと思いますので、普段音場の広さと音と音の間の空間的要素で音を感じ分けているタイプの人には、少しめまぐるしい感じがあると思います。音が近く、親密に感じられるので、浸りやすく、目を閉じてリラックスしていると、この力強い曲の世界に引き込んでくれる没入感があります。
TVアニメ『ありふれた職業で世界最強』OP主題歌「FLARE」
【5】総評「太く豊かで、包み込んでくれる音楽を聴きたいならおすすめです」
音が太く音場は広くない感じではあるので、とっつきにくいと思う人もいるかも知れませんが、非常に濃密で豊かな音を聴かせてくれるヘッドホンです。音に活き活きとした実体感とライブ感があり、重みと太さ、熱気を感じながら、色づきを楽しむことができます。力強く根立ちの良い音楽を楽しみましょう。
- 太く力強く、根立ちの良い実体感のある音
- 密度感のある没入性の高い音楽空間
- 開放感に欠け、圧迫感がある
ENON ヘッドホン オーバーイヤー/ハイレゾ音源対応/ウッドハウジング 木目 AH-D7200
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。
*2:音量による変化、各イヤホンの特性を考慮した補正などを行っておらず、測定環境もスマホマイクで集音しているので非常にアバウトで厳密ではありません。レビュー執筆の参考に使っていたものの、これまでは公表してきませんでしたが、これまでサンプルを取って聴感上の印象と照合してきた感じ、それなりに参考にはなりそうなので、試験的に公開していきたいと思います。いずれ勉強を深めて信頼性を高めていきたいとは思いますが、本ブログは周波数特性の測定をメインとしていませんので、期待しないで下さい。私自身も聴感上の音像印象の解釈の補助として利用しているだけで、この周波数特性イメージを全面的に信頼し、依拠しているわけではありません。